あふれる秘密基地感! 廃工場をリノベした「廃材エコヴィレッジ」が男心をくすぐりまくり!

更新日:2017年3月14日 / 公開日:2017年3月14日

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神奈川県相模原市藤野。自然豊かな地域のなかでも一層山深い“限界集落”に、ひときわ目をひく珍妙な建物がある。廃棄予定の木材や古タイヤ、トタンなどをかき集めてつくった異空間「廃材エコヴィレッジゆるゆる」だ。「廃材」といっても、残念な貧乏くささは感じられない。外観からしてカッコよく、男心をくすぐる秘密基地感にあふれている。足かけ3年、ほぼ一人でこの場所をつくった人物に話を聞いた。
廃材のみでつくられた、遊びゴコロ満載のヴィレッジ

なにはともあれ、まずは建物をご覧いただきたい。

【画像1】こちらがその「廃材エコヴィレッジゆるゆる」。都心から電車と車で2時間ちょっとの場所にある異形の建物(写真提供/傍嶋飛龍)

上が昨年の秋ごろの写真。
ここからさらに進化して、現在はこうなった。

【画像2】母屋外観(写真撮影/松倉広治)

【画像3】さまざまな色、カタチの廃材を巧みに組み合わせ、独創的な世界観をつくり上げている(写真撮影/松倉広治)

【画像4】童話の世界から飛び出してきたような空間だ(写真撮影/松倉広治)

まるで子どものころに空想していた秘密基地を実体化したようなたたずまい。この板の配置、色合い、外観を眺めているだけでワクワクさせられる。

さらにじっくり見ていこう。

【画像5】こちらは別棟のトイレ。これも廃材だけでつくられている。なお、このトイレは「バイオ式」。排せつ物をミミズが分解して堆肥に変えるコンポストトイレの仕組みを採用している。堆肥は近くの畑で使用するなど、エコヴィレッジの名に恥じない無駄のなさ(写真撮影/松倉広治)

一方、こちらは物置。

【画像6】RPGに出てくる「ドワーフのアジト」みたいな外観。物置としては不必要なファンタジー感にあふれている。上部のアーチには流木を使用。暖かくなると植物の緑がアーチを覆いつくすという(写真撮影/松倉広治)

物置の脇には階段が掛けられ、そのまま母屋の屋根へとつながっている。建物自体がアスレチックのようになっており、登ったり降りたり、立体的に遊べるのが楽しい。子どもたちも喜びそうだ。

【画像7】さらに、こちらの扉の奥には……(写真撮影/松倉広治)

【画像8】なんと、露天の五右衛門風呂。手づくりの浴槽はアート作品のようである。星空を眺めながらの入浴、最高だろうな……(写真撮影/松倉広治)

廃工場を300万円で買ってリノベーション

こんなイカレ……もとい、すてきな空間をつくったのは、いったいどんな人なのだろうか?

【画像9】こんな人です(写真撮影/松倉広治)

彼の名前は傍嶋飛龍(そばじまひりゅう)さん。元々絵描きで今は万華鏡作家。そして、この「廃材エコヴィレッジゆるゆる」のオーナーである。25歳から藤野在住。2013年にもともと廃工場だった物件を300万円で買い取り、3年がかりで自らリノベーションしたという。

【画像10】こちらがリノベーションする前の姿。御覧のとおり、なんの変哲もない廃工場だ。雑草は生え放題、工場が稼働していたころのゴミも散乱している(写真提供/傍嶋飛龍)

「大きなオモチャを手に入れた感じ。まだ内装が全然できていないんだけど、一通り設備が整ったら仲間で使えるシェアスペースにしようと思ってるんだよね。イベントをやったり、ゲストハウスみたいに使う感じかな。オープンのメドは来年の春くらい。でも、去年も一昨年も『来年の春にオープンする』って宣言して結局できていないから、また延びるかも(笑)」

そう語る飛龍さん。なんとも自由な空気感を漂わせる人である。「勉強は全然できなかった。というか、やらなかった。教科書重いから学校に持っていかなかったし」という言葉どおり、子どものころからずーっと遊んで生きてきたような雰囲気がある。それでも、なんというか、「生きる力」みたいなものが全身からみなぎっている。こんなオトナになれるなら、ランドセルはスカスカでもいいのかもしれない。

「未完成」だという母屋の内部も見せてもらった。

【画像11】母屋の内装は最近やっと手を付け始めたところ。そのため、木材や機材・工具で埋め尽くされていた。材木は古民家を解体して集めたため、かなり年期が入っている(写真撮影/松倉広治)

【画像12】これらの工具や機材のほとんどが「近所のおじいちゃん」や、引退する木工作家さんからの頂き物なのだとか。地域の人々に愛される、飛龍さんの人柄がうかがえる(写真撮影/松倉広治)

【画像13】入り口近くのカウンターは完成している。奥にはキッチンもつくられており、この日もお湯を沸かす際にまきを使って火を焚いていた(写真撮影/松倉広治)

【画像14】奥の壁にはステンドグラスのような装飾が施されていた(写真撮影/松倉広治)

【画像15】じつは空きビンを利用。お金を使わずにカッコよさを追求するアイデアが光る(写真撮影/松倉広治)

【画像16】こちらは工場時代の休憩室。ここも廃材を使って装飾・リノベーション。ただの掘っ建て小屋が、趣ある内装に生まれ変わっている(写真撮影/松倉広治)

大工仕事は「絵を描いている感覚」

なお、飛龍さんに大工仕事の経験はなく、完全なる自己流。手に入った廃材からインスピレーションを働かせ、思いのままに組み立てている。素人なのに感性だけでここまでのものをつくってしまうとは、さすがアーティストである。

「自分のなかである程度のビジョンはもっているんだけど、基本的にはその場のひらめき。つくってはひらめいて、またつくっての繰り返しだから。それって、どこか絵を描いている感覚に似ている気がする。即興だからこそ、想定していないモノが出来上がったりもして面白いんだよね」

【画像17】飛龍さんの感覚で築かれたこの場所を見てみたいと、見知らぬ大学生が秋田や大阪からヒッチハイクして来たこともあるという(写真撮影/松倉広治)

「初めは材木の釘抜きやサイズ調整から始まったんだよ」。飛龍さんが話すと楽しそうに聞こえるが、実際に自分がやると考えると恐ろしい。3年あまりもモチベーションを維持できる情熱はどこから来ているのだろう。

「もちろん、この場所を使っていろいろやってみたいという目標はあるよね。俺は藤野という地域、コミュニティを大事にしていて、ここを仲間と楽しく遊ぶ基地にしていきたいというのもあるし、あとは『お金のかからない生活』の研究をしていく拠点にもなると思う。いずれは、ギャラリーをつくってアーティストの発信の場にしたり、親子向けの合宿なんかもやってみたい。価値のない廃材から価値を生み出していけるような、そんな場所にしていきたいよね。まあ、結局は遊び場なんだよね。エコとかって真面目に考えすぎると続かないけど、遊びにしてしまえば持続可能性があると思うから。だから俺も、飽きずに続けられてるんだと思う」

【画像18】カッコよすぎます!!(写真撮影/松倉広治)

「天才」のまま大人になった

当面は仲間内でのシェア利用を考えているが、いずれはFacebookなどで参加者を募り、地域外の人と交流を深める場所にしていきたいという飛龍さん。となると、ますます完成が待ち遠しいが、来春、本当に予定どおりオープンできるのだろうか?

「たぶん(笑)。ただ、来年の春にオープンとは言ってるんだけど、それで『完成』ではないんだよね。むしろ完成はない。外だってこれで満足しているわけじゃなくて、受付用の小屋もつくりたいし、敷地全体を囲う『城壁』みたいなものをつくって要塞感を出したいんだよね。やりたいことが山ほどあって、まだ20%ぐらいしか実現できてないんだよ。それに何年か経てば、逆にどこかが壊れ始めたりするだろうし。でも、それで良いと思う。不完全さが完全、みたいな」

【画像19】工事の進捗状況は「廃材エコヴィレッジゆるゆる」のウェブサイトやFacebookでも確認できます(写真撮影/松倉広治)

「シュヴァルの理想宮って知ってる? フランスにある有名な“奇怪建築”なんだけど、あれって完成までに33年かかっているんだよ。そう考えると俺なんて始めて3年だから、まだまだだよね」

そう言って笑う飛龍さん。自ら「変態建築」と語るこの場所は、既成概念にとらわれない彼の生き方をそのまま表現しているように思えた。だからこそ、見る者をこんなにも魅了するのかもしれない。

インタビュー中、飛龍さんは「子どもって、誰でも天才なんだよ」と語っていた。廃材エコヴィレッジにはそんな子どもの遊び心、自由な発想力、抑えられない制作意欲、先が分からないワクワク感が詰まっていた。この場所をベースにした飛龍さんの「遊び」は、きっと一生続くのだろう。

●取材協力
・廃材エコヴィレッジゆるゆる 住まいに関するコラムをもっと読む SUUMOジャーナル

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