イライラやストレスに効果のある漢方薬があるってホント?漢方薬剤師おすすめ3選

更新日:2022年5月25日 / 公開日:2022年5月25日

仕事に家事に育児に追われる日々。どうしてもイライラやストレスとは無縁ではいられないですよね。まずは生活をどうにかしなければならないのですが、漢方の力を借りることはできるのでしょうか。今回は「漢方薬とイライラ・ストレス」について、漢方薬剤師の西崎れいな先生(KAMPO MANIA TOKYO)に教えていただきます。

この記事でお伝えすること

1.漢方医学とメンタル症状の治療 2.イライラ、気分の落ち込み、専門家に相談した方が良い基準って? 3.上手なストレス解消のために知っておきたい生活のコツ 4.イライラやストレスに効果のある漢方薬は?

解説してくれた先生 KAMPO MANIA TOKYO 管理薬剤師 西﨑れいな 先生 昭和大学薬学部卒。大手調剤薬局、多診療科クリニックの院内調剤室勤務を経て、漢方専門店にて管理薬剤師。漢方相談や漢方の啓発に努め、2021年より現職。監修を務めるKAMPO MANIAでは、自分の症状や体質からカスタマイズしてくれるサービスも受けられる。

「西﨑れいな 先生」記事一覧はこちら⇒

1. 漢方医学とメンタル症状の治療

はい。まず、ワンオペママさんたちは1人で悩みを抱え込まず、パートナーと働き方や育児への関わり方を話し合っていただきたいところですね。

漢方薬にはイライラした状態を落ち着かせたり、不安を取り除いたりするような、精神的な症状を改善するお薬もあるので、ぜひうまく活用してみてください。

最初に、心と体の関係性について、漢方の考え方をもとにお話をしましょう。

心と体は密接に関係していて、自律神経の乱れにより心の状態が不安定になり、さまざまな形で身体症状が現れてくることは皆さんご存じだと思います。

漢方医学では、人の身体を5つに分類する「五臓」という考え方があります。 これは、世の中あらゆる全てのものは「木・火・土・金・水」の5つの要素から成り立っているという「五行説」の概念を、人体の五臓「肝・心・脾・肺・腎」に当てはめて、それぞれの機能や働きなどを説明しています。

基礎編でお話した、「気血水」と同じように、患者さんの証を見極めるものさしとして使われる概念です。

五臓は次の図のように、お互いに助け合ったり(相生:そうせい)、抑制し合ったり(相剋:そうこく)することでお互いにバランスをとって健康を保っています

五臓の働きは、 精神の安定 睡眠リズムの調節 気の流れの調節 血の貯蔵 集中力の維持 など生命維持の根幹を司ること。

この五臓に異常が起こると、体だけでなく心のトラブルを引き起こします。 集中力の低下やイライラ 興奮状態 抑うつ 不眠 などを招くのです。 特に、心(こころ)の状態と密接に関係しているのが「肝」「心」

ストレス状態が表面化する場面では、 イライラして怒りっぽくなる、感情が爆発するケース 抑うつ傾向にあり、不安感を感じたり、気分が落ち込んだりするケース があると思います。

主に前者は「肝」の異常、後者は「心」の異常と捉え、さらに気血水の異常も総合的に判断して、それぞれの患者さんに合った漢方薬を提案します。

最初はちょっとしたイライラや気分の落ち込みですが、状態が長く続くと、 やる気がでない 頭痛やめまい 便秘や下痢などの消化器症状 など、さまざまな身体症状を引き起こして、本格的に健康を損なう場合があります。

イライラした状態や気分が沈んだ状態が長く続く場合、漢方専門店などで直接カウンセリングを受けたり、心療内科や精神科を受診して、専門家にしっかり話を聞いてもらいましょう。日本はカウンセリングや精神科治療へのハードルが欧米に比べて高く、適切な治療に辿り着けない人も多くいると思います。心身の失調は誰にでも起こりうること。1人で悩まず、専門の医療機関に頼ってみてくださいね。

*精神科と心療内科の違いについて* 精神科と心療内科、いずれも心が原因の病を治療しますが、大きな違いは、 ■精神科:うつ病やパニック障害、双極性障害などの精神的な病気そのものに治療を行う ■心療内科:ストレスなど心理的な要因から身体に現れる病気を治療する(その名の通り「内科」である) という点にあります。覚えておきましょう。 近年こういった医療機関では、あらゆる精神症状に対して漢方薬が使われ、活用の幅を広げています。今まで飲んでいた薬では良くならなかった不調に対し、漢方薬が効果を発揮して改善に向かうケースも少なくありません。

2. イライラ、気分の落ち込み、専門家に相談した方が良い基準って?

そうですね、一般的に、日常生活で以下のような傾向があったら専門家に相談することをおすすめしています。

お布団に入っても眠れない、あるいは途中で起きる日が続いている 好きなことが楽しく感じられなくなった、何もやる気が起きない 倦怠感、集中力の低下が感じられる イライラや塞ぎ込むことが多く、日常生活や家族とのコミュニケーションに支障がある 自分の体を傷つけたい、生きている意味がない、死にたいと思うことがある

これらの症状が2週間以上にわたって続くようであれば、受診をしてください。

上司に怒られたり、何かに失敗して落ち込んだり、人の行動に対してイラッとすることは誰しもあることです。恋人に振られたらしばらく引きずりますし、お母さんたちだって子供の発する言葉や行動に日々振り回されています。ただこれらがきっかけで、上記のような状態が続くことはまた別問題です。

精神症状は早めに治療をすることが大切です。「こんなことで相談していいのかな……」なんて思わず、症状が深刻になる前に専門家に相談することが、その後の回復を早めることにもつながります。

3. 上手なストレス解消のために知っておきたい生活のコツ

五臓の「肝」や「心」のバランスを取り戻すためには、まず「無理せず心と体をよく休めること」です。 イライラや不安感、無気力などの精神症状は頑張っているときに起こる人が多く、それが慢性化して自律神経のバランスを崩し、身体症状を引き起こします。日常生活においては、次のようなことを意識してみましょう。

1.じっとしていることは逆効果、お散歩など軽い運動で気分転換を ストレスが溜まっていると感じてきたら、朝のお散歩など気持ちいいと思える程度の気分転換をするといいでしょう。外の空気を吸って、景色を眺め、環境を変えることでスイッチを切り替えることができます。たまには遠出して、遊びに出かけるのも良いと思います。

2.誰かに話す これが意外と大事なこと。イライラしたり、ストレスを感じたりしたとき、誰かに話すことで、溜め込んだ怒りやつらい感情を発散させる効果があります。自分の境遇を理解してくれる人を1人でも増やせたら、協力を仰いでストレスのきっかけになっている仕事や育児などの負担を軽減してもらうきっかけになることもあります。

3.柑橘類などの酸味のあるものを積極的にとる 精神症状に効果のある生薬には、みかんの皮である「陳皮(ちんぴ)」などがあります。陳皮には気の巡りを改善し、リラックスする効果があります。また、レモンやゆず、グレープフルーツや梅干しなどに含まれるクエン酸には、疲労物質である乳酸の分解を早める効果があることがわかっていて、疲労回復にはもってこいの食べ物です。

4. イライラやストレスに効果のある漢方薬は?

冒頭でもお伝えしましたが、漢方医学ではストレスなどからくる精神的な不調は、「肝」「心」が深く関わっていると考えられています。そのため、これらの異常を取り払い、さらには気の巡りを良くするような漢方薬が用いられます。

また、何度も言いますが、漢方薬の服用と同時に大切なことは、ストレスの原因(ストレッサー)を見極めて、根本的な解決を図ることです。 相談者さんの場合だと、育児ストレスが大きく関わっていると思われます。細かい背景がわからないので一概にいえませんが、パートナーの理解と協力があれば改善できることもあるかもしれません。

ーーーーーーーーーーーー 短時間でもひとりの時間(子供から解放される時間)を作る 週に1回だけでも家事代行を活用して負担を減らす 外食や中食、食事の配送サービスなどを利用して料理の負担を減らす 可能ならお互いの両親や親戚、友人の助けを借りる 洗濯たたみなど、簡単な家事を上の子に任せてみるなど ーーーーーーーーーーーー

特に子供が小さいと、家事、育児の全責任がお母さん一人にのしかかってしまう家庭はいまだ多く、それを分散するだけで精神的ストレスはかなり変わってきます。

漢方薬を生活に取り入れて、上記のような生活改善や専門家のカウンセリングなどの活用も視野に入れてみてくださいね。

抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)

【体質、症状】胃腸が弱く、イライラや怒りっぽい人に向く漢方薬です。神経が高ぶる、気分が落ち着かない、夜眠れない場合に用いられます。 【効能】その名の通り、肝の高ぶりを抑える抑肝散に、気の巡りをよくする陳皮、胃の水分代謝を整える半夏を加えたものです。抑肝散はもともと、子供の夜泣きやかんしゃくに使われる漢方薬でしたが、最近では大人の神経症状にも使われます。陳皮と半夏が加わったことで、より体力のない人にも使用できます。 【使われている主な生薬】柴胡、釣藤鈎、蒼朮、茯苓、当帰、川芎、陳皮、半夏、甘草

加味逍遙散(かみしょうようさん)

【体質、症状】イライラやのぼせ感、ストレスによる自律神経失調の症状に使われる代表的な漢方薬です。体力があまりなく、肩こりや首筋のこりがひどい、疲れやすい、頭痛やめまい、便秘など、さまざまな身体の症状をきたします。また、不調が一つの症状に定まらない方におすすめです。 【効能】加味逍遙散は桂枝茯苓丸、当帰芍薬散と並んで産婦人科の三大漢方と言われる漢方薬のひとつです。西洋医学では異常はないけれど、原因がわからず日々うつり変わる色々な症状、いわゆる不定愁訴に効果が期待できます。女性の月経前に起こるあらゆる症状(PMS)や更年期障害の治療薬としてよく用いられています。柴胡や薄荷には、気の巡りをよくすると同時に、精神を落ち着かせる作用があります。 【使われている主な生薬】柴胡、芍薬、当帰、茯苓、蒼朮(白朮)、山梔子、牡丹皮、甘草、生姜、薄荷

桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)

【体質、症状】イライラや不安が同時にあり、無気力で、ネガティブな思考に陥ってしまう。神経が過敏になり、だるさや食欲不振、不眠やのぼせ、動悸や息切れなどを起こしている場合に用いられます。痩せ型で神経質な方に向く処方です。 【効能】桂皮、生姜には体をあたためて血行促進、全身の機能を高める作用があり、大棗は気血を補い、精神を安定させる作用があります。竜骨と牡蛎が興奮を鎮めて、気分を落ち着かせます。竜骨は哺乳動物の骨で、牡蛎は私たちがよく知る貝の「カキ」の貝殻です。生薬の材料は色々なものがあって面白いですよね。 【使われている主な生薬】桂皮、芍薬、大棗、牡蛎、竜骨、甘草、生姜

まとめ

薬剤師の先生から漢方について学ぶ「ママのお悩み漢方相談室〜不調な私の取扱説明書〜」。第13回の今回は、ストレスを溜めない生活の工夫、イライラやストレスを感じた時におすすめの漢方薬についてお伝えしました。子供はかわいいけど、子育ては毎日イライラやストレスとの闘い……漢方もうまく活用して少しでも精神的負担を減らして楽しい時間を増やしていきたいものです。

(解説:西﨑れいな 先生<KAMPO MANIA>)

※画像はイメージです

参考文献 症状からチャートで選ぶ漢方薬翔泳社 生薬と漢方薬の辞典日本文芸社 まずはこれだけ!漢方薬じほう 漢方薬辞典主婦と生活社

※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、薬剤師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます


関連記事



この記事の著者

ログイン・無料会員登録