眠れないのがつらい……不眠は漢方で改善できる? 漢方薬剤師が選ぶ3つの薬

更新日:2022年5月25日 / 公開日:2022年5月25日

十分に眠れない日が続くと気力も体力も削られていきます。なかなか寝付けなかったり、夜中に目が覚めてしまったり……。そんな不眠の症状を漢方薬で改善する方法はあるのでしょうか?14回目の今回は、つらい「不眠」のお悩みについて、漢方薬剤師の西崎れいな先生(KAMPO MANIA TOKYO)に教えていただきます。

この記事でお伝えすること

1. 「不眠症」の定義とは 2. よく眠るためにできる工夫は? 3. 漢方医学における不眠の考え方 4. 不眠に効果のある漢方薬は?

解説してくれた先生 KAMPO MANIA TOKYO 管理薬剤師 西﨑れいな 先生 昭和大学薬学部卒。大手調剤薬局、多診療科クリニックの院内調剤室勤務を経て、漢方専門店にて管理薬剤師。漢方相談や漢方の啓発に努め、2021年より現職。監修を務めるKAMPO MANIAでは、自分の症状や体質からカスタマイズしてくれるサービスも受けられる。

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1. 「不眠症」の定義とは

特に子育て中のお母さんは、お子さんのお世話に日々全力なので、睡眠不足や不眠で疲れがとれない…なんてことは避けたいですよね。

不眠の状態が続くと、倦怠感や集中力の低下など生活の質を低下させます。質の良い睡眠をとることで、生活習慣病などのリスクが減少しているというデータもあるように、質の良い睡眠は健康な身体づくりの基盤となります。

不眠には、入眠障害中途覚醒早朝覚醒熟眠障害という4つのパターンがあります。

1.入眠障害 その名の通り、寝つきが悪くなかなか眠れないこと 2.中途覚醒 寝ることはできるけれど途中で何度も起きてしまうこと 3.早朝覚醒 朝早く起きてしまってそこから眠れなくなること 4.熟眠障害 ある程度眠れても、疲れがとれずにぐっすり寝た実感がないこと

相談者さんは、中途覚醒に当たるようですね。細かな診断基準がありますが、簡潔に言えば、不眠症はこれらの症状が長期にわたって続き、倦怠感や集中力の低下など、日中の生活に支障をきたしていることをさします。

多少夜ふかしをする日があったり、眠れない日があっても、数日で睡眠のリズムが元に戻るようであれば特に問題はありません。 (もちろん健康には良くないので、毎日決まった時間に十分な睡眠をとることをおすすめしますが……)

本人が満足いく十分な睡眠がとれていない、昼間の生活に支障が出る、そしてそれが慢性化している状態なのであれば「不眠症」の可能性があると言えます。

加齢とともに睡眠時間は短くなって、眠りは浅くなる傾向にあって、これ自体は自然なことです。また、7時間寝ても寝足りない人や毎日5時間くらいでもぐっすり疲れが取れて、翌日に持ち越さない人もいますから、その点個人差はあるので「何時間寝ていれば大丈夫」というのは一概には言えません

ただ、不眠にいたっては精神的な要因も大きいとされていて、うつ病などの心の病気が隠れている場合もありますので、イライラ/ストレスの記事でお伝えしたような、毎日無気力な状態が続く、何をやっても楽しくない、などのサインがあった場合は速やかに専門家に相談しましょう。

また、睡眠時無呼吸症候群という名前を聞いたことがあると思いますが、睡眠中に呼吸が止まってしまって深く眠れない病気があります。眠れないだけでなく、呼吸ができないことによって高血圧や脳梗塞、生活習慣病の原因になる可能性のある病気です。また、男性の病気と思われがちですが、女性でも発症します。日中の強い眠気や、いびきがひどい、ご家族に呼吸が止まっているのを指摘された場合は、すぐに医療機関へ相談しましょう。

2. よく眠るためにできる工夫は?

基本的な不眠対策は、生活リズムを整えて日中と夜のバランスを整えた暮らしをすることです。日中は活動的に、夜はゆっくり過ごすということですね。

そして、忘れてはいけないのは、不安ごと・心配ごとのある人は、無理を重ねすぎないこと。不眠の根底には過度な疲れ、精神的な要因があります。お仕事や家事、育児をすべて自分一人で抱えていないか、責任を負いすぎていないか、一度見直してみましょう。周りの人に話したり、気分転換するなど工夫して「まぁこれぐらいでいっか!」と思うようにすることも大切ですよ。

生活習慣のなかで気をつけていただきたいのは、具体的には次のようなことです。

①寝る前のテレビやスマホ、激しい運動はNG 光刺激は入眠を阻害します。眠くないからといってお布団の中でスマートフォンをいじったり動画をみたりしていると、神経が興奮した状態になります。睡眠の質を向上するには、お布団に入ったら寝るぞ!と決めて、思い切って目を閉じてしまいましょう。 また、運動習慣は質の良い睡眠にとても良いことですが、寝る直前に行うと体を興奮させてしまうので控えるように。

②生活リズムを変えないように 休日前になるとつい夜更かしをして、翌朝はお昼ごろまで寝てしまう人もいると思います。平日起きる時間とのずれは最小限に、一定のリズムを保ち続けることが大切です。睡眠ホルモンである「メラトニン」というホルモンの分泌は朝起きてから大体16時間後にピークを迎えます。このタイミングで眠くなるので、それに合わせて眠れるようなリズムを作っておくのです。また、長すぎるお昼寝もよくありません。長くても1時間くらいにとどめておかないと、夜の睡眠にも影響してきます。

③眠りやすい環境を整える 先ほどのスマホの例もそうですが、夜寝る前の光刺激は良くありません。眠れる環境を整えるためには、空調を使って適切な気温、室温に調整し、部屋の明かりを消してきちんと暗い環境を作りましょう。製造業や医療従事者、飲食業など、勤務スタイル的に夜勤があるなどして昼間に眠らないといけない場合も、カーテンを閉めて出来るだけ夜に近い環境を作りだす努力をしてください。 また、朝起きてカーテンを開け、外の光を浴びてスイッチを切り替えることも効果があります。

3. 漢方医学における不眠の考え方

西洋医学では先ほどの睡眠障害の4パターンに応じて、睡眠導入剤や、睡眠時に分泌されるホルモンのバランスを調整するお薬などを用いた治療が行われます。

一方で漢方医学での睡眠障害は、「陰」と「陽」のバランスが崩れている状態と考えられています。活動的な状態である「陽」に対して、人に休息を与える「陰」が不足している状態です。これらのバランスを整えるための漢方薬が用いられます。そして、不眠は精神的な要因も大きいことから、「肝」や「心」の異常を整えるような漢方薬も用いられています。

不眠タイプ別に、大きく3つにわかれます。

1.陰陽のバランスが崩れて眠れないタイプ 本来、日中の陽の時間に活動し、夜の陰の時間に体と心を休めます。現代は昼夜問わず明かりがあって、24時間昼間と同じ明るさを作り出すことができますよね。これが生活リズム、睡眠リズムの乱れを引き起こす原因になります。入眠時間がまちまちで、生活習慣が乱れ、陽と陰の切替がうまくいかず眠れなくなるタイプです。

2.冷えて眠れないタイプ これは心当たりのある女性が多いと思うのですが、手や足先などが冷えて眠れないケースです。ぬるめのお風呂にゆっくり浸かる習慣をつける、湯たんぽを活用する、体を温める食材を摂り入れるなど、冷えそのものを解消するための工夫も必要です。

3.考え事が多く思い悩んでしまって眠れないタイプ 心のはたらきが不安定になり、頭に次々と心配ごとが浮かんで眠れないケースです。このタイプの方は、眠れないせいで、かえって「早く眠らなきゃ!」と思いつめてしまい、余計に眠れなくなるといった悪循環にもなってしまいます。

4. 不眠に効果のある漢方薬は?

具体的な症状から自分がどのタイプに近いかをイメージして、症状や体質に合いそうなものを検討してみてください。もし迷うようなら、専門家に相談してくださいね。

酸棗仁湯(さんそうにんとう)

【体質、症状】虚弱体質で精神不安があり、心身ともに疲れて眠れない方に向いています。また、疲れが溜まっているにも関わらず、体が火照って眠れない、寝ても夢ばかり見てしまう場合に有効です。 【効能】不眠の改善によく使われる代表的な漢方薬です。酸棗仁はナツメの原種と考えられていて、精神を安定させる作用があります。服用を継続することで徐々に安眠効果が得られます。 【使われている生薬】酸棗仁、茯苓、川芎、知母、甘草

当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)

【体質、症状】あまり体力がなく、手や足先が冷えて眠れない方に向いています。また、冷えに伴う腰痛や頭痛などの痛みがある場合にも有効です。 【効能】当帰は血を補いながら血行を良くして体を温めます。さらに呉茱萸、生姜で体を温める働きを強化し、全身の冷えを改善する漢方薬です。 【使われている生薬】当帰、桂皮、芍薬、木通、細辛、甘草、大棗、呉茱萸、生姜

帰脾湯(きひとう)

【体質、症状】食欲がなく疲れやすい、胃腸が弱っている方に向いています。眠りが浅く、夢をよく見る、夜中に目が覚めてしまうような睡眠トラブルを抱えている場合に有効です。 【効能】不安感を和らげて心の働きを安定させる作用のある漢方薬です。血を補う当帰や酸棗仁に加え、気を補い胃腸の働きを整える人参や黄耆を含みます。 【使われている生薬】黄耆、酸棗仁、人参、白朮、茯苓、遠志、大棗、当帰、甘草、生姜、木香、竜眼肉

まとめ

薬剤師の先生から漢方について学ぶ「ママのお悩み漢方相談室〜不調な私の取扱説明書〜」。第14回の今回は、不眠の定義や良質な眠りのために大切なこと、不眠に効果がある漢方薬についてお伝えしました。 寝つきが悪い、途中で何度も目が覚める、朝早く目覚めてしまう、ぐっすり眠れない……など、睡眠に関する悩みは多いものです。生活習慣を見直し、専門家に相談するなどして早めに解決しましょう。

(解説:西﨑れいな 先生<KAMPO MANIA>)

※画像はイメージです

参考文献 症状からチャートで選ぶ漢方薬翔泳社 生薬と漢方薬の辞典日本文芸社 まずはこれだけ!漢方薬じほう 漢方薬辞典主婦と生活社

※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、薬剤師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます


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