5人に1人が当てはまる!?「HSP」に共通する4つの特徴|優しくて過敏な心が楽になるためにできること【臨床心理士解説】

更新日:2022年10月23日 / 公開日:2022年10月23日

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「ちょっと気にしすぎ?」「考えすぎじゃない?」と、自分自身や身近な誰かに対して感じることはありませんか。優しくて、よく気が付くのはいいけれど、実は人混みが苦手で疲れやすいといった悩みがある場合、もしかしたら「HSP」の特徴に当てはまっているかもしれません。今回は、近年広く知られるようになったHSPについてお伝えします。

(文:臨床心理士 大岡みほ/うららか相談室

HSPってどんなもの? 病気との違いと抱えるリスク

そもそも、HSPとはどういう人のことを指すのでしょうか。

HSPの定義とは

HSPとは、Highly Sensitive Personの頭文字を並べたものです。とても繊細な人という意味で、アメリカの心理学者、エレイン・ℕ・アーロン博士によって提唱されました。5人に1人が当てはまると考えられており、「繊細さん」という表現で日本でも広まりました。

病気ではなく、心理学的な概念

HSPは心理学的な概念で、医学的診断名ではありません。でも、このところ「自分がHSPではないか」と医師に尋ねる人が増えているそうです。 HSPの特徴は不安神経症や発達障害と似ている部分があるため、その違いについて説明をしてくれたり、相談に応じてくれる医療機関も増えています。

生きづらさで、うつ状態につながることも

様々な場面でとても敏感に反応してしまう為、人によっては生きづらさにつながり、ストレスをためやすいと考えられています。悩みや疲れをあまりにためてしまうと、うつ状態などの二次的な症状へつながる可能性があります。

「HSPの4つの特徴」によって抱えやすい悩みとは?

それでは、HSPの特徴やストレスをためやすい状況について説明をしましょう。アーロン博士によると、HSPの具体的な特徴(DOES;ダズ、4つの特徴)として、以下の4つが挙げられています。

【1】Depth of prosessing(処理の深さ)

1つの刺激に対して、物事をより広く深く理解しようとします。いろいろな可能性に気付き、本質を見抜けるという利点がある一方で、考えすぎて疲れやすかったり、行動になかなか移すことができないかもしれません。

【2】Overstimulated(刺激の受けやすさ)

人が大勢集まっている場所などで、たくさんの刺激にさらされることが苦手です。サプライズで驚かされるような場面でもストレスを感じてしまうことがあるため、たとえ親しい友人と一緒だとしても気疲れしやすいでしょう。ちょっとした一言をいつまでも気にしてしまうなど、人間関係で悩むことも少なくありません。 ————————— 関連記事 ▶︎HSPは「人嫌い」から抜け出せる?繊細で不器用な子供やパートナーにすべき4つのこと【心理カウンセラー解説】

【3】Emotional reactivity and high Empathy(感情的反応と共感力の高さ)

共感を生む働きを司る神経細胞・ミラーニューロンの活動が活発なため、他者の気持ちを察することが得意です。ただ、ニュースや映画などで悲しい場面や残酷な事実を知るなどしたとき、自分のことのように落ち込んでしまう可能性があります。

【4】Sensitivity to Subtleties(些細なことへの気付きやすさ)

音やにおい、感触などを敏感に察知します。小さな変化に気が付けるという点は活かすことができますが、あまりに気になることが多いと集中力の低下や疲労につながってしまうことがあります。

もしかしたらHSP? 可能性を探る23の質問

HSPの特徴を知って「少し当てはまるかな」と思われた方もいらっしゃるでしょう。その程度を確認していただけるチェックテストをご紹介します。当てはまる場合は「YES」、あまり当てはまらない思った場合は「NO」と回答してください。 ————————— 1.周囲の微妙な変化によく気がつくほうだ 2.他人の気分に左右されやすい 3.痛みにとても敏感である 4.忙しい日々が続くと、刺激から逃れられるひとりだけの場所に逃げたくなる 5.コーヒーを飲むとすぐ眠れなくなる 6.明るい光や強い匂い、ざらざらした布地、サイレンの音などに圧倒されやすい 7.想像力が豊かで、空想にふけりやすい 8.騒音に悩まされやすい 9.美術や音楽に深く心動かされる 10.他人に対し、とても良心的である 11.些細なことにもびっくりする 12.短期間にたくさんのことをしなければならなくなると混乱する 13.人が何かで不快な思いをしているとき、その人が何を求めているかすぐに気が付く 14.一度にたくさんのことを頼まれるのは避けたい 15.ミスをしたり、物忘れをしたりしないように常にチェックしている 17.暴力的な表現のある映画やテレビは見ないようにしている 18.空腹になると、集中できないとか気分が悪くなるといった強い反応が起こる 19.生活に変化があると混乱し、慣れるのに時間がかかる 20.デリケートな香りや味、音、音楽を好む 21.動揺するような状況を避けることを普段の生活で最優先している 22.何かをするとき、競争させられたり観察されていたりすると、緊張し、実力を発揮できなくなる 23.子どもの頃、親や教師に「敏感だ」とか「内気だ」といわれていた ————————— YESが12個以上あればHSPの可能性があります。12個以下であっても、その程度がとても強いか、DOESの4つの特徴が当てはまればHSPであると考えられます。

※HSPは医学的根拠や診断基準のある概念ではありません。HSPと自己判断してしまうことは、類似性があるほかの精神疾患や障害などへの対応を見過ごしてしまうリスクがありますので、日常生活に問題を抱えている方は、医療機関の受診も検討することをおすすめします。

自分がHSP|つらさを軽減し、生活しやすくなる3つのコツ

HSPは生まれつきの個性、気質であって病気ではありませんが、その特徴の度合いによっては強いストレスや悩みとなってしまうことがあります。ご自身がHSPの場合に、以下のような点に気を付けて過ごすと良いでしょう。

① 一人の時間を大切にする

HSPの人は多くの場面で刺激を受けやすいので、予定を立てるときにはあらかじめ、一人になれる時間や場所を確保するようにしましょう。しっかりと睡眠と休息をとる必要があります。苦手な場所や人とはあえて距離を置くという選択も、ときには大切になります。

② 刺激から自分を守る

人が多く集まる場所や戸外が苦手でも、どうしても出かけなければいけないこともあるでしょう。そういったときには、ヘッドフォンや耳栓、サングラスなどを使用して受け取る刺激を和らげる工夫をしてみてください。身に付ける衣服や小物も安心できる素材を選ぶようにしましょう。自分に直接関係のない他者の感情や会話の内容に対しては、必要以上に共感しようとせず、「少し素っ気ないくらいでも大丈夫だろう」と考えてみるようにしてください。

③ 自分自身についてきちんと理解する

HSPは、深く物事を理解できる一方で、ストレスには弱いという特徴があります。そういった特徴をふまえて、気にしすぎる性格が悪いといった誤解で自尊心を低めるようなことがないように気を付けてください。場合によっては、HSPであることを周囲に伝えることで過ごしやすくなるでしょう。

身近な人がHPS|楽にしてあげる接し方

では、パートナーや子どもなど、あなたの身近にいる人がHSPだったときにはどうでしょうか。

HSPであることを理解して接する

繊細さゆえに生き辛さを抱えている人は、周囲に正しく理解されることを必要とします。困り事の内容や訴えが不安神経症や発達障害の症状と似ていて区別が難しいときには、念のため医療機関に相談することも視野に入れましょう。医学的診断がつかずHSPの可能性がある場合には、その特性についてまず理解を深めてください。

性格や努力不足のせいにしない

HSPは生まれもった気質であるため、本人の頑張りや意志の強さでどうにかできることではありません。繊細であることを本人の性格や考え方のせいだとして、我慢させたり変えさせたりするのは適切ではありません。苦手な状況や強すぎる刺激からは離れることと、安心できる一人の時間や休息が必要であることを前提として接するようにしましょう。

利点、長所としてみる

HSPの人は繊細で疲れやすく、対人関係においてもストレスをためがちですが、一方では慎重で責任感が強く、誠実で他者に対して優しいところがあり、それは長所としてとらえることができます。また、想像力が豊かで物事を深く理解しようとすることも、無駄であるとか考えすぎであると決めつけないようにしてください。芸術作品に親しみ思索を深めることや、一人の時間を有意義に過ごしたいという意志が尊重されることで本人のストレスが軽減されるでしょう。

HSPの特徴を持つお子さんのことをHSC(Highly Sensitive Child)といいます。その特徴はHSPと同じで刺激に敏感なので、幼児であればよく泣いたり、集団生活が苦手だったりして大人が心配になることがあるでしょう。でも感受性が豊かで物事をよく理解できる力を持っています。そのお子さんらしさとして認め、自尊心を低めないように接することが大切になります。 ————————— HSCについては以下の記事をご参照ください。 ▶︎HSCは繊細な子供のこと?4つの特徴と23のチェックリスト【心理カウンセラー解説】

まとめ

ありのままの気質や個性を否定されることはどんな人にとっても辛く、自己肯定感が下がるきっかけになりますが、もともと繊細なHSPの人は特に生き辛さやストレスを抱えがちです。物事を深く感じ取り、他者への気遣いができるといった長所もたくさん持っていますので、そういった個性を活かして過ごせるよう、本人も周囲もHSPについて正しく理解し、尊重していく姿勢が大切ですね。

(文:うららか相談室 大岡みほ/構成:マイナビ子育て編集部)

※写真はイメージです

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この記事の執筆者 臨床心理士・公認心理師 大岡みほ 先生

臨床心理学系大学院を卒業後、精神科・心療内科の心理相談室常勤心理士となる。その後、小・中・高校、教育相談所などで心理相談に携わり、本人と家族のセラピーだけでなく、関係機関や地域との連携も経験する。一男一女の母。 現在、うららか相談室にてビデオ・電話によるオンラインカウンセリングを受付中。 ■大岡みほ先生への相談

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参考文献 エレイン・ℕ・アーロン、富田香里(翻訳)、『ささいなことにもすぐに「動揺」してしまうあなたへ。』SBクリエイティブ、2008 高田明和、『脳科学医が教える他人に敏感すぎる人がラクに生きる方法』幻冬舎、2017 イルセ・サン、『鈍感な世界に生きる敏感な人たち』ディスカヴァー・トゥエンティワン、2016 高田明和, 2020, 12個以上当てはまったら“超過敏”。HSP自己診断テスト, 幻冬舎plus|自分サイズが見つかる進化系ライフマガジン

※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、専門家の監修を経た上で掲載しました

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