SNSで相次ぐ子どもへの自殺ほう助事件、親が見逃してはいけないサインとは? #親と子のネットリテラシー入門

更新日:2022年11月3日 / 公開日:2022年11月3日

ここ数年で、子どもを取り巻くデジタル環境は劇的に変化。私たち親世代は、子どものデジタル機器の付き合い方や、ITリテラシーの教え方にどう向き合ったらよいのでしょうか? ITジャーナリスト・スマホ安全アドバイザーとして活躍し、自身も二児の母である鈴木朋子さんに教えてもらいます。

執筆者プロフィール 鈴木朋子さん ITジャーナリスト・スマホ安全アドバイザー スマホやSNSなど、身近なITサービス全般に関する記事を執筆。なかでもSNSに関しては、コンシューマーからビジネスまで広く取材を行い、最新トレンドを知るジャーナリストとして定評がある。また、安全なIT活用をサポートするスマホ安全アドバイザーとして記事執筆や講演も行う。 著書は『親が知らない子どものスマホ』(日経BP)、『親子で学ぶ スマホとネットを安心に使う本』(技術評論社)、『インターネットサバイバル 全3巻』(日本図書センター)など。

SNSに救いを求める若い世代

先日、SNSで出会った人に自殺を手助けされて死亡した事件が立て続けに発生しました。小樽市の大学生がTwitterで出会った53才の男に殺害された事件、横浜市の中学生がTwitterで出会った28才の男に山中に連れていかれ、自殺を手助けされた事件です。

どちらの事件とも、容疑者はTwitterで「殺してほしい」などのツイートをしているアカウントを探し、被害者に接触したと報道されています。

自殺願望を抱えている人にSNSで接触した事件としては、座間市で15才~26才の男女9人が殺害された事件がありました。犯人は自殺願望を投稿している人にメッセージを送り、実際に会う約束を取り付けていました。殺害されるまでに犯人と100回以上連絡を取っていた被害者もいたそうです。

SNSとともに育ってきた若い世代は特に、つらいときや悩みを抱えているとき、SNSに思いをつづることで心が救われることもあります。親や学校、同級生には言えない悩みも、匿名でも書けるネット空間なら吐き出せます。

とはいえ、「死にたい」と書いていても、それぐらいの気持ちを持っているとの表現に過ぎず、実際には救いを求めているケースもあるでしょう。そんなときに、自分の話をよく聞いてくれて、共感してくれる人と知り合ったら、実際に会いに行ってしまうかもしれません。そして事件が起きてしまうのです。

長期休業明けに増加する自殺者数

文部科学省が令和4年(2022年)4年2月に発表した調査「児童生徒の自殺対策について」によると、18歳以下の自殺は、学校の長期休業明けにかけて増加する傾向があるとのこと。しかし、グラフを見ると令和2年、3年とも11月にも増加しています。令和2年の児童生徒の自殺者数は499人と、前年と比較して大きく増加しており、特に女子中高生の自殺者数が増加しています。

児童生徒の月別自殺者数[推移]1/文部科学省調べ(令和4年2月24日)

また自殺の原因は、令和2年では1位が「その他進路に関する悩み」(入試に関する悩みをのぞく)、2位が「学業不振」、3位が「親子関係の不和」となっています。

令和元年(平成31年)及び令和2年における児童生徒の自殺の原因・動機別表①(厚生労働省・警察庁)~原因・動機数における上位10項目~/文部科学省調べ(令和4年2月24日)

自殺の原因は複合的な要素があるため分析は難しいのですが、令和2年(2020年)1月に国内初の新型コロナウイルスの感染が確認され、緊急事態宣言が出された4月ころには子どもたちの学校生活も激変。家庭での不和も大きな問題になったと考えられます。当時のSNSを思い返すと、デマが飛び交い、政治や大人に対する不満を述べている中高生がたくさんいました。

子どもにとって、学校は一日のほとんどを過ごす大事な場所です。トラブルが起きたとき、ほかに逃げ場はないと感じてしまいます。しかも、今はSNSで24時間、学校の友人の動向を見ることができ、いつでも連絡を取り合えます。家にいても、安らげるわけではないのです。そして、子どもは親には心配をかけたくありません。

そんなとき、学校や家庭とは異なる世界の人が助けてくれそうになったら、すがってしまうのも無理はないでしょう。ネットリテラシー教育やプログラミング教育を中心としたICT・IoT関連サービス事業を展開する教育ネットが2022年4月に発表した「ネット利用における実態調査」では、「インターネットで知り合った人がいる」と回答した児童生徒の割合は年々増加傾向にあり、「インターネットで知り合った人に実際に会いに行ったことがある」と回答した児童生徒は全体で2.4%(2021年度)だったとのこと。会いに行く人は少数派ですが、ネット経由での出会いは増えています。

ネットでの出会い/出所:教育ネット

SNSの自殺予防への取り組み

自殺ほう助する人や自殺願望がある人に対して、各SNSは放置しているわけではありません。

Twitterは、2018年から自傷・自殺行為に関連したコンテンツを機械が検知する仕組みを導入しています。危険性が認められた場合、Twitterはそのユーザーに対して連絡を取り、支援機関に関する情報を提供するなどのサポートを行っています。自殺ほう助に関しては、自傷行為や自殺を教唆するよう依頼するなど、Twitterのポリシーに違反したアカウントを凍結するなどの対策を行っています。2021年上半期には、全世界で34万5,100件のアカウントを凍結、削除したと報告しています。

また、自殺に関連するキーワードを検索した場合、検索結果よりも上部に相談窓口を表示します。これは、Facebook、Instagram、LINEも同様の対策をしています。

自殺に関連するキーワードに相談先を表示するTwitter

さらに、全国の警察も「家出したい」「泊めてください」などのツイートを見つけると、「大変危険な行為です」といった警告のツイートをリプライすることで、危ない出会いを防ぐ対策を行っています。

しかし、こうした取り組みが行われていても、事件が起きてしまいます。保護者として、子どもにできることはなんでしょうか。

悩みを抱える子どもに対して、保護者ができること

子どもが悩みを抱えているとき、「親には心配をかけたくない」と黙っていることがあります。そこで、保護者側から自殺のサインを見逃さないようにしておきたいものです。

文部科学省の「教師が知っておきたい子どもの自殺予防」に、自殺のサインと対応が掲載されています。

サインの一部を抜粋しますと、「これまでに関心のあった事柄に対して興味を失う」「成績が急に落ちる」「健康や自己管理がおろそかになる」などがあります。

自殺直前のサイン/出所:文部科学省

こんな様子がうかがわれたら、「TALKの原則」に沿って対応すべきだと述べられています。

T(Tell)……言葉に出して心配していることを伝える A(Ask)……「死にたい」という気持ちについて、率直に尋ねる L(Listen)……絶望的な気持ちを傾聴する K(Keep safe)……安全を確保する

安易に励ましたり、叱ったりせず話をじっくり聞いてあげることが大切です。

もし保護者には言いにくいようなそぶりがあったら、相談先を教えることもひとつの方法です。厚生労働省の「まもろうよこころ」には、電話やSNSで相談できる窓口が多数紹介されています。専門家である第三者に話を聞いてもらうことで、心が落ち着くかもしれません。

また、SNSで自殺を手助けするような人と出会わないようにする対策も必要です。しかし、スマホを取り上げたり、SNSを禁止することは、場合によっては事態を悪化させるかもしれません。その理由は、スマホやSNSが心の救いとなっているかもしれないからです。そこで、どんなに仲良くなった人でも、実際に会いに行かないことを改めて約束してください。どうしても会いたいというのであれば、保護者も一緒に、人目が多い場所で会うようにしましょう。

まとめ

コロナ禍で学校行事が変更、または中止に追い込まれ、部活動もままならず、気分がふさいでいた子どもは多いと思います。ようやくウィズコロナの体制が整ってきましたが、以前の日常は戻っていません。夕飯時などのリラックスしているときに悩みを話し合い、こまめに発散できるような環境を作ってあげたいですね。私もこれまで以上に我が子のケアに注力していきたいと思っています。

(文:鈴木朋子、編集:マイナビ子育て編集部)

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