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「子供がうるさい」という通報が増えている。子連れ批判する人たちに、小児科医が知ってほしいこと

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目次

近年、公共交通機関などでさえ子供が迷惑がられたり、うるさがられることがあります。「子供の特徴や発達がよく知られていないせいかも」と言う森戸先生に、どういうことなのか詳しく聞きました。

「子供がうるさい」という通報が増えている

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(※画像はイメージです/PhotoAC)

少し前に小さなお子さんを連れて新幹線に乗った方が、隣の席の人に「はぁーー最悪」「ハズレだ」と言われたというニュースがあり、とても悲しい気持ちになりました。こうしたニュースは常に繰り返し、SNSなどでも流れてきます。

「子供はうるさい」「子供が小さいうちは親も外出を控えるべき」「子供が少しでも泣いたりぐずったりしたら親は申し訳なさそうにしないと」「子供が静かにするようしつけて」「子供をあやし続けるべき」「ベビーカーは邪魔」「保育施設は迷惑だ」……、ごく一部の人でしょうが、本当に驚くようなことを言う人たちがいます。

私は東京都医師会の乳幼児保健委員会で委員を務めていますが、子ども家庭支援センターあてに「子供の泣き声がうるさい」という通報が増えたと聞きました。詳しく話を聞くと、ほんの10分ほど泣き声が聞こえただけで異常だと考え、通報する人がいるのです。コロナ禍で在宅勤務が増え、また窓を開けて換気する機会も増えているからかもしれません。

近年、日本には少子化の原因の一つではないかと思うほど親子に厳しい風潮がありますが、そういう厳しい風潮ができた背景には、少子化が進んで身近に乳幼児がいない人も多いせいで子供に慣れていなかったり、その成長や発達が知られていないという理由もありそうです。

だから本当は、子供のことをもっと多くの人に知ってもらいたいなと思います。まず、子供はよく泣きます。我が子が誕生してから、あまりに頻繁に泣くことに驚いた人も多いと思いますが、特に赤ちゃんは全てのサインを泣くことで伝えるためです。まだ言葉がうまく使えない幼児も泣くことが多いでしょう。

あやすことが逆効果な時もある

子供は、おなかが減っては泣き、おむつが汚れては泣き、暑かったり寒かったりすれば泣き、寝付けなければ泣き、意思が伝えられければ泣き、体調が悪ければ泣きます。そして、時には理由がなくても泣きます。そして親でも泣く理由の全てを特定はできませんし、小さな子を泣かないようにしつけることもできません。

ある研究によると、生後8日以内の新生児が1日の中で泣いている時間を合計すると、50例の平均は117分で、最長は243分、最短は48分だったそうです[*1]。個人差がありますが、以前の記事でも伝えたように、親も人間ですから長時間ずっとあやし続けることはできません。

さらに親があやしても、必ず泣き止むとは限りません。眠くてぐずっている時にかまうと、目が覚めてより激しく泣いてしまうことも。親が疲れて限界だったり腰を痛めていたり、抱っこもできない状況だったりすると、声をかけたり、あやすことで余計に泣く恐れがあるため、あえてそっとしておくこともあります。

こうした事実が広く知られていないことが「赤ちゃんが泣いているのに親が放置している」と言われることに繋がるのでしょう。しかし、そうした批判を避けるためにパフォーマンスとしてあやすのは大変すぎます。

じつは厚生労働省のYouTubeチャンネルにUPされている「赤ちゃんが泣きやまない~泣きへの対処と理解のために~」という動画のなかでも、赤ちゃんは理由なく泣いてしまう、どうにもできない時もあるという話が出てきます。やはり親でも専門家でも、どうしようもできないのです。だから、親を責めるのは酷ですね。ずっと申し訳なさそうにしておくのを求めるのもおかしいでしょう。

そもそも赤ちゃんが泣き止まなくて困っていて、もっとも疲れているのは、ずっと一緒にいる親です。泣き止ませたいと思うあまりに強く揺すってしまい、赤ちゃんの脳に傷害を与える「乳児揺さぶられ症候群」に繋がった事例もあります。下の動画でも、カッとして子供を揺すぶらないよう、無理をしないでいいと親に伝えています。

子供は少しずつマナーを習得する

そのほか、赤ちゃんでなくても、子供がいきなり全てのマナーやルールを実践できるわけがありません。幼児期からは少しずつしつけをしていくことになりますが、何度も何度も繰り返し注意を受け、大人に教えてもらうなかでマナーを習得していくものです。

かといって、親子に厳しい一部の人たちのように「子供が小さいうちは家にいろ」と言われても、当たり前のことですが親だって社会生活を営んでいて買い物などの用事もありますし、他の人と同様に好きなところに行ったりと普通の生活を送る権利があります。

そもそも、子供もかけがえのない社会の一員です。社会で生きていく以上、子供とも無関係ではいられません。自分が苦手だからと排除することはできないのです。そして誰もが子供だったことがあり、多かれ少なかれ誰かに迷惑をかけ、許容してもらって大人になったはず。日本社会が、もう少し親子にやさしくなるといいなといつも思います。

そして、小さいお子さんをお持ちの方々、子育てをしていると大変なことは次々にやってくるし、いつの間にか1日が終わりますね。子供が生まれてからなんとなく肩身が狭い思いを思いをしている方も多いと思います。そういった厳しい子育ての中、周囲の人が助けてくれたり、思いがけない配慮をされたりすると、本当に助かるし救われた気持ちになるでしょう。でも人は驚いたり、慌てていたりすると、お礼を言い損ねることがあります。

子供にも自己責任を求めるような冷たい社会に見えても、思いがけず助けてくれる人がいたら、すかさず感謝の気持ちを伝えましょう。親切にしてくれたご本人にはお礼しか言えなくても、恩送りという方法がありますね。別の困っている人に親切にすることで、優しさの連鎖がつながって、誰にとっても生活しやすい社会になるといいなと思います。

(聞き手・構成:大西まお)

[*1] Aldrich CA et al. J Pediatr.1945 27:P428-435

お話をお聞きしたドクター 小児科専門医/どうかん山こどもクリニック院長 森戸やすみ 先生 一般小児科、NICU(新生児特定集中治療室)などを経て、現在は東京都谷中のどうかん山こどもクリニック院長。医療者と非医療者の架け橋となる記事や本の発表に意欲的に取り組んでいる。『子育てはだいたいで大丈夫 小児科医ママが今伝えたいこと! 』(内外出版社)、『祖父母手帳』(日本文芸社)など著書、監修多数。 どうかん山こどもクリニック Twitter

「森戸やすみ 先生」記事一覧はこちら⇒

この記事の執筆者 大西まお 編集者・ライター。出版社にて雑誌・PR誌・書籍の編集をしたのち、独立。現在は、WEB記事のライティングおよび編集、書籍の編集をしている。主な担当書に、森戸やすみ 著『小児科医ママの「育児の不安」解決BOOK』、名取宏 著『「ニセ医学」に騙されないために』など。特に子育て、教育、医療、エッセイなどの分野に関心がある。 ■Twitter


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この記事の著者

マイナビウーマン子育て

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