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「こんなおしゃれな部屋で暮らしたい!」と感じさせる、<500万円未満部門>の最優秀賞を受賞した冒頭のお部屋。『「ただいま」より、「いらっしゃい」が似合うカフェ部屋ライフ。』というコンセプトからも分かるように、カフェのくつろぎ空間を意識した部屋づくりが特徴です。どんな経緯でこの部屋が誕生し、どんな思いでつくられたのかを探ってきました。【連載】リノベオブザイヤー受賞の素敵リノベ実例
中古物件を現代のライフスタイル、好みのデザインや機能に合わせて改修する「リノベーション」。この連載では『リノベーション・オブ・ザ・イヤー2016』の受賞物件のなかから4つの実例を紹介。リノベーションに至るまでの背景、想い、こだわりポイントなどを施主のみなさんに取材してきました。リノベーションデータ
・種別:賃貸マンション(ワンルーム)
・物件名:iCafe 020 新宿
・家賃:12万4000円(管理費:1万1000円)
・所在地:東京都新宿区
・築年:1998年10月(築19年)
・構造:鉄筋コンクリート造
・面積:33.47m2(バルコニー:4.20m2)
・工期:50日
・費用:420万円(税込)賃貸マンションがカフェのようなくつろぎ空間に変身
「これ、賃貸マンションなの?こんな部屋に暮らしたい!」と思わずうなってしまう個性的空間。
『「ただいま」より、「いらっしゃい」が似合うカフェ部屋ライフ。』は、審査で「トレンド的な素材遣いに度胸の良さを感じた」「完成度の高さがある」「洗練された賃貸としてやりきった感があって、好印象」と高く評価され、500万円未満部門別の最優秀賞を受賞した作品です。
特徴は、木製キッチンカウンター、むく材の床、打放しコンクリートの天井と梁(はり)といった素材遣い。ヴィンテージ感や温かみのある表情を楽しめる空間です。
都心にある広さ約34m2の賃貸マンション。浴室と洗面&トイレ以外は、玄関を含めて10.4畳のワンルームになっています。くつろげるカフェのような温かみを感じさせる空間だから、人を招きたくなる。そんなコンセプトの部屋で、おしゃれなリノベーション賃貸マンションとして人気だそうです。
「おしゃれな部屋で自分らしい暮らしをしたい」というニーズを形にこの部屋をリノベーションしたのはREISM(リズム)株式会社。「中古不動産を永く使えて価値のあるものに作り上げる」という使命のもと、都心を中心としたエリアで、賃貸マンションのリノベーション企画設計や売買、コンサルティング、管理運営を行っている企業です。
この部屋をプロデュースしているREISMの挽地(ひきち)裕介さんに、“カフェ部屋”が誕生した経緯を伺いました。
「弊社は都心や都心近くの好立地にあるワンルームの中古マンションを購入し、リノベーションで新たな価値を付加した上で再販、入居者募集などの管理業務を行っています。この部屋もそうして誕生したもののひとつ。世の中には、『おしゃれな部屋に住みたい』『自分らしい暮らしがしたい』というニーズがあり、私たちはそれに応える形で、心地よく個性的な空間を生み出しています」と挽地さん。
確かに、賃貸マンションといえば白いクロス張りの壁に新建材のフローリングという、没個性的な部屋が一般的。賃貸業界では無難な内装のほうが貸しやすいという認識があるため、個性的なインテリアの賃貸物件を見かける機会が少ない状況にあります。その分、「賃貸でも、個性的で素敵な空間に住みたい」と考える人は潜在的に多くいるのだと思います。
「この“カフェ部屋”のコンセプトは、その名のとおり、カフェっぽくしようという何となくのイメージが出発点。実は、『iCafe(アイカフェ)』という名称で6年ほど前からシリーズ化していて、同じコンセプトの部屋が現在19室あり、弊社が管理する物件のなかで一番人気の高いシリーズとなっています」
「カフェライクにするためにこだわったのは、やはり素材ですね。木の温かみとコンクリートの無骨さの対比が、空間に奥行きとヴィンテージ感を与えています。床やキッチンカウンターに用いた木材はかつて工事現場で使われていたオールド足場板をリユースしたもので、古材ならではの温かみや存在感が際立っています」
最近は、足場板を内装材や造作家具、置き家具へ活用することが注目されています。足場板を洗ってサンディング(やすりをかけてなめらかにする)加工や塗装を施すことで味のある木材に生まれ変わるのです。REISMでも積極的に活用しているそう。余談ですが、筆者もオールド足場板でベンチを4台オーダーして寝室、洗面室、玄関で使っています。若干の欠け、反りや割れ、釘穴等があっても気にならない人には、古びた雰囲気を楽しめる素材です。
「木製カウンターキッチンはカフェ部屋の雰囲気を生む重要なアイテムです。システムキッチンのような既製品は使わず、足場板を用いてカウンターを造作し、ユーズド感を高めました。玄関を開けると、カウンターキッチンが真っ先に目の前に飛び込んできて、暮らす人も招かれる友人も、そこで一気にカフェのようなくつろぎ感ある雰囲気に包まれるというわけです」
「リノベーションに当たって気を配った点は、約34m2という限られた空間にうまくキッチンカウンターを配置すること。 “カフェ部屋”の印象を高める玄関の真ん前に、効率的なコの字型で据えることができました。水まわり空間は配管を移動するとコストがかさむので、排水の傾斜がとれる範囲内で収めています」
「さらに気を使ったのが足場板。むく材は空気中の湿気の吸収・放出によって伸縮する特性があるのですが、床に使う際には縮小時に隙間があまり空かないよう、木の反りも少なくなるように工夫して張っています。木のキッチンはぬれるとシミになるので、防水も心がけています」
「リノベでここまで個性的な空間にできるんだ!」「iCafe」シリーズ以外に人気なのは、料理が好きな人向けの「Kitchen」シリーズや、壁一面に木製本棚を造り付けた「Hondana」シリーズだそう。入居者が自分でリノベーションできるわけではありませんが、『iCafe』を含め、コンセプトの異なる部屋タイプが30シリーズもあるので、自分らしく暮らせるこだわりの部屋が見つかるかもしれません。
そして、入居中の部屋でも入居予約が可能で、一番人気の部屋は最高70人待ちという状況になったこともあるとか。
以前は他業界で仕事をしていたという挽地さんですが、「初めてリノベーションに出合ったとき、『ここまで個性的な空間に変えることができるんだ!』と感動しました。私の友人も部屋に案内すると、『何この部屋!凄い!』と驚いていました。そうした『ここまでできる』という思いを、さまざまなタイプの空間という形にすることで、お客様に伝えていきたいですね」と思いを語ります。
そうした思いは徐々に広まり、「リノベで魅力的な部屋に変わったことで、相場の1〜2割ほど高い家賃でも、ありがたいことに入居希望者が絶えない状況となっています。普通の部屋探しではエリアや家賃を決めて、部屋の広さなどの条件を見て探しますが、弊社のお客様は、『そこで自分らしい暮らしが送れるか』という観点で部屋を決めるので、希望エリア外でも『この部屋だから住みたい』と入居を決める方が多く、入居後、長く住んでいただいています」
今回、このお部屋に住んでいる方には直接お話を伺うことはできませんでしたが、他の「iCafe」入居者がどんな“カフェ部屋ライフ”を送っているのか、挽地さんに聞いてみました。
「『iCafe』シリーズで暮らしている方には、部屋の“住みこなし力”が高いなあと感じる方が多く、インテリアや収納などを独自の視点で工夫されているのを拝見すると、とても刺激を受けます」
「良いコーヒーメーカーを持っているとか、ワインセラーを家に置いているとか、趣味にこだわりをお持ちの方や丁寧に暮らしている方が多いですね。友人が多く、ホームパーティーを頻繁に開いているという話もよく聞きますよ。入居者どうしの懇親会も定期的に行っていて、そこで仲良くなって新たな交流の輪が広がることを楽しんでいただいています」
「iCafe」シリーズをはじめ30シリーズの詳細をREISMのサイトで見てみると、多彩なコンセプトの空間ばかりでとてもワクワクします。「賃貸だからDIYできない。でも思い切り自分らしい空間に住みたい」「カフェのようなまったり空間でゆったり暮らしたい」。そんな希望や憧れをリノベがかなえてくれているのです。
今回、“カフェ部屋”ができた経緯を伺って、住まいの選択肢や可能性がどんどん豊かになっていることに、心強く感じました。
この記事のライター
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