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閉店する喫茶店の家具と想いを次の使い手へと届ける「村田商會」の挑戦

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当記事はSUUMOジャーナルの提供記事です

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閉店する喫茶店の家具と想いを次の使い手へと届ける「村田商會」の挑戦

赤いベルベットの椅子、カーブを描いた脚のテーブル、レトロなロゴ入りのグラスやあめ色に変わったコーヒーミル。村田商會が販売する古い家具や喫茶道具は、すべてが閉店するという喫茶店から引き取ってきたもの。この仕事を始めた経緯や想いを、2018年12月8日にオープンしたばかりの実店舗で話を聞いた。
ウェブショップから実店舗へ

西荻窪駅から歩いて5分ほど、喫茶店「POT」があった場所。ここが、それまでネット販売で営業していた村田商會の実店舗となる。オープンに向けて準備中だという店内は、以前の喫茶店の雰囲気を残しながらも、客席だったところには椅子やテーブルが所狭しと積まれている。
「これらが商品なんです。もともと喫茶店で使われていた家具や道具、雑貨などを引き取り、手入れをしてから販売しています」と話すのは村田商會の店主である村田龍一さんだ。

喫茶店としても営業するべく、準備中(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

喫茶店としても営業するべく、準備中(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

大好きな喫茶店の家具や想いを受け継ぐ

村田さんが自身の店を立ち上げたのは2015年。それまで勤めていた会社を辞めてのことだった。
「学生のころから純喫茶が好きで、よくいろいろなお店に行っていました。古いお店の内装、雰囲気、マスターやママさんと話す時間が好きで喫茶店巡りをするようになって。社会人になってからも続いていたんですが、それまで何度か足を運んでいた喫茶店に閉店のお知らせの紙が貼ってあったんです。マスターに話を聞いているうちに、家具を捨ててしまうという話が出て、もったいないなと思って1セットくださいとお願いしたんです。そのテーブルと椅子は、今でもうちで使っています」

自身が好きだった喫茶店のテーブルと椅子を自宅で使用している。譲ってもらってから10年以上たった今も現役。「この家具があることで、今でもお店のことを思い出したりして、愛着も増しています」(写真提供/村田龍一さん)

自身が好きだった喫茶店のテーブルと椅子を自宅で使用している。譲ってもらってから10年以上たった今も現役。「この家具があることで、今でもお店のことを思い出したりして、愛着も増しています」(写真提供/村田龍一さん)

そこで、村田さんは自分と同じように純喫茶が好きで、そこで使われている家具を欲しいと思う人がほかにもいるのではないかと考える。お店もしかり。閉店してしまうが、家具を捨てるのはもったいないと思う人もいるのではないか、と。
「純喫茶の家具って、欲しいと思って探してもなかなか見つからないんです。アンティークとも、中古家具とも違う。使い込まれてきた風合いがあって、さらにお店の雰囲気をもっているものだから。閉店するお店そのものは残せなくても、家具なら残せるし、仕事にしてみよう、と始めました」

現在はネットだけでなく、イベントにも出店し、家具だけでなく、喫茶小物や道具なども販売している(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

現在はネットだけでなく、イベントにも出店し、家具だけでなく、喫茶小物や道具なども販売している(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

閉店を望んでいるわけではないからこその葛藤

かくして村田商會がスタートする。閉店する喫茶店の情報は、実際に自分の足で探すこともあれば、周りから教えてもらったり、ネットで仕入れたりすることもある。村田さんは必ずお店へ出向き、話をするという。閉店することを決めた店主に話をするのは、かなり気使うことなのではないだろうか?
「それまで自分が通っていたお店だったら、話はしやすいんです。でも、行ったことのないお店だと確かに難しい。混んでいない時間帯に行って、コーヒーを飲んだり、ご飯を食べたりして、お店の雰囲気を伺って、話すタイミングを見計らって、やっと切り出す感じです」
閉店を決めた店主の気持ちがどのようなものか想像し、お客さんとの関係もきちんと汲み取ったうえで買い取りの話をもちかける。友人の紹介があれば信用してもらえるが、よく分からない営業だと思われたこともあったという。
「そりゃ怪しいですよ、僕が逆の立場だったら、なんだ?って思います(笑)。信用してもらえても、高い金額で買い取ることができないので、折り合わないこともあるし、すべてがうまくいくわけではないんです」。それに、とちょっと顔を曇らせて続ける。
「ものすごいジレンマがあって。僕は閉店を望んでいるわけではないんです。喫茶店は一軒でも多く残ってほしいし、続けられるなら続けてほしいから。矛盾というか葛藤というか、複雑な気持ちはいつもあります。

喫茶店ならではのおもしろい雑貨も。これは「かうひい異名熟字一覧」で、さまざまな文献に掲載されたコーヒーの別名を紹介している。非売品。小岩にあった喫茶店「らむぷ」で使われていたもの。(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

喫茶店ならではのおもしろい雑貨も。これは「かうひい異名熟字一覧」で、さまざまな文献に掲載されたコーヒーの別名を紹介している。非売品。小岩にあった喫茶店「らむぷ」で使われていたもの(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

「瓦版」の文字がくりぬかれた板も喫茶店「らむぷ」で使われていたもの。当時はお店からの案内を貼るためのものだったのだろうか。村田商會の実店舗で使う予定だそう(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

「瓦版」の文字がくりぬかれた板も喫茶店「らむぷ」で使われていたもの。当時はお店からの案内を貼るためのものだったのだろうか。村田商會の実店舗で使う予定だそう(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

家具を残すことで、お店の雰囲気を少しでも受け継ぎたい。なくなってしまう喫茶店のことが好きで、家具だけでも欲しいというお客さんもいます。僕自身がそうであったように、喫茶店を好きだという人が、自宅でも楽しめたらいいなと思ってのことなんです」

家庭でも使いやすいよう、丁寧にリペア

仕事は村田さんが一人ですべて行っている。喫茶店店主とのやりとり、買い取る家具の査定、運び出して倉庫に入れ、一つ一つ状態をチェックし、修理をして、写真を撮ってネットに掲載して販売し、発送する。書き出すだけでも膨大な仕事量だ。力仕事なのはいうまでもない。
「買い取る前にチェックはするんですが、照明の暗いお店だったりすると、外に運び出すときに初めて『あれ?』と気付くこともあるんです。ちょっと破れていたり、さびがひどかったり、いろいろです。喫煙可能なお店が多いので、ニオイも気になりますし、ヤニが付いているものもあります。それをすべてリペアしてから販売するので、手間も時間もかかるんです」

東大宮にあった喫茶店「ひまつぶし」の椅子。スポンジがすり減り、生地が擦り切れていた(左)。きれいに張り替え、きちんと使える状態に生まれ変わった(右)。手が触れる場所だからと裏地もしっかり張り替えている(写真提供/村田龍一さん)

東大宮にあった喫茶店「ひまつぶし」の椅子。スポンジがすり減り、生地が擦り切れていた(左)。きれいに張り替え、きちんと使える状態に生まれ変わった(右)。手が触れる場所だからと裏地もしっかり張り替えている(写真提供/村田龍一さん)

リペアの技術は知り合いに教えてもらったり、調べたりして身につけた。自宅でも問題なく使えるように、さび止め加工をしてペイントすることもあれば、生地の貼り直しやぐらつきの修正などもある。家具以外のものも加われば、細かな調理道具などの整理も必要だ。

ただ売るだけじゃなく、喫茶店の空気感も伝えたい

「以前、キャバレーの家具を買い取ったことがあるんです。やっぱりタバコの匂いやお酒のシミも残っていてリペアは必要でした。買ってくれたお客さんのなかに、お父様がそのキャバレーに通っていたから、サプライズでプレゼントしたいという方がいて。その話を聞いたときはうれしかったですね」
自分たちで喫茶店を始めたいと家具や小物を買っていくお客さんもいるという。

ただ単に売っているだけではない。村田商會のホームページには、その家具を使っていたお店について伝えるページがある。どんな歴史があり、どんな雰囲気でどんなお客さんが来ていたのか。閉店前のお店の写真まで掲載している。
「家具を売るだけじゃなく、お店のことをきちんと伝えていきたいと思って。受け継ぐ気持ちでやっています」

今年の夏に閉店した喫茶店「POT」。村田さんが内装や家具もそのまま引き継いで残している(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

今年の夏に閉店した喫茶店「POT」。村田さんが内装や家具もそのまま引き継いで残している(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

2018年8月営業当時のPOTの店内。記事トップの写真にある赤いポットは、もともとの喫茶店「POT」の象徴的なアイテムで、こちらも商品になる(家具(椅子・テーブル)は販売対象外)(写真提供/村田龍一さん)

2018年8月営業当時のPOTの店内。記事トップの写真にある赤いポットは、もともとの喫茶店「POT」の象徴的なアイテムで、こちらも商品になる(家具(椅子・テーブル)は販売対象外)(写真提供/村田龍一さん)

そうして、ネット販売を続け、実店舗のオープンにつながった。
「『POT』も好きなお店で、ちょこちょこ来ていたんです。閉店すると聞いてご主人と話をするうちに、家具を買い取るのではなく、この場所を受け継ごうと決心しました。ちょうどお店を持ちたと思い始めた時期でもあったので、ありがたかったです」

実店舗なら、たくさんの喫茶店で使われてきた家具を販売しながら、それぞれのお店のことをお客さんに直接話をして伝えていくことができる。
「今はまだ準備中ですが、ゆくゆくはここも喫茶店としてオープンする予定です。もともとの『POT』さんで使われていた家具や道具は残してあるのでそれをきちんと戻して、昔から通っていたお客さんにも楽しんでもらえるように」

形を変えても残るものがある。楽しめるものがある。喫茶店を営む人、楽しむお客さんへ向けた、村田さんの愛情はここからさらに広がっていくだろう。

12月8日にオープンし、家具や雑貨を販売している(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

12月8日にオープンし、家具や雑貨を販売している(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

●店舗情報
村田商會 西荻窪店
東京都杉並区西荻北3-22-17
2018年12月8日オープン(喫茶店の営業は2019年から予定)
12月中の営業時間 12:00~18:00【不定休】 住まいに関するコラムをもっと読む SUUMOジャーナル

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