外国人移住で地価上昇。夏と冬で2つの顔をもつニセコの最新リゾート事情

更新日:2017年6月1日 / 公開日:2017年6月1日

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札幌、小樽、石狩、美瑛、富良野…、広大な北海道には多くの観光地があるが、なかでもリゾート地として異彩を放つのがニセコエリア。というのは外国からの移住者が多く、冬場のスキー場では日本人を探すのがむずかしいほどという。今、ニセコで何が起こっているのか、日本人はどう楽しんでいるのか? 夏と冬で違う顔をもつニセコをご紹介しよう。
ニセコエリアは年々地価公示が値上がり中

2016年に標準地の地価公示値上がり率が19.7%で全国1位(国土交通省調べ)になり、その後も上昇が続いている町が北海道にある。札幌の市街地ではなく、札幌から車で約2時間(約100km)ほどに位置し、秀麗な羊蹄山(ようていざん)を眺める虻田郡(あぶたぐん)倶知安町(くっちゃんちょう)だ。住宅地の1m2単価が6500円(2014年)、7100円(2015年)、8500円(2016年)と年々上昇。2017年も住宅地が5.0%上昇(前年は7.6%)。これは2030年をめざして北海道新幹線の延伸が予定されているからかと思いきや、それが要因ではない。昨今、ニュースなどで取りざたされている外国人のリゾート需要が大きく影響しているという。

もともと倶知安町は人口1万5000人くらいの小さな町。バケーションでスキーリゾートに訪れたオーストラリア人がパウダースノーの雪質を気に入ったことがきっかけになり、次第に富裕層の間で人気に。倶知安町役場の統計資料によると外国人が住み始めたのは2003年ごろからで、当時49世帯60人が住民登録をしている。リーマンショックで少し落ちたものの、その後回復。2017年2月時点では1400世帯が住民登録をしている。町全体の世帯数が8973世帯であることから約15%が外国人世帯という割合だ。

隣町のニセコ町も同様で、「北海道では人口減少の市町村が多いのですが、ニセコ町は横ばいです。もともと5000人ほどの人口だったのが4000人くらいに減少していたのですが、ここ数年は4800人から4900人に増加。特に冬場は5000人以上になります」(ニセコ町役場企画環境課)

2つの小さな町の人口増加は、ニセコにあるスキー場を利用する長期滞在の外国人およびそこに仕事を求める外国人が増えているから。観光客も働く人も、外国人が長期滞在する場合は住民登録が必要となるため、倶知安町の外国人登録は夏場の330世帯から、冬になると1400世帯と激増する。バケーションを満喫する外国人富裕層と働く外国人、そして地元の人、ニセコエリアは3つの生活が混じり合っているといえそうだ。

【画像1】羽毛のような柔らかいパウダースノーで知られ、世界中からスキー客が訪れるニセコマウンテンリゾートグラン・ヒラフスキー場から見た冬の風景。倶知安町はこのニセコ山系と羊蹄山の間の平野部に広がっている(写真提供/倶知安観光協会)

日本人が欲しいお手ごろ価格の物件は品薄状態

外国資本の不動産投資で1億円を超すコンドミニアムや別荘が取引されているというニュースを目にしたが、実際はどうなのだろう? 地元の不動産会社に電話取材したところ「外国人が利用する別荘やコンドミニアムはニセコアンヌプリ国際スキー場、ニセコマウンテンリゾートグラン・ヒラフ、ニセコモイワ、ニセコHANAZONOの各スキー場の周辺に、2、3年前から増えています」とのこと。当初のオーストラリア人だけでなく、最近はアジアや北欧の富裕層も増え、郊外リゾート地区ではホテルやコンドミニアムの建設ラッシュが続き、物件価格が上昇。「日本人でも投資目的で1億円くらいの物件を購入する人もいます。でも自分が使いたい人は坪単価5万円くらいで100坪から150坪くらいの家を探しています。問い合わせは多くても、日本人が欲しいお手ごろ物件がない状態です」

グラン・ヒラフの麓にあるひらふ坂は、外国人向けの食材などをそろえたスーパーやショップがありにぎわうエリア。しかしながら別荘が点在する周辺は買い物施設が少ないため、外国人の定住者は倶知安の町なかに住んでいるという。「ホテルなどで働く外国人定住者が増えたことで町内の住宅需要が高くなり、今は家が建てられる土地がない状態。売り物件が出れば、すぐに決まってしまいます」とのこと。倶知安町全体で住宅地需要は活発、それが地価公示の上昇につながっている。

また倶知安、ニセコともに別荘を建てる場合、地元の建設会社はどこも受注の増加で人手が足りず3年先くらいまで仕事が決まっているようで、すぐに建てるのはむずかしいかもしれないとのこと。地元の建設会社もキャパオーバー気味だ。

日本人は避暑。外国人向けの広いコンドミニアムで長期滞在

【画像2】コンドミニアムのリビングから眺める羊蹄山。外国人向けの設計ということもあり室内は広々。ワイドなパノラマビューで北海道ならではの雄大な景色を堪能できる(写真提供/ニセコHANAZONOリゾート)

倶知安観光協会に話を聞いてみたところ、ニセコのスキー場ではスキー客もスタッフもともに外国人がほとんどで、日本人を探すのが難しいくらいなのだとか。「ニセコは特殊なエリアです。スキー場周辺のホテルは冬場の料金が夏に比べて高くなります。富裕層向けの施設も多く、一人当たり1泊5万円以上する部屋でも満室という状態です」とのこと。「外国人は冬が好きで雪が好き。逆に日本人は寒いのが好きじゃないようで、4月ごろに外国人が帰国した後、グリーンシーズンに日本人が増えてきます」と話してくれたのは地元の不動産会社の人。

倶知安観光協会も「夏場はコンドミニアム施設の有効活用をするために、リーズナブルな料金でご利用いただけます。避暑目的でホテルやコンドミニアムに長期滞在される日本人も少しずつ増えています。もともと外国人向けに設計されていますから、天井の高さやリビングの広さもゆったりしています。羊蹄山ビューの施設も多く、その空間にいるだけで開放的です。まだ空きもありますから、ぜひ夏に来てほしい」とのこと。

【画像3】冠雪した山並みの美しさも魅力のニセコアンヌプリ。スキー場の周辺には別荘やコンドミニアムが点在する(写真提供/倶知安観光協会)

実際、宿泊施設は冬に限らず夏も長期滞在で受け入れるところがほとんど。コンドミニアムは生活用品がそろっているので、外食したり自炊したり、別荘で過ごす感覚で利用できる。長期滞在客の多いコンドミニアムに話を伺うと、「団塊世代のご夫婦の利用が中心です。15日以上から長いと6月から8月まで3カ月間滞在される方もいらっしゃいます。東京、大阪、名古屋からの利用者が多く、10年くらい毎年来られる方もいらっしゃいます」とのこと。部屋の広さを聞くと、約100m2の2LDKから予約が埋まっていくそう。コンパクトタイプもあるが、広い部屋のほうが人気だ。間口の広いワイドなハイサッシで窓の外には羊蹄山が見えるというロケーションも魅力で、「広さと景観重視で部屋を選ばれる傾向にあります」とのこと。部屋ごとに定員が決まっているので、定員の範囲内で夏休みに孫が遊びに来ることもあるという。フェリーで自家用車とともに来る人、飛行場からレンタカーを利用する人、車なしでのんびり過ごす人など移動手段はまちまちだ。

倶知安観光協会ではこういったシニア層の長期滞在に加え、今後はファミリー層も増やしていきたいと考えている。夏休みを利用した親子連れには、豊富なアクティビティを用意。ラフティングやカヌー、トレッキング、ハイキングなど北海道の大自然を相手に楽しむ体験型の施設や農業や漁業体験のメニューも用意している。またネット環境が整った施設では、オフィス器具のレンタルができるところも。パソコンを持ってニセコに出かければ、涼しいニセコで避暑をしながらテレワークで仕事をこなすなど2拠点生活を楽しめる可能性も十分にある。

夏の平均気温は19.5度、この夏は羊蹄山をのぞむ小さな町、日本の文化に外国人定住者の文化が混じり合うニセコエリアで、ひと味違った長期滞在を楽しんでみるのはいかがだろう。

●取材協力
・倶知安観光協会
・ニセコ町役場 住まいに関するコラムをもっと読む SUUMOジャーナル

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