睡眠時間をきちんと確保しているはずなのに、頭がすっきりせずに日中も眠くて仕方がないという人は睡眠時無呼吸症候群(SAS)かもしれません。睡眠時無呼吸症候群とは、どのような病気なのでしょうか。具体的な原因や治療方法、予防方法をご紹介します。また、睡眠時無呼吸症候群になりやすい人の特徴も知っておきましょう。
この記事の監修ドクター
金沢駅前ぐっすりクリニック院長鈴木香奈先生 当院は北陸では初となす睡眠時無呼吸症候群の専門クリニックです。耳鼻咽喉科的にのどや顎の形態的評価、呼吸器内科的に呼吸機能評価、生活習慣病合併の評価はもちろん入院による睡眠ポリグラフィー検査(PSG)、鼻CPAP治療の導入から管理まで一貫した診療体制です。耳鼻咽喉科では単純いびき症に対する高周波治療も行っています。 日本耳鼻咽喉科学会認定専門医睡眠学会会員 http://www.gussuri.jp/
睡眠時無呼吸症候群(SAS)って何?
睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは
眠っているときに呼吸が止まったり、のどの空気の流れが弱くなる低呼吸になったりする状態をくり返す病気で、大きないびきが特徴です。日中に激しい眠気に襲われるなど、さまざまな症状があらわれます。
睡眠の本質は
睡眠は、日中に活動して疲れた脳と体を休息させるために欠かせません。しかし、睡眠時無呼吸症群で呼吸が正常に行われないと体内の酸素が減り、脳と体に負担をかけてしまうのです。休息すべき時間に体を酷使してしまっているというわけです。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)の症状
主に、次のような症状があらわれます。
大きないびきと無呼吸をくり返す
いびきをかいているかと思ったら急に呼吸が数秒間止まって「グファ!」という激しい音とともに呼吸を再開します。呼吸の乱れや息苦しさを感じることもあるでしょう。
何度も目が覚める
息苦しさから、目が覚めやすくなります。また、無呼吸によって交感神経が興奮すると尿がつくられるので、夜中に何度もトイレに起きることがあります。のどがかわくので夜中に水を飲みたくなる人も多いす。寝汗をかく傾向もみられます。
起きたときにすっきりしない
十分に寝ているはずなのに朝起きたら頭や全身が重く、倦怠感があるなど、すっきりとした目覚めを感じられません。
日中に強い眠気がある
いつも体がだるく疲れており、強い眠気を感じます。常に睡眠不足が続いている状態です。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)の危険性
寝ている間にくり返し無呼吸になると心臓に大きな負担がかかり、不整脈や心疾患を引き起こす可能性が高くなります。ほかにも、動脈硬化や糖尿病、高血圧になるリスクが高いとされています。
また、日中の激しい眠気が原因で交通事故や災害事故を起こしやすいことが問題となっています。睡眠時無呼吸症候群患者が事故を起こす確率は、健常者の約7倍です。
どんな人がなるの!?
睡眠時無呼吸症候群(SAS)になりやすい人の生活習慣
次のような習慣がある人は睡眠時無呼吸症候群になりやすいので注意しましょう。
・タバコを吸っている ・ほぼ毎日お酒を飲んでいる ・暴飲暴食することが多い
睡眠時無呼吸症候群(SAS)になりやすい人の見た目とは
空気の通り道である気道がふさがりやすい人が睡眠時無呼吸症候群になりやすいので、次のような人は要注意です。
太っている
首のまわりについている余分な脂肪によって気道がふさがってしまいます。
あごが小さい・あごが後ろにひっこんでいる
もともと気道が狭いので、太っていなくても気道がふさがりやすい状態です。
男女の割合とその年齢とは
性別でいうと、女性よりも男性のほうが2~3倍多いといわれています。しかし、女性でも閉経して女性ホルモンが減少すると発生率が高くなる傾向があります。 また、年齢でいうと生活習慣病にかかりやすい30~60代の人が発症しやすいことがわかっています。中年太りが気になるころに睡眠時無呼吸症候群を発症する可能性が高くなると考えていいでしょう。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)だと気づいていない人が多数
睡眠時無呼吸症候群(SAS)の潜在患者数について
日本国内での睡眠時無呼吸症候群の潜在患者に関する報告は少ないので詳細は不明ですが、治療を要するほど重症な人は300万人以上いるのではないかと推定されています。しかし、実際に治療(CPAP療法)を受けている人は20数万人ほどしかいません。睡眠時無呼吸症候群は現代病として問題視されていますが、こんなにたくさんの人に見過ごされている病気でもあるのです。
自分では気づきにくい睡眠時無呼吸症候群(SAS)
無呼吸は眠っている間に起きているので、本人が気づくことはほとんどありません。一緒に寝ている家族からいびきが激しいことや呼吸が止まっていることなどを指摘されて初めて睡眠時無呼吸症候群の疑いがあると知るケースが大多数です。そのために、ひとりで寝ていると睡眠時無呼吸症候群であると気づく機会はないまま放置しやすいというわけです。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)の検査・治療方法と予防方法について
睡眠時無呼吸症候群(SAS)の検査方法とは
睡眠時無呼吸症と診断するために次のような検査を行います。
問診
自覚症状や日中に感じる眠気の程度、生活習慣、持病の有無などを確認します。より正確に把握するために、一緒に寝ている家族なども同席するといいでしょう。日中の眠気に関しては「ESS」と呼ばれるテストで、どのような状況でどのくらい眠気を感じるのか答えていきます。
スクリーニング検査
専用の検査機器をつけて自宅で睡眠中の無呼吸や低呼吸の状態を記録します。
ポリソムノグラフィー
睡眠時無呼吸症候群を正確に診断するために行われる検査で、脳波や心電図、呼吸運動、いびき音、体内の酸素飽和度などを一晩かけて記録します。
このような検査で1時間あたりの無呼吸や低呼吸の頻度をチェックしたうえで睡眠時無呼吸症候群を診断します。無呼吸や低呼吸が1時間あたり5~15回であれば軽症、15~30回で中等症、30回以上で重症となります。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)の治療方法とは
重症度によって異なりますが、一般的に行われる治療は次のとおりです。
生活習慣の改善
太り気味の人は、食生活を見直したうえで適度な運動をして適正な体重に戻さなければなりません。また、のどの筋肉を緩ませてしまうタバコとお酒は控える必要があります。
マウスピース
下あごの位置が少し前方にくるように固定する専用のマウスピースをつけて就寝します。こうすると、狭くなっている気道を広げることができるのです。
CPAP
睡眠中に専用のマスクを鼻に装着して空気を送り込んで、圧力で気道を広げます。
外科的手術
口の奥のほうにある「軟口蓋」や舌の付け根にある「扁桃腺」の形に問題がある場合には、手術で大きくなりすぎている部分を切除することがあります。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)の簡単な予防方法とは
睡眠時無呼吸症候群を引き起こす大きな要因である肥満を防ぐために、食事内容に気をつけて運動をする習慣をつけましょう。また、仰向きで寝ると重力により舌がのどの奥のほうに沈み込んで気道がふさがりやすくなります。枕の下にタオルを入れて傾斜をつけたり抱き枕を使ったりして、横向きで寝るといびきをかきにくくなるといわれています。
鼻のとおりをよくする「鼻腔テープ」や口呼吸を防ぐ「マウステープ」など、いびきを予防するためのグッズも販売されているので試してみてもいいでしょう。
まとめ
睡眠時無呼吸症は、放っておくと命にかかわる病気です。たんなる寝不足やいびきだからと軽く考えずに、寝ている間の状態を確認してください。自分がいびきをかいているのかわからない場合には、家族に聞いてみましょう。また、就寝中の音を録音できるアプリもあるので活用してみてはいかがでしょうか。