妊娠中に気になる早産について正しい知識を身につけて、無事に出産を迎えられるようにしましょう。どのような原因で早産となる可能性が高まるのか、早産にはどのようなリスクがともなうのかなど、きちんと理解して予防するよう心がけてください。早産と切迫早産、流産の違いを把握しておくことも大切です。
この記事の監修ドクター
産婦人科専門医高橋しづこ先生 1995年、米国オレゴン州私立Reed Collegeを卒業。1997年、東海大学医学部へ入学。同大卒業後、東京大学医学部大学院より医学博士。その後は日赤医療センターや山王メディカルセンターで非常勤医師。女医+(じょいぷらす)所属。A型・いて座。自身は39歳で第1子、41歳で第2子と、43歳で第3子高齢で出産。高齢不妊・妊娠・出産のつらさや痛みが分かるぶん、患者さんのお話にはできるだけ真摯に耳を傾けたいというのが信条。趣味はサイクリングで、通勤にもロードバイクを愛用するアクティブな一面も。
早産の兆候とは
早産とは
出産予定日の3週間前から2週間後の間に出産することを「正期産」と呼んでいます。つまり、妊娠37週0日から妊娠41週6日の間に出産するのが望ましいとされているのです。この正期産に入る前に出産すると「早産」となります。
日本では妊娠22週0日から妊娠36週6日までの出産を早産と定義しており、早産となる危険性が高い状態を「切迫早産」としています。
「早産」と「流産」の違い
早産になる前の妊娠22週未満に出産すると「流産」となり、「早産」とは区別されます。早産で赤ちゃんが早く産まれても助けられる可能性があるので、流産の場合とは対応が大きく異なるのです。
早産の兆候
規則的な腹痛と出血がみられたら早産が疑われるので、すぐに産婦人科を受診してください。早産になりかかっている切迫早産の場合には、陣痛のように子宮の収縮が頻繁になるほか、子宮口が開いて赤ちゃんが出てきそうな状態になります。なかには、破水するケースもあります。このような自覚症状がなくても、超音波検査で切迫早産を確認できるので妊婦健診はきちんと受けておきましょう。
早産を避けることはできないの!?
切迫早産であると診断されたら、安静にするのが一番です。入院して子宮の収縮をおさえる薬を点滴することもありますが、薬よりも安静が有効であるというデータもあるほど重要なのです。状態によっては、トイレに行くことも制限されるほどの安静を指示されるでしょう。こうして正期産に入るまで維持できれば、通常どおり出産できます。
早産の要因と早期発見の重要性
早産の要因とは
早産の主な要因は、細菌感染と体質だといわれています。なかでも、腟内に病原性の細菌が繁殖して赤ちゃんを包んでいる卵膜に感染して起こる「絨毛膜羊膜炎(じゅうもうまくようまくえん)」が原因であるケースが多いのです。
ほかにも、なんらかの原因で妊娠中に高血圧になる「妊娠高血圧症候群」や胎盤が子宮口をふさいでしまう「前置胎盤」、分娩前に子宮の壁から胎盤がはがれる「常位胎盤早期剥離」、子宮収縮が起きていないのに子宮口が開大してしまう「子宮頸管無力症」、おなかの赤ちゃんが弱ってくる「胎児機能不全」などにより赤ちゃんが子宮内で生きられない状態であるために、帝王切開分娩で人工的に早産させる場合もあります。
早期発見が重要
早産を防ぐためには、緒音波検査による早期発見が重要です。自覚症状が現れていないうちに超音波検査により早産を予知できれば、早めに治療することができます。
早産にならないための予防方法
生活習慣の改善が重要
早産を予防するためにも、妊娠中は決して無理をしないでください。早産の原因となる妊娠高血圧症候群は過労と深い関係があるのではないかと考えられています。疲れやストレスをため込まないように、生活習慣を見直してみましょう。妊娠中も働いている人は時間外労働を控えるなどして、がんばり過ぎないことも大切です。また、喫煙や飲酒もやめましょう。タバコの場合、自分が吸っていなくても受動喫煙にも注意しなければなりません。
定期的な検診へ
早産にならないように、定期的な妊婦健診は欠かさないでください。そして、医師から指導を受けた場合には必ず従いましょう。
早産のリスク
週数で異なる早産のリスク
おなかの赤ちゃんの成長具合が違うので、妊娠週数で早産により受ける影響が異なります。赤ちゃんが産まれる時期が早いほど、障害のリスクが高まります。
妊娠22週から28週未満で早産した場合
目の網膜が完全に発達していないので、網膜剥離や失明のおそれのある「未熟児網膜症」の発症率がほぼ100%といわれています。脳も未熟な状態ですから、脳性麻痺を発症する可能性もあります。
妊娠28週から36週未満で早産した場合
肺の成長が途中段階なので、自力で呼吸できずに人工呼吸器を要するケースが多いでしょう。妊娠34週を過ぎると臓器はほとんど完成しているので正期産での出産に近い状態の赤ちゃんを産める可能性が高まりますが、呼吸障害が残ることが多いと報告されています。
障害が残る場合も
早産で赤ちゃんが低体重で産まれるほど、重い障害が残る可能性もあります。特に、神経系や呼吸器系などの発達に障害が発生しやすく、正期産に近い早産でも障害が長く残る可能性があるので注意が必要です。
母体への影響は
早産の原因となっている細菌による子宮への感染が問題なければ、母体には特に影響はありません。早産によって陣痛が通常よりも早くくるだけ、と考えていいでしょう。
まとめ
妊娠中に無理をすると、早産になるリスクが高まります。大切な赤ちゃんの命にかかわりますし、無事に出産できても重い障害が残る可能性があるので十分に注意しましょう。どのような原因で早産をしやすくなるのかをきちんと理解して、家族や職場の人たちにも協力してもらう必要もあります。また、定期的な妊婦健診は必ず受けてくださいね。