ノロウイルスは、毎年秋から冬にかけて流行するウイルスで、感染すると、吐き気や嘔吐、下痢などの症状をもたらします。ここでは、このノロウイルの感染経路や、ノロウイルスの感染症の予防する方法などをご紹介していきます。
この記事の取材先ドクター
わだ小児科クリニック和田直樹先生 これまで30年余りの病院小児科での経験をいかしてお子様の健康と病気全般を扱うクリニックにしてまいりたいと思っています。また背の低い子供の診療も積極的に取り組んでいきたいと思っています。 わかりやすい説明をモットーに子供たちの頼れるかかりつけ医をめざしています。日々お母さんたちが抱いている疑問や悩みについても気軽にご相談ください。 http://www.wadaclinic.com/
ノロウイルスの感染経路とは
ノロウイルスの感染経路には、次のものがあります。
食品からの感染
・ノロウイルスに汚染されている牡蠣などの二枚貝を生のまま、もしくは十分に加熱調理せずに食べる。
・ノロウイルスに汚染された調理器具や手指を介して、二次的に汚染された食べ物を食べる。
接触感染
ノロウイルスに感染している人の嘔吐物や便に触れた手指を介して感染する。
飛沫感染
ノロウイルスに感染している人の嘔吐物や便が床などに飛び散った際に、その飛沫(しぶき)を直接吸い込んでしまう。
空気感染
ノロウイルスに感染した人の嘔吐物や便の処理が不十分だったために、残ったウイルスが乾燥して空中に漂い、それを吸い込んでしまう。
ノロウイルスの感染力とは
ウイルスの感染力
ノロウイルスに感染している人の嘔吐物や便の中には、数百万~数億個ものウイルスが含まれていますが、非常に感染力が強いため、そのうちのたった10〜100個ほどが口の中に入っただけでも、感染してしまうといわれています。
集団感染のケースも
一度ノロウイルスが体内に入り込むと、症状が治まったあとも、1カ月くらいは、便の中にウイルスが排出され続けるといわれています。また、ノロウイルスは、乾燥や熱に強いため、通常の環境の中でも長期間生存することが可能です。さらにノロウイルスには、たくさんの遺伝型があるので、一度感染した人でも、何度も感染することがあります。
こうしたことから、ひとたびノロウイルスの感染者が出ると、あっという間に感染が広がってしまう可能性があるのです。特に、保育園や幼稚園に通う年頃の子供の場合は、ところ構わず吐いてしまうので、うまく処理が行われないと、次々と他の園児にも感染し、集団感染してしまうことも珍しくありません。そして、感染した子供が家にウイルスを持ち帰ることで、家庭内でも感染が広がってしまうのです。
ノロウイルスにかからない為の予防法4つ
ワクチンなどは存在しない
ノロウイルスの感染を予防できるワクチンは、現在のところ存在しません。このため、しっかりと予防対策を見直していくことが重要です。具体的に、どんなことを見直していけばいいのかを見ていきましょう。
手洗いをしっかり
手指に付着したノロウイルスを減らすために、外出から戻ったとき、トイレの後、調理や食事の前、感染した人の嘔吐物や便の処理をした後などに、石鹸と流水でしっかり手を洗う習慣を持ちましょう。ノロウイルスは、毎年11月頃から発生件数が増え始め、12〜1月頃に流行のピークを迎えるので、特にこの時期は、こまめな手洗いが大切です。
指先や指の間、爪の間、親指の周り、手のシワ、手首などは、手洗いが不十分になりやすい傾向があります。手を洗うときは、これらの部分も意識的によく洗うようにしましょう。またノロウイルスは、とても小さいので、一度手を洗っただけでは、きちんと落とせていないことがあります。トイレの後や、嘔吐物・便の処理後は、石鹸と流水で2度洗いしたほうがよいでしょう。
食品の加熱を怠らない
牡蠣やシジミ、アサリなどの二枚貝の内臓には、ノロウイルスが蓄積されていることがあります。こういった貝は、中心部まで、85~90℃で少なくとも90秒は加熱してから食べるようにし、生食は控えるようにしましょう。
環境を清潔にする
共有スペースの消毒
家族が共有して使うドアノブ、手すり、テーブル、イス、トイレなどは、ノロウイルスが付着している可能性が高いので、こまめに消毒液で拭き取る習慣を持ちましょう。ノロウイルスの消毒に有効なのは、「次亜塩素酸ナトリウム」です。次亜塩素酸ナトリウムは、家庭用の塩素系消毒剤にも含まれているので、ご家庭でもペットボトルなどを使えば、簡単に消毒液を作ることができます。
【家庭用の塩素系消毒剤を使った消毒液(濃度0.02%)の作り方】 2リットルのペットボトルに、普通の飲み物が入っているのと同じくらいの水と、ペットボトルのキャップ2杯分の塩素系消毒剤を入れれば完成です。保管するときは、誤って飲んでしまうことがないように、消毒液であることをしっかり明記しておきましょう。
ただし、次亜塩素酸ナトリウムには、金属を錆びつかせる作用があるので、ドアノブなど、金属でできた場所を消毒した後は、しっかり水拭きをして、消毒液を拭き取るようにしてください。
調理器具の消毒
調理器具にノロウイルスが付着している可能性があるときは、まず洗剤などでしっかりとよく洗ってから、次亜塩素酸ナトリウム(濃度0.02%)で、浸すようにして拭き取りましょう。また、包丁などのように、錆びる可能性がある金属製の調理器具の場合は、85度以上の熱湯で、1分以上加熱すれば消毒できます。
まとめ
ノロウイルスは、感染力がとても強く、保育園や幼稚園での集団感染や、家庭内感染を起こしやすいウイルスです。例年11月頃になると、ノロウイルスが流行し始めるので、しっかりと予防のための対策を見直して、感染の拡大を未然に防ぐようにしましょう。