名古屋のタワマンでママが「子ども会」をつくってみました

更新日:2019年6月1日 / 公開日:2019年6月1日

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多くの人の子ども時代の記憶に残る「子ども会」の活動。近所の子と一緒に、夏の朝はラジオ体操、秋はお祭りやスポーツ大会……。筆者も楽しく参加した思い出がある。その子ども会は今、少子化などの影響により減少の一途をたどっているという。そんな中、名古屋市の都心部にあるマンションで「子ども会がなかったから、自分で立ち上げました」という人に、立ち上げの経緯や理由、子ども会の良さを取材した。
少子化や指導者不足…、子ども会は減少傾向

はじめに、全国の子ども会や指導者、及び連合組織を会員とする「公益社団法人 全国子ども会連合会」に子ども会の現状を聞いてみた。山本哲哉常務理事によると、「マンション単体での子ども会の立ち上げは、全国的にも希少な例でしょう」という。「現在、全国の子ども会が直面している最大の課題は会員減少です。少子化による、人口の自然減少以上の加速度的な会員減少に、歯止めがかけられていません」

子ども会とは、「基本的には、小学生から中学生までの子どもたちによる地域密着型の団体。異年齢の子どもたちが、その地域になじんだ活動へ主体的に取り組むことが、地域における子ども会の本質であり意義であると考えています」と山本常務理事。

データから見ても子ども会の会員数減少は明らかだ。子ども会の会員数(全子連共済加入者数で、カウントは就学前3年の幼児から中高生までの構成員)の推移表を見せてもらうと、筆者が10歳だった昭和63年は、子どもの会員数が604万3228人、大人の会員数が155万5429人で、合計759万8657人。一方、平成29年の調査では、子どもの会員数が247万2960人、大人が102万9157人で、合計350万2117人。合計人数が2分の1以下になり、大幅に減少しているのが分かる。

令和元年5月に総務省統計局から公表された平成30年12月の確定値では、15歳未満の総人口は1538万7000人。一方で政府統計によると、昭和63年は15歳未満の総人口が2398万5000人となっている。
確かに、子どもの人口減少以上に、会員数の減少が目立つ。

また、「少なくとも都市圏では子ども会の組織そのものが減少しています」と山本常務理事。「子どもの減少で活動が思うようにいかなくなった近隣の数カ所の子ども会が合併し、新たな名称の子ども会をつくったという場合や、児童数の減少により、今まであった単体の子ども会を、校区全体で1つの子ども会にしてしまった例なども聞いています」という。

さらに、「会員減少は、役員や指導者の後継者不足という、大人側の問題ともつながっています」と話す。核家族や多忙な共働き世帯、シングルマザーやシングルファザーの世帯も増えている現代では仕方がない面もあるのかもしれない。「指導者を含む人材不足による行事のマンネリ化、子ども会の魅力のなさが、会員減少の根本的な問題であることはいうまでもありません」

会員減少、そして子ども会の減少により、「子どもの体験不足やコミュニケーション能力不足を引き起こす可能性があるのでは」と懸念しているという。

越してきたマンションが「子ども会に入っていない」!

今回取材した「子ども会立ち上げママ」は、名古屋市在住のUさん。3歳・8歳・10歳の3児の母で、約100世帯が住むタワーマンションに住んでいる。日中は自宅でPCを使って仕事をする兼業主婦だ。子ども会を立ち上げるきっかけは偶然だった。

「関東から名古屋市内のマンションに引越してきた最初の夏休みに、近所の広場でラジオ体操をしているのを見かけて、子どもと出かけると、『そこのマンションは子ども会に入っていないから』と説明され、参加できませんでした。
小学生の夏休みといえば、ラジオ体操があって早起きをするというイメージがあったので、自分のマンションが子ども会に入っていないことに驚きました。マンションの世帯数が多いので、子ども会に加入したいのであれば、よその子ども会に入るのではなく、自分たちで子ども会をつくらなければならないのだとその際に知りました」

数年後、順番が回ってきてマンションの役員になったUさん。
「役員になり、さらにクジ引きで理事長に就任しました。理事長として、小学校区の連絡協議会で子ども会の現状について報告する機会があり、人から『どうしてそこのマンションには子ども会がないの?つくればいいのに』と言われて。それもそうだと気がつき、さっそく区役所に行って、子ども会のつくり方を調べてみました。すると、会則と会員名簿を作成して区役所に申請すれば、子ども会を立ち上げて、助成金をもらうことができると知って、思ったより簡単だなと感じました」

ちなみにUさんの自治体では、会員数が10~34人までの場合、年間約2万円(申請時期により異なる)の助成金を受けることができるそうだ。

Uさんがパソコンで制作した新規会員募集のチラシは、管理組合を通してマンションの掲示板に掲示(写真提供/Uさん)

マンションの住民にアンケートを実施し、子ども会が発足

「立ち上げにあたり、事前に、マンションの住民に『子ども会が必要かどうか』というアンケート調査を実施しました。すると、子どもを持つ世帯の半数以上から『子ども会をつくってほしい、あれば参加したい』という回答をもらったことがモチベーションに。さっそく会則と会員名簿を作成して申請し、人数に応じた助成金をいただけるようになりました。
役員については、1年目なので、顔見知りのお母さんたち数名にお願いして引き受けてもらうことに。マンションの住民に対しては、立ち上げに関しての説明会も実施し、アンケート結果などの資料を配りました」

現在は14世帯、子どもは30名ほどがマンションの子ども会に在籍。子ども会を立ち上げて最初の夏休みであった昨年、さっそく近所の広場でラジオ体操を実施した。

「町内の子ども会に共催という形で入れてもらい、スタンプカードを分けてもらうなど、進め方を教えてもらいながら同じ広場で開催しました。子どもたちは元々同じ校区の仲間なので、夏休み中もクラスメイトたちと会うことができ、喜んで参加していたようです。マンション内では、ラジオ体操の当番表をつくり、役員ではない保護者にも持ち回りで当番をしてもらいました」

そのほか、小学校の長期休みの日中に「子ども映画鑑賞会」を実施して好評を博した。
「マンションの集会室にプロジェクターとスクリーンがあるので、権利関係を確認してDVDを用意し、映画を上映しました。その際、助成金で買ったお菓子やジュースを食べられるようにして、好評でした。子ども会会員以外の住民のお子さんも、100円を持って来れば参加可としました」

子ども会行事についての連絡は、管理組合の許可を得て、マンションの掲示板にチラシを掲示している。
「ただ、なかなか掲示物を見ない人もいるので、会員の保護者には子ども会のLINEグループに参加してもらい、ダイレクトにお伝えもしています。春休みなどの長期の休みでも、親が仕事だったり、子どもたちの習い事があったりと、なかなか日程がそろわないので、LINEの予定表で、参加者が一番多い日に開催するようにしています」

助成金を活用して、子ども会を卒業する6年生に図書カードを配布した(写真提供/Uさん)

親も子も安心できる、共用施設でのイベント開催

マンション単体で子ども会を立ち上げたことに、メリットを感じているというUさん。

「集会場など、マンションの共用施設で映画鑑賞会などのイベントを開催することで、子どもだけでも気軽に参加できるのは大きなメリットだと感じました。例えば、夏休みや春休みなどの長期休み中に、親が仕事で、一人で留守番をしなければならない子も、マンション内であれば、エレベーターで降りるだけで友人や知り合いがいて、安全に参加できます。これは大型マンション単体の子ども会ならではのメリットだと考えています」

エントランスの出入口には管理員も常駐しているので、大人の目は多い。それまで空いている時間が多かった集会室や、プロジェクター設備の活用につながっていて良いという、住民からの声も聞かれた。

Uさんは「自分自身、役員としてイベントに付き添ってみて、顔と名前が一致したり、新たに知った子もいたりして、マンション内や近所でも、会うと挨拶したり話をする機会が増えました。普段はなかなか会わないので、親子にとってよかったと思います」と感じている。

「イベントに関しては『映画鑑賞会で、友達と一緒に映画を観たのが楽しかった』と言った子がいて、小さな子が、初めて友達と一緒に映画を観るいい機会にもなったようです」と振り返る。「ただ、ラジオ体操は『習ったことがないので難しかった』という声があり、今は小学校で習っていないのだと気がつきました。今年は練習会などを考えています」

今後は、どの程度の規模のイベントを企画していくかを検討中だという。
「引率者の問題もありますが、よりイベントの幅を広げることも考えていきたいです。自治体が開催する既存のイベントに、子ども会ごと参加するのもいいかもしれません。費用の面では、助成金だけでなく会員から会費を集めるのか、自治会(町内会)とも交渉して助成金をもらうようにするのか……と考えているところです。自分たちのマンションで、まだ回収していない古雑誌などの資源を集めるというアイデアもあります。もちろん、安心・安全なマンションの共用部は、これからも活用する予定です」

マンションの集会室に講師を招いて、親子で参加できるようなワークショップを行うことなども検討しているという。

“気張らない活動”でも、子どもと大人に大きなメリットが

現在、まだ遠出するイベントなどは実施していないというUさん。マンション内を中心としたあまり気張らない活動がメインながら、子どもたちは楽しみ、刺激を受けているようだ。

一人っ子家庭も多い現代では、異年齢や異性と関わり、遊びながら社会性を身に着けられる場としても意義は大きい。Uさんのマンションの「映画鑑賞会」のイベントでも、年上の子が率先して集金し、小さな子にお菓子やジュースを配るなど、自然とリーダーシップを発揮している場面が見られたという。

前出の全国子ども会連合会の山本常務理事も話す。「子ども会の理想は、大人は見守るスタンスで、子どもが主体となり成功体験につながるような活動です。でも現実は、限られた時間の中、少子化や共働きなどの現代の状況下での活動になりますから、各自が負担にならないように運営することが大切です」

Uさんのように、マンションで子ども会を立ち上げた場合、子ども会の存在によってコミュニケーションが生まれ、活動がない日もマンション内での見守り効果が高くなるというメリットもあるだろう。キッズルームやライブラリーを備えたマンションなら、活動はさらに広がり、共用施設の有効活用にもつながりそうだ。

この数年でマンションが増加している名古屋の街並み(写真/PIXTA)

かつては地域単位だった子ども会が、マンション単位で実施されるのは現代的。子ども会の発足を機に、マンションが1つの街のようにまとまり「みんなで子どもを育てよう」という住民の意識が高まるかも。

働く女性が増えて忙しい世の中だからこそ、子ども会の活動をきっかけにして、もしものときに助け合えるママ友や、子どものコミュニティが増えたらいいなと感じた。

できる人が、できることから。ゆるやかに始めてみるのも、令和時代の子ども会のスタイルにマッチしているかもしれない。

●取材協力
・公益社団法人 全国子ども会連合会 住まいに関するコラムをもっと読む SUUMOジャーナル

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