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無痛分娩や帝王切開は「楽なお産」? 出産の考え方【ママ女医と娘の○○な日常 vol.14】

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目次

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最近、無痛分娩についての安全性についての注意喚起があるとともに、「痛みの無いお産はお産ではない」といった意見を見かけます。今回は、無痛分娩や帝王切開を含めたお産について、少し語らせていただきます。

記事の著者

のんびり子育て中のママ女医 HAL先生 内科医。大学病院研修中にうつ病を発症し、数年間療養生活を経て復帰。その後、病気の間支えてくれた医者の夫と結婚し、娘を出産。現在は田舎で夫、3歳の娘と暮らす。自身の出産・育児の日々をもとに、医学的なエビデンスを交えて育児情報・ニュースなどをブログで発信。またTwitterでは、娘との会話や、ほっこりあたたまる育児エピソードも紹介し、注目を集めている。

http://halproject01.blogspot.jp/ https://twitter.com/halproject00

「楽なお産でよかったね」という言葉

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「お腹をいためて産んだ子」という言葉があります。

古来より、人間は辛い陣痛に耐え、お産をしてきたという長い歴史があります。そのため、帝王切開や無痛分娩となった経産婦さんに対して、「楽なお産でよかったね」「お腹もいためずに産んだなんて、そんなので赤ちゃんに愛情がもてるの?」といった意見を、少なからず見かけます。

無痛分娩や帝王切開は「楽なお産」なのでしょうか? 痛いお産が正しく、痛いお産がえらいのでしょうか?

無痛分娩とはなにか?

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無痛分娩は、主に硬膜外麻酔という方法で麻酔を行います(他にも種類があります)。硬膜外麻酔とは、背中から針を刺し、硬膜外腔と呼ばれる狭い隙間に細い管を入れ(針は抜きます)、その管から麻酔の薬を入れて痛みをとるという方法です。

無痛分娩は「無痛」と言いますが、実際には痛みはゼロにはなりません。実際に体験した友人曰く「痛いので、『麻酔効いてますか?』と聞いたら、『今の段階でそんなことを聞けるくらい冷静なのは、きちんと効いている証拠よ』と言われた」という話をしていました。このように、苦痛となるレベルの痛みは取り除きつつも、ある程度の感覚を残してお産をスムーズに進行させるように薬の量を調節します(施設によって違いがあります)。

考えたいメリット・デメリット

メリットは沢山あります。例えば、痛みが少ない分、母体への負担は少なくなり、産後の回復が早まります。呼吸が楽にできるので赤ちゃんへの酸素も十分に送ってあげることができます。万が一の時に帝王切開になる場合も、麻酔の管が入っているので、素早く切り替えることが可能です。

しかし、デメリットもあります。麻酔によってお産が長くなることがあります。そのため、鉗子分娩や吸引分娩を行う事が多くなる傾向があります。また、急なお産に対応出来ない施設も多いため、計画分娩(陣痛が来る前に、陣痛促進剤などを使ってお産をスタートさせる)となることもあります。

それだけではありません。無痛分娩で行われる硬膜外麻酔はあくまでも「医療行為」ですので、その硬膜外麻酔自体の副作用が起こる可能性があります。最近ニュースで取りあげられた事故も、この硬膜外麻酔のまれに起こる不具合(予期せぬものではなく、確率は低いが想定される不具合)が原因だと推察されます。

日本で無痛分娩が何故普及しないのか

日本産科麻酔学会のQ&Aによると、2007年の日本での所謂無痛分娩の割合は、全分娩の2.6%、それに対し、2010年のフランスでの経膣分娩での無痛分娩の割合は、なんと約80%。無痛分娩は、国によって違いはありますが、海外では日本よりかなり選択される機会の多いお産方法です。

実は、無痛分娩をしようと思っても「選べない」事も多々あるのが、現在の日本です。日本では無痛分娩を取り扱っている施設自体が非常に少ないのです。ネットで検索されたことがある方はわかると思いますが、私の住む某田舎では、県内で検索しても5件以下です。

なぜこんなに無痛分娩が普及しないのか。

日本では麻酔科医がそもそも不足しています。手厚い産科麻酔を行うよりも先に、その他の手術の麻酔科医確保が必要なのが現状です。そのため、お産を担当する産科医の先生が麻酔を行う施設が多いのです。しかし、そもそもその産科の先生自体が、足りません……。

24時間いつ来るかわからない陣痛に対応できる無痛分娩、これを実行するには、現在の日本の医療体制では圧倒的なマンパワー不足です。これが解消するのはいつになるのか、正直予想がつきません……。

全てのお産は命がけ

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無痛分娩も、帝王切開も、そして無痛ではない一般的な経膣分娩も、どれも全て「立派なお産」であり、お母さんは命がけです。

無痛分娩

無痛分娩は先ほどご説明した通り、硬膜外麻酔の副作用・合併症のリスクが、お産のリスクとは別にあります。この硬膜外麻酔、お産をしないのであれば、お母さんが受ける必要のない医療行為です。なぜこんなリスクのある麻酔を受けてまで、お産をするのだと思いますか?

それは全て、赤ちゃんのためです。

赤ちゃんを産むために、背中に刺す必要のない針を刺し、入れる必要の無い薬を入れて、それはもう頑張って頑張ってお産をするのです。お母さんのためではありません。赤ちゃんのためです。

帝王切開

それでは帝王切開はどうでしょうか。

帝王切開は、膣の方から産もうとする際、赤ちゃんや母体の命に関わる可能性がある時に選択されます。無痛分娩と同様、硬膜外麻酔等の麻酔を行い、お腹を切って、赤ちゃんを取り出し、縫い合わせます。

切っている最中の痛みは、確かにないかもしれません。しかし、産後の負担は、経膣分娩以上です。手術をした人はわかるでしょう。切ったお腹は痛みます。そして、手術や麻酔の合併症の心配もあります。本当に「楽なお産」であるならば、全てのお産は帝王切開になるはずです。そうならないのは、帝王切開は「楽なお産」などではないことを、お産に関わるスタッフは承知しているからです。

繰り返しますが、帝王切開は立派な手術です。赤ちゃんを産むのでなければ、切る必要のないお腹です。赤ちゃんを守るために、お母さんは、そのお腹を切っているのです。

痛みから「母性」は生まれない

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痛みでは母性は生まれません。それは、経膣分娩で普通に分娩した自分だからこそ言わせていただきます。

私は母性というものがわかりませんでした。産む前も、そして死ぬ思いをして出産した後も。

私を母にしたのは、娘です。娘を育てる中で、何物にも代え難い、愛おしい、守りたいという気持ちが生まれました。

痛みではありません。“赤ちゃんの存在”が、母性を育むのです。

全ては赤ちゃんのために

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どのお産も、全て”赤ちゃんを元気に産んであげたい”、その気持ちから行われます。お母さんはみな、自分を命の危険に晒し、赤ちゃんを産もうと頑張るのです。

全て、立派なお産です。命がけです。

だから、どのお母さんも胸を張って欲しい。他の人の言葉に惑わされないで欲しいと思います。

痛いお産をした人はえらい。 痛くないお産をした人もえらい。 そして、お腹を切って産んだ人もえらい。 みんな、えらい。 私はそう思います。

そして、周りの人も知っておいて欲しい。リスクの無いお産はありません。医療が発達し、昔と比較して多くの命が救われるようになりました。それでも、医療スタッフがいかに全力を尽くしても、年間に50人前後の妊産婦が死亡します。

過去に比べれば非常に少ない数です。しかし、やはり、お産は命がけです。どのお産も、命がけです。

今日もお産は行われ、新しい命が産声を上げています。

参考サイトなど 無痛分娩Q&A-日本産科麻酔学会(JSOAP)- http://www.jsoap.com/pompier_painless.html

(HAL)

※記事内の画像はすべてイメージです


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情報提供元:マイナビウーマン子育て

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更新日:2017年10月6日

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