悩み、ストレス、それは誰もが大なり小なり抱えているものですが、働く女性ならではの悩みやストレスがあると思います。仕事とプライベートのバランス、人間関係、仕事のやりがい……。
そうした悩みの中でも、最近たまたま立て続けに告白されたことがあります。「セクハラ・パワハラ」の問題です。プライベートで会って近況報告をしている中からポロッと出てきたものでした。
メーカーのPR・A子さんの話
「業界的に仕方ないものなんでしょうか」
そう問いかけてきたA子さんは、33歳。仕事は、あるメーカーでPRを担当。取引先は、主にテレビや雑誌、web媒体などのメディアです。
自社の商材を取り上げてもらうべく各メディアにアポイントを取り、そのターゲットへのメリットを紹介する業務。情報がたくさんあふれる昨今、簡単に取り上げてもらえないこともある中、A子さんが説明にいったあるメディアがかなり大きく取り上げてくれることになりました。
そのメディアに取り上げられたことは、上司にも先輩にも評価され、また商材のブランド担当者にもよろこばれ、A子さんはとてもうれしく感じたといいます。
「飲みに行こうよ」と誘われる
しばらくして、取り上げてくれたメディアの担当者から「飲みに行こうよ」と誘われたそうです。
担当者は40代後半の男性。二人だけで飲むことに少し戸惑う気持ちはあったけれど、男性は社会的地位もキャリアもある人であり、仕事の会話の中で妻子がいることも聞いていました。
あくまでもビジネスでのお誘いですし、取り上げてもらったお礼の気持ちもあるので、OKしたのだそうです。
最初は取り上げもらった商材の話、男性が担当するメディアの話、彼女の職歴の話など、ビジネスの話で進んでいたそうです。けれど、どこかのタイミングから、様子が変わってきたのだとか。
「彼氏いるの?」「どのくらいいないの?」といったパーソナルな話。
とはいえ、彼女もキャリアを積んできた30代の女性。笑顔で対応しつつも、話題をできるだけビジネスの方向に変えようと試みたそうです。
お酒が進むにつれて…
相手はかなり早いピッチで飲んでおり、かなり酔っぱらっている様子でした。しかも、A子さんにもかなりお酒を飲ませてくる。
飲ませながら「可愛いね」といった言葉がでてきたり、手は肩、背中、脚など、身体に触れてきたそうです。やんわりと「やめてください」と言ったりはしたけれどなかなかやめてくれませんでした。
あげくの果てに「オレの愛人にならない?」などと言ってきたそうです。
「嫌でした。すごく嫌でした」
A子さんは私にそう伝えてきました。
けれど、強硬に拒否したり、その場をすぐに立ち去ったり、相手を訴えたりといったことはできなかったそうです。穏やかに相手の手をどかしたり、やんわりあしらう程度が精一杯で……。
やんわりあしらうことは出来ても
なぜでしょうか?
それは相手の男性が、取引先だからです。
もしA子さんが強い口調で拒否したり、その場を即刻立ち去ったりしたら、相手が気を悪くします。PR担当者としては難しい立場です。そのメディアだけでなく、その会社との取引がスムーズにいかなくなる恐れがあるからです。
自分が希望して就いたPRの仕事。やりがいはあるので仕事は頑張りたいと思っています。
とはいえ、これはれっきとしたセクハラ。
取引先の男性からのセクハラを受け入れることも仕事のうちなのでしょうか?
先輩女性に相談したけれど
会社の先輩女性に相談すると「あのメディアは仕方ないんだよね」そんな言葉をかけられたそうです。
上司にも相談しようと思ったけれど、先輩と同じ反応かもしれない。もしくは自分がPR担当から外されてしまう可能性もある。そう思って、言うのをやめたそうです。
A子さんはこのセクハラを受けたとはいえ、いまの仕事を辞めたいとは思っていないと言います。やりがいがあり、やる気もあります。
とはいえ……。
女性がやり甲斐のある仕事を続けていくためには、取引先から受ける多少のセクハラは、ガマンしなくてはならないいのでしょうか? 仕方ないと受け止めるしかないのでしょうか?
ずっと「仕方ない」で済ませてきたこと
いいえ、そんなことはありません。
取引先からのセクハラ問題。A子さんの話を聞いて、私自身も過去に同じようなことがあったと思いだしました。けれど、私もA子さんと同様、仕方ないことと一人で受け止めてきたのです。A子さんが相談した先輩女性も、そうしてきた女性の一人かもしれません。
ここ数年、セクハラや性的暴行の被害体験を告白する「#metoo(ミートゥー)」が広がりつつあります。
ですが、A子さんの話を聞いていて思いました。#metooのように、自分の名前と顔を表に出して告白できる人はまだ多くなく、仕方ないで済ませている現実がまだまだたくさんあるのではないかと。
社会的な状況から告白できないセクハラ問題──#metooと声を上げられない「#metoo未満」の話がたくさんあるのではないでしょうか。ずっと、当たり前や仕方ないで済ませてきた、そしていまも自分のSNSでは書きにくい#metoo未満の声を、私たちOTONA SALONE編集部はこれから取り上げていこうと思っています。
OTONA SALONE編集部:「オレの愛人にならない?」と、仕事相手から言われた話 #metoo未満