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日本マイクロソフトが10年で到達した、生産性200%成長の裏側にある働き方とは

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当記事はSUUMOジャーナルの提供記事です

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日本マイクロソフトが10年で到達した生産性200%成長の裏側にある働き方とは

「働き方改革」が世の中で盛んにうたわれるようになったのは2017年ごろ、それを受けて各企業も対策に乗り出したものの、具体的にどんなことをしたらいいのか悩んでいる企業も多いようです。どんなプロセスを踏み、なにが必要なのか。その大きなヒントになりそうなのが、18年前から実質の「改革」を実践してきた日本マイクロソフトです。業務の改善が結果として、介護など家庭の事情との両立や、男性社員の高い育児休暇取得率など働き方の改善にもつながったという同社の取り組みについて、エグゼクティブアドバイザーを務める小柳津篤氏に伺いました。
「社員がもたない」。働き方を見直したきっかけは“危機感”

――日本マイクロソフトは2017年に総務省の「テレワーク先駆者百選 総務大臣賞」を受賞されていますよね。そもそも働き方を変えられたのは2002年からとのことですが、どのくらいの成果があったのでしょうか。

以下はここ10年のデータですが、勤務時間はマイナス13%になりました。合計で60万時間、1人あたり2カ月分、勤務時間が減っていることになります。事業規模は180%成長しています。

(画像提供/日本マイクロソフト)

(画像提供/日本マイクロソフト)

――そもそものきっかけとは、何だったのでしょうか?

僕は昭和のオジサンですから、以前は仕事で人手が不足しているときは、徹夜や休日出勤などの長時間勤務もしながら解決してきました。そうした手段をとることで、仕事自体は終わりますが、長期的に見たらフィジカルやメンタルなどのいろんなものを損ないます。仕事を早く進めないと社員がもたない、というところがビジネス課題でした。

日本マイクロソフトのエグゼクティブアドバイザーを務める小柳津篤さん。本記事の取材もMicrosoft Teamsを使って行われた(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

日本マイクロソフトのエグゼクティブアドバイザーを務める小柳津篤さん。本記事の取材もMicrosoft Teamsを使って行われた(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

――そこから、どう働き方を変えたのでしょうか。

仕事のやり方というのは、2種類あるんです。右側が従来多くの日本企業が行ってきた「プロセス型・手続き型」、左側が私たちが現在行っている「コラボレーション型・ネットワーク型」の仕事のやり方です。

(画像提供/日本マイクロソフト)

(画像提供/日本マイクロソフト)

右側の「プロセス型・手続き型」は、あらかじめ決められた役割・手続き・段取り・プロセスがあり、フォーマット化・マニュアル化された仕事内容に沿って仕事をするというものです。みんな真面目に、時には徹夜して、そうして得られた成功体験が、特に昭和時代に企業で勤めていた経験がある日本人には実体験としてありますから、どうしてもこちらのほうが良い仕事のようなイメージがあるんですね。

一方で、チームやプロジェクトに成果を求め、いつでもどこでも誰とでも、意見交換や情報共有、意思決定ができるのが、左側の「コラボレーション型・ネットワーク型」です。一つのプロジェクトに対して、事業部内に閉じたチームを組むのではなく、事業部の枠を超えて必要な人材をつなぐのです。そうすることで、より付加価値の高い仕事をすることができるようになります。

日本マイクロソフトの勤務時間が短くなったのは、何かを一律に減らしたわけではなく、「プロセス型・手続き型」を減らし、「コラボレーション型・ネットワーク型」を増やした結果です。“働き方改革の事例”としてメディアなどによく取り上げていただくことがあるのですが、「仕事を早く進めたい」という強い思いからスタートし、業務の整理整頓が伴った結果、いわゆる“働き方改革”で目指していることがほぼ解決できた、という感じなんです。

「コラボレーション型・ネットワーク型」は、いわば「三人寄れば文殊の知恵」な仕事の仕方です。これを実現するには、会社には行くべきだ、会議を行わないと情報が共有できない、などとは言っていられません。今あるテクノロジーと社会的なルールの中で、なるべく効率的で効果的に「コラボレーション型・ネットワーク型」を実現しようと思ったら、「いつでもどこでも」になったのです。テレワークを導入したのも、こうした経緯の一環です。

日本の会社がやってしまうのが、「プロセス型・手続き型」を大事にしたままの働き方改革です。それでは、女性が出産後に同じポジションに戻りにくい、介護で出勤が困難になった人がプロジェクトに参加し続けることが難しくなる、などの問題も残ります。はたしてそれでどれだけの人が救われるのでしょうか。

「僕は『テレワーク』を全否定する」

――テレワーク導入の課題として、多くの日本企業ではまだまだ「結局は顔を合わせたほうがコミュニケーションがはかどる」という信念が根強い印象があります。そこはどうお考えですか?

(画像提供/日本マイクロソフト)

(画像提供/日本マイクロソフト)

僕たちも会って話すということは、止めていません。それだけをやりすぎている、ということが問題なんです。

テレワークは、辞書としては「在宅、モバイル、サテライト」という意味です。「会社に来ない、現場には行かない」というソリューションなので、そういう意味では僕はテレワークは全否定します。あくまで、その感覚だけで仕事をしてはいけない、ということなんです。

――「コラボレーション型・ネットワーク型」への転換で、戸惑いや混乱はなかったんですか?

もちろんありました。ただ単にやりましょうと言うだけじゃ、誰一人やりませんよ。
僕たちの世代のような「プロセス型・手続き型」の価値観で物事を乗り越え、そこに武勇伝や成功体験がある人たちにとっては、特に自己変革が難しい。だから、ルールや環境の置き換えには、ある種の強制力も必要なんです。そのためには、トップダウンでやらないと。

――小柳津さんご自身は、この変革はスムーズにできたんですか?

できるわけないじゃないですか(笑)。なかなかうまくいきませんでしたよ。
しかし、みなさんも私生活では、実はすでに「コラボレーション型・ネットワーク型」の状態なんですよ。家族や友達、地域の人たちとの社会生活を考えてみてください。家族とは家でだけ、友達とはファミレスだけ、地域の人とは公民館だけで交流しているかといったら、そんなわけはないですよね。同時にクラウドサービスやSNS、さまざまなデバイスも使いながら、いつでも誰でもどこでも、意見や写真の交換をしている。働き方も同じことなんです。

日本マイクロソフト(品川オフィス)の会議の様子(写真提供/日本マイクロソフト)

日本マイクロソフト(品川オフィス)の会議の様子(写真提供/日本マイクロソフト)

僕自身は、製造業関係の会社から25年前にマイクロソフトに転職したんですが、当時は今だったら信じられないほどの長時間勤務をしていたんですよ。そこから得られたこともたくさんありましたが、いろんなものを失いました。例えば、当時、子どもは小学生でしたが、ほとんど一緒にご飯を食べたことがありません。その経験もあり、テクノロジーのリーディングカンパニーとしてもっとできることがないかという責任も感じていました。

2002年、グローバルで「業務生産性」を追求する組織が誕生し「Information Work / Information Worker」という概念が掲げられました。そのなかで生産性の継続に必須となる「働きやすさ」にも着目され男性社員の育児休暇の取得も増えていきます。今でこそ日本マイクロソフトの男性社員の育児休暇取得率は8割ですが、当時、世間では男性の育休制度があること自体が話題になるような時代。会社が持つテクノロジーと社内制度を使い、成果を可視化しながら進めました。

――現在は、小柳津さんは1日をどのように過ごされているのでしょうか。

特に決まっていませんね。遠隔でお客様とのやりとりをしていますし、対面で会うこともあります。お客様の都合やタイミングに合わせているので、昼間の予定はほとんど自分では決められません。半分ほどはリモートワークです。

ですから朝の満員電車に乗るときもあるし、朝ゆっくりリモートワークをするときもあります。

「“勤務時間”という概念はナンセンスだと思う」

――勤務時間がバラバラということでしょうか?

日本マイクロソフトでは、時間の長さは個人の業績や評価に関係しないんです。

労務関連の法律に基づいて勤怠管理はしていますが、みんなビジネスとプライベートがまだら模様になっているので、厳密な意味合いでの勤務時間を測ることは難しいんです。勤務時間が短い代わりに、ものすごく濃い時間を過ごしています。僕も短い時は3~4時間くらいですしね。

そもそも、そういう時間で仕事を測る考え方が、今の物事の進め方にマッチしていないと思うんです。外出しているからといって必ずしも働いているわけじゃないし、パソコンを起動しているからといって働いているわけじゃない。だから、フレックスやコアタイムという概念もないんです。仕事内容も、昔と違って徹夜したから解決できるようなものではありませんしね。

――大きな自己責任が伴いますね……。ただテレワークを導入すればいいということではなく、あくまで活かし方が大切ということですね。

そうです。自己責任にすることで、効率的に働くということを本人が考えざるを得なくなるんです。日本企業は、社員を子ども扱いしていると思います。もともとポテンシャルがある人であっても、成長する機会を奪っていることになりかねません。

だから僕は、社員が徹夜したければそれは個人の自由だと思うんです。良くないのは、それが連続したり、命令によって行われていること。だから早い段階で見つけて軌道修正をするし、時には大きなペナルティーも科します。

――今後の課題は?

実は、世界からみると「コラボレーション型・ネットワーク型」化が一番遅れているのは日本マイクロソフトなんです。「日本の会社としては」世間から評価をいただいていますが、グローバルのマイクロソフトとしては、世界で一番効率が悪いんです。

(画像提供/日本マイクロソフト)

(画像提供/日本マイクロソフト)

グローバルと比較すると、例えばメールの時間が24%長く、宛先が31%多く、会議時間が17%長く、会議招集者が11%多いというデータがあります。日本はまだウェットなコミュニケーションをしているんです。

他国と比べてどうなのか、先月と比べてどうなのかなどを可視化し続けていかないと、社員は変わることができない。

また、「会議のお作法」という会議ルールも全社プログラムとして取り入れました。

(画像提供/日本マイクロソフト)

(画像提供/日本マイクロソフト)

若い人は役職等が上の人がいると業務環境に疑問を持っていても言いにくいけれど、全社プログラムになっていれば、言いやすいですよね。

大切なのは、「働き方改革」ではないです。大切なのは、働き方の変化は会社の付加価値や会社の組織デザインやマネジメントモデルを突き詰めた結果だということです。

最後に

今、新型コロナウイルスによる被害拡大もあり、テレワークを推奨する企業も増えています。しかし急な導入は、「仕事する場所を単に社内以外に移せばリモートワークである」という勘違いの助長も危ぶまれます。本事例からは、リモートにする目的が何なのか見誤らないことの大切さを改めて実感することができるのではないでしょうか、

次回は、同社内で実際にリモートワークで業務に取り組み、地方への移住や遠隔地に住む家族の介護と仕事を両立させている実例を紹介します。

>関連記事:テレワークの先に。社員の介護、移住をかなえた先駆者・日本マイクロソフトの取り組み

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