女性を悩ませる「PMS」の治療で利用されている薬「ピル」。今回は、ピルの安全で正しい飲み方、副作用、注意点などをご紹介します。
この記事の監修ドクター
むさしのレディースクリニック院長大田昌治先生 武蔵境駅北口より徒歩2分の助産師がいる産科・婦人科クリニックです。 いつも患者様に寄り添っていける産婦人科のかかりつけ医でありたいと思っています。女性のトータルライフをサポートしていきます。 http://musashino-ladies.jp
PMSとは
PMSって何?
PMS(Premenstrual Syndrome)とは「月経前症候群」のことです。その名の通り、月経(生理)の前の時期に女性のみなさんを悩ませる「不快な症状」が出ます。「月経の前はなんだか調子が悪いな」という人は、実はすでにPMSに悩まされているのかもしれません。
どうしてPMSになるの?
原因のもとをたどれば「月経(生理)があるから」ということになります。第二次性徴を迎えた女性は、生理が始まることで妊娠が可能となります。生理は、「エストロゲン」と「プロゲステロン」という2つの女性ホルモンの変動によっておきますが、これが、PMSの発症に関わっているといわれています。しかし、はっきりとした原因はまだわかっていません。ただし今回ご紹介するように「ピルを服用する」などをすることで、PMSの軽減を期待することができます。
PMSの症状
PMSとはどんな症状?
PMSの大きな特徴は「症状の多様性」です。人それぞれ全く異なる症状が出ることも珍しくありません。以下「心の症状」と「身体の症状」を2つに分けて、代表的な症状をご紹介します。
【心の症状】 ・抑鬱になる ・イライラする ・混乱する ・激しい怒り ・気持ちが不安になる ・集中力が低下するなど
【身体の症状】 ・下腹部の膨張感 ・乳房痛 ・むくみ ・頭痛など
このように、たくさんの症状があります。なお、PMSの中でも特に重い心の症状が出ている場合には「PMDD(月経前不快気分障害)」と診断されます。また、月経に関係はするけれどPMSではない疾患もあるのでご注意ください。代表的な疾患としては、「月経困難症」「更年期障害」が挙げられます。
PMSチェックで診断を !
PMSには診断基準(ACOG practicebulletin 2000)があります。その中から、自分でも確認できる部分をご紹介します。(※)
・過去3回の生理、月経前の5日間において、「精神症状」(抑鬱、いらだち、混乱、不安、怒りの爆発、社会からの引きこもり)「体の症状」(頭痛、乳房の痛み、下腹部の膨張感、手足のむくみ)のどれか1つの症状が出た。
・生理スタートから症状が4日以内に軽くなり、13日目までは再発しない。
・服用中の薬やアルコールによって出た症状ではない。
以上の3つに当てはまったら、PMSの可能性が高いと考えられます。症状が重い場合には、病院できちんとした診断を受けることがおすすめです。
(※日本産科婦人科学会ホームページ「E.婦人科疾患の診断・治療・管理」http://www.jsog.or.jp/PDF/61/6112-657.pdf)
PMSはいつからいつまで?
PMSは生理周期の中の「黄体期」と呼ばれる時期に重なると考えられます。この時期はプロゲステロン(黄体ホルモン)の分泌量が増加する時期。具体的には「月経がスタートする14日前から、月経の直前程度」までに当たります。そして多くの場合、PMSの症状は「月経の3日前から10日前」位の間に起こると考えられます。なお、PMSの期間にも個人差があり、月経が始まって数日間も症状が続く人もいるようです。(※)
(※日本産科婦人科学会ホームページ「E.婦人科疾患の診断・治療・管理」http://www.jsog.or.jp/PDF/61/6112-657.pdf)
PMSの治療法~ピルの効果と付き合い方~
ピルって何?
避妊目的として有名な「ピル」は、2種類の女性ホルモン(エストロゲンとプロゲステロン)を合わせた薬です。ホルモンバランスをコントロールすることが可能ですので、PMSや生理痛の症状緩和にも役立ちます。通常処方されることが多いのは「低用量ピル」(OC)と呼ばれるもので、日本では1999年に認可されました。
ピルの安全で正しい飲み方
処方された低用量ピルは、毎日同じタイミングで飲むことが重要です。必ずしも即効性が期待できるわけではありませんが、まずは数カ月間、継続して服用してみましょう。飲み忘れると、期待する効果が得られないこともありますので注意が必要です。
なお、タバコを吸っている女性(喫煙者)は、ピルを服用することができません。喫煙すると血管が収縮することなどが知られていますが、血栓症のリスクを高めてしまうからです。PMSに悩む女性は、ピルを処方してもらうためにも、禁煙することがおすすめです。
ピル服用後の症状
ピル服用によって期待通りの効果が現れると、PMSの症状は軽減します。ホルモンバランスが整い、気持ちが安定し、様々な不調が改善されます。PMSのために仕事や学業に支障が出ていた人も、また普段通りの生活が送れるようになることも期待できます。
ピルの副作用について
低用量ピルを飲み始めたばかりの頃には、不正出血、頭痛、乳房の張り、軽度の吐き気などが出る場合もあります。ただし、自己判断で服用を止めてしまわず、どうしても辛い場合は医師に相談してください。多くの場合、服用を継続することで、これらの症状はおさまっていきます。
ピル服用のメリットとデメリット
ピルを服用することには、メリット・デメリットの2つの側面がありますので、きちんと確認しておきましょう。
【ピル服用のメリット】
・PMSほか、生理痛、貧血(月経血が多い場合)の改善が期待できる ・美容にプラスになることがある(多毛の改善、肌トラブルの改善など) ・長期服用により、卵巣がん、子宮体がんなどのリスクが低下する ・イベントなどに合わせて、生理日をコントロールしやすい
【ピル服用のデメリット】
・喫煙者は服用できない ・必ずしも期待通りの効果が現れるわけではない ・飲み始めの時期に副作用が出る恐れも
ピルが合わない!漢方薬での治療は?
副作用が強く出てしまうなど、ピルが体質に合わない人は、漢方薬を試してみる方法もあります。病院で処方しているケースもあるので、医師に相談してみましょう。なお、漢方薬も副作用はゼロではありませんので、医師に経過を見守ってもらいながら服用することがベターです。
PMSの対策
お家でできるPMS対策
生活面での改善が、PMS対策になることもあります。具体的には「食事」「運動」の2つは、お家でも簡単にできる対策と言えるでしょう。
【食事でPMS対策】
PMSの中でも特に気持ちが不安定になっている場合には、神経の興奮を抑えることで、その軽減が期待できる場合もあります。具体的には「カフェイン」「辛いもの」など、刺激物の摂取を避けましょう。このほか、十分なミネラルやビタミンの摂取を心がけることで、情緒の安定を期待することができます。
【運動でPMS対策】
軽い運動が心身のリフレッシュとなり、PMSの軽減につながることがあります。例えば公園や街中を軽く散歩してみたり、今流行の「ヨガ」を試してみるのも良いでしょう。あまりアクティブに運動する気になれない人は、定期的にストレッチをしてみたり、ゆっくり深呼吸してみるのも良い方法です。
PMS対策に市販薬は効果的?
PMSの症状に応じて、市販の鎮痛剤、整腸剤、吐き気止めなどを飲むことは可能です。しかし、症状がひどい場合には、セルフケアで市販薬ばかり飲んでいても、ほとんど症状が改善しないというケースもあります。PMS治療薬として注目される「低用量ピル」や精神安定剤などは、医師の診察と処方箋が必要となります。
サプリメントでの対策方法
PMSの症状の中でも、ニキビや肌荒れに悩まされている場合には、ビタミンB群やビタミンCのサプリメントの摂取も効果的。しかしサプリメントに頼り切らず、医師に相談することがおすすめです。
まとめ
運動、食事などセルフケアもある程度は有効なPMS。ただし、日常生活に支障が出るなど、症状がひどい場合には、1度速やかに医療機関へ相談することがおすすめです。そもそも「私ってPMSかな?」とよくわからない人も、病院へ行ってみたほうが良いでしょう。