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ベーシックインカムのデメリットとは?導入事例から見る制度の問題点をFPが解説

目次

世界各国で新たな社会保障として注目されているベーシックインカム。国が国民全体に基本的な所得を保障するこの制度は、2020年に起こったコロナウイルスの感染拡大によって、さらに注目を浴びています。

しかし、ベーシックインカムは問題点も多く、話題には上がるものの導入に踏み切る自治体はなかなか出てきません。この記事ではベーシックインカムの制度と問題点を解説します。

ベーシックインカムとは?制度の概要

ベーシックインカムとは?制度の概要

ベーシックインカムとは、国が国民全体に生活保障のためのお金を給付する社会保障政策です。生活保護をはじめとした既存の社会保障政策は、受給するのに一定の条件があります。一方、ベーシックインカムは無条件で支給するという特徴があります。

ベーシックインカムは社会主義的な考えとは違い、資本主義社会の下支えとなる政策です。最低限の生活を保障して、それ以外の収入や経済活動は国民が自由に行うことができます。

ベーシックインカムが注目されている理由は現在、各国で起こっている社会課題に対して有効な解決策となるポテンシャルがあるからです。

ベーシックインカムを導入するメリット

ベーシックインカムは低賃金や働けない人への保障となるとともに、人々の働き方や会社の在り方を変えるインパクトのある政策です。ここからはベーシックインカムを導入すると、どのようなメリットがあるかをご紹介します。

職業選択や生き方を自由に選べる

ベーシックインカムの導入は「収入がなくなるかも」という不安をなくします。「収入のために我慢して労働する」という労働目的がなくなることで、職業選択の自由度が増えます。

特に、起業やアーティストへの挑戦など、決められた賃金がない職業へいつからでも挑戦がしやすい環境になるでしょう。生活が保障されれば働き方も変わります。特に子育て中の世帯にとって、働く時間に融通が効くのは大きなメリットです。

また、ベーシックインカムは子供も1人の国民としてお金が支給されるため、少子高齢化対策になる可能性も秘めています。

労働環境の改善

近年、問題になっているブラック企業。労働環境が悪い会社とわかっていながらも、失業状態が怖くて働かざるを得ない人も多くいます。ベーシックインカムが導入されれば失業状態の不安がなくなるため、ブラック企業で働く人は少なくなるでしょう。

結果的に労働環境がよい会社が残ることになり、労働環境は改善されていくはずです。

社会保障の一本化

現在は生活保護、雇用保険、国民年金など社会保障がさまざまな形に分かれていますが、ベーシックインカムが導入されると、これらの社会保障が一本化されてシンプルになります。

現在の制度では、国民は適用される社会保障それぞれに申請しなければなりません。制度を知らなければ、適用される社会保障でも受け取れないのです。しかし、ベーシックインカムは無条件で全員に給付されるため、このような受給漏れはなくなります。

行政にとっては、社会保障が一本化することでさまざまな申請の手続きに関した労力を減らすことができます。人員配置も少なくて済むため、社会保障に関わるコストを圧縮することもできます。

ベーシックインカムの導入事例

ベーシックインカムの導入事例

ベーシックインカムを継続的に導入している国はありません。しかし、いくつかの国・自治体では実験的に期間限定で導入しています。ここではベーシックインカム実施国の導入事例をご紹介します。

フィンランドでの導入事例

フィンランドでは2017年から2018年までの2年間に渡ってベーシックインカムの導入実験を行っています。

対象者
2016年11月時点での失業手当受給者(25歳〜58歳)の中から無作為に抽出した2000名

支給額
毎月560ユーロ(約6万5000円)

2020年に研究チームから発表された最終報告書によると、ベーシックインカム受給者のほうが生活に対する満足度は高く、精神的なストレスを抱えている割合が少なかったと言います。

ベーシックインカムによって自律性が高まったというインタビュー回答も多く、実際にベーシックインカムによってボランティア活動などに新たに参加したケースもありました。

フィンランドの国民アンケートでは、ベーシックインカムの導入に46%が「賛成」もしくは「部分的に賛成」としています。

カナダでの導入事例

MINCOME

カナダでは異なる州で2度、ベーシックインカムの導入実験が行われています。1度目はマニトバ州ドーフィンで1974年〜1979年の5年間に渡って行われた「MINCOME」と呼ばれる実験です。

対象者
すべての世帯を対象

支給額
世帯によって変わる(MINCOME以外の収入1ドルにつき50セント支給額を減らした)

2011年に発表された最終報告書によると「入院期間の減少」「高校課程への進級」に成果があったとされています。一方、「出生率の増加」には影響が出ていないとされました。

MINCOMEは実施していた政権が力を失ったことで終了。2009年までデータの分析も行われませんでした。そのため、一部データは不明なままとなっています。

オンタリオ州の導入事例

2度目はオンタリオ州で2017年に行われています。

対象者
低所得層の約4000人

支給額
年収3万4000カナダドル(約290万円)以下の単身世帯:年間最大1万7000カナダドル(約150万円)
年収4万8000カナダドル(約410万円)以下のカップル:年間最大2万4000ドル(210万円)

当初は3年間の予定でしたが、実施の1年後に政権交代がなされたことで、ベーシックインカムは終了しました。政権交代後の州政府は失敗だったと発表していますが、研究チームからは成果があったと報告されています。

研究チームによると、年収が一定額を超えるとベーシックインカムが支給されない制度にもかかわらず、4分の3が仕事を継続したとされています。また、仕事を辞めた人の約半数は学校に通い始めており、次のキャリアにつながる行動をしていたそうです。

約8割が健康状態が改善し、不安やストレスが減ったとアンケートで回答していますし、食生活の改善や通院の頻度の減少など一定の効果が出た結果となったのです。

ベーシックインカムの問題点とは?

ベーシックインカムの問題点とは?

ベーシックインカムの導入事例からはポジティブな結果が出ているにもかかわらず、導入が広がらないのはなぜでしょうか。

ベーシックインカムの導入は国の政策を根底から覆すインパクトがあり、課題も多くあります。ここではベーシックインカムの問題点と、導入事例から見る問題点の分析をご紹介します。

労働意欲の低下

ベーシックインカムの導入によって働かなくてもよい環境ができ上がると、労働意欲の低下が懸念されます。労働人口が減少すると、結果的に国自体の発展が阻害されてしまうのです。

全体的な失業率が悪化しなかったとしても、業種によって労働力に差が出るかもしれません。例えば、製造業や建設業といった体力的にきつい業種の人気が下がり、労働力を確保できなくなるかもしれません。

また、公務員や医療関係者などの労働力が減ると国全体の社会保障が成り立たなくなってしまいます。

導入事例から見る問題点への影響

フィンランドの導入事例では、報告チームより「雇用への影響は限定的だった」と発表されました。

カナダでもMINCOMEでは「住民の労働時間に大きな差は出なかった」、オンタリオ州の導入では「4分の3が仕事を継続し、辞めた半数もキャリアアップのために行動した」と、労働意欲の低下を示す結果は出ていません。

導入の年数が初めから限られていたことが結果に影響を与えていますが、労働意欲が低下するという仮説は実際には実証されていないのです。

財源が確保できない

ベーシックインカムの導入には多額の財源が必要となります。

例えば、月に10万円を日本国民約1.2億人に支給するとしましょう。年間で144兆円がベーシックインカムに必要となります。2020年度の日本の国家予算案の一般会計は102兆円。社会保障費は35兆円規模です。

現在の国家予算案を超える金額をベーシックインカムだけに投入しなければなりません。そのためには抜本的な税制改革によって税収を上げる必要があります。

導入事例から見る問題点への影響

カナダの2度の導入実験は政権交代によって途中終了していますが、理由はどちらも財源不足や適切な支出ではないという判断からです。ベーシックインカムを導入するには国民の理解と税制改革が大きな壁として立ち塞がるでしょう。

ベーシックインカムが日本で導入される可能性

ベーシックインカムが日本で導入される可能性

ベーシックインカム導入の議論は日本でもされており、希望の党では一時期、公約にも掲げられていました。コロナウイルスの感染拡大によって、日本全体で減収や解雇が問題になったことで議論の盛り上がりも見せています。

しかし、実際には日本での実現の可能性は低そうです。これには下記の事情が関係します。

導入した国は高福祉国である
日本は増税して社会保障を充実させようという考えが浸透していない

フィンランドやカナダは高福祉国と呼ばれる国で、「税金を高くして、社会保障を充実させる」という考えを持っています。例として日本・フィンランド・カナダの公的社会支出の対GDP比と消費税率を見てみましょう。

公的社会支出の対GDP比と消費税率

公的社会支出の対GDP比
消費税率

日本
約23%
10%

フィンランド
約31%
24%

カナダ
約17%
5~25%

カナダは日本よりも公的社会支出の対GDP比が少ないですが、カナダは高齢化率が低く(日本:28%、カナダ17%)、年金の支給額が低いことが理由です。カナダは基本的な医療費が無料など福祉制度は非常に充実しています。

つまり、日本では税金を高くして社会保障を充実させようという考えがフィンランド・カナダより浸透してないため、国民の理解を得ることが難しいのです。特に、大きな反対が起こりそうな3つのポイントを紹介します。

https://manetasu.jp/1283036

導入には税金の増税は避けられない

前の章でも紹介したように、ベーシックインカムの導入には大きな財源が必要となります。現在の税制では厳しいため、増税や税制改革は避けられないでしょう。消費税の10%増税が反対によって何度も延期されたことからもわかるように、日本では増税へのハードルは非常に高いです。

医療費などより大きい保障の扱い

ベーシックインカムが大きな社会保障となるため、ほかの社会保障は縮小されます。つまり、ベーシックインカムで賄えない費用は自己負担になるのです。

例えば、多額の医療費がかかった場合、現在は上限なく保障されます(高額療養費制度)。ベーシックインカム導入によって高額療養費制度がなくなった場合、医療費が払えないことで治療を諦める人が出てくるかもしれません。

ベーシックインカムでは賄えない負担への社会保障が薄くなるという課題を解決しなければならないのです。

https://manetasu.jp/1258241

ベーシックインカムの成功例がない

ご紹介したフィンランドやカナダ以外にもアメリカやケニアなどでベーシックインカム導入の実験は行われています。しかし、明確に成功したという事例は今のところありません。ケニアでは12年間続けていますが、多くの事例では途中で中止や大きな制度変更をしています。

実験のデータからは一定の成果が認められていますが、継続的な導入ができる制度設計まではできていません。まだ、成功例がない制度を導入するのはハードルが高いのです。

ベーシックインカムのデメリットに関するまとめ

この記事ではベーシックインカムの制度・導入事例・問題点を解説してきました。

ベーシックインカムは国の制度を大きく変えるため、課題も数多くあります。しかし、貧富の差が激しくなっている現在では、画期的な解決策として検討すべき政策の1つです。これからのベーシックインカムに注目してみてはいかがでしょうか。


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この記事の著者

マネタス

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