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石川次郎さんが自宅にオフィスを移転!“豊かな隠居生活”とは? あの人のお宅拝見[16]

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当記事はSUUMOジャーナルの提供記事です

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石川次郎さんが自宅にオフィスを移転!“豊かな隠居生活”とは? あの人のお宅拝見[14]

本連載で河口湖にある石川次郎さんの別荘を取材させてもらってから3年。雑誌編集界の大御所は今なお現役で活躍中。そんな次郎さんから「事務所を自宅に引越したから遊びに来ない?」と連絡をいただきました。テレワーク(リモートワーク)が今後も進むご時世。緊急事態宣言解除で少々落ち着いたころ、都内の次郎さん@ホームオフィスに興味津々で伺いました。連載【あの人のお宅拝見】
「月刊 HOUSING」編集⻑など長年住宅業界にたずさわってきたジャーナリストのVivien藤井繁子が、暮らしを楽しむ達人のお住まいを訪問。住生活にまつわるお話を伺いながら、住まいを、そして人生を豊かにするヒントを探ります。「隠居って自己実現なんだ」。自分時間が増え、よりクリエイティブに

石川次郎さんはマガジンハウス社から独立後、東京・代官山に事務所(JI inc.)を置き、30年近く編集・企画などの事業経営をされてきました。なぜ、代官山のマンションの一角、ペントハウスで160平米もあった事務所を引き払って自宅に? コロナ禍に何があったのでしょう……。
梅雨どきで雨に降られながら、杉並区にある自宅兼事務所へお邪魔しました。

ご自宅は駅近に建つ一戸建て、アールの外観がモダンな建物。オフィス入り口は正面玄関とは別の、半地下に降りた青い扉(写真撮影/片山貴博)

ご自宅は駅近に建つ一戸建て、アールの外観がモダンな建物。オフィス入り口は正面玄関とは別の、半地下に降りた青い扉(写真撮影/片山貴博)

玄関を入ると、ホームオフィスがワンルームで広がっていました。
ガラスブロックの明かり採りがあるスペースのテーブルでお話を伺うことに。

事務機器や家具はすべて、旧事務所から持ってきたもの。「ここに入らない大きなテーブルなどは、知人に使ってもらったり処分したり」。相当な断捨離だった様子(写真撮影/片山貴博)

事務機器や家具はすべて、旧事務所から持ってきたもの。「ここに入らない大きなテーブルなどは、知人に使ってもらったり処分したり」。相当な断捨離だった様子(写真撮影/片山貴博)

アールのガラスブロックは半地下の部屋に光を採り込む機能ともに、棚としても良い高さに設計されていた。代官山の事務所にあった書籍類は1500冊くらい処分したそう(写真撮影/片山貴博)

アールのガラスブロックは半地下の部屋に光を採り込む機能ともに、棚としても良い高さに設計されていた。代官山の事務所にあった書籍類は1500冊くらい処分したそう(写真撮影/片山貴博)

「年齢も80近くになってきたし、仕事をダウンサイジングするのに良い時期だと思って」
この数年で編集という仕事のスタイルも大きく変化しテレワークが当たり前になっていること、さらにコロナ騒ぎで海外取材の仕事がほとんど延期や中止になってしまったことなどがきっかけとなり、このステイ・ホーム中に代官山のオフィスを自宅に移すことを即断したそうです。

「横尾忠則さんが書いた『隠居宣言』(2008年・平凡社新書)という本を改めて読んで、“隠居”するのは自分がやりたい事をするため、自己実現のためという言葉に共感を覚えた」
アーティストの横尾忠則さんとは若いころから親しくされている次郎さん。80歳前後で元気に活躍される仲間が多いのにも驚かされてしまう。

奥に広がるのは、リビングのようなリラックススペース@ホームオフィス。以前は貸していた2住戸をブチ抜き、広いワンルームにリノベーション(約65平米)(写真撮影/片山貴博)

奥に広がるのは、リビングのようなリラックススペース@ホームオフィス。以前は貸していた2住戸をブチ抜き、広いワンルームにリノベーション(約65平米)(写真撮影/片山貴博)

右手の壁を一面だけ、グレー系ブルーにペイントしたのは次郎さんのアイデア。
「パリへ取材に行ったとき、一面だけカラーペイントするのが流行ってたんだ。それを思い出してね」。薄い青色を選んだのは「半地下の部屋で、空を感じることができればと思って」

「上階の自宅でカミさんとの夕食を済ませたら、さっさと降りてきて、好きな映画を一人でじっくり観る。通勤時間が無いと、こんな豊かな時間ができるなんて考えてなかったよ。一人の時間が充実すると、また新たにやりたいことが頭に浮かんでくるんだ」
半世紀、東京のド真ん中で業界人として名を馳せ、走り続けた次郎さんの新たな日常が始まっていました。

「自分は良かったけどスタッフや通ってくる仕事仲間たちには、狭いし不便になるし、どうかなぁって心配してたんだけど。結構イイって、皆が言ってくれるんだよね」

窓辺に置かれたデスクに、スタッフ用のMacが並ぶ。私もここなら気持ちよく仕事できそう(笑)(写真撮影/片山貴博)

窓辺に置かれたデスクに、スタッフ用のMacが並ぶ。私もここなら気持ちよく仕事できそう(笑)(写真撮影/片山貴博)

コンパクトになった空間に詰まった、ストーリーのあるインテリア

クリエイティブなお仕事のオフィスらしく、素敵なデザインの家具やグッズが並んでいました。
それらには驚きのストーリーが、次々と……。
例えば壁に飾られたモノクロ写真はすべて、仕事をご一緒された国内外の著名な写真家たちからプレゼントされた貴重なオリジナル・プリントです。

「これは知ってるでしょ?革命家チェ・ゲバラの有名な1960年当時のポートレート。そのもとになったこの写真を撮ったのは、フィデル・カストロ付きの写真家、アルベルト・コルダ」。物語と意味のある作品ばかり、次郎さんの歴史そのもの(写真撮影/片山貴博)

「これは知ってるでしょ?革命家チェ・ゲバラの有名な1960年当時のポートレート。そのもとになったこの写真を撮ったのは、フィデル・カストロ付きの写真家、アルベルト・コルダ」。物語と意味のある作品ばかり、次郎さんの歴史そのもの(写真撮影/片山貴博)

それ以上に私を驚かせたのは、この家具セット。ライティング・デスクは折りたたみ式で収納するとコンソールにもなるのですが、
「これ、福山雅治クンのお下がりなんだ(笑)彼が引越す時にもらったの、前の事務所ではもう一つ本棚も使ってたんだけど」
これまた、スゴイ人脈が出てきました!

「流石、福山雅治!」と言ってしまいたくなる、この家具。日本でも人気のB&B Italia社でアントニオ・チッテリオがデザインするコレクション『MAXALTO』のもの。洗練されたクラフトマンシップが素晴らしいシリーズ(写真撮影/片山貴博)

「流石、福山雅治!」と言ってしまいたくなる、この家具。日本でも人気のB&B Italia社でアントニオ・チッテリオがデザインするコレクション『MAXALTO』のもの。洗練されたクラフトマンシップが素晴らしいシリーズ(写真撮影/片山貴博)

床はサイザル麻のカーペットタイルを採用、足にも優しい自然素材なのでホームオフィスにぴったり。

35年前、このご自宅を設計されたのは建築家の阿部勤(アルテック代表)。ル・コルビュジエに師事した日本を代表するモダニズム建築家、坂倉準三のお弟子さん。
「だから、阿部さんはコルビュジエの孫弟子だよね。ちょうど、コルビュジエの版画があるので、どこかに飾ろうかと思って」 

コルビュジエのモデュロール(黄金比からつくった基準寸法)をモチーフにした版画。コンクリート打ち放しの梁がモダン建築らしい(写真撮影/片山貴博)

コルビュジエのモデュロール(黄金比からつくった基準寸法)をモチーフにした版画。コンクリート打ち放しの梁がモダン建築らしい(写真撮影/片山貴博)

私が次郎さんに初めてお会いしたのはミラノ、その思い出につながるオモチャも棚に見つけた!

ドイツのMiele社の赤いトラック・ミニカー。Miele社のお仕事をミラノ・サローネでご一緒したのが次郎さんとのご縁。オフィスにある物、一つ一つにストーリーがあって会話が弾む(写真撮影/藤井繁子)

ドイツのMiele社の赤いトラック・ミニカー。Miele社のお仕事をミラノ・サローネでご一緒したのが次郎さんとのご縁。オフィスにある物、一つ一つにストーリーがあって会話が弾む(写真撮影/藤井繁子)

「当分は、アームチェア・トラベラー」。変わらぬ“旅“への想い

「生活のリズムは全く変わっちゃったね」と楽しそうに語る次郎さんに、御隠居さんの風は無い。
朝起きると、すぐに降りてきてオフィスのキッチンで朝食をつくるのが日課になったそう。「朝メシつくるなんて初めてだから、カミさんは手がかからなくなって一番喜んでる」。ライ麦パンにこだわってつくる朝食、最近のお気に入りは
「アボガド・トースト。ニューヨークで食べたのを思い出しながらつくってる」

8時に出勤、「スタッフより早く出勤するなんて、無かったからね(笑)」。夜も毎日のように外食だったのが、今は基本的に自宅で夕食を食べるそう。
「代官山時代は会食も惰性で毎日のようにスケジュールに入れていたけど、それが今は、街に出かけるってなると大イベント、気分が盛り上がる(笑)。興味の持ち方も変わった。毎日通っていた渋谷にも再発見がある」。半世紀も暮らした街とは思えない、新たな魅力を見つけるのも隠居効果のようです。

「自分の時間が圧倒的に増えた」。そんな次郎さんの関心ごとは、社会人になった時から変わらない原点の“旅”。
「まだ海外へは出られないから、しばらくは“アームチェア・トラベラー”だね」。“アームチェア・トラベラー” とは、旅行雑誌や旅行小説、探検記などを見て、自宅のチェアに腰掛けながら旅の気分に浸る人。探究心や想像力があれば、ウィズ・コロナ時代でも旅人にもなれるわけですね。

そんなイマジネーションを高める、素敵な旅行ガイドブックを見せて下さいました。
『ルイ・ヴィトン シティ・ガイド』、あのヴィトンが1998年から発行するガイドブック。『Paris』から『Cape town』など世界の都市別になっており、ハンディなサイズで、シリーズはヴィトンらしいデザインBOXに入っていました。「ヴィトンの関係者など面白い人たちのローカル情報だから、内容がユニークなんだよ」

“究極の旅の伴侶”として発行された「ルイ・ヴィトン シティ・ガイド」(仏語版・英語版)。2020年に改訂の『シティ・ガイド 東京』には、建築家・隈研吾が特別寄稿。後ろにあるのは『GULLIVER』(マガジンハウス社)、次郎さんが1989年に創刊した旅行雑誌(写真撮影/片山貴博)

“究極の旅の伴侶”として発行された「ルイ・ヴィトン シティ・ガイド」(仏語版・英語版)。2020年に改訂の『シティ・ガイド 東京』には、建築家・隈研吾が特別寄稿。後ろにあるのは『GULLIVER』(マガジンハウス社)、次郎さんが1989年に創刊した旅行雑誌(写真撮影/片山貴博)

このホームオフィスにも、海外で実体験して良かったことを取り入れていて、次郎さんにとって旅はライフスタイルそのもの。

ちなみに、オフィスのリノベでこだわったサニタリールームには、海外のホテルでよく見るオーバーヘッドのシャワーが付いていました。

「天井からのレインシャワーにしたかったけど、天井の高さが足りなくてできなかったので、パイプ一体型のオーバーヘッドシャワーをハンスグローエ社で見つけた」。これから夏場は大活躍しそう(写真撮影/片山貴博)

「天井からのレインシャワーにしたかったけど、天井の高さが足りなくてできなかったので、パイプ一体型のオーバーヘッドシャワーをハンスグローエ社で見つけた」。これから夏場は大活躍しそう(写真撮影/片山貴博)

社会人になってからサラリーマン編集者として約25年、編集プロダクション経営者として約25年、そしてこれからの仕事に対するスタンスを伺うと……
「若いころから、仕事は面白くなければ!って言ってやってきた。これからは、より自己実現に向かう旅路かな」

「こんな雑誌をつくりたいんだよ」と手に取って見せてくれたのは『Holiday Magazine』。元はアメリカで1946年に創刊されたハイクオリティな旅行雑誌、その廃刊後、2014年にフランス人アートディレクターのフランク・デュランがパリで復刊したラグジュアリートラベル誌です。
「雑誌特有の良さはまだあるはずなんだ。手元に置いておくだけでHappyになれる、そんな雑誌をつくりたいね」

『HOLIDAY』は旅とファッションを融合したビジュアル誌、旅行誌らしからぬ表紙(この号の特集はブータン。あっ、Tシャツも『HOLIDAY』だ!)有名フォトグラファーが撮っているので写真のクオリティが半端ない、次郎さんのやりたい方向ですね(写真撮影/片山貴博)

『HOLIDAY』は旅とファッションを融合したビジュアル誌、旅行誌らしからぬ表紙(この号の特集はブータン。あっ、Tシャツも『HOLIDAY』だ!)有名フォトグラファーが撮っているので写真のクオリティが半端ない、次郎さんのやりたい方向ですね(写真撮影/片山貴博)

次郎さんの隠居生活、まだまだ夢に向かって進むようです。これから上階にお引越し予定のお孫さんとの異世代交流が、新たな刺激になるかも?
「自己実現は健康でなきゃできない。ステイ・ホームのお陰で会食も減ってダイエットできたのは良かった(笑)」
御年79歳、次郎さんの隠居生活@ホームオフィスの新たな門出を祝福!

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あの人のお宅拝見[1] 編集者・石川次郎さんのセカンドハウス(前編)
あの人のお宅拝見[2] 編集者・石川次郎さんのセカンドハウス(後編)

石川次郎
エディトリアル・ディレクター。編集プロダクションJI inc.(株式会社ジェイ・アイ)代表取締役。1941年、東京生まれ。
早稲田大学卒業後は海外旅行専門のトラベル・エージェントに勤務。約2年後、平凡出版株式会社(現マガジンハウス)に入社、『平凡パンチ』誌で編集者生活をスタート。『POPEYE』『BRUTUS』『Tarzan』『GULLIVER』などの雑誌の創刊作業を担当し、編集長を歴任。1993年同社退社、JI inc.設立。ラグジュアリー誌『SEVEN SEAS』(アルク社)編集長や、六本木ヒルズの「TSUTAYA TOKYO ROPPONGI」、川崎の「LA CITTA DELLA」など商業施設のプロデュースなども手掛ける。1994年~2002年テレビ朝日「トゥナイト2」の司会としても知られている。 住まいに関するコラムをもっと読む SUUMOジャーナル

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