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「この費用は経費で落とせません」といった言葉を聞いたことはないでしょうか。これは「この費用は損金不算入になります」という意味です。収益や費用が会計用語であるのに対し、益金や損金は税法において使われる用語です。
今回は税金の知識として、経営者が知っておくべき損金や損金不算入について解説していきます。
費用と損金、収益と益金は基本的には同じ性質のものといえます。しかし、会計と税務ではそれぞれ目的が異なるために、両者には部分的にズレが生じる項目があります。
会社は毎期決算書を作成し、公表しなければなりません。この決算書である貸借対照表や損益計算書を、利用者にとって価値のある情報として作成することが会計の目的です。
簡単にいえば、会社の利益を正しく計算することをその目的としています。
税務の目的は、税金をすべての法人や個人に公平に課税すること、および国や自治体が税収を確保することを目的としています。会計の目的が利益を計算することであるのに対し、税務の目的は税金の計算を適正にすることといえます。
利益の計算と税金の計算という異なる目的を達成するために、たとえば帳簿を2つ用意して会計用と税務用の2種類の決算書を作成するのは、会社にとって大きな負担となります。
そこで我が国では、これら2つの目的を同時に達成するために、会計上の利益を計算したあと、税務の目的に合うように会計上の利益を調整することによって、課税所得を算出し、その結果に基づいて税金の計算を行うこととしています。
費用と損金の違いは、費用は会計上の用語であり、損金は税法上の用語という違いがありますが、実質的に両者はほぼ同じ概念と考えていいでしょう。
一般的に、会社が企業活動のために支出した金額のことを費用といいます。たとえば、従業員の給料や交際費、消耗品費、旅費交通費などが費用にあたります。そして、会計上のほとんどの費用が税法上においても損金となります。
上で述べたとおり、ほとんどの費用は損金として認められます。言い換えると、ほとんどの費用が「損金算入」となります。
しかし、税務の目的である課税の公平と税収確保の観点から、会社が支出したすべての費用が損金として認められるわけではありません。この損金として認められない項目が「損金不算入」とよばれるものです。
https://manetasu.jp/1288666
法人税の計算は、「(課税)所得」に「税率」を乗じて求められます。計算式自体は単純なものですが、計算するうえでは会計や税務の知識は必要になってきます。
法人税の税額=(課税)所得×税率
「利益」や「所得」という用語は聞いたことがあるかと思います。両者は同じように思えますが、似て非なるものです。法人税の計算においては利益と所得の違いを知っておかなければなりません。
利益とは、会社の儲けを表します。日々の取引を帳簿に記帳し、売上高などの収益から仕入高や各種経費などの費用を差し引いたものが利益です。
利益 = 収益 - 費用
決算書では「当期純利益」の科目で表示されています。利益は、会社の儲けであって、このまま税金を計算するための所得とすることはできません。
所得とは、税金の計算のベースとなるものです。税務上、収益を「益金」、費用を「損金」といいます。そして、益金から損金を差し引いたものが所得となります。
所得 = 益金 - 損金
実務上は、収益と益金、費用と損金にはズレがあり、費用として計上したが損金とは認められない項目があります。このようなズレを、会計上の利益から税法上の益金と損金になるように調整を行い、所得を計算していきます。
所得の金額が求められたら、所得に税率を乗じて法人税の金額を計算します。法人税の税率は、会社の規模やその年の所得金額によって異なります。中小企業(資本金1億円以下)の税率は以下のように定められています。
所得が800万円以下の部分:15%
所得が800万円を超える部分:23.2%
それでは、費用のうち、損金とは認められない損金不算入項目について見ていきましょう。
役員報酬・役員賞与
交際費
寄付金
減価償却超過額
税金
社長や常務取締役など、会社の役員に対する報酬や賞与は原則として損金不算入となります。役員は自分たちの報酬を自分で決定できます。自分の報酬を増やして税金を減らそうと考える経営陣が出てくることを防ぐため、このような規定が設けられています。
ただし、以下の場合においては一定額の役員報酬について損金算入が認められています。
毎月、同額の報酬が支払われるもの(定期同額給与)。いわゆる月給をいいます。
ボーナスなど事前に税務署に「支給金額」「支給時期」などを届け出ているもの(事前確定届出給与)。
法人の株価や利益などの指標を基準として算定される報酬(業績連動給与)。上場企業を想定とした給与である。
なお、上記の3つの役員報酬であったとしても、常識的にあまりにも高額な報酬の場合には損金不算入となります。
取引先など社外での飲食接待費は交際費となりますが、会社の規模によって損金算入が認められない場合があります。
資本金1億円以下の中小企業や自営業は年間の社外接待費用の半額、または800万円まで損金算入が認められます。一方、資本金1億円超の大企業では交際費のうち、社外接待費用の半額が損金に算入できます。
言い換えれば、すべての企業や自営業者は、社外での接待費のうち半額を損金に算入することができます。
中小企業(資本金1億円以下)や自営業者の場合は、飲食を伴う接待に年間1,600万円以上を使うことは現実的とはいえないので、800万円までは全額損金算入できると考えていいでしょう。
一方で大企業の場合は、飲食接待費の損金算入は支出総額の半額までが損金算入が可能です。
交際費の損金算入・不算入は税務調査の際の指摘事項になりやすく、会議費や福利厚生費であっても交際費とされる場合があるので注意が必要です。
学校や神社など企業活動とは直接関係なく、見返りを求めない支出とされるのが寄付金です。寄付金も意図的に税金を減らせる可能性があるので、損金に算入できる限度額が税法により定められています。
寄付金の損金算入限度額の計算は以下の算式から求められます。
寄付金の損金算入限度額 = {(資本金の額×2.5/1000)+(所得の金額×2.5/100)}× 1/4
ただし、国や地方自治体への寄付金は全額損金算入が認められます。
税務上、毎期計上できる減価償却費には限度額が設けられています。その限度額を超えた場合、超えた金額については損金に算入することができません。
限度額の計算には税法で定められている法定耐用年数を参考に計算します。法定耐用年数は減価償却資産の種類、細目ごとに決まっています。
たとえば、機械を1,200万円で購入し、会計上6年で毎期償却したとすると、年間200万円が減価償却費になります。
しかし、税務上の法定耐用年数が10年だった場合、1年間に償却できる上限額は120万円です。したがって、この場合は80万円(= 200万円-120万円)を損金不算入として処理します。
https://manetasu.jp/1287407
我が国にはさまざまな税金の種類があり、その中には損金に算入できるものと算入できないものがあるので注意が必要です。損金算入が認められない主な税金は以下のとおりです。
法人税、地方法人税、法人住民税の本税
加算税、延滞税
罰金、科料など
一方、法人事業税や印紙税、固定資産税などは損金算入が認められています。
会計と税務は似て非なるものです。税務の目的を達成するためには、簿記の知識に加え税金の知識も必要となってきます。そして税金の知識の中で、損金不算入について理解することは経営者にとっても重要といえます。
きちんと理解したうえで、日々の事業活動を行うようにしてください。
この記事のライター
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