MUJI×UR団地リノベーションプロジェクト 、仕掛け人に聞く”これからの住まい方”

更新日:2018年3月16日 / 公開日:2018年3月16日

当記事はSUUMOジャーナルの提供記事です

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UR賃貸住宅のなかでも人気の無印良品とのコラボ物件「MUJI×UR団地リノベーションプロジェクト」。昨年12月から新プラン「ギャラリーとアトリエのある暮らし」を含む13プランの入居申込受付が始まりました。スタートから丸5年がたった今、改めて同プロジェクトについて、その仕掛け人であり設計担当者の豊田輝人(とよだ・てるひと)さんにお話を聞きました。
団地を”現代のライフスタイル”につくり変える

今回お話を聞いたのは、株式会社MUJI HOUSE所属の一級建築士・豊田さん。MUJI HOUSEでは無印良品の住宅商品「無印良品の家」として住居デザインやリノベーションプランニングを行っています。

「MUJI×UR団地リノベーションプロジェクト」は、UR賃貸住宅が所有する団地物件を無印良品が現代のライフスタイルに合う住居へとつくり変えるコラボレーションプロジェクト。平成24年にスタートし、現在は41団地45プラン、全国の物件数は600戸以上を数えます。

写真左:Plan01「LDKをゆるやかに仕切って広々と使う。」は、自由度の高い空間設計。写真右:リノベーション前から残されている柱がアクセントに。「団地」のもつ味わいを残すのが、同プロジェクトの特徴だ(画像提供/MUJI HOUSE)※現在は募集終了

団地のもつ素朴な魅力はそのままに、住む人が使い方を自由に考えられる空間づくりが人気を集めてきた同プロジェクト。スタートから5年という節目を迎えて、豊田さんは「私たちの考える暮らしの“核”になる部分はある程度支持いただけるようになってきた。そこからさらに、“暮らしを彩る”設計にもチャレンジしたい」といいます。

新たにめざす「暮らしを彩る」を体現するプランも登場

プロジェクトの始動から5年が経ち、団地リノベーションのノウハウはある程度確立できたと語る豊田さんに、2017年12月から全国9団地で募集が始まった新プランについてうかがいました。
※プランの募集状況については、取材時点と状況が変わっている場合があります

【ギャラリーとアトリエのある暮らし。(Plan40)】
こちらはPlan40「ギャラリーとアトリエのある暮らし。」。今回発表された新プランの1つです。

玄関が物件の中心、左右にそれぞれリビングと寝室がある横長の間取り(画像提供/MUJI HOUSE)

「廊下が長く、どうしても退屈になりがちな空間をギャラリースペースのように活用できるプラン。壁にくぼみをつくってお気に入りの本やポストカード、お子さんが描いた絵などを飾れるようにして、見た目にもにぎやかな空間になりました」(豊田さん、以下同)

写真左:殺風景な壁を彩ってくれるお気に入りのアート。「壁」というデメリットが物件の魅力に変わった。写真右:主寝室の奥にあるアトリエスペース。趣味や勉強など、一人で落ち着いて過ごせるスペースも確保できる(画像提供/MUJI HOUSE)

【空間のつながりを感じるメゾネット。(Plan42)】

集合住宅でありながら「2階がある」という暮らしをかなえるのが「メゾネット」。実は団地にもこのメゾネットタイプの物件があるのだとか。

何でこうなった……? と思わせる、不思議なメゾネットの間取り(画像提供/MUJI HOUSE)※現在は募集終了

「南側からの光を取り込むために壁を減らしました。階段スペースも壁に囲まれていましたが、全て撤去。スケルトン階段にして、北側の玄関まで光が届くようになりました」

玄関側からの景色。おしゃれに生まれ変わった階段は、この家のシンボルになりそう!(画像提供/MUJI HOUSE)

写真左:リビングから玄関方向へ。空間を柱や床材で緩やかに区切り、スペースを分けている。写真右:上階のワークスペース。半透明ふすまで豊かな光が差し込む(画像提供/MUJI HOUSE)

【内装の素材にもこだわりを】

壁の撤去などのリノベーションだけでなく、内装に使用する素材もよりよいものへと変更されています。

「例えば畳のスペース。畳はフローリングと比べて遮音性が高く、集合住宅にオススメなんです。ただ、普通の畳だと『和室』的な使い方しかできません。擦れや重さにも強い『麻畳』を独自に開発し、脚つきのソファやベッドなどフローリング向けの家具が置けるようにしました。
Plan40などで使用している半透明ふすま(和室とアトリエスペースの仕切りに使用)も、MUJI×URのプロジェクトで開発された商品です。私たちが大切にしたい『光』を遮ることなく、住む人のプライバシーを守ったり、空間を区切ったりという機能をもたせることができました」

こうしたリノベーションを施すことで、募集時の反応も格段にアップ。
「特にメゾネットタイプは専有面積が大きい分家賃が高めで、コスパ重視の団地検討者からは敬遠されることも多かったのですが、リノベーション後は入居希望者数も増えました。もちろん私たちも壁を取り払ったり、新しい商品を入れたりと『こうすれば絶対によくなる!』と確信をもって設計をしていますが、そうした反響があると改めて『よかった』と安心しますね(笑)」

写真左:3月に募集開始予定の「Re+026 明るいLDKの中心に対面キッチン。」。光をいっぱいにとり入れるLDKスペースが、生活の中心になりそう。写真右:同プランの間取り。仕切りをできるだけ取り払い、開放的な空間に(画像提供/MUJI HOUSE)

既存のモノを生かし、住みついでいく 暮らしの本質を見つめ続けたい

階段がない、なんとなく古い感じがする、などのイメージから敬遠されることも多い団地を、どのようにリノベーションをされているのでしょうか。

「MUJI×URでは『古さを生かす』リノベーションを行っています。例えば団地の部屋によく見られるのが、空間の真ん中に鎮座する古い『柱』や『欄間(らんま)』。邪魔になるからと撤去してしまうプランニングも多く見られますが、今の20代や30代にとっては新鮮で、ヴィンテージ品のような味わいも魅力的なんですよ。現場でも、職人さんに『あまり新築みたいにしないでください』とよくお願いしているんです(笑)」

「そして、私たちが重視しているのは、常に商品の核=本質を見極めること。住まいの『本質』とは何か? 私たちは、それを『日当たりや風通し、緑や公園などの住環境のよさ』だと考えています。設備の新しさや素材の高級さは実は二次的な要素で、住む人が“心地よく暮らせる”ことが住まいの最も重要な部分。団地には、そうした豊かな住環境がそろっています。それを最大限に生かし、住む人が豊かな心で暮らせるような住宅にしていきたいですね」

プロジェクトとしての今後の目標や、住宅づくりの未来についても聞いてみました。

「新築物件には根強い人気がありますし、団地のリノベーションはまだまだ過渡期。一つひとつの物件に向き合って、MUJI×URの物件数をもっと増やし、住む人が家族の人数やライフスタイルに合わせて自由に選び、住み替えられるくらいのバリエーションを用意したい。あるものを大切につくりなおして、住みついでいく。これが、未来の住宅のスタンダードになると信じています」

団地がもっている魅力を残し、そして新たに引き出す、MUJI×UR団地リノベーションプロジェクト。単に新しくつくり変えてしまうのではなく、古さや味わいを生かし、「住みつぐ」という考えを大切にされていることが分かりました。

プロジェクトはこれからも継続され、新たな物件も募集が始まっています。住まい選びの選択肢に「団地」を加えてみてはいかがでしょうか。

●取材協力
・無印良品の家(株式会社MUJI HOUSE) 住まいに関するコラムをもっと読む SUUMOジャーナル

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