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なかなか増えない保育園併設マンション、その理由を探ってみた

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当記事はSUUMOジャーナルの提供記事です

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なかなか増えない保育園併設マンション、その理由を探ってみた

保育園に入りたいけれども、入れない「待機児童問題」。その解決策のひとつとして、2017年秋、国土交通省・厚生労働省が「大規模マンション建設における保育施設の設置を促進します」を発表しました。では、「保育園併設マンション」がなかなか増えない理由とはどこにあるのでしょうか。行政とデベロッパーに取材してきました。
保育園併設マンション、メリットが薄い購入者も?

保育園の待機児童の問題が話題になると、「大規模マンションに保育園を併設すれば、待機児童も解消できるしマンションも売りやすいんじゃないの?」そう考えたことがある人が、いるのではないでしょうか。

筆者が記憶する限り、大規模マンションが多数登場した2000年代前半には認証/認可保育園併設のマンションが登場していたように思います。しかし、「保育園併設のマンション」の供給戸数やエリア、ニーズなどを網羅したデータはなく、まだまだ一般的になったとは言い難い状況です。

写真/PIXTA

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最も大きなポイントとなるのは、認可保育園の場合、マンションの購入者・住人だからといって、優先的に入れるわけではないところでしょう。認可外や認証であればマンション住人優先枠を設けているところもあるようですが、人気が高く、多くの親が利用したいと考えている認可保育園の場合であれば、地域住民と同じように審査されるわけで、マンションに住んでいるのに「落ちた……」という可能性は十分にあるのです。

また、マンションの規模が大きければ大きいほど、シニアカップルやDINKS、シングルなど、多彩な世帯が購入します。子育て世帯向けに利用が限られていて、しかも入れるどうかが不透明というのであれば、「保育園併設マンション」のデメリットに目が向いてしまうのも、ムリはないかもしれません。

保育園の運営会社に携わる、デベロッパー側の思いとは?

一方で、デベロッパーはどんな思いを抱いているのでしょうか。大手デベロッパーの東京建物は、2016年、保育園開設 ・運営を行う「東京建物キッズ」を立ち上げました。デベロッパー側から見て、保育園併設マンションを建設するうえで課題はあるのでしょうか。

「マンション企画・開発と保育園の企画・開発などは似ているところが多く、建物をつくるところまではほぼ一緒です」と話すのは、マンション開発の経験をもちながら、保育事業部でエリアマネージャーを務める猪俣章信さん。建築法規などを順守しつつ、行政との協議を行い、建物やコミュニティつくっていくのは、デベロッパーの得意とするところだといいます。

つまり、保育園のための「ハコ」や「建物」そのものをつくるのは、あまり難しいことではないというのです。ただ、肝心の保育園はその性質上、運営に関しての参入障壁が高いのだといいます。

「乳幼児を預かるわけですし、行政からの補助金で運営するので、保育園運営はどこの誰でもOKというわけにはいきません。参入障壁があるのは当たり前ではないでしょうか」と、解説してくれたのは、事業企画部部長の田所照代さん。そのため、保育園開設に際しての審査も多く、その度に確認、調整、書類作成が必要になるといいます。

また、デベロッパー側からみれば、保育園が不足する都市部の土地は、マンション・商業施設・ホテルなどとの争奪戦で仕入れた土地です。一住戸でも販売住戸を増やして利益を出したいという「事業性」の観点からみても厳しい側面があるそうです。

「デベロッパーは用地買収の際に、事業計画を立案し、どの程度の収益を見込むかを勘案しています。ですから、用地買収後に自治体から保育園を要望されても難しいのも事実です。一企業の使命感やCSRというだけではなかなか増えないでしょう。どの企業が土地を購入するとしても、フェアな競争になるよう、自治体側で要綱・条例が整備されることによって、状況は変わるのではないでしょうか」と田所さんは解説します。

写真/PIXTA

写真/PIXTA

保育施設促進の通知を出した国交省の考えは?

では、2017年秋に「大規模マンション建設における保育施設の設置を促進します」という通知を出した、国土交通省はどう考えているのでしょうか。あらためて通知を出した背景について聞いてみました。

「ご存じのとおり、待機児童問題の解消は喫緊の課題です。ただ、保育園の開園は行政だけの力では難しく、民間事業者に広く呼びかける必要があり、通知にいたりました。しかし、今回の通知だけで、待機児童の問題が解消されるとは考えていません」と担当者は話します。

今までタテ割りだった行政(マンション建設担当部署・保育担当部署)の情報共有が活発になることや、「保育園併設マンション」の成功事例が周知されることが、待機児童問題解消の一助になると考えているようです。

また、保育園併設マンションがなかなか増えない要因としては、次の2つをあげてくれました。
「保育園併設マンションについては、(1)保育園は商業施設などと比べた場合、事業性が低いこと(2)将来的に住人のニーズがなくなってしまう などの懸念があると聞いています。そのため、今回の通知では将来の用途変更についても配慮した内容となっています」

ちなみに、すべての大規模マンションに保育園開設を義務づけることは、デベロッパーの財産権の侵害になる可能性があり、難しいといいます。そのため、今後も地域の保育需要にもとづき、行政とデベロッパーの話し合いで建設が協議されていくことになる、と教えてくれました。

写真/PIXTA

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ここまでまとめると、マンション購入者にとっても、デベロッパーにとっても「直接的なメリットが薄い」、行政にとっては「デベロッパーと協議し、お願いしていくしかない」というのが保育園併設マンションの実情のようです。

働く母親でもある筆者は、今回、子どもの預け先がなく5カ月の娘とともに取材にのぞみました。幸い、春からの保育園入園が決まっていますが、多くのママたちが今まさに「保育園に入りたい!」と叫んでいるのをみると、第一子のときの保育園落選を思い出し、心が痛くなります。課題はあるかもしれませんが、保育園併設マンションは待機児童問題の解決策のひとつになると思うのです。

現状でも「開設当初は認可外保育施設(例:企業型保育所など)で立ち上げ、マンション住人に優先権を付与し、10年後に認可保育園に移行させてもらう」といった条件で建設するなど、保育園併設マンションを増やす工夫の余地があるといいます。

地道ではありますが、みんなで「保育園併設マンションがもっと増えてほしい!」という声をあげていくことが大切だと思っています。

●取材協力
・東京建物キッズ
・国土交通省 住まいに関するコラムをもっと読む SUUMOジャーナル

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SUUMO

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