映画解説者の中井圭さんが最新映画4選をご紹介

毎月1日は映画サービスデー!映画館って非日常を手軽に体験できる特別な空間ですよね?その日がもしノー残業デーだったら仕事帰りに映画館にぜひ足を運んでみたいところ。わざわざ仕事帰りにでも観ておきたい、とっておきの最新映画を映画解説者の中井圭さんが4つ紹介してくれます♪

この記事で紹介されている映画の上映時間

  • ドクター・ストレンジ 115分
  • エリザのために 128分
  • 沈黙 サイレンス 162分
  • タンジェリン 88分

月に一度は映画館へ行こう!

映画館で映画を観るという体験は、日常において簡単に非日常を感じることができる魅力的なものです。その一方で、映画館は料金が高いという声があるのも事実で、その結果、日本では1年間に1度も映画館に足を運ばない人が7、8千万人もいると言われています。しかし、料金が高いと言われる映画館には、いくつか、映画をお得に観る方法があります。そのうちのひとつが、毎月初日は料金がお得になる映画サービスデーです。この映画サービスデーを活用して、月に一度は映画館に映画を観に行くことを本コラムでは提案します。そこで、直近の映画サービスデーである2月1日に観ることができるオススメ作品4本をピックアップしました。

『ドクター・ストレンジ』

2008年に公開となった映画『アイアンマン』以降、マーベル・コミック作品を同一の世界観の中で映画化したマーベル・シネマティック・ユニバースは世界を席巻しています。今やエンターテイメントとして映画を観る上で外せないマーベル作品ですが、その最新作が『ドクター・ストレンジ』です。

傲慢な天才外科医ストレンジは、不慮の交通事故によって両手の自由を失い、キャリアを失ってしまいます。プライドが高く、どうしても外科医として復活したい彼は、様々な治療の果てにチベットで魔術を習得することになるのですが、その過程で強大な敵との対決に巻き込まれていきます。

本作の魅力は、やはりベネディクト・カンバーバッチ meets マーベルでしょう。イギリスの演技派俳優として非常に人気のあるカンバーバッチが、娯楽映画の最高峰とも言うべきマーベル作品に初参戦ということで、注目を集めています。しかも、その役がドクター・ストレンジというのも面白い。傲慢で複雑な人物の葛藤と変化をカンバーバッチの繊細な演技で見事に表現し、大味になりがちな娯楽作に絶妙なアクセントを加えています。

また、マーベル作品の中でも屈指の壮大な映像世界も魅力となっています。魔法を使うことで物理法則から逸脱したアクションが可能となり、文字通り、世界を捻じ曲げているのです。かつてクリストファー・ノーラン監督が『インセプション』で、街を折りまげたことがありますが、それ以上に混沌とした映像世界が繰り広げられています。この作品は、大画面で観ることで独特の魔法世界に没入していくことが可能なので、映画館で観るのが最適でしょう。個人的には、もはや定義を超えて何でもありの女優、ティルダ・スウィントンの無双っぷりに注目していただきたいです。

タイトル:『ドクター・ストレンジ』
公開:2017年1月27日(金)全国ロードショー
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
著作:(C)2016MARVEL
公式サイト:Marvel-japan.jp/Dr-str

『エリザのために』

世界最高の映画祭であるカンヌ国際映画祭の申し子、ルーマニアのクリスティアン・ムンジウ監督。社会派の切り口で世界を唸らせてきた彼の最新作は、コネクションの泥沼に陥ってしまった男の葛藤を描いています。

舞台は、ルーマニア。イギリス留学を控えた娘を持つ父親が、娘を車で学校に送っていたのですが、途中で降ろしてしまい、その後彼女は暴漢に襲われてしまいます。最悪の事態は避けられたものの、心に深い傷を負った娘の留学試験の行方を不安視した父親は、自分のコネクションを使って、どうにか娘を合格させるために奮闘するのですが、それが更なる問題を引き起こしていきます。

本作は、観る者の倫理観を問いただします。愛する娘を閉塞的でどうしようもない生活から解き放つために、不正だとわかっていながらもコネを駆使していく父親の姿を見つめるうちに、彼らが置かれている厳しい社会の現実を知ると同時に、もし自分だったらどうするのかという葛藤に苛まれていきます。加えて、この父親は事件当日、不倫をしていたという業を背負っていることもまた、観客に生々しさと行き場のない鈍い怒りを与えています。ムンジウ監督は、本作であえて端正な演出を行うことで、やりきれない父親と観客の心の揺れを際立たせています。見応え充分の一本です。

タイトル:『エリザのために』
公開:1/28(土)より、新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開
配給:ファインフィルムズ
著作:(C) Mobra Films - Why Not Productions - Les Films du Fleuve - France 3 Cinema 216
公式サイト:http://www.finefilms.co.jp/eliza/

『沈黙 サイレンス』

名作『タクシードライバー』や『グッド・フェローズ』などで知られる世界の巨匠、マーティン・スコセッシ。リトルイタリーで絶え間ない暴力と高潔な信仰を目の当たりにして育ち、幼少期は神父を目指していた彼が、数十年も映画化を熱望してやまなかった遠藤周作の原作を遂に映画化したのが『沈黙 サイレンス』です。

17世紀の長崎。キリシタンへの激しい弾圧下で、敬愛する師フェレイラが棄教したという噂の真偽を確かめるためにやってきた、宣教師ロドリゴとガルペ。幕府による壮絶なキリシタン迫害に殉教していく信者たちの姿を前に、沈黙を続ける神の振る舞いに彼らの信仰が試されていきます。

本作は、非常に静かな映画です。弾圧や裏切りなど重苦しい描写が、決して劇的ではなく淡々と続いていくのは、観客へのメッセージでもあります。たとえ本作における神の存在のようなものが自分の中になくとも、大切に思うことを踏みにじられる時に人は何を思うのか。信じるとは、どういうことなのか。文化や思想の違いに対して、どう向き合うのか。そして、人を救うために信仰を捨てられるのかというロドリゴの葛藤を通じて、神の“沈黙”の中に本当に声はないのかを、映画は観客に問いかけます。

また、日本の原作ということで、窪塚洋介さん、イッセー尾形さん、浅野忠信さん、塚本晋也さん、青木崇高さん、小松菜奈さんをはじめ、多数の日本人キャストが起用されているのも、日本映画界にとって重要です。本作は、マーティン・スコセッシ監督の渾身の一作であり、世界中の映画人が目にすることになります。ここから世界に大きく羽ばたいていく可能性があるのも、非常に興味深い作品でしょう。

タイトル:『沈黙 サイレンス』
公開:2017年1月21日(土)全国ロードショー
配給:KADOKAWA
著作:(C)2016 FM Films, LLC. All Rights Reserved
公式サイト:http://chinmoku.jp/

『タンジェリン』

一昨年の東京国際映画祭ワールド・フォーカス部門で上映され、映画ファンの間で大きな話題となった映画『タンジェリン』。全編iPhoneで撮影されていることでも注目を集めました。その後、Netflixでの配信が決まり、劇場公開はないものかと思いきや、映画館で公開されることになりました。

LAに生きるトランスジェンダーの娼婦シンディ。彼女が訳あって服役している間に恋人が浮気をしたことを知って激怒し、浮気相手と恋人を探すために街を奔走することで巻き起こる騒動を描いています。

浮気をされて怒りに満ちたシンディの怒涛のテンションと、逞しさをとてもポップに描いているのが痛快。重々しさから解き放たれ、カラッとしたLAの湿度すら感じさせます。一方で、そんな陽気な雰囲気の中、ふとした瞬間に見え隠れする彼女たちに対する差別意識に胸が締め付けられます。骨太で力強い彼女を見せると同時に、強くなければそもそも生きていけない現実を、ユーモア溢れる描写の中に感じるのです。マイノリティへの締め付けが厳しくなる予感が漂う世の中で、本作の力強さと切なさが胸に迫ります。

タイトル:『タンジェリン』
公開:2017年1月28日、渋谷シアター・イメージフォーラム他全国順次公開
配給:ミッドシップ
著作:(C)2015 TANGERINE FILMS, LLC ALL RIGHTS RESERVED
公式サイト:http://www.tangerinefilm.jp/


執筆者:中井圭

更新日:2017年1月29日
公開日:2017年1月29日

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