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「ちょっと幸せ」をテーマに、グルメ・美容・健康・カルチャーなど、女性にうれしい情報満載のフリーマガジン「Poco'ce(ポコチェ)」から内田慈さんのインタビューをお届けします♪
Profile /1983年、神奈川県生まれ。日本大学芸術学部文芸学科中退後、演劇活動を開始。オーディションにより新進気鋭の作家・演出家の作品にいち早く出演しキャリアを積む。映画では、08年に橋口亮輔監督『ぐるりのこと。』でスクリーンデビュー後、多数の映画に出演。その後、舞台・映画・ドラマ・声優、ナレーター、ジャンルを問わず活躍の場を広げている。
薬剤被害で障がいを持った少年フクスケと、さまざまな境遇でもがきながら生きる人々の姿を描いた、松尾スズキ作・演出による伝説の作品『ふくすけ』が12年ぶりにカムバック。4度目の上演となる今回は、タイトルを『ふくすけ 2024 ー歌舞伎町黙示録ー』と題し、台本をリニューアル。フクスケが入院する病院の警備員コオロギと、盲目の妻サカエの夫婦を軸に物語は展開されていく。コオロギの愛人、チカ役を演じる内田さんに出演が決まったときの心境から伺った。
「ついに私が松尾さんの舞台に出るんだなという不思議な感覚でした。私がこの世界を目指すきっかけになったのが松尾さんなんです。高校3年生のときにテレビで松尾さんの特集を偶然見たことがすべての始まりでした。その番組の中で流れた舞台映像や松尾さん自身の言葉にすごく真実味を感じたんです。松尾さんの言葉には綺麗事がまったく無く、むしろブラック。でも、それって本当はみんな口にしないだけで思っていることなんじゃないかなと思ったら“この面白い人のことや作品をもっと知りたい”と。そこから過去の作品を観たり、戯曲を読んだり、松尾さんのインタビューを読み漁るようになって、気づいたときには松尾さんに会いたいからもう芝居始めちゃおうって(笑)」
内田さんにとって松尾さんは、まさにターニングポイントとなった人というわけだ。
「松尾さんの“せい”でこの人生を送っているという感じです(笑)。これまでお会いしたことはあったのですが、作品に出させていただくのは今回が初めて。ずっと目標としてきた方なので緊張もしますし、怖さもありますがそういうタイミングがやっと来たんだと思うと不思議な気持ちです」
『ふくすけ』の印象を伺うと。
「初演当時20代後半の松尾さんの底知れぬ怒りのエネルギーを感じました。登場人物はみんな闇を抱えていて、何かで埋めたいと思っているみたい。今の時代では作品の中で取り扱うこと自体がザワザワしそうな毒々しい展開もあるし、当たり前にさまざまな身体的特徴や精神的問題の人が出てくる。でも、綺麗事でいかないこと、さまざまな人間が等しく当たり前に存在していることこそ松尾作品が普遍的たる所以だと思うんです。“人類平等”と簡単に言葉にしがちですが、本当の平等って難しいというか、フェアじゃいられないってことなんて世の中にたくさんあると思うんです。そもそも、本当の意味で平等なんてあるのだろうかと疑問を持ってもらったり、今までにない感情の波を味わってもらえたら嬉しいです。言葉にすると難しいですし、堅苦しくなってしまうのですが、脚本を読むだけでも吹き出してしまうような面白いシーンが目白押しなので、面白いお兄さんお姉さんを観るくらいの気軽な気持ちで松尾ワールドを楽しんでほしいです」
舞台だけでなく映画、ドラマ、ナレーションと様々な分野で活躍中の内田さんだが、劇団には所属せずにフリーランスでキャリアを重ねてきたという経歴にも驚かされる。
「20代のときは、未知の世界で右も左もわからずとにかく不安でした。自分の強みも弱みもまだ全然わからなくて。でも、逆に何もわからない状態だったからこそ突っ走れたのかもしれないです。周囲の友達が就職をして初任給をもらったりしている頃に、風呂なしのアパートで貧乏生活をしてたこともありましたが、今思えばその不安は味方だったのかなと。不安ということは今の自分に満足できていない、もっと頑張らなきゃという気持ちの表れだと思っていて。その不安な気持ちがエネルギーになるからこそ頑張れるんだと思います」
25歳の時に芸能事務所に所属後11年で退所し、2年間の完全フリーランスを経験し、2年前に現在の事務所に所属したという内田さん。活動形態を試行錯誤した理由は「満足するのが怖かった」からだと教えてくれた。
「敷かれたレールの上を歩くのはとても安定していますし、そのレールの向かっている方向へ可能性は広がっていく。でも、それ以外の可能性はしばらく閉ざされてしまうということ。それがすごく怖くて。あとは、慣れてきたこの世界や自分のことをわかった気になるのも怖かった。だからまた自分自身に責任が返ってくる状況下に自分を置いて新しく挑戦したかったんです」
「今の自分に満足している瞬間があったら危険信号」と内田さん。
「結果って、いつもちょっとズレてくるんです。なので、満足したまま怠慢でいたら、その結果は数ヶ月後に必ず自分に降りかかってくる。満足だと思えた瞬間こそ気を引き締めないといけないなと思っています。そして、年々時間の流れが早くなっていくので、やりたいと思うことがあったらダラダラせずにすぐやった方がいいと思います」
仕事や自分自身に対して真摯に向き合うひとりの女性の考え方に、すごく共感できるのに、同じように自分は向き合えているだろうかと考えさせられた内田さんへのインタビュー。これからも勇気が必要であろう決断と行動力で新しい世界を見せてくれる役者・内田慈さんの出演作に注目したい。
作・演出/松尾スズキ
出演/阿部サダヲ、黒木華、荒川良々、岸井ゆきの、
皆川猿時、松本穂香、伊勢志摩、猫背椿、宍戸美和公、
内田慈、町田水城、河井克夫、菅原永二、オクイシュージ、
松尾スズキ、秋山菜津子 他
公演/7月9日(火)〜8月4日(日)
会場/THEATER MILANO-Za(東急歌舞伎町タワー 6階)
PHOTO/Masao Inomata (Linx)
TEXT/Satoko Nemoto
この記事のライター
Poco'ce
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