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育児休業を経験し、子育てに奮闘しているパパの声を聞いていくインタビュー連載「男性育休取ったらどうなった?」。今回は2022年2月に第一子が誕生したご夫婦に話を聞きました。
今回のパパ福田陽平さん/29歳 ピジョン株式会社営業事務職
●ご家族妻:あずささん/28歳/会社員長男:0歳7ヶ月 (※お名前は全て仮名です)
●福田家の育休第一子誕生(2022年2月)夫:出産後に社内制度と連休を組み合わせて一ヶ月半ほど育休取得。2022年3月より職場復帰。
――陽平さんが育休を取りたいという話は、上司にはどのタイミングで報告しましたか。
陽平さん妻が安定期に入ってから、まずは直属の上司に妻が妊娠していることを伝えました。そのとき、上司から「おめでとう!いつ育休を取るか考えておいてね」と言われたんです。父親も育休を取ることが前提なんですね。ピジョンでは、男性も育休を取ることがとても自然なこと。そういう文化があることはとてもありがたいです。
――ピジョンは2016年から男性社員の育休取得率が100%を達成し続けていると聞きました。
陽平さんはい、これまで年齢の近い先輩が育休を取る姿は間近で見てきていたので、男性の育休取得は当然の社内文化として肌で感じていました。自分ももし子どもができたら、育休を取るのかなというのはなんとなくイメージしていましたね。会社によっては「男性が一ヶ月も育児休業を取得するの?」と驚かれるという話も聞くので、職場に取得しやすい空気があるのはとても安心できました。
――陽平さんは奥様の退院と同時に育休に入られたのですね。
陽平さんそうなんです。家の近くにいい病院があったのでそこでの出産を希望していて、里帰り出産はしていません。退院してすぐに僕が育休に入れれば、2人で一緒に育児ができると思い、妻ともそんな相談をしました。
あずささん退院してすぐに、過ごし慣れている自宅で赤ちゃんと3人で暮らし始めることができたのは安心感があり、よかったと思います。夫の育休がなければ叶わなかったことなので、ありがたいですね。よく、奥さんと赤ちゃんは一ヶ月くらい里帰りをして、育児が軌道にのってきたタイミングで旦那さんも育休を取るというケースも聞きますが、それだとその一ヶ月を経て「ママが先輩」のようになってしまう気がします。夫婦で育児のスタートを同じにして新生児の一番大変なときにいっしょの時間を共有できたことはとても大きかったと思っています。その後の育児の協力体制を考えると、旦那さんが育休を取るタイミングも大切ですよね。
陽平さん期間も、数日とかではなく一ヶ月まとまって取れたのは良かったです。
――もし期間が一週間だけだったら、全然違っていたでしょうか?
陽平さん一ヶ月でも短いと思ったくらいなので、一週間では全然足りないですね。僕の場合はですが、退院直後は生まれたての赤ちゃんを相手に何もかもが手探りの時期だったので、一週間では夜泣きで寝不足になって、そのまま育休期間が終わってしまうような気がします(苦笑)。
あずささん私も、一ヶ月半くらいは欲しいですね。最初の一週間は夫婦ともに手探りで、これからどう頑張っていくかを考えるところなので、そこで終わってしまうとちょっとペースがつかみづらいかもしれません。それから、私は産後の子宮収縮の進みが悪く、退院して2日目の夜に大量出血して病院に運ばれたんです。決して無理をしていたわけではないのですが……完全に母体が回復するまでに時間がかかりました。ただ、出産前の時点で、産後少なくとも一ヶ月間は母体を休ませたほうがいいよねと夫婦で話し合っていたので、そのときも想定外の事態に慌てることなく夫が中心になって家事をやってくれたので助かりました。自分の体のことを考えても、夫が育休を取得してくれてよかったですね。
最初はドキドキしていた沐浴。
――育休を終えて職場に戻る際、仕事に対して不安はありませんでしたか?
陽平さんどういう生活リズムになるのかなという不安はありました。でも、育児や子どもの生活リズムは育休を通してわかっていたので、何も知らずに仕事に戻るよりは安心できたと思います。自分の自信にもつながりました。
――夜中の赤ちゃんの対応はどうしていましたか?
陽平さん今は息子もまとまって寝てくれるようになりましたが、夜泣きの対応は1日ごとの交代制にしていました。初めは2人で起きて、必死にあやしていたのですが、それが続くと寝不足になって共倒れになってしまうので、2人とも1日おきには必ずしっかり休めるようにしましたね。僕が職場復帰してからは、翌日が仕事の日でも、自分が担当の日は夜泣き対応をしました。実際に育休を取得したことがきっかけで、育児と仕事を比べて、どちらのほうが大変というのはないと感じられたので、妻に対しては、お互い一緒に頑張ろうという気持ちでいます。
あずささん夫は今、在宅ワークが中心で出社は週1~2日なので、育休を終えてからも、在宅ワークの日は積極的に育児してくれています。料理が得意で、夫が出社する日は「ワンオペ育児になってしまって大変だから」と、夕飯のつくりおきを準備しておいてくれることもあるんです。毎回ではないけれど、気遣いをしてくれることが本当にありがたくて、感謝しています。
陽平さん時間に余裕があるときだけですよ。忙しいときは「今日はちょっとごめんなさい」と事前に伝えています(笑)。でも「毎回作る!」と決めてルール化するよりは、ゆるい決めごとくらいのほうが、揉めずに済んでいいかもしれないですね。
――ピジョンは育児用品を扱う会社ですが、仕事の内容がご自身の育児に活きていると思ったことはありますか?
陽平さん職業柄、出産準備費用を用意するタイミングや、おすすめの育児用品の知識は持っていたので、出産準備はスムーズにできたと思います。月齢ごとの知識や離乳食のことも、夫婦で話し合うことができました。ただ、商品を知っているのと、実際に使うのは全く違うことだと思いましたね。
あずささん夫は仕事を通して得た知識がありますが、私は実際に妊娠・出産を通して助産師さんなど専門家の話も聞きますし、入院中にずっと我が子と過ごしていたわけなので、当初は育児について意見が食い違うことはたくさんありました。そのたびに、何が自分たちの子どもにとって一番いいのかを、夫婦でよく話し合いましたね。
陽平さん逆に育児の経験が仕事に活かせることもありますね。子どもが生まれたことで、仕事の効率や時間への意識はさらに高まったと思います。短い時間でいかに成果をあげるかがより大切になってきました。
――子育て中の社員も多いと思いますが、社内の雰囲気としても、残業を減らし効率的に業務を進めるという意識は徹底されていますか?
陽平さん水曜はもともと全社でノー残業デーの日で、できるだけ早く業務を終えて帰る傾向にあります。子どもが生まれる前から、周りの友人からは「毎日そんなに早く帰れるの?」と驚かれたこともあるんです。今の僕は、子どもが生まれて父親という役目を担ったことで、より仕事の生産性を高めるにはどうしたらいいかと模索している最中です。
あずささん旦那さんの残業が多いと、家庭ではどうしても奥さんの負担が増えてしまう傾向にありますよね。でもそういったことがないので、個人的にも本当にいい会社だなと思っています。むしろ私は、営業職として残業も多くこなす働き方をしていたので、育休からの復帰後は出産前と同じ働き方はできないだろうと思っていたんです。でも夫は「復帰後はフルタイムで働いてもいいんじゃない?」と言ってくれていて。私の職場復帰までまだ時間は少しあるので、どんな働き方をしたらいいのか、2人で考えていきたいと思っています。
陽平さん職場では、フレックスタイム制度を利用して保育園のお迎えがある日は早めに出社して、始業時間を調整している先輩もいます。働き方を工夫すれば、2人がフルタイムで働いても、うまくやっていけるのではないかと思っているんです。
あずささん夫の会社では、育児は「妻がメインで夫も協力するもの」ではなく、「夫婦で一緒にやるのが当たり前」という考えが浸透していると思います。私自身は、最初の頃夜泣き対応などは自分が1人でやるものだと思い込んでいたので、夫から「どういうふうに担当していこうか?」と聞かれたときには驚きました。本当に自然に相談してくれて。子育ては、育休を取って終わりではなくて、そこから長く始まっていくもの。だからこそ、最初の一ヶ月に育休を取って、2人で子育ての大変さや楽しさを一緒に共有できたのは、大きかったですね。
――10月からは育児・介護休業法の改正により、男性は子どもの出生後8週間以内に4週間までの休みを、通常の育休とは別に、2回まで分割して取得できる「産後パパ育休(出生時育児休業)」という新制度が使えるようになります。一方で、会社など所属する組織側が男性社員の育休への理解がまだ足りていないケースもあるようで、今は過渡期にあります。実際に育休を取ってみて、社会はここが変わったらいいなと思うことはありますか?
陽平さん僕の場合は、会社も育休を取ることに対して何のわだかまりもなく、最低でも一ヶ月以上はどうぞという感じだったので、取得に関しては本当にスムーズでした。でも長期の取得や、共働きではなく一馬力の家庭の場合は、収入面に不安が出てくることもあると思います。
あずささん私も実際に出産をするとなってから知ったのですが、休業中の収入がいったん減ったり途絶えたりすることは、やはり不安が大きいですよね。私の場合、育児休業給付金の振込みまで4ヶ月くらいかかってしまって。もし夫婦2人で同時に長期の育休に入っていたら、5ヶ月近く無収入の期間が発生していたことになるので、ぞっとしました。
陽平さん男性の育休推進ムードが醸成されつつありますが、突然「さあどうぞ!」と言われても、「じゃあ、どのくらいの期間を取る?」「本当に取っていいの?」とわからないと思うんです。僕は自社に定着している文化があったり、実際に先輩が取得している姿を見てきたので、何も不安に思いませんでしたが、社内で仕組みを整え、問題なく取得できる文化を作り上げていくことが必要だと思います。そうすることで育休だけでなくその後の育児と仕事の両立に関しても、やりやすくなると思います。今はまだ取りたくても取れない人が絶対にいると思うので、ここはこれからも働きかけていくべき課題なのかなと思いますね。
あずささん男性の育休は女性にとっても、大きな助けになります。今後、長く育児をしていくうえで、パパとしての協力体制や気持ちの作り方、夫婦の関係性を築くきっかけとしても、育休は誰でも当たり前に取れるようになるといいですよね。
(取材・文:マイナビ子育て編集部、宮本貴世、イラスト:ぺぷり)
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