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世の共働き夫婦は、どう家事を分担して、どんな方針で育児をしているんだろう。うまくこなしている夫婦にインタビューして、その秘訣を探りたい。そんな想いから、スタートした企画。それぞれの家庭のルールやこだわりを7つにまとめ、その夫婦の価値観を紐解いていきます。
【左】谷口和夫さん(仮名/33歳/広告代理店/営業)【右】谷口花さん(仮名/32歳/教育/事務)
学生時代のアルバイト先で知り合い、8年間の交際の末、28歳で結婚。
現在は2歳の長女を育てながら、花さんは塾への時短勤務でバイト講師の育成や進捗管理を担い、和夫さんは広告代理店の営業として多忙な日々を送っている。
お互いをよく知る仲良し夫婦だが、「妊娠するまで家事を全部私がやっていて、『これで子どもができたらやっていけないな』と絶望したことがあったんです」と花さん。
「だから、夫と向き合って『私はあなたがゲームをする時間を作るために家事をしているんじゃないよ』と話しました」(花さん)
「言われてもしかたがなかったですね……」と、面目なさそうに目をそらした和夫さんに思わず笑ってしまった。そんな夫婦がうまく共働き家庭を回すために、どのようなルールを作ってきたのかを伺った。
「娘は0歳のときはそんなに手がかからない子だったのですが、自我が芽生えてくると大変で。イヤイヤ期でつきっきりになり、今まで当たり前にやっていた家事もできなくなりました」(花さん)
話し合い以来、和夫さんは家事をするようになってきていたが、それでもままならない。そこで花さんの仕事復帰を機に、便利家電を買い集めた。
「サンコーの食洗機と東芝の衣類乾燥機、アンカーのロボット掃除機を買いました。全部で15万円くらいだったと思います。大きな出費ではありますが、おかげでぐっと家事を時短できていますよ」と和夫さん。
夜、花さんがリビングのおもちゃなどをあらかた片付け、最後に就寝する和夫さんが最終的な片付けを担当。毎日早朝にロボット掃除機が起動するようにセットしている。
「食洗機を導入してよかったのは、夫が自ら水仕事をする機会が増えたことです!」と花さん。
また、洗濯は朝、花さんが洗濯機を回し、部屋干しする分を取り除いたあと、乾燥機に入れる。乾燥機は洗濯前に天気予報をこまめにチェックしたり、「今日の洗濯はどうするか」と考えたりする時間と労力が減ったこともメリットになったという。
東芝の衣類乾燥機は時短に繋がったお助け家電のひとつ
確かに、スマホで天気予報をチェックする、「たったそれだけ」と思うことでも、やらなくてよくなるとすごくラクになることがある。そんな名もなき家事まで担ってくれるのが便利家電なのだ。
和夫さんはコロナ禍でリモート勤務が増え、家にいる時間が長くなったことでワークライフバランスが一変した。家にいるときは18時か19時で仕事をいったん切り上げ、夕飯を作っている。食材は週末に家族皆でまとめて買っているという。
「家にいるときは僕が食事作りをしよう、と話し合って決めたわけではないですが、お互いに『手の空いているほうができることをする』という暗黙のルールがあったので、自然とそうなりました」と和夫さん。
「娘は妻にべったりのことが多く、妻の身動きが取れない時間が多々あるんですよね。そんなときは、僕が食事の準備や片付けをします。逆に娘が僕と遊んで楽しんでいるときは、妻が片付けなどをしてくれます」(和夫さん)
このルールが成立するのは、お互いに「今、相手がどれくらい大変か」ということに気づき、手が空いていれば率先して動く、という信頼関係があってこそ。
「食事作りは妻」など仕事で分担するのではなく、お互いの状況を察して手が空いているほうが担う連携プレーが取れているというふたり
出産前、妻から「私はあなたがゲームをする時間を作るために家事をしているんじゃないよ」と言われた夫と同一人物とは思えないほどの成長ぶりではなかろうか。
和夫さんの成長には理由がある。塾勤務の花さんは週末に出勤になることも多く、そういう日は和夫さんがワンオペとなるのだ。
「自分がワンオペを経験するまでは、正直、妻から『子どもの相手をしていて食事が作れなかった』と聞くと、『なんでかな?』くらいに思っていました。実際に自分だけで家事育児をしてみたら、会社にいたほうがずっとラクだと痛感したんです」(和夫さん)
花さんもこれには同意する。
「子どもを見ながらだと、何をするにも3倍以上の時間がかかるんですよね。夜も早く寝かせたいのに、家事が進まなくて遅くなるとイライラしたり……。仕事だったら、誰にも邪魔されず集中できますよね」(花さん)
「早く寝かせなきゃ」「しっかり食べさせなきゃ」。子どものためを思えばこそ、うまくいかないとイライラするし、時間もかかる。そんなどうにもならない精神的負担がない分、自由に自分の力を発揮できる仕事のほうがラクなのだ。
「お互いにそう感じているので、育児を担うほうをリスペクトして、『大切な娘を見ていてくれてありがとう』と心から思えるんですよね」(和夫さん)
和夫さんはワンオペ育児を身をもって経験したことで、花さんの大変さを初めて理解したそう
このベースがあるから、ルール2の「手の空いているほうができることをする」というチームプレーを実現できる。話を聞いていて思ったのは、「谷口家にとっては、花さんが休日出勤のある仕事でよかったのかもしれない」ということだ。
小さなストレスを延々と積み重ねる持久戦であるワンオペ育児の大変さは、体験してみないとわからない。休日出勤がないという人は、ぜひ自主的にでもパートナーに1日すべてを任せる機会を作ってほしい。
そうはいっても、仕事と家事・育児の両立は疲れる。週末も子どもと遊んでいたら体の疲れが抜ける暇がなかったり、そのせいで夫婦関係がぎくしゃくしてしまったりするのもよくあることだ。
一方で谷口夫婦がゆったりして見えるのは、休日の過ごし方のためもあるかもしれない。休みの日は、午前中に公園で子どもをたっぷり遊ばせたあと、家族で一緒に昼寝をするという。
「寝室にプロジェクターを設置して、ファミリー系のYouTubeを流しながら3人でゴロゴロしています。娘がうとうとし始めたら、そっと動画を消して。そのままみんなで2、3時間寝てしまうこともよくあります」(花さん)
ファミリー系YouTuber「きりすけファミリー」、手遊び歌やオリジナルソングが楽しい教育系YouTuber「ボンボンアカデミー」などの動画をよく観るそう
子どもと一緒に遊ぶと、親も疲れる。休まないともたないけれど、子どもが寝ているとどうしてもその間に他のことをしたくなる。それを家族揃っての休息タイムにしているのは潔い。和夫さんはほろ酔いで一緒に昼寝をすることも多いという。
小学校入学が近づくにつれ、子どもはさらに体力がつき、ほとんど昼寝をしなくなる。休日に家族でのんびり昼寝ができる期間は意外に短いのだ。谷口家のルーティンを聞いて、「いい休日だな」と思った。
和夫さんは月に1回、草野球チームの練習に参加している。
「高校時代の野球部のメンバーでチームを作ったんです。気の置けない仲間とスポーツをすると、やっぱりリフレッシュになりますね」(和夫さん)
野球メンバーもそれぞれ働いていたり子どもがいたりと忙しいそうで、「練習という練習もなく、だいたいぶっつけ本番で試合です(笑)」(和夫さん)
ただ、その日はどうしても花さんのワンオペになる。そのため、「代わりに、というわけではないですが、私も友人と外出したり、ランチやお茶を楽しんだりする日を月に1、2回作っています」と花さん。お互いのスケジュールはカレンダーアプリの「Time Tree」で共有しているという。
「弟が独身で近くに住んでいるので、夫が野球の日は弟と娘と一緒にランチしたりしています。一緒にいると育児は大変だとわかったみたいで、最近では先に『この日はあいているよ』と連絡をくれるんです」(花さん)
なんとも素晴らしい弟さんだ。
「ずっと子どもと2人だけでいると、我が子はかわいいはずなのに、かわいいと思う余裕さえなくなるときがあるんです。子どもと離れて外出する日があることで、多少のイヤイヤも愛おしく思えます」と花さん。
和夫さんがワンオペの日は、電動自転車で娘さんと一緒に出かけることが多い。
「近場で行ってみたかったところに、『今日はどこまで行けるかな』と考えながら娘とチャレンジしています」(和夫さん)
一見、平等なルールだが、「強いて言うとすれば、私は家事をしてから出かけますが、夫はそのまま行ってしまうので……。野球の日も、もう少し分担してくれるとうれしいかな」と花さん。
それを聞いて、「確かに……」と和夫さん。こうして想いを発信することで、「夫婦平等」へと近づいていく。
「1.5~2カ月に1回は、家族で僕の実家に帰省しています。両親に娘と遊んでもらって、自分はのんびり過ごし、親孝行もできて一石二鳥。実家の有効活用です」(和夫さん)
和夫さんはそう笑っているが、内心「大丈夫かな?」と思った。「親孝行のつもりが、子どもを押し付けられて、じいじとばあばは大変。夫の実家でくつろげない妻も大変」という構図が世の中にはいくらでもあるからだ。
そんな心配に、「これが成立するのは、私が義両親とうまくいっているからですね」と花さんが答えてくれた。
「義実家に行くときにはお土産を買って渡していますが、気を遣うのはそれだけです。義両親は娘の相手も上手で、『ゆっくりして行って』と言われているので、本当にゆっくりさせてもらっています(笑)」(花さん)
頼りになる和夫さんの両親。娘さんのお世話もお手の物なんだとか(花さん提供)
よくある「義両親の時代と子育ての常識が違うから、意見が合わなくて困る」ということもないという。
「義姉が2人のお子さんを産んでいるので、義両親は今の育児についてもよく知っています。むしろ娘が初孫の私の両親のほうが、現在進行形で育児常識をアップデート中ですね」(花さん)
みんなハッピーなのであれば、このルールは素晴らしい。和夫さんの実家は電車一本で行けるところにあり、花さんがいない日に和夫さんと娘さんだけで行くこともあるそうだ。
共働きでの仕事と家事・育児の両立は、お互いのフォローがないと成り立たない。だからこそ、花さんは「できて当たり前・やってもらって当たり前と思わず、小さなことでも『ありがとう』と伝えるように意識しています」と言う。
「娘にも、小さなことでも『上手にできたね』『ありがとう』と伝えています。忙しい毎日でも、それだけは言える子に育ってほしいという思いもあります」(花さん)
夫婦間でも「ありがとう」を忘れない。両親のやり取りを子どもは見ている
最近では、娘さんも同じように言ってくれるようになったそう。
「娘がちょっと何か下に落としたときに拾ってあげると、自然に『ありがとう』と返してくれます。そういう当たり前の気持ちいいやり取りを、これからも続けられたらいいな、と思います」(花さん)
谷口夫婦の話を聞いていて思ったのは、登場人物のみんなが優しい、ということだ。
夫婦はもちろん、夫婦を取り巻く家族、そして娘さん。みんながお互いを気遣い、できることを率先して行っている。
「誰かに負担が偏らないように、同じ家で生活する家族として娘も含めて誰もが『対等』でありたいと思っています。もちろん、そこに収入は関係ありません」と花さん。
和夫さんは、「リラックスできて居心地のいい、楽しい家族」が理想だ。
だからこそ、家族の時間を大切にしている。娘さんはそろそろ習い事も気になる年齢だが、しばらくは家族で過ごす時間を優先したいという。感受性が豊になるよう娘さんにさまざまな経験をさせてあげたいと、牧場や水族館など、家族3人や両親も含めた旅行を計画中だ。
無理せず、お互いを思いやりながら、対等に。そんな夫婦ならではの7つのルールは、話を聞いていても、とても心地良いものだった。
(取材・文:中島 理恵、撮影:梅沢 香織、イラスト:二階堂 ちはる)
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この記事のライター
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