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私たち親世代は、子どものデジタル機器の付き合い方や、ITリテラシーの教え方にどう向き合ったらよいのでしょうか? ITジャーナリスト・スマホ安全アドバイザーとして活躍し、自身も二児の母である鈴木朋子さんに教えてもらいます。今回は、子どもたちにも身近になった生成AIについて、解説してもらいました。
皆さんは「生成AI」を使っていますか?生成AIが話題になり始めた頃からたった数年で、日常生活の様々な場面で目にする機会が増えています。
生成AIとは、テキストや画像、動画、音楽などのコンテンツを新たに作り上げるAIを指します。現在は数多くの生成AIがリリースされていますが、その中から主な生成AIを挙げてみます。
主な生成AI・ChatGPT(OpenAI)・Gemini(Google)・Microsoft Copilot(Microsoft)・Midjourney(Midjourney)・Canva(Canva Pty Ltd)・Adobe Firefly(Adobe)
「Gemini」アプリはAndroid版に続き、iOS版もリリース。ますます使いやすくなりました
ChatGPTやGeminiはアプリで気軽に使えるため、すでに試している人も多そうです。仕事では、Microsoft Copilotに文章を整形してもらっているかもしれませんね。画像や動画などを生成して書類にイメージ画像を付けている人もいます。一般的に「消しゴムマジック」と称される、画像の一部を削除してその部分の画像を作ってもらう機能も、生成AIによるものです。
また、LINEの「LINE AI」やTikTokのAIエフェクトなど、普段利用しているアプリでも生成AIが活用できるようになっています。
LINEの「LINE AI」は、ホーム画面の「サービス」から利用できます
では、子どもたちは生成AIを利用しているのでしょうか。ニフティキッズが行った「AIに関する調査レポート」(※1)を見てみると、74%の小中学生が「AIに興味がある」と回答。「ChatGPTを使ったことがある」と答えた小学生は50.7%、中学生は62.5%と、半数以上がChatGPTの利用経験があります。
【小学生】「ChatGPT」を使ったことはある?(出典:ニフティキッズ)
【中学生】「ChatGPT」を使ったことはある?(出典:ニフティキッズ)
さらに、「学校の勉強や宿題をするときに、「AI」を使ったことはある?」との問いには、小学生の36.6%、中学生の44.6%が「ある」と答えています。
【小学生】学校の勉強や宿題をするときに、「AI」を使ったことはある?(出典:ニフティキッズ)
【中学生】学校の勉強や宿題をするときに、「AI」を使ったことはある?(出典:ニフティキッズ)
学習に生成AIを使うとなると、自分の頭で考えずに答えを導き出すといった「手抜き」のイメージを持たれます。例えば、「中学一年生の設定で読書感想文を書いて」と指示して、生成された文章を書きうつし、そのまま学校に提出してしまっては何の学びも得られません。一方で、適切な使い方を学べば生成AIを上手に学習に役立てることもできます。
読書感想文を例に挙げると、自分で書いた読書感想文を生成AIに読み込ませて、「この読書感想文に不足している部分は何?」「わかりづらい表現はない?」などと添削をお願いするやり方です。第三者(生成AI)とやりとりをしながら文章を推敲していくと、より伝わりやすく、深い内容の読書感想文が完成します。この場合はあくまで生成AIを「学習のサポート」として活用しています。
ただし、生成AIを利用した読書感想文をコンクールに出す場合には注意が必要です。生成AIの使用について制限をしているコンクールが多いため、事前に学校の先生に尋ねたり、応募するコンクールの規約などを確認しておくとよいでしょう。
画像の生成AIの場合は、お子さんが想像する架空の動物を生成してもらうのも楽しいでしょう。一度生成して終わりではなく、「色を淡くして」「体つきを全体に丸くして」など何度も指示して作り上げると、よりイメージに近づけることができます。
生成AIを使いこなすには、自分のやりたいことを整理して的確に指示を出すことが重要なポイントです。この発想を学ぶと、自分の思考をすっきりと整理できるようになります。これは、生成AIを使うことでの副次的なメリットと言えます。
一方で、生成AIを使用する上での注意点もあります。
まず、生成AIは13歳以上の利用に定められていることがほとんどです。その上で、13〜18歳の子どもは保護者の同意が必要とされているサービスもあります(※2)。
もし小学生のお子さんが生成AIを使いたいと言ったら、保護者が主体となって操作してあげましょう。また、学校や教育機関向けではありますが、子どもが利用できる年齢制限なしの生成AIもあります。お子さんが通う学校に導入されているといいですね。
生成AIの情報は正確だとは限らないことにも注意が必要です。生成AIはもっともらしい文章を生成します。そのなかには、誤りが含まれていることもあります。本当に正しい情報なのか、いくつかの情報源をあたって確認することが大事です。
生成AIが出力した画像がネット上に流れ、本当に起きた事件だと勘違いされて騒ぎになった事例もあります。生成AIが作り出す偽情報や誤情報にだまされないように、大人も一緒に注意する必要があります。
生成AIは偽情報、誤情報を生成することがある(出典:総務省「生成AIはじめの一歩」※3)
生成AIはユーザーが入力した情報を学習データとして利用することがあります。氏名や住所、電話番号などの個人情報を入力すると、蓄積されてしまうこともあります。学習させない設定がある場合でも、一定期間は履歴が保存されるため、個人情報の入力は避けておきましょう。
最近問題となっている事例に、「〇〇風」イラストの生成があります。既存の作品やキャラクターを模倣したものを生成した場合、著作権や知的財産権を侵害するリスクがあるため、生成した画像を安易に公開しないよう注意が必要です。
生成AIは暴力的なもの、性的なもの、差別的なものなどを生成しないように設計されていますが、すべての生成AIが完璧にガードできるとは限りません。ネットに「脱獄プロンプト」などの情報が流れていますが、生成AIを使うときは子どもと画面を見るようにして、有害コンテンツを生成しないように見守ってください。また、誹謗中傷にあたるような画像を生成しようとした場合も、厳しく注意することが大切です。
生成AIは使用にあたって注意点はありますが、上手に活用すれば子どもの学習や、力を伸ばすサポートなどに役立てることができるものです。現在も新たなテクノロジーとして急速に進化し、お子さんたちが成長する頃には当たり前の技術になっていると思われます。今の段階で生成AIに触れておくことが、子どもたちの成長や将来の夢につながるかもしれません。
Google Workspace for Educationに含まれるGeminiは、2025年8月に全年齢に対応する予定とのこと。ぜひ、この機会に親子で生成AIの勉強に取り組んでみてくださいね。
※1 ニフティキッズ「AIに関する調査レポート」※2 ChatGPT利用規約※3 総務省「生成AIはじめの一歩」
(文:鈴木朋子、編集:マイナビ子育て編集部)
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執筆者プロフィール 鈴木朋子さん ITジャーナリスト・スマホ安全アドバイザースマホやSNSなど、身近なITサービス全般に関する記事を執筆。なかでもSNSに関しては、コンシューマーからビジネスまで広く取材を行い、最新トレンドを知るジャーナリストとして定評がある。また、安全なIT活用をサポートするスマホ安全アドバイザーとして記事執筆や講演も行う。著書は『親が知らない子どものスマホ』(日経BP)、『親子で学ぶ スマホとネットを安心に使う本』(技術評論社)、『インターネットサバイバル 全3巻』(日本図書センター)など。この記事のライター
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