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1000年の歴史を持つ焼き物「常滑焼」の産地である愛知県常滑市。伝統的な文化や街の景観が残る一方で、中部国際空港セントレアを擁する、中部圏の空の玄関口でもある。2013年にコストコ中部空港倉庫店ができて話題を呼んだこの地に、新たな変化が。2015年12月、東海エリア最大級のイオンモールがオープンした。
インバウンドを意識した「和のおもてなし」
愛知県西部、知多半島西岸の中央部に位置する常滑市。焼き物の街であり、西側が伊勢湾に面した海の街でもある。中部国際空港セントレアの対岸部にあるりんくう地区に、「イオンモール常滑」がオープンした。名古屋からは、車でも電車でも最短で約45分という距離。名古屋市内でイオンモールのある区に住む、イオンモール好きの筆者が取材に出かけた。
海風が吹く、名鉄空港線「りんくう常滑駅」に降り立つと、「イオンモール常滑」は駅の目の前。駐車場も約4200台あり、車で訪れても安心だ。敷地面積は約20万2000m2と東海エリア最大級。中部国際空港セントレアまで無料シャトルバスが発着し、インバウンドにも力を入れる。
店内には免税カウンターがあり、訪日客が好む家電や化粧品をそろえた売り場「よいひ ばんらい」や、「日本逸品屋 ぽんのぴん」があるなど特徴的だ。日本酒の「MORITA」や「お茶の寿園」といった、常滑を代表するテナントも出店している。また、フロア内は英語や中国語、韓国語に堪能なアテンダーが巡回。「和のおもてなし」の笑顔で、国内外の来客をアテンドする。屋内外に常滑焼の作品の展示があり、地元色たっぷりなのも楽しい。常滑が日本一の招き猫の産地であることにちなみ、「招き猫ストリート」には高さ約7mの巨大招き猫「おたふく」が鎮座する。撮影や待ち合わせスポットとして人気だそうだ。
ビーチの目の前で開放的!体験型施設「ワンダーフォレスト きゅりお」そしてもう一つの目玉が、屋外に広がる体験型施設「ワンダーフォレスト きゅりお」。これは敷地北側にある約2万6000m2に及ぶアウトドアパークで、フィールドアスレチックやカートサーキットがあり、2016年3月にはBBQガーデンがオープン。無料で遊べるキッズ広場のほか、温浴施設「マーゴの湯」などがある。さらに、目の前は「りんくうビーチ」という好ロケーション。4月からはイオングループがビーチの指定管理者となり、海辺の町をますます盛り上げるという。1日では遊び尽くせないほどだ。
アウトドアパークを併設するだけに、客層はファミリーが多数。「子ども服を選んでから、きゅりおで遊んでいく」(30代・女性・日進市在住)という人も多いようだ。多世代で楽しめるモールなので、年配客の姿もあった。また、シャトルバスで中部国際空港セントレアまで約15分の距離であるだけに、海外からの観光客も多い。中国、台湾、韓国など、購買意欲が旺盛なアジア系の人たちが大半だという。観光客が「イオンモール常滑」で買い物をしてから空港へ戻るというバスツアーのコースも組まれているそうだ。
「モノ」と「コト」の地元消費が倍増で、波及効果にも期待大インバウンドに力を入れているということだが、気になるのは近隣住民にとってのメリット。イオンモール常滑 ゼネラルマネージャー 岡田拓也さんに伺うと、「ショッピングとレジャー、モノとコトが、地元常滑で消費しやすくなったことですね」とのこと。
これまで、常滑市の消費は市外に流出しがちだったという。「生活必需品の買い物は東浦市や阿久比町へ。アパレルの買い物は名古屋市へ、という具合でした」(岡田さん)。それが、コストコ中部空港倉庫店と「イオンモール常滑」のオープンで大きく変化。
実際に利用客に取材してみると、「ユニクロが近くなってうれしい。これまでは半田市まで出かけていた」(50代・女性・常滑市在住)、「子連れなので、夕飯のおかずと衣類や雑貨を一カ所で買えるのはありがたい」(30代・女性・武豊町在住)などの声が。近隣住民も、日々の生活が楽になったと実感している。1階にあるレストラン街「常滑のれん街」をはじめ、モール内の飲食店やフードコートの利用率も高いそうだ。
また、「ワンダーフォレスト きゅりお」が、時間の消費流出にもストップをかけた。すべり台が人気の「キッズ広場」には、「帰省していた妻子を空港へ迎えに行き、帰りにここへ。買い物や食事を済ませ、さらに子どもを遊ばせられるのは助かります」(20代・男性・岐阜県在住)という人も。岡田さんは、「三世代が楽しんで時間を使うことができる場です」と話す。
中部国際空港セントレアや常滑市とタイアップしていることで、当初から商圏は広域を想定。「ただ、当初は7割が知多半島の5市5町在住のお客さまだろうと考えていました。ところが、オープン後の調査では知多半島在住の方が5割、残り5割は名古屋市や県外から。通常の商圏である常滑市や半田市のお客さまは全体の1/4でした」(岡田さん)。これにより、流出していた消費が戻るだけではなく、地元での消費が数倍になった。
すでに中部国際空港セントレアや常滑市と共同で、「Centrair」「AEONMALL」「TOKONAME」の頭文字をとり、招き猫にかけた「CHITA CATプロジェクト」が進行中だ。一帯エリアを垣根なく行き来できる環境の構築や、双方施設の利用促進、共催イベントの実施などを進めている。
「地元で経済が活発になると、常滑市も潤います。そのお金は教育や福祉にかけることができますし、人々の流れに伴って交通インフラなどの整備も進むでしょう」。暮らしやすい街へ、大きな変化が期待できそうだ。
大型商業施設の登場で、街が大きく変わるタイミングに立ち会った。「住みたくなる前に、まず大事なのは行ってみたくなる街づくり」と岡田さん。確かに「イオンモール常滑」の存在があると、常滑市を訪れる回数が増える気がする。イオンモール好きの私としては、アウトドアが趣味の夫と子どもを連れて、近々また常滑へ!と思っている。
【地図】「イオンモール常滑」周辺地図。中部国際空港セントレアの対岸部にあるりんくう地区に位置し、名鉄空港線「りんくう常滑駅」の目の前。名古屋からは、車でも電車でも最短で約45分という距離●取材協力この記事のライター
SUUMO
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『SUUMOジャーナル』は、魅力的な街、進化する住宅、多様化する暮らし方、生活の創意工夫、ほしい暮らしを手に入れた人々の話、それらを実現するためのノウハウ・お金の最新事情など。住まいと暮らしの“いま”と“これから= 未来にある普通のもの”の情報をぎっしり詰め込んで、皆さんにひとつでも多くの、選択肢をお伝えしたいと思っています。
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