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タワーマンションの防災対策レポート[前編] 震災を経験/「シティタワーズ豊洲ザ・ツイン」

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当記事はSUUMOジャーナルの提供記事です

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タワーマンションの防災対策レポート[前編]震災を経験/「シティタワーズ豊洲ザ・ツイン」

2011年3月11日の東日本大震災では、首都圏でも、地盤の液状化やライフラインの被害、エレベーターの停止などで影響を受けたタワーマンションが少なくなかった。震災以来、「タワーマンションは災害時に大変だ」というイメージをもつようになった人も多いのではないだろうか? あれから6年。震災前から建つマンションと、震災後に建てられたマンションとで、防災対策はどのように講じられているのだろうか? 前編では、震災を経験した「シティタワーズ豊洲ザ・ツイン」のケースをレポートする。
東日本大震災では被害ゼロだった「シティタワーズ豊洲ザ・ツイン」

最初に訪れたのは、2009年に建てられた東京都江東区の「シティタワーズ豊洲ザ・ツイン」。地上48階建て、耐震構造のツインタワーだ。東日本大震災が起きたのは、ちょうど築後2年となったときだった。

「14時15分ごろに帰宅して家にいたのですが、『XX秒後に大きな地震がきます』という緊急地震速報が館内放送で入り、カウントダウンの後に揺れがきました。引越したばかりで、まだ食器棚に食器が入っていなかったので、大事にしている大きな花瓶を2つ寝室のベッドに運んでから、テレビを押さえて倒れてこないようにしました」(サウスタワー43階住人女性のAさん)

同じくサウスタワー28階に住むBさん(女性)も、同じようにまずテレビを押さえたという。甥の保育園のお迎えを頼まれていたBさんは、揺れが収まると、急いでお迎えに向かった。エレベーターが緊急停止したため、地上まで階段を下りなければならなかった。

「ただ、エレベーターが止まったのは地震後2~3時間程度で、すぐに復旧したんです。当時、弟が湾岸エリアにあるタワーマンションの41階に住んでいたのですが、そのマンションは次の日までエレベーターが動かず、大変だったそうです」(Bさん)

揺れが収まってからしばらくすると、防災センターからの館内放送で、このマンションは耐震構造なので安全であること、外に出ずに待機するようにという指示があり、Aさんはこの館内放送を、とても心強く感じたそうだ。

電気、ガス、水道といったライフラインも無事で、住戸内の被害も、「書斎の机に乱雑に積まれた本が1冊落ちた」という住戸があった程度だったのだとか。外出先から戻ったAさん、Bさんの家族は、普段どおりの自宅の様子に拍子抜けしていたという。

【画像1】サウスタワー(右)とノースタワー(左)。ともに地上48階地下1階。管理組合は両棟合同で運営している(写真撮影/日笠由紀)

【画像1】サウスタワー(右)とノースタワー(左)。ともに地上48階地下1階。管理組合は両棟合同で運営している(写真撮影/日笠由紀)

「災害協力隊」発足。安否確認訓練には居住者の4割程度が参加

このマンションの被害が少なかったのは、「高強度コンクリートを使用」「50mの杭が固い地盤に達している」など、「耐震設計の完成形」と言われるほど強固な建造物であったためと考えられている。加えて、電気、水道、ガス管などのライフラインがすべて地中化され、丈夫な共同溝に埋設されていたことで、ライフラインが問題なく使い続けられたことが挙げられる(震災時、ガスは自動的に止まる仕様となっていたため、管理会社が点検後に開栓)。

被害が少なかったとはいえ、震災後に居住者たちの防災に対する関心はいやがおうにも高まった。マンションに「災害協力隊」が発足したのは、震災から約2年後。このマンションの「防火管理者」を務めていた居住者Cさんの呼びかけに応じて、管理組合理事会が全戸に有志の隊員を募り、災害協力隊を結成した。同じデベロッパーによる近隣のマンションの先駆事例があったこと、江東区が「共助」の観点から、区民による隊の立ち上げを推進していたことなども背景にあった。

災害協力隊の取り組みは、まず防災マニュアルをつくり、避難計画を立てることだ。そのために、もともと定期的に行っていた防災訓練を年2回行うことにした。訓練内容がワンパターンだと参加者が少なくなってしまうので、飽きないようにその都度、内容を変えていると、災害協力隊の隊長Dさんは語る。

また、災害時の初動で最も重要なのが「居住者の安否確認」であることから、災害協力隊は、まず安否確認の訓練を盛り込んだ防災訓練を実施した。

【安否確認訓練の流れ】
1.各住戸の居住者が、「OK」と書かれたマグネットを玄関ドア横に張り出すことで、無事をフロアのリーダーに知らせる
2.「OK」が出ていない住戸には、「大丈夫ですか?」とリーダーが確認を行い、フロア全体の状況を把握して5フロアごとに置かれたブロックリーダーに報告する
3.各フロアのリーダーからの報告を受けたブロックリーダーが、担当ブロックの状況をサウスタワー1階の防災センターに知らせる

「安否確認訓練(OKマークの表示)には、毎年、居住者の4割程度が参加しています。江東区のマニュアルに従って行っていますが、エレベーターが動かないときに、ブロックリーダーが防災センターへの報告のために1階に降りてしまうと、持ち場に戻るのに、階段を上がらなければならなくなる。1階まで降りなくても報告ができるように、無線機を買うことにしました」(隊長のDさん)

江東区が定めたマニュアルをベースにしつつ、マンション、とりわけタワーマンション用にカスタマイズする必要性を痛感しているという。

【画像2】「災害協力隊通信」。「災害時にご協力いただける方」としてハングル(韓国語)を解する居住者を募集する呼びかけが。(素材提供/シティタワーズ豊洲ザ・ツイン管理組合)

【画像2】「災害協力隊通信」。「災害時にご協力いただける方」としてハングル(韓国語)を解する居住者を募集する呼びかけが。(素材提供/シティタワーズ豊洲ザ・ツイン管理組合)

【画像3】管理組合と災害協力隊による「防災訓練実施のお知らせ」。安否確認訓練以外に、煙テント体験やAED使用方法説明も行われた(素材提供/シティタワーズ豊洲ザ・ツイン管理組合)

【画像3】管理組合と災害協力隊による「防災訓練実施のお知らせ」。安否確認訓練以外に、煙テント体験やAED使用方法説明も行われた(素材提供/シティタワーズ豊洲ザ・ツイン管理組合)

【画像4】写真左:安否確認の際に玄関ドア、インターホン上部に張り出す「OK」マークのマグネット。写真右:「OK」マークのマグネットの裏面は、壁の仕上げと似た色。普段は目立たないようになっている(写真撮影/日笠由紀)

【画像4】写真左:安否確認の際に玄関ドア、インターホン上部に張り出す「OK」マークのマグネット。写真右:「OK」マークのマグネットの裏面は、壁の仕上げと似た色。普段は目立たないようになっている(写真撮影/日笠由紀)

余震でエレベーターが止まったときの経験から、備蓄品の置き場所を改善

2015年5月30日、東日本大震災の余震で震度4の揺れに見舞われたとき、地震の波動の具合でこのマンションのエレベーターが止まってしまったことがあった。土曜日の20時ということもあって、外出先から帰ってきた居住者たちのうち、25階くらいまでに住んでいる人は階段を歩いて上ったが、それより上の階の人や、高齢者、妊婦、子連れファミリーなどは、3階のロビーに待機。ロビーにいる居住者のために、地下に備蓄していた毛布を3階まで運ばなければならなかったことから、「ロビーのある3階にも備蓄品を置いたらどうか」という案がもち上がった。それ以来、3階にある設備室等の空きスペースを利用して、毛布や水、携帯トイレなどの備蓄品を置くようになったのだという。

また、停電時に備えた非常用電源こそあるものの、燃料が7時間しかもたないことから、周辺のマンションと「湾岸マンションネットワーク」をつくり、東京湾のタンカーに積まれた重油を共同購入する計画も進んでいる。

【画像5】写真左:3階設備室に置かれている備蓄品。非常食と水、簡易トイレの「備蓄3点セット」だ。写真右:ダンボールにまとめられた備蓄3点セット。災害時に一時受け入れする帰宅困難者(約200人分)の分も含まれている(写真撮影/日笠由紀)

【画像5】写真左:3階設備室に置かれている備蓄品。非常食と水、簡易トイレの「備蓄3点セット」だ。写真右:ダンボールにまとめられた備蓄3点セット。災害時に一時受け入れする帰宅困難者(約200人分)の分も含まれている(写真撮影/日笠由紀)

【画像6】担架などの救助物資や、人命救助に用いる工具類。江東区から貸与されている(写真撮影/日笠由紀)

【画像6】担架などの救助物資や、人命救助に用いる工具類。江東区から貸与されている(写真撮影/日笠由紀)

サウスタワーとノースタワーの総戸数は合計1063戸。管理組合をはじめとして、災害協力隊、自治会なども両棟合同で運営している。自治会には、ハロウィンやクリスマス会などを企画する「子ども会」に加えて、「女子会」もあり、外部の講師やメンバー(居住者)を講師としたセミナー、料理を持ち寄る形式の忘年会なども開いているのだとか。土曜日の朝10時にサウスタワー地下1階に集まって取材に協力いただいた災害協力隊、管理組合、自治会それぞれの中心メンバーや居住者の方々の様子を見ていると、各組織が連携して“大所帯”での暮らしを安全で快適なものにしようと取り組んでいることが伝わってきた。

●取材協力
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