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お宅拝見シリーズ連載の4回目。今回は2人の子育て中ママでありながら、新たな事業の立ち上げなどを着々と進める田中裕美子さん。昨年まで、Bang & Olufsen(バングアンドオルフセン/デンマークのオーディオヴィジュアルブランド)マーケティング&PRマネージャーとして活躍していたキャリアももちながら、肩肘張らずに家庭と仕事で自己実現するイマドキの女性ということで興味をもった筆者。今回も「ウチなんかで良ければ、どうぞ」と、快く自宅取材を受けてくれた。連載【あの人のお宅拝見】
『月刊 HOUSING』元編集長など住宅業界にかかわって四半世紀以上のジャーナリストVivien藤井が、暮らしを楽しむ達人のお住まいを訪問。住生活にまつわるお話を伺いながら、住まいを、そして人生を豊かにするヒントを探ります。
現在、田中さんはIT企業でのコーポレートブランディングの仕事に加え、日本初となるコーポレートコンシェルジュサービスの立ち上げにも携わっている。また、田中さんがお姉様と運営しているWEBサイト「TOKYO LOCALS’ FAVORITES」では、外国人に日本の良さをもっと知ってもらおうと、日本らしさを感じるすてきな写真とともに英語で紹介されている。海外生活を経験してきた田中さんならではの視点で日本の“FAVORITES(お気に入り)”が並ぶ。
そんな感性を持つ田中さんのおウチは、東京のいわゆる“憧れの住宅地”にあった。
スポーツ少年の息子さんと、それにも増して明るく元気な娘さんが迎えてくれた。
「3年ほど前、息子の就学前に家を持ちたいと考えて実家近くで探し始めたのですが、土地が思いの外早く出てきて。紹介された当日に見に行き、夫と数時間後には決めました!」と、田中さんの決断力にキャリアウーマンの一面を垣間見た。30代で都内に家を建てるなんてうらやましい話。
「建築コンペのサービスを利用して選んだ建築家(向山建築設計事務所)と、一緒に考えながら家づくりを進めることができました」。年齢が近い建築家で話しやすく、さまざまな希望を具現化してくれたという田中さん。自分のイメージを、雑誌やWEBから集めたヴィジュアルで伝えたのも良かったと振り返る。
そんな田中さんの思いを詰め込んだ、お宅を拝見。
まず建物の横にアプローチがあって、玄関を入ると段差が上下にあるスキップフロア構造になっている。
「下は10畳大の収納部屋になっています」。なるほど! 延床面積に参入されない天井高1.4m弱のスペースを1階に設けたプランだ。
階段を上がった中二階、引き戸になっている所は子ども部屋。
もう一つ、階段を上がるとリビングルーム。中2階の吹抜けで、天井が高く開放的。手前の階段はダイニングキッチンへと続き、高低差はあるがオープンなワンルーム空間。
広めの階段踊り場にはデスク&本棚がつくり付けてある。「以前の家ではダイニングテーブルにパソコンを持ち出して仕事をしていましたが散らかりやすく、狭くてもワークスペースは欲しいと思っていました」
田中邸のリビングで目を引くのが、絵画のようなBang & Olufsenのテレビ。両脇に立つタワー型のスピーカーはオーク材製で、同じくオーク材のフローリングとうまくコーディネート。インテリアとしてもアクセントになりつつ、空間に溶け込んでいた。
田中邸で印象的だったのは、この階段状の光庭。リビングからは大きなフィックス窓を通して見える、屋上へ続く木製デッキの階段。
「計画時は『使うかしら?』と思っていたのですが、鉢植えのブルーベリーを置いたりグリーンを飾る場所としても良かったし、友達が集まると腰掛けてアウトドアリビングのような空間になっています」、夜も気持ち良さそうなBest placeだ!
敷地は100m2弱、延床面積87m2という規模の“都市住宅”だが、それ以上に広く感じる技のある設計プランでした。
シンプルデザイン&収納力で選んだオーダーキッチン田中さんらしい、シンプルで合理的な家づくりはキッチンにも見られた。
「色はホワイトで取手の無いキャビネットを希望していました。そのなかでリネアタラーラ社のスライドドアの収納キャビネットが気に入って、これに決めました」
「食洗機は子育て世帯には欲しいですよね。ミーレ社のものは性能が良いのと、グラスなどをセットしやすく使い勝手も良いので気に入っています」
「家事動線を効率良くしたかったので、キッチンは2Wayで通り抜けできるプランにしてもらいました」。買い物帰りは、階段からパントリー→キッチンへ。リビングを回らず効率の良い動線になっている。
アメリカ、デンマーク、日本での生活で気づいた大切な事田中邸はコンパクトでありながら自然あふれる、豊かな空間の都市住宅だった。
内装を白基調にしたり、カーテンを使っていないなど視覚的な効果もあると思うが、余計な物を置かずに整理整頓された暮らし方が豊かさにつながっている。一方、15年ほど前から使っているすてきなCDプレイヤーは今も現役。
本当に気に入った良いものを購入し、長く大切にする暮らし方や住まいに対する考え方は、高校時代に留学していたデンマークで培われたようだ。「家の家具などは古いものを大切にしながら、新しいデザインのものと上手くコーディネートしたり。日本に比べて自宅で過ごす時間も多く、家具や食器、雑貨など生活を取り囲む1つ1つのものにこだわる丁寧な暮らしぶりを見て影響を受けました」
30歳代にして、この感性と、この暮らしを実践できる田中さん。人の暮らしぶりは年齢で決まるんじゃ無いんだなぁ……とシミジミ感じる50代の筆者であった。
田中裕美子TOKYO LOCALS’ FAVORITES ●【連載】暮らしを楽しむあの人のお宅拝見 記事一覧
・あの人のお宅拝見[1] 編集者・石川次郎さんのセカンドハウス(前編)
・あの人のお宅拝見[2] 編集者・石川次郎さんのセカンドハウス(後編)
・あの人のお宅拝見[3] ザ・ペニンシュラ東京を手掛けたデザイナー 橋本夕紀夫さんの30坪の自宅
・あの人のお宅拝見[4] 30代ワーキングママ、憧れのライフスタイルを実現する住まい
・あの人のお宅拝見[5] 藤原和博校長「家は生活の舞台」、著書『建てどき』から築17年の自邸を振り返る 住まいに関するコラムをもっと読む SUUMOジャーナル
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