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まったく違うメーカーや目的で使われていた商品たちが、「まるでこのためにあったの?」と驚くほどピッタリはまるという状態を指す「シンデレラフィット」という言葉が、インテリアやDIY好きの間で広まりつつある。では、「シンデレラフィット」が生まれるその理由はあるのか? インテリア好きにもファンの多い、無印良品に聞いてみた。連載【ネットで話題の住まいトピック】
ネットニュースやTwitterなどで話題になった住まいに関するトピックを、時にゆるく、時に真面目に紹介します。「すっきり収まった」と、思わず興奮するシンデレラフィット!
毎日、数多(あまた)の言葉が飛び交うインターネットだが、近ごろ、インテリア好き・DIY好きなどの間で定着しつつあるのが、冒頭の「シンデレラフィット」。ガラスの靴がシンデレラの足に美しく収まったように、意図せずジャストサイズの組み合わせだったときに、興奮と喜びを込めて使われているよう。
確かに、収納棚にボックスがぴったりと収まったり、狭いスペースを無駄なく間仕切りできてモノが整理整頓されているとうれしくなるもの。しかも、それが思いもよらない組み合わせだったりすると「これは、小さな奇跡では!」と言いたくなる。インスタグラムや、ツイッターではこんな声も。
「シェルフも無印だからサイズがぴったりで気持ちいい」
「キッチンボードの引き出しがシンデレラフィットしました。気持ちいいです。ビシッと、本当にピッタリ」
などと、感動や感激した様子のコメントを見つけることができる。ちなみに、わが家で発見した「シンデレラフィット」としてご紹介したいのが、「プラレール(電車のおもちゃ)」が無印良品の「壁に付けられる棚」にジャストサイズだったこと。鉄道好きの息子のおかげで増える一方だった車両が美しく収まったときは
「誰か見てーーーーー!」
と叫びたくなるほどの興奮だった。子ども自身で片付けられて管理しやすく、見た目にも美しいのでオススメだ。
ネット上には、数多の「シンデレラフィット」の写真がアップされているが、よく見ていくと「収納スペースに収納用品がすっきり収まる」と「モノがすっきりとモノにはまる」の2種類があるようだ。だが、そもそも「偶然の一致」なんてことがあるのだろうか。今回はSNS上で「ぴったりで気持ちいい」という声が見られた、無印良品の生活雑貨部ファニチャー担当の依田徳則さんに聞いてみた。
「家の規格に合わせた家具」だからこそ「シンデレラフィット」は生まれる「当社の収納家具の基本であるユニットシェルフは、日本家屋の規格に合わせてサイズが決まっています。日本家屋は一間(いっけん)・一尺といった尺貫法が基本となっていますが、当社はそれに柱なども考慮して、高さ175cm×横幅86cmが基本となっています。その枠に収めるボックスなどは横幅の内寸を3等分して26cm、奥行きは使いやすさを考えて40cm。引越しをしても、用途が変わっても長く使ってもらえるようにという発想が根底にあるため、基本的な規格は1996年の発売当初から変わっていません」と依田さんはその理由を話す。
なるほど「収納ボックスが偶然、収まった!」「なんとなく収まった」というのは偶然ではなく、「住まいから考えて、使いやすいサイズ」を追求した結果であり、計算されたものだったようだ。無印良品の収納商品のバリエーションは非常に多く感じるが、基本サイズは共通とのこと。素材を変える(布、木製、プラスチック、ラタンなど)ことに加え、高さやフタの有無によって多く感じ、「使い勝手のよい商品がそろっている」と思えるのかもしれない。
ちなみに、筆者が過去に取材してきた建築士やインテリアコーディネーター、整理収納アドバイザーなどのプロの皆さんも、「家具を買い始めるなら、まずは無印良品に行くのがベター」と口をそろえていた。サイズがよく考えられて、デザインが飽きないというのがその理由だったが、依田さんの話を聞いて、改めてよく考えられていたんだなと実感した。
また、家屋の規格から逆算してできているもの以外にも、モノのサイズからできている「収納用品」もあるという。
「例えば、A4ファイルが入るボックス、メイク道具などを入れるアクリルケースはその代表例です。これが入るだろうなというものを想定して、収まりがいいように考えています。A4サイズのファイルボックスはズラリと並べたときに、隙間ができないよう幅が15cmのものをつくっています。やはりぴったりと並んでいると気持ちいいですから」
こうした裏付けを聞いていると、やはりモノとモノ、モノと収納用品がぴったりと収まるというのは、サイズを熟知して生産されているから、ということが分かる。
暮らしの主役にはならない「収納」。でも、収まると気持ちがいい!無印良品の収納として、おなじみの存在でもあるのが、「壁に付けられる家具」だ。サイズはどのようにして決まったのだろうか。
「そもそも壁に付けられる商品としてはフォトフレームがあったんですが、それを一歩進めて日本の家屋にあった長押(なげし)のように、ものを引っ掛けられないか。そして、それを簡便に実現できないか、というところからスタートしました。開発当時、石膏ボードに取り付けられる家具というのがまだこの世に多くなかったので、試行錯誤でしたね。現在、サイズは、横幅44cm/88cmが基本ですが、開発イメージとしては、洋服のポケットにはいっているモノ、例えば鍵とか財布、小銭、メガネ、キーケースなどを、棚に置くことを想定。机上によく散在してしまうモノたちです。デザイン性、安全に取り付けられるか、荷重は大丈夫かなどと検証に2年ほどかかり、このサイズに行き着きました」
開発当時は、来る日も来る日も、取り付け方や安全性、使い勝手やサイズの適正を検証していたそう。こうした苦労もあり、すっかりおなじみになった「壁に付けられる棚」は、棚とミラー、椅子などと組み合わせてドレッサーとして使ったり、筆者宅のようにおもちゃ収納として使ったり、学習机の前の本棚としたりと、幅広く利用されているという。モノがジャストサイズであるがゆえに、汎用性が高く、買い足していきやすいのかもしれない。
「収納がぴったり収まるということは、空間が有効活用できるということ。生活の基本である片付けが、ストレスなくぴったり収まると、それだけでなんとなく気分がいいですよね。主役にはならないけれど、感じよく暮らせる。そういう手助けができたらな、と思っています」
目立たず、シンプルで、感じがいいとファンの多い無印良品。商品が「シンデレラフィット」するのは、実は地道な創意工夫のたまものだったのだ。
●取材協力この記事のライター
SUUMO
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『SUUMOジャーナル』は、魅力的な街、進化する住宅、多様化する暮らし方、生活の創意工夫、ほしい暮らしを手に入れた人々の話、それらを実現するためのノウハウ・お金の最新事情など。住まいと暮らしの“いま”と“これから= 未来にある普通のもの”の情報をぎっしり詰め込んで、皆さんにひとつでも多くの、選択肢をお伝えしたいと思っています。
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