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空き家をシェアハウスに!卒論がきっかけ、大学生が始めたリノベプロジェクト

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当記事はSUUMOジャーナルの提供記事です

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卒論がきっかけ。大学生がはじめた空き家プロジェクト

全国的に空き家問題が取りざたされるなか、大学生という若者たちが中心となって空き家問題に取り組んでいるプロジェクトがある。関東学院大学(本部:横浜市金沢区)人間環境デザイン学科(現:人間共生部共生デザイン学科)の学生たちが、横須賀市追浜の谷戸地域にある空き家をリノベーションして活用する取り組みを2014年からスタートさせた。すでに3棟目の空き家改修が実施された。今回は准教授の兼子朋也さんと学生たちに話を聞いた。
ゼミの卒業研究がきっかけで空き家の実態調査からスタート

きっかけは、2014年に当時4年生だった学生たちが卒業検定に空き家問題を取り上げたことだ。大学が近接する横須賀市では、谷状の地形で階段道路などが多い「谷戸※」地域があり、空き家対策は特に大きな課題となっていた。

※「谷戸」とは、神奈川県や多摩地区で、丘陵地が長い時間をかけて浸食され形成された谷状の地形を指して用いられる言葉。横須賀市は南北に丘陵が連なり平地が少ない地形のため、明治初期に軍港が開かれると関係者の居住地として、これらの丘陵地が宅地に利用された。横須賀市では49地区を谷戸地域として指定している。

総務省が発表した2013年の「人口移動報告」(2014年1月)では、転出者が転入者を上回る「転出超過」で横須賀市が1772名と全国の市町村でワーストを記録。空き家対策特別措置法にもとづいて、全国初となる行政代執行による「特定空き家」の解体も行われているほどだ。

「関東学院大学の寮もあった追浜で『空き家を活用できないか』という学生のアイディアからスタートしました。寮は2年間しか住めないので、学生たちの居住先としてシェアハウスにできればと考えました」と兼子さん。「KUG空き家プロジェクト」は、追浜地域をくまなく歩きながら、空き家の現状を調査することからスタートした。

【画像1】谷戸と呼ばれる地区にあるプロジェクト第1号の改装前(写真提供/KUG空き家プロジェクト)

【画像1】谷戸と呼ばれる地区にあるプロジェクト第1号の改装前(写真提供/KUG空き家プロジェクト)

1人の大家さんとの出会いが「びわの木テラス」を生む

「歩き回っているうちに、地元の人たちと仲良くなり、調査の中で出会った空き家の所有者の方と信頼関係を築き、借りることとができました。自分たちでリノベーションし、シェアハウスとして活用することになりました」と当時から学生たちを指導している兼子さん。

改修作業は、兼子さんたち教員が指導するとともに、地元の工務店である北村建築工房に作業指導として参加してもらうことにした。横須賀市からの助成金も決まり、2015年1月にはリノベーションのための解体工事が開始された。
「学生たちにとって、壊すこともいい体験になりました。どうやって建物が建てられたのか、知ることができますから」

現在同プロジェクトの代表である小池悠介さんは、当時1年生で参加していたそうだ。
「資材の搬入から、床を組んだり、珪藻土を塗ったりと、自分たちで作業したことはいい経験になりました」。築30年ほどの木造2階建ての空き家を、間取りを変更し、ウッドデッキも新たに設けた。造作家具も逗子にある相談家具屋の松永工務店に指導してもらい、自分たちで製作するなど専門家の指導を受けながら作業を進めていった。

2015年には関係者を招いて「お披露目会」を開き、すでに同大学で建築を学ぶ2年生3人が暮らしている。

【画像2】ウッドデッキも設置。眺めのいいスペースができた「びわの木テラス」(写真提供/KUG空き家プロジェクト)

【画像2】ウッドデッキも設置。眺めのいいスペースができた「びわの木テラス」(写真提供/KUG空き家プロジェクト)

2棟目では増築にも挑戦した「おっぱまのま」

プロジェクトの活動を続けるうちに、地域の方々との連携も強くなっていった。
「町は高齢化が進んでいます。学生はみんな若いですから、何か役に立てないかと考えました。そのため町内会とも連携して、お祭りの時に御神輿をかついだり、提灯をつける作業を手伝ったり、といった地域の活動を支えることにも貢献するようにしています」(兼子さん)

【画像3】追浜の夏祭りには学生も参加(写真提供/KUG空き家プロジェクト)

【画像3】追浜の夏祭りには学生も参加(写真提供/KUG空き家プロジェクト)

そんな活動から2棟目は良心寺というお寺が所有する空き家を、地域のコミュニケーションの場としてリノベーションすることにした。2016年5月にお披露目会が開催された「おっぱまのま」だ。今回は建物の改修だけではなく増築にも挑戦した。

この建物は外壁が押し縁下見板貼りという伝統的な木造の工法。社長が関東学院出身の「阿部工務所」という工務店に協力してもらったそうだ。「こういった技術は継承していく必要があります。その点でも床の基礎を作り直す、柱を立てる、棟上げをする、屋根を葺き替えるといった一連の工程を学ぶことは学生たちにとって非常にいい勉強になったと思います」と兼子さん。

完成後は、学生が浴衣を着て、七夕イベントを開催した。うちわや七夕飾り作りなどの子ども向けワークショップも開催して、好評だったという。

【画像4】屋根や壁、床も増築したプロジェクト第2号「おっぱまのま」(写真提供/KUG空き家プロジェクト)(写真提供/KUG空き家プロジェクト)

【画像4】屋根や壁、床も増築したプロジェクト第2号「おっぱまのま」(写真提供/KUG空き家プロジェクト)(写真提供/KUG空き家プロジェクト)

【画像5】工事中の様子(写真提供/KUG空き家プロジェクト)

【画像5】工事中の様子(写真提供/KUG空き家プロジェクト)

3つ目の挑戦は「バンマイおっぱま」

関東学院大学では、ベトナムからの留学生を積極的に受け入れている。続く3棟目は、ベトナムからの留学生3人が住むための学生シェアハウスづくりに挑戦した。この建物は同じく良心寺の持つ空き家だ。

この家は「バンマイおっぱま」と名付けられた。「バンマイ」とは、ベトナム語で「始まり」を意味する言葉だそうだ。留学生、学生、そして地域の方々との新しいつながりの始まりにぴったりの名前だ。「留学生が地域の方々との交流を持てるような場所にしたいと思っています。町内会に入り、生春巻きなどを作って配ったりして溶け込んでいますよ」とのこと。

現在プロジェクトメンバーは30人を超える。今年からはベトナムの留学生も参加している。また日本ペイントホールディングス ROOMBLOOMと関東学院大学KGU空き家プロジェクトが共同して「Happy Wall Project」も開催した。

【画像6】第3号「バンマイおっぱま」は留学生と地域を融合させるプロジェクトの場(写真提供/KUG空き家プロジェクト)

【画像6】第3号「バンマイおっぱま」は留学生と地域を融合させるプロジェクトの場(写真提供/KUG空き家プロジェクト)

外部とも連携、新しいマッチングで空き家問題に提案を

これから取り組むプロジェクトは「おっぱま100万円ハウス」だ。なんとプロジェクトの活動を知った物件オーナーが「家一軒を100万円で売るので、何か面白いことに使ってほしい」と、大学に話を持ち込んでくれたという。

「今後、改修し終わった施設を活用していくためにも、外部の方たちとの連携が大切だと思っています。運営するノウハウなどをプロの方たちと相談していくのも学生にとって勉強になりますから」。鎌倉にあるエンジョイワークスが運営する「ハロー!RENOVATION」に物件登録して、このプロジェクトは進められるという。

「ハロー!RENOVATION」とは、空き家や遊休不動産を持っている人と、それを使って事業をしたい人をマッチングするプラットフォーム。さらにプロを含むサポーターと呼ばれる第三者が、その事業をアイデアやお金、イベント参加などで応援する「共創」がコンセプト。「おっぱま100万円ハウス」は「学生による事業実験ハウス」という名目で進行中。どんな事業が進んでいくのか期待したい。

【画像7】これから始まるプロジェクト。第4号になる「おっぱま100万円ハウス」(写真提供/KUG空き家プロジェクト)

【画像7】これから始まるプロジェクト。第4号になる「おっぱま100万円ハウス」(写真提供/KUG空き家プロジェクト)

兼子さんは学生たちに、このプロジェクトで体験したことを実社会で活かしてもらいたいと願っている。「できれば学生たちの中から起業したいというような人間が出てもらいたいと思っています」。単に「空いている家を再生する」という範囲を超え、地域の方々とも頻繁に交流を持って色々な声を反映させるなど、街に明るさを取り戻すことにも一役買っている。

「プロジェクトの活動拠点『おっぱまのま』は、今後、イベントスペースとして開放するほか、学生が地域の人たちにPC・スマホ教室を開くなど、学生らしいアイデアが盛り込まれた教室や各種展示を行う予定です。今後も、空き家の楽しい活用方法をどんどんカタチにしていきたいと考えています」

全国に広がる空き家問題だが、若い人たちが自分ごととして取り組んでいる姿は心強い。行政や住民だけではなく、若者からの新しい提案が加われば解決策も広がっていくのではないだろうか。

●取材協力
・KGU空き家プロジェクト 住まいに関するコラムをもっと読む SUUMOジャーナル

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SUUMO

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