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環境省に直撃取材! 「冷房28℃」設定、ほんとに守らないといけないの?

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当記事はSUUMOジャーナルの提供記事です

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環境省に直撃取材! 「冷房28℃」設定、ほんとに守らないといけないの?

秋の風を感じつつ、時おり残暑も感じる9月。まだ冷房を使う機会がある人もいるのではないでしょうか。摂氏28度(以下、℃と表記)。地球温暖化対策の一環で、冷房時の室温として設定されることもあるこの数字ですが、人によっては暑いと感じる場合も。また、今年の5月には、首相官邸で開かれた会議で、盛山法務副大臣から「なんとなく28℃でスタートした」という発言が飛び出たことは記憶に新しいと思います。はたして実態はどうなのでしょうか。通勤時に滝のような汗をかいている編集部Y(20代男性)が、世の中の“暑がり”を代表して、環境省で地球温暖化対策を進めている担当者に、冷房の話から住宅の政策までさまざまな疑問についてお話を聞いてきました。環境省が入居しているのは霞が関にある中央合同庁舎第5号館。厚生労働省と同じ建物に居を構えています。取材したのは、地球環境局 地球温暖化対策課の松澤課長です。

【画像1】環境省地球環境局地球温暖化対策課の表札。まるで早口言葉のよう(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

【画像1】環境省地球環境局地球温暖化対策課の表札。まるで早口言葉のよう(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

【画像2】地球温暖化対策課の松澤課長に地球温暖化対策に関する話を伺った(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

【画像2】地球温暖化対策課の松澤課長に地球温暖化対策に関する話を伺った(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

―― 最初に地球温暖化対策課の役割を教えていただけますか

「パリ協定で批准された日本のCO2排出量の削減目標が、2013年度を基準として2030年度にマイナス26%となっています。この目標に向けて、全体の進行管理をおこなうのが地球温暖化対策課の役割です。また、家庭や業務部門のCO2削減の成功事例を地域でつくり全国に展開しています」

―― 現時点での温暖化対策の進捗状況はどうなっていますか

「京都議定書の採択以降、90年代から産業部門ではCO2の排出量は減り続けています。一方で、家庭部門では2010年代まで増え続けていました。そのような背景もあり、家庭部門では40%削減するというのが目標となっています」

―― 日本全体で26%なのに家庭部門で40%ですか。難しいようにも聞こえるのですが

「40%と言ってもそのうちの26%は供給側、つまり電気をつくる側の目標数字です。需要側、つまり家庭内の省エネルギーという意味では14%が削減目標となります。この数字は、都内の4人家族の家庭をモデルケースとすると、『電球をLEDに換える』『冷蔵庫を省エネ対応のものに換える』『エアコンを省エネ対応のものに換える』『窓ガラスを複層ガラスに換える』の4つのうちの3点で達成可能な数字です。具体的な行動に落とし込むと、決して達成できない数字ではないと私たちは考えています」

冷房設定28℃にすべきなのかどうか、それが問題だ

――エアコンの話が出てきたので聞かせてください。冷房に関しては、今年5月11日の副大臣会議にて当時の盛山正仁法務副大臣が「なんとなく28℃という目安でスタートした」と発言されたそうですが本当にそうなのでしょうか

「28℃には根拠があります。労働安全衛生法とビル衛生管理法(正式名称は建築物における衛生的環境の確保に関する法律)という2つの法律において、室温を17℃から28℃までの間に設定するよう義務付けられています。また、一般財団法人省エネルギーセンターの調査で、クールビズの服装を実践することで体感温度が2℃下がることが分かったため、28℃を目安とすることにしました」

―― なるほど、冷房の「設定温度」ではなく「室温」、絶対的な数字ではなく「目安」なのですね。ただ、これらを勘違いしている人も多いように思います。実際に、環境省のサイトでも調査結果がでているようです。このことについてどう思いますか

【画像3】環境省サイトより引用。クールビズで掲げられている「28℃」が、「設定温度ではなく室温である」と知っている人は3割程度

【画像3】環境省サイトより引用。クールビズで掲げられている「28℃」が、「設定温度ではなく室温である」と知っている人は3割程度(環境省「『クールビズ28℃』の真実」より)

「要因としては、室温の管理というのが大変難しいという点にあると思います。設定温度と言いかえれば具体的な行動に落としやすいので誤解されているかたが多いのかもしれません」

―― 実際に環境省ではどのように対応していますか?

「高さや方角によって温度は変わるため、オフィスをいくつかのブロックに分けて集中管理しています。管理方法としては、部屋の空気の吸い込み口の温度が28℃を超えないようにという設定をしており、実際に冷房の送風口から出てくる空気は28℃を下回っています。さらに、コピー機など電子機器の周りでは温度が変わったりするので難しい部分もあります」

―― たしかに取材をしている環境省のこの部屋は過ごしやすい温度になっていますね

「実は環境省のフロアはすべて内窓がついていて、気密性が高いんですよ。気密性を上げると空調の効きがよくなり、省エネ化につながるのですが、現在の東京都知事である小池百合子さんが環境大臣だった時代に号令がかかり、率先垂範ということで省をあげて取り組みました。省庁というのは紙の書類が多く、窓際に置いている人が多かったので、内窓をつけることで窓際にものが置けなくなることから反対する声もあったのですが、執務時間を快適に過ごせるようになり、結果的に職員からも好評です」

【画像4】内窓が取り付けられた環境省の会議室。空調の効きが大きく変わったとのこと(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

【画像4】内窓が取り付けられた環境省の会議室。空調の効きが大きく変わったとのこと(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

―― 建物の改修で空調の効きが変わるというのは意外と知られておらず、実行しているご家庭も少ないようです

「実は建物の断熱性・気密性を上げることで省エネを見込めるのですが、先に挙げたLEDの交換のように簡単にはいかないので、実行する難易度が高いです。具体的には窓を複層ガラスにしたり、内窓をつけて二重窓としたりする方法があります。また、サッシもアルミから樹脂のものに取り替えると断熱性が高くなるという効果があります。これによって冷房だけでなく、暖房の効果も向上します」

―― 簡単にはいかないとのことですが、環境省として進めていることはありますか

「新築と既存の住宅でそれぞれ異なります。政府として現在は、新築においては、建築物省エネ法で住宅の省エネ基準を2020年までに段階的に義務化することになっています。また、ゼロエネルギーハウスの推進も進めています。既存住宅に関しては新築と違い、進めることが難しいのですが、新築が年に約90万戸、ストックが5000万戸という現状を踏まえると、既存住宅の省エネ改修も政策として取り組んでいかなければならない非常に重要な対象と考えています」

―― 今後大きく変えていくためにはどうしていくべきですか

「財源の問題もありますが、根本的な価値観を変えていかないといけないと思っています。日本人は住環境に対して我慢しがちな傾向がありますし。単なるエネルギーの問題というより健康の問題でもあると捉えたほうがよいと思います。交通事故の死亡者数よりも、入浴中のヒートショックで亡くなる人の数のほうが多いというデータもありますが、もしかしたら住宅の性能によって防げていたケースもあるかもしれません。そういった事情から、地方自治体によっては健康保険の財政運用をよくするためにも、既存住宅の省エネ改修を進めるという取り組みを実施している自治体もあるようです」

―― 環境の問題だけでなく、命の問題でもあるということですね

「今述べたのは需要側の話ですが、供給側である施工業者のかたも、医師と同じように人の健康に関わる大事な仕事をされていると考えています。ニュージーランドのヘレン・クラーク元首相も、保健大臣のころより住宅大臣のときのほうが多くの人の健康を改善したという話をされたそうです」

―― 冷房の話から始まり、家と地球温暖化、ひいては健康の話までいろいろ勉強となりました。本日はありがとうございました

【画像5】撮影の為、省内に貼られている環境啓発ポスターを集めて頂いた(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

【画像5】撮影の為、省内に貼られている環境啓発ポスターを集めて頂いた(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

●取材先
・環境省●参考
・「クールビズ28℃」の真実 住まいに関するコラムをもっと読む SUUMOジャーナル

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SUUMO

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