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マンション建替え[5] 実感したのは「別の解決策」と「住まいへの愛着」

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当記事はSUUMOジャーナルの提供記事です

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マンション建替え[5] 実感したのは「別の解決策」と「住まいへの愛着」

「二転三転」、「四苦八苦」、「七転び八起き」、さまざまな言葉が頭をよぎる建替えが終わった。「比較的スムーズにいったほうですよ」と事業者から言われたが、建替えの話が出てから、みんなが新しい建物に帰ってきて住み始めるのに、軽く15年くらいはかかっている。とにかく時間と忍耐と知恵がマンションの建替えには必要だ。その時間の中で私が学んだことを総括したいと思う。【連載】私の「マンション建替え」経験談
「マンションの老朽化」が話題になる昨今、マンションの建替えという問題が切実になってきている。どんな問題が起こり、どんな方法で解決していくか。具体的な例を知る機会は少ない。今回はマンション管理士の資格を取り、築50年の自宅マンションの建替えを経験した筆者が5回にわたってプロセスをお伝えします。
・第1回:マンション建替え[1] 仮住まいのはずが…建替え推進メンバーに
・第2回:マンション建替え[2] 「こんな住まいにしたい」の調整が大変
・第3回:マンション建替え[3] 建替え決議へ…「住民の意思統一」の道
・第4回:マンション建替え[4] どうすればいい? 行政・ご近所・賃借人への対応建替えられるマンション、建替えづらいマンション

建替えを経験し実感したのは、「マンションの建替え」は困難な問題が多いということだ。国土交通省の資料によると、国内のマンションのストック数は約590万戸であり、そのうち旧耐震基準により建設されたものが約106万戸存在する。しかもマンションの建替え実績は183件、約1万4000戸の実施にとどまっているそうだ(2013年4月時点)。すべてのマンションで今すぐ建替えができる状況ではないと思う。建替え決議までたどり着くことなく、頓挫してしまうマンションも少なくない。

私たちの住んでいた団地の場合は敷地に余裕があったため、自己負担金を出さずに建替え前の広さ以上の住戸に住み替えができた。しかし中には敷地にゆとりがなかったり、既存不適格だったために建替えても小さくなったり、多額の自己負担金が必要になる場合がある。全員が資金を出せるのか、という経済的な問題がある。

アクセスが不便な立地の場合は、建替えて増室しても、新たに購入されるニーズがなければ、事業として成り立たない、という市況的な問題もある。また管理組合がきちんと機能していない、区分所有者同士のコミュニケーションが取れていない、無関心な人が多く積極的に建替えに取り組む人がいない、というような人的な問題もある。

「建替えられない場合」は、どうすればいいのか?

それなら老朽化したマンションには、どんな解決策が考えられるだろうか。建替え以外の方策は何があるのだろうか。

国土交通省ではマンションを建替えるか修繕するかを判断するためのマニュアルを出している。マニュアルではマンションの老朽化の程度を把握し、建替えと修繕その他の方法とを十分に比較検討し、建替えの必要性や合理性を区分所有者間で共有することが重要であるとしている。検討のための技術的指針として以下のように示している。

1.マンションの老朽度判定、不満・ニーズの把握と要求する改善水準の設定
2.修繕・改修の改善効果の把握と費用の算定
3.建替えの改善効果の把握と費用の算定
4.費用対改善効果に基づく建替えか修繕・改修かの判断

参考:国土交通省「マンションの建替えか修繕かを判断するためのマニュアル」

私は築年数が経っていても、しっかり管理されているマンションは、新築とは異なる魅力があると思っている。足を踏み入れると、居心地のいい雰囲気ときちんと手入れされている清潔感がある。何度も洗濯され、つくろわれたパジャマが、新品のものより着心地がいいのと同じだ。そういうマンションは持ち主たちの愛情が感じられる。

もともと欧米等では鉄筋コンクリートの建物の寿命は長い。築100年を超えた建物が現役で住み継がれている。しかし日本の気候は多湿なうえに、地震などの災害も多い。財務省が決めた鉄筋コンクリート造の建物の法定耐用年数は、わずか「47年」だ。

これから必要とされるのは、建物の寿命を長持ちさせるための技術だと思う。例えば最近のマンションでは主流になっているスケルトン・インフィル(※)も新技術の一つだ。また酸化したコンクリートを再度アルカリ化できる技術なども生まれているようだ。

そして隣り合う狭い住戸をつなげて広い空間にしたり、住み心地をよくするためのリノベーションの技術にも注目したい。エレベーターやオートロックなどの設備をより簡単に設置できるような工夫が望まれる。

※スケルトン=構造躯体、インフィル=内装のこと。耐久性の高いスケルトンと、容易にリフォームできるインフィルを明確に分け、長期的に暮らせる住まいのことをスケルトン・インフィル(SI)住宅と呼ぶ

区分所有を解散して一括土地売却という方策もある

では、修繕積立金も集まらず、再生できないマンションの場合はどうすればいいのか。「区分所有関係の解消」、「管理組合の解散」をして土地(マンションの敷地)を売却、その収益をもとにして、それぞれが次の居住先を選択して住み替えることができないだろうか。

いわゆるマンション建替え円滑化法は、改正前は「マンションの建替えの“円滑化等”に関する法律」だったが、改正後は「マンションの“建替え等”の円滑化に関する法律」となった。一番大きい改正は「建替えではなく敷地の一括売却をすること」が可能になったことだろう。これは耐震診断で、現行の耐震基準を満たしていないことを立証したうえで、建築主事に耐震不適格であると認定されたマンションに限る。つまり、ただ古いだけでは売却はできないということだ。

実際のところ建替えを考える場合、「耐震」だけではなく、設備の老朽化や今の暮らしに合わない広さなどという問題も大きい。ただ建替えもできず、修繕積立金も満足ではないマンションにとって一括売却は、一つの大きな解決法になるかもしれない。

そうして売却された土地は、再度マンションをつくらずに、他の利用方法を考えてもいいのではないか。少子化で人口が減り、空き家が増えると予測されるのであれば、無理に住宅にする必要はないかもしれない。高齢者向けの施設や保育所、災害時の避難施設など、必要とされている施設への変換も考えられるだろう。

いずれにしても、マンション単体で努力できることに加えて、法律や制度のバックアップはこれまで以上に必要だと思う。住民にとっては人生に何度もあることではないので、ノウハウの集積がない。私たちも手探りで一つ一つ解決してきた。

建替えをしてさらに大きくなった「マンションへの愛着」

私たちは以前の古い建物もすごく好きだった。建替え決議が決まったときに、「写真集をつくろう」という話になった。建物を解体したときがちょうど築50年、住民の協力で春夏秋冬の団地の歴史が詰まった写真が集まった。その小さな冊子には、かつてこの地で育った作家が、ここでの暮らしを書いた小説の1節も、了承のもとに掲載されている。みんなのこの場所への愛情が「建替え」を実現させたのだとあらためて思う。

3年を超える仮住まいの間は住民全員がバラバラに暮らした。その間に遠方に引越す方や、諸事情があり手放す方、そして残念なことに亡くなった方もいた。
新しい住まいに戻ってきたとき、ほんとうに安堵した。以前とは比べ物にならないほど大きくなった建物では、元々住んでいた方と顔を合わす機会は減ったが、やはり推進委員会の方々に会うと、なんだかほっとした。まるで故郷に帰ってきたようだった。

そして昨年は自ら志願して理事会を経験した。建物は新しくなったが、マンションへの愛着は大きくなっていた。それは建替え推進委員会ですでに、「管理費用」や「長期修繕計画」、「修繕積立金」をどうするのか、そして「そのために共用施設はどうするか」など、新しいマンションの理事会のようなことを話し合っていたからだ。

住民たちの知恵こそが、マンションの再生につながる

今回、「マンションの建替え体験記」をまとめてみようと思ったのは、マンションの再生について手探りの人たちに、何かのヒントになればと思ったからだ。推進委員会に参加しなければ、「マンション管理」を他人事とし、管理はサービスとして受けるだけのものと考えていたかもしれない。何度も立ちはだかる壁にぶつかるたびに「だれか教えてくれる人はいないのかな」と思ったが、考えてみれば私が取得した「マンション管理士」という資格が、その「だれか」の役割にならなければいけないのだと気づいた。

マンションには、専門の技術を持っていたり、資格を持っていたり、営業力が高かったり、ご近所に顔の広い人がいたり、実は人材が豊富だ。しかし普段はお互いに、それを知らないことが多い。「建替え」や「大規模修繕」という場面では、それぞれの能力が発揮されるのではないだろうか。集まって知恵を出し合えば、困難なことでも乗り越えられる。乗り越えたあとはより絆が深まり、自分たちのマンションへの愛着は高まる。

私が推進委員会に参加したときも、ほんの少しの勇気だった。そのおかげで、たくさんの経験と勉強をさせてもらった。「マンションの管理」「マンションの再生」について、あまり興味のなさそうな人でも、何か役割を与えられて、きっかけをもらえば、実は動き出せる人は多いと思う。まずは理事会の方は住民に声かけしてみよう。そして住民もオブザーバーとしてでも、次の理事会に参加することから始めてみてはいかがだろうか。思っていたよりずっとやりがいがあり、おもしろいと実感できると思う。

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SUUMO

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