読み込み中
ログイン・会員登録すると好きな記事をお気に入り登録できます

定年後に親と同居[4] リフォーム編【後編】相続の先まで考える

当記事はSUUMOジャーナルの提供記事です

当記事はSUUMOジャーナルの提供記事です

このコラムにありがとう

定年後に親と同居・リフォーム[後編] 相続の先まで考える

定年を機に妻と猫4匹を連れて東京のマンションから38年ぶりに実家にUターン。親と合わせて合計300歳になる高齢家族が、介護や相続など将来に備えてリフォームを実施しました。前回はおもに水まわりのリフォームを計画してから実施後のBefore・Afterまでお伝えしましたが、今回は相続など先を見据えた際のリフォームのポイントなどについてお伝えします。
自分が死んだあとのことまで考えて、売却も視野に入れる

一般的な二世帯住宅のリフォームでも、親の介護、看取りとその後の相続は当然視野に入れないといけないでしょうが、高齢二世帯では子世代の相続、つまり自分たちの死後のことも想定せざるをえません。もちろん、親より自分が先に死ぬ可能性もないとはいえないのですが、とりあえず親世代を看取ったうえで、妻より夫が先に死ぬと考えるのが自然でしょう。このとき、仮に住宅を相続できたとしても、最後に残った妻にとってそこが「終の棲家」としてふさわしいかどうかも考えておくべきです。

わが家の場合、両親と夫を看取った後、妻は血縁も地縁もほとんどない土地にひとり残されることになります。しかし、子どもや孫たちが暮らす東京から遠く離れ、たった一人で老後を過ごすことを果たして彼女は望むでしょうか。もし、彼女が東京に戻ることを願うなら、私が元気なうちに自宅を処分するなどして資金を用意しておく必要があります。

また、親の死後に家だけ地方に残されても生活圏が東京の子どもたちにとってはありがた迷惑ですから、いずれにしても私の代できちんと整理しておかないといけません。リフォームの際も、今の住まいを夫婦の終の棲家として絶対視せず、妻や子の相続までも視野に入れ、将来の売却可能性なども考えたうえでプランを検討する必要を感じます。

売却査定、ハウスメーカーの査定方式で建物が40%高くなる

近い将来の相続が予想され、また売却の可能性もあるなら、リフォームが資産価値にどれくらい影響するのかは知っておきたいものです。このように考え、施工したハウスメーカーと信託銀行の無料診断を利用してみました。

評価方法は、土地は取引事例比較法(近隣との比較)、建物は原価法といって、再調達原価(同じ建物を建てる際にかかる費用)から経過年数分減価させるものです。結果、実査なしの簡易査定だった信託銀行と、住宅の詳細な建築設備情報や維持管理の履歴情報を反映したハウスメーカーとで、建物の評価額に大きな差が出ました。

【画像1】価格査定のレポート(写真撮影/松村徹)

【画像1】価格査定のレポート(写真撮影/松村徹)

現在の中古一戸建ての査定においては、耐久性に優れた構造躯体(スケルトン)と使用頻度が高く劣化しやすい内装・設備(インフィル)を特に区別せず、一律20年前後の償却期間でまとめて評価するのが一般的です。今回の信託銀行の査定がこれに当たりますが、重量鉄骨住宅なので木造住宅より減価率は低めに(残存価格は高めに)なっていました。

一方、ハウスメーカーが採用したスムストック(※)査定方式は、スケルトンとインフィルを区別するもので、メンテナンスの状況やその履歴の有無など従来の査定方式では評価対象とされていないポイントも加味します。結果として、スムストック方式で査定したほうが40%も高くなったのには驚きました。建物が適切に維持管理され、履歴情報が整理されていれば資産査定で有利だということです。

※優良ストック住宅推進協議会の会員各社が供給してきた建物のうち、(1)新築時の図面、これまでのリフォーム、メンテナンス情報等が管理・蓄積されている、(2)建築後50年以上の長期点検制度・メンテナンスプログラムの対象になっている、(3)「新耐震基準」レベルの耐震性能がある、という条件を満たすものを「スムストック」と定義しています。

残念ながら、どのようなリフォームなら資産評価にどのくらいプラスになるかといった実証研究は、中古流通市場が小さい日本にはまだあまりないようです。ただ、査定してくれた両社にヒアリングした感触では、リフォームにかけた金額分だけ資産価値が上がることはありえないが、古い設備が更新されていればマイナス要因にはなりにくいだろう、というものでした。

確かに、自分が住むつもりの買い手が、30年は経とうかという旧式のトイレやユニットバスを見たら、必要となるリフォーム分の値引きを要求してもおかしくありません。また、耐震補強済みの住宅であれば、そうでない住宅より高く評価されるでしょう。一方、間取りの変更は、趣味嗜好の違いもあって判断が難しそうです。結局、旧式の水まわりとエアコンの交換は最低限すべきだと考えました。

親の資金に頼ってはいけない理由、兄弟姉妹でもよく話し合いを

兄弟姉妹など相続人が複数いる場合、リフォームで注意すべきことは資金の出どころです。例えば、親と同居する長男だからといって、親の金融資産を勝手にリフォームに充てれば、兄弟姉妹間のもめ事になる可能性があります。もちろん、自費でリフォームしたいと親が子どもたち全員の前で宣言してくれれば問題はないのでしょうが、親のためだからいいだろうと独断してしまうと危険です。親の資産は相続が発生すれば子どもたちで分配されるべき資産でもあるからです。

また、せっかくリフォームするのだからと、インテリアを一新したり自分の書斎をつくったりなど、本来の目的以外の改修までしてしまっては言い訳もできません。子ども間で無用のトラブルを生まないために、事前にしっかりと話し合い、同意が得られない場合は自己資金でやれる範囲でする、という意識が必要だと思います。

今回は、とりあえず自分の退職一時金を充てるつもりでしたが、プランを見て両親が大乗り気になってくれたら親資金の投入も期待できる、という皮算用もなかったといえばうそになります。そんななか、自身に胃がんが見つかり一時はリフォームどころではなくなりました。幸い早期発見のため大事に至らず、すぐに元の生活に復帰できたうえ、さらに幸運なことに三大疾病特約付きの保険に加入していたため、保険金で自己資金を大幅に増額できました。自分たちはまだまだ元気だし、トイレも風呂も使えるのにもったいない、と当初からリフォーム自体にあまり乗り気でなかった親に資金を出してもらうのはちょっと難しそうだな、と思っていただけに本当にラッキーでした。まさに「人間万事塞翁が馬」です。

リフォーム資金に限らず、同居しているといって親の介護や延命治療、相続などデリケートな問題を勝手に決めてしまうと、あとあともめ事になりかねません。「家族なのだから言わなくても分かってくれている」と思うと間違いのもとです。

筆者には弟と妹がいるのですが、事前に兄弟姉妹とのコミュニケーションをしっかり取っておくべき、というのがリフォーム会社から最初にもらったアドバイスでした。現に、兄弟げんかから親と親の資産の取り合いに発展して最後の最後にリフォーム契約が破談になったことがあったそうです。また、家裁で離婚や相続の調停委員をしている知人からも同様の助言を受けたこともあり、親の介護やリフォームなどについてやや疎遠気味だった兄弟姉妹の意向も確認しました。

ちなみに、自己資金だけなら意思決定が速いというメリットもあります。他人の資金をあてにしていると予算がなかなか決まりませんが、自己資金だと「ない袖は振れない」だけに予算の上限が明確です。また、設備や壁などの色やグレードを決める際、自分の意見を通しやすいともいえます。

リフォームは生活習慣を変えるきっかけにもなります。今回のリフォームを契機に、夫婦で整理整頓や清掃をこまめにして生活空間をすっきりさせようと決めました。

実は、物を簡単に捨てられない両親が水まわりの収納にストックしていた古いバスマットやトイレカバー、ブラシなどはリフォームの際にこっそり処分し、新しい洗面化粧台の収納面積もあえて以前より小さくしています。手の届くところ、見えるところに何でも置きたがる両親には最大限配慮しつつ、少なくとも自分たちが使う物は最小限にして、使う都度収納から出し入れするようにしています。

また、毎日掃除でしっかり身体を動かせば、消費カロリー増加でダイエットにもなり一石二鳥です。風呂が1カ所しかないので入浴の順番をどうするかが悩ましい問題でしたが、風呂掃除を買って出れば、堂々と一番風呂に入れるというメリットもあります。もっとも、日々の清掃でトイレの汚れが気になるようになると、小用を足すときに座らざるをえなくなるのが悩ましいところです。

しかし、今回のリフォームによる最大の変化は、きれいで使いやすくなったDKやトイレ、洗面化粧台のおかげで、妻が友人など来客をもてなす機会がずっと増えそうなことです。住み慣れた東京を離れて一緒に付いて来てくれた妻が、趣味の雑貨づくりに専念でき、自慢の料理や菓子づくりの腕を存分にふるい、来客との楽しいおしゃべりに花を咲かせる環境をつくれたのなら何よりです。

定年退職して実家に戻ると告げたとき、「残された人生の目標をしっかりもち、両親や妻と向き合いつつ、自分や家族の健康管理にも気を配らないといけないよ」と古い友人に言われました。

実家に戻って生活価値観の違う両親とのコミュニケーションギャップに悩み、がんの手術というアクシデントに見舞われながら、親や妻の将来を考え、兄弟姉妹とも話し合って取り組んだリフォームは、図らずも友人の助言を実践する貴重な経験でもあったといえます。

・松村徹
長年、シンクタンクで不動産調査に携わるなか、業界の常識には顧客本位を貫く哲学や時代を先取りする意欲が欠けていると痛感。フリーな立場になって自らも両親と同居して「実家問題」に悩みながら、利用者目線から面白くて役に立つコラムや記事を発表している。共著に『不動産ビジネスはますます面白くなる』、『不動産力を磨く』、『猫を助ける仕事』ほか●「定年後に親と同居」関連記事
・定年後に親と同居[1] 毎日会社に行かない生活とは?
・定年後に親と同居[2] 38年ぶりに親と暮らすということ
・定年後に親と同居[3] リフォーム編【前編】高齢二世帯のリフォーム
・定年後に親と同居[4] リフォーム編【後編】相続の先まで考える
・定年後に親と同居[5] その後編【前編】「完全分離型」の二世帯住宅が理想
・定年後に親と同居[6] その後編【後編】「嫁」も笑顔で暮らせる工夫 住まいに関するコラムをもっと読む SUUMOジャーナル

【住まいに関する関連記事】


情報提供元:SUUMO

更新日:2017年1月6日

この記事に投票する

回答せずに結果を見る

SNSでも新着記事をお知らせしていますmichill 公式アカウント

ログイン・無料会員登録