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趣味でアウトドアを楽しむ人は多いが、せっかく買いそろえたアウトドアグッズをしまい込んでいてはもったいない。日ごろの生活に取り入れておけば、災害時にも役に立つはず。どんなものが役に立つのか、どう日常生活に取り入れたらいいか、探ってみた。
緊急時に、避難生活に、役立つグッズがたくさんある
街を飛び出して、自然の中で遊ぶときに欠かせないアウトドアグッズ。厳しい自然環境の中で安全・快適に過ごせるように開発された道具だから、災害時にも役立つのは間違いない。
その実例が、アウトドア総合メーカーのモンベルが取り組む災害支援活動だ。1995年の阪神淡路大震災をきっかけに、アウトドアグッズと自分たちがもつノウハウを役立てようと「アウトドア義援隊」を結成。災害が起こると現地に駆け付け、テントや寝袋などの貸し出しを行い、被災者のサポートを行ってきた。
災害時には、どんなアウトドアグッズが、どんなときに、どう役立つのだろう?
「モンベルでは、災害発生からの状況変化に応じた備えを提案しています。『一次避難』は、災害が発生した直後に自分の身の安全を確保し、命を守るステージ。その後、ライフラインが復旧するまで、避難所や野外で生活を送るステージが『二次避難』です」(モンベル広報 以下同)
それぞれのステージで役立つアイテムをいくつか紹介してもらった。
【一次避難に役立つアウトドアグッズ】
●ホイッスル
少しでも早く救助してもらうために、ぜひ用意しておきたい基本アイテム。声が出ないような状況でも助けを呼ぶことができ、大声で叫ぶより体力を消耗しない。
●ヘッドランプ
避難時に明かりは必須。日中でも停電により暗闇の中を非難することになるかもしれない。懐中電灯は片手がふさがってしまうが、頭に装着するヘッドランプなら両手が使え安全に行動できる
【二次避難に役立つアウトドアグッズ】
●寝袋・マット
避難所で過ごす場合も、毛布一枚より格段に暖をとりやすい。特に冬の避難生活で心強いアイテム。コンパクトになり場所を取らないのも利点。下にマットを敷けば地面からの冷気を遮断し、寝心地も改善する。
●テント
就寝スペースとして、また着替えや子どもの居場所にも利用できる。避難生活が長引いたときにテントが張れればプライバシー面でのストレスが減少する。
2016年の熊本地震の際は、モンベル南阿蘇店で被災者にテントの貸し出しを行い、店舗前のスペースにテント村ができた(冒頭の写真)。「長く避難所にいるとプライバシーの面でストレスになり、家族で過ごせるテントのほうが快適だという声をたくさん聞きました」
レインウエアやシューズは日常生活にすぐ取り入れられる日常生活にもアウトドアグッズは取り入れられるだろうか? 取り入れやすいものとして挙がったのが、レインウエアや登山靴、ヘッドランプだ。レインウエアと登山靴は雨風の強い日に活用できるし、ヘッドランプは懐中電灯代わりに壁にかけておいてもいい。
「モンベルでは雨や雪の日の通勤にレインウエアや防水の登山靴を着用する社員も多いです。キャンプや登山のシーンだけでなく、日常の悪天候の際にも使っていただくことをオススメします」
●レインウエア
アウトドア用は防水性が高く、丈夫で動きやすいのが特徴。レインウエアの上下があれば、どんな天候や状況でも両手をふさがずに行動できる。
●登山靴
ソールが厚めにできていて剛性も高い。ガラス片やがれきが散乱する中を歩かなければならないときに、スニーカーとの差は歴然。さらに防水のものなら、ぬれた場所でもガンガン歩いていける。
●ライフジャケット
もうひとつ紹介してくれたのが「浮くっしょん」という商品。普段はクッション、開けばライフジャケットになる。実はこれ、東日本大震災の津波の経験から考案されたものだという。
「東日本大震災では、家の奥にしまい込んでいたりどこかに保管していて、津波のときに使えなかったライフジャケットがたくさんありました。普段の生活の中ですぐ手の届く場所に置けて、いざというときに確実に手に取れるものが必要という考えのもと開発されました」
装着が簡単で、普段から水辺の遊びに使える。防災頭巾のように学校や幼稚園を中心に備えが広がっているそうだ。
アウトドア用品を部屋に置いてインテリアとして楽しむ手もあるかも、と考えた筆者だが、この案は賛同を得られなかった。
「災害時に役立てるには、普段から使っていることがとても大事です。部屋に置くというより、どんどんアウトドアに出かけて、持っている道具をよく使うこと。そうすることで、もしものときにもちゃんと使いこなすことができます」
確かにそのとおり。テントを持っていても、使っていなければ立て方を忘れてしまう。ずっとしまい込んでいて出してみたらカビだらけ、なんてこともありそうだ。しばらくアウトドアから遠ざかっている人は、防災のことも視野に入れて新しいアウトドアを始めるのもいいだろう。
例えば、家族で何かを始めるならキャンプはどうだろう? ということで、キャンプ用品を得意分野とするアウトドアメーカーにも、防災に役立つおすすめ商品を紹介してもらった。
スノーピークが紹介してくれたのは、誰にでも設営しやすいロングセラーのテント。コールマンのすすめは、4つに分割して持ち歩ける進化形のランタンだ。
今回の取材を通じて学んだことは、「アウトドアでたくさん遊ぶことが、もしもの災害への備えになる」ということ。最近めっきりアウトドアから遠ざかっている筆者。しまいこんだテントを引っ張り出して、久しぶりに山旅を計画しようと思った。
【取材協力】この記事のライター
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