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スッキリ暮らす[5] 片づけの第一歩は心の整理から、佐原美和さん

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当記事はSUUMOジャーナルの提供記事です

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スッキリ暮らす[5] 片づけの第一歩は心の整理から、佐原美和さん

「片づけたいのに片づけられない」という相談を数多く受けている整理収納アドバイザーの佐原美和さん。佐原さんが、心理学の観点を取り入れた独自の整理収納メソッドを用いて行うアドバイスは、今まで片づけられなかった人でも「心の整理ができれば部屋は片づけられるようになる」と好評だそう。心理的なアプローチで片づけについて考えるポイントを伺いました。【連載】モノを減らしてスッキリ暮らす
「2016年こそはすっきりした家で暮らしたい!」「4月の新生活に向けて片づけよう!」--年末や年頭に、そう心に期した人は多いのではないでしょうか? 家がすっきりしない最大の原因は『物が部屋の広さに対して必要以上に多いこと』。自分の物の適正量を知って、余分な物を手放せばよいのですが、「もったいないから捨てられない」となかなか実践が進まないのも実情です。そこでこの連載では、スッキリライフを送っている方々に、物の所有欲から解放された心の変遷や処分の実践方法についてうかがいます。物を減らして「今年こそ!」を実現させましょう。「物を片づけるには、まず心の整理が必要です」

佐原美和さんは、片づけのプロである整理収納アドバイザーとして活動するなかで、顧客の方々の「いつか使うかもしれないと思って捨てられない」「もったいなくて捨てられない」「片づけたいけれど、やる気がでない」という声を幾度となく聞くうちに、「人は心の整理ができない間は片づけられないのではないか。片づけに一番必要なのは収納術の知識やテクニックではなく、心の整理なのだ」ということに気づいたそうです。

人は家にあるすべての物に大なり小なりさまざまな思い入れがあり、「使っていないけど捨てられない」と思う心があります。だから、それらを片づける必要が生じたら、まず心を整理して臨まなければなりません。自分を動かすのは自分の心次第だからです。
「『2年間、着ていない服は手放しましょう』『使っていない物は手放しましょう』といった片づけの方法論やテクニックがありますが、実際にそれを行動に移せる人は意外と少ないんです。本当に心が望んでいなければ、片づけられないのは当然のことなのです」

心の整理方法を学ぶために佐原さんが出合ったのは「アドラー心理学」でした。
アドラー心理学とは、オーストリア人心理学者アルフレッド・アドラーが提唱する理論体系で、人が社会生活を送るうえで問題があった際に活用できる心理学のことです。アドラー心理学を対話形式で紹介した『嫌われる勇気』(ダイヤモンド社)が大ヒットしたことで聞き覚えのある人もいるかもしれません。

佐原さんは、「片づけができないという問題をアドラー心理学を通して考えてみると、片づけがはかどるようになりますよ」とほほ笑みます。

【画像1】「自分の気持ちに気づいてあげられるのは、自分自身でしかありません」(写真撮影:トヨサキジュン)

【画像1】「自分の気持ちに気づいてあげられるのは、自分自身でしかありません」(写真撮影:トヨサキジュン)

「片づけたいのに片づかないのは、そのほうが都合がよいから」

では、アドラー心理学で心を整理するには、どう考えれば良いのでしょうか。

一般的に、物事は「原因論」(物事には原因があるから今の結果があるという考え)で見ることが多いのですが、アドラー心理学では「目的論」で考えるそうです。

人がある行動をしたのは「そうすることが自分のためになる」と判断したためで、「自分のためになること」こそがその人の「目的」だと考えます。だから、片づかないのは「片づかないでいるほうが自分のためになる」と判断したから、ということになります。
つまり、「今の状態でいるのは、目的がそうさせているから」です。

例えば、「淋しいから心に空いた穴を物で埋める」という目的を無意識のうちに持っている場合、心では「物が多いことが自分のためになる。片づかないほうが都合が良い」と判断して、片づけを行動に移せないでいるのです。

ほかにも、無意識のうちに持っている「目的」を見てみましょう。

「時間がないから片づかない」
時間がないことに責任を転嫁しておけば、自分が片づけ下手だと認めなくて済み、部屋を片づける努力をせずに済むため、時間がないほうが自分にとって都合が良いととらえています。
「物がかわいそうだから捨てられない」
そう言うことで自分も周囲も納得するので、片づけられないことに対して言い訳ができて都合が良いのです。
「捨てたいのに捨てられない」
捨てないと決めたり、捨てようとしていないほうが、都合が良いのです。
「片づけたいのにやる気が出ない」
やる気が出ないのは単なる言い訳で、本当は片づけをしたくなくて、やる気を出さないほうが、都合が良いからです。

心の中にこうした無意識の「目的」があることで、現在の片づかない事態を生んでいることに気づくことが、とても大切だそうです。自分が何のために部屋に物をあふれさせているのか、その目的が分かると、問題への対処がしやすくなるからです。

【画像2】大阪郊外に立つ佐原邸のリビング。10年ほど前に増築して4人家族がゆったりとくつろげる広さに。いつでも人を招くことのできるスッキリ空間です(写真撮影:トヨサキジュン)

【画像2】大阪郊外に立つ佐原邸のリビング。10年ほど前に増築して4人家族がゆったりとくつろげる広さに。いつでも人を招くことのできるスッキリ空間です(写真撮影:トヨサキジュン)

【画像3】キッチンの収納はオープン棚、引き出し、食器棚を使い分けて、出し入れしやすくしています(写真撮影:トヨサキジュン)

【画像3】キッチンの収納はオープン棚、引き出し、食器棚を使い分けて、出し入れしやすくしています(写真撮影:トヨサキジュン)

【画像4】物を厳選しているので、キッチンの引き出しは「2割~6割収納」。出し入れがしやすい状態です(写真撮影:トヨサキジュン)

【画像4】物を厳選しているので、キッチンの引き出しは「2割~6割収納」。出し入れがしやすい状態です(写真撮影:トヨサキジュン)

「あなたが物を整理したい『目的』は何ですか?」

人は明確な目的がないと行動を起こせません。行動を起こすときにはたくさんのエネルギーが必要なので、目的が曖昧なままだと行動を先送りにしてしまいがちになります。
だから整理をする際には、片づけられない原因を考えるのではなく、「目的」をはっきり明確に持つことが成功の秘訣なのだそうです。

「『あなたが物を整理したい目的は何ですか』『なぜ整理したいのですか』と問いかけ、目的をはっきりと持ってもらうことで、行動に移せるようになる方が多いです」と佐原さん。

顧客の方々の「目的」では、次の2点が特に多いそうです。
◎いつでもお茶会などに人を呼んでくつろげる家にしたい
(片づいた家だとほっとできる)
◎探し物が見つからないという事態をなくしたい
(時間的な無駄や精神的な負荷がないように)

「例えば、明日、お世話になった方が訪ねてくるという場合、『すっきり片づいた家でお迎えしたい』という目的のもと、頑張って明日までに片づけますよね。そうした強い目的意識が大切なのです」(佐原さん)

はっきりと目的を決めたら、次に目標を設定します。
目的とは「何のために整理するのか」という整理の動機を差しますが、目標とは「どんな部屋にしたいのか」「どんな部屋だとうれしいのか」という理想を差します。目標(理想)を決めることで、どのように行動すればいいのか具体的な方法や道筋が見えてくるのだと、佐原さんは言います。

【画像5】書斎の壁一面に造り付けられた収納内部の様子。扉を開けても美しい状態です。見た感じではおおよそ「3~5割収納」といった余裕のあるしまい方です(写真撮影:トヨサキジュン)

【画像5】書斎の壁一面に造り付けられた収納内部の様子。扉を開けても美しい状態です。見た感じではおおよそ「3~5割収納」といった余裕のあるしまい方です(写真撮影:トヨサキジュン)

【画像6】画像5の扉を閉めた様子。リビングの片側を佐原さんの書斎とし、壁一面に大容量収納を造り付けました(写真撮影:トヨサキジュン)

【画像6】画像5の扉を閉めた様子。リビングの片側を佐原さんの書斎とし、壁一面に大容量収納を造り付けました(写真撮影:トヨサキジュン)

【画像7】佐原さんのクローゼット。「よく着る、シーズンものの洋服はすべてここに。2階の寝室ではなくリビングの一角にあるので、整理や着替えが楽です」と佐原さん(写真撮影:トヨサキジュン)

【画像7】佐原さんのクローゼット。「よく着る、シーズンものの洋服はすべてここに。2階の寝室ではなくリビングの一角にあるので、整理や着替えが楽です」と佐原さん(写真撮影:トヨサキジュン)

「『プラスの建設的な方向か』を自分に問いかけてみてください」

整理の際に、『使っている/使っていない』『好き/嫌い』という行動や感情を判断基準にするケースをよく見かけますが、これだと『使っていないけれど手放せない物』の判断が難しくなります。

また、人は得になることよりも、損になることを重く考え、損を回避しようとする傾向「損失回避性」が強いそうです。さらに、自分の所有物により高い価値を感じ、手放すことに強い抵抗を持つ心理現象「保有効果」もあり、この2つが物を手放すことの障害となるので注意が必要です。

「アドラー心理学では、視野をもっと広げて『プラスの建設的な方向か』『マイナスの非建設的な方向か』で考えます。『これを所有することは自分や家族にとってプラスになるのか』と自分に問いかけて、残す/手放すを決めていきましょう」と佐原さん。

「プラスの建設的な方向」というのは、それがあると便利になる・癒やされる・活動エネルギーが高まる・安心できる・テンションが上がる・幸せを感じられる、ということです。
「高価な買い物だったからもったいない」「いつか使うかも」という物でも、プラスになる要素が見当たらなければ手放しましょう。

「なぜ片づけるのか」「どんな部屋にしたいのか」を念頭に、「これを所有し続けることはプラスなのか」と自問することで、心の中にある答えが見い出せるようになるそうです。

「手放すことがどうしてもできないと感じている人は整理することをためらうようですが、まずは、プラスの物、マイナスの物に分けてみてください。自分の人生に必要のないマイナスの物がこれだけ家の中にあるのだと目で確認するだけでも、何か得る物があると思います」

マイナスの物を持ち続けるのは気分がスッキリしないものです。「見る度に『これ、いらないんだけど……』と思ってしまうのは、常に負のエネルギーをまき散らしていることになりますよ」(佐原さん)

人は現状維持を保とうとする生き物で、変化することで状況が悪くなることを恐れています。だから「いつか使うかもしれない物」を手放した後に「使う必要性が出てきてしまった」という事態を避けたいと考えます。
でも、ある研究によると、手放した後に使う必要が生じてしまうということが実際に起こるのは、およそ5%だそうで、低い確率の「いつか」より「今」を優先して考えたほうが建設的です。

「人は失敗を認めたくないので、『いつか』が来てくれたらいいと心では思っているのです。でも、ほとんど来ない『いつか』に備えることが部屋をスッキリさせない原因だったり、探す時間を増やしている原因になっているなら、自分にとって大切なこと(安らげる空間など)を優先して考えましょう」と佐原さんは教えてくれました。

【画像8】「片づくとスッキリして気持ちよいという経験を繰り返していくと、どんどん片づけが楽しくなってくるはずです」(写真撮影:トヨサキジュン)

【画像8】「片づくとスッキリして気持ちよいという経験を繰り返していくと、どんどん片づけが楽しくなってくるはずです」(写真撮影:トヨサキジュン)

「片づけたいのにやる気が出ないというのは単なる言い訳」という佐原さんの言葉にドキッとさせられました。筆者自身、膨大な書類の山を片づけようと思っても行動が追いつかない状態だったので、「自分が把握できる書類の量に減らしてスッキリさせたい!」という強い目的意識を持つことが大切なのだと感じました。

「家を片づける一番の目的は、家族みんなでゆったり過ごせることではないでしょうか。自分だけ一生懸命で、家族の誰かが片づけないからといってギスギスしてしまうのも本末転倒な話ですし、子育て中で忙しいのに完璧に片づけようなんて思わなくても大丈夫。片づけで一番大切なことは楽しんで取り組むことなのですから」という佐原さんの言葉にとても勇気づけられました。

佐原美和さん HP
整理収納アドバイザー、日本メンタルヘルス協会公認心理カウンセラー。「凛と美しい収納」をコンセプトに片づけや整理のサポートを行う「凛花」主催。著書に『片づける勇気』がある●【連載】スッキリ暮らす記事一覧
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