ログイン・会員登録すると好きな記事をお気に入り登録できます

事故物件の告知ルールに新指針。賃貸物件は3年をすぎると告知義務がなくなる?

当記事はSUUMOジャーナルの提供記事です

当記事はSUUMOジャーナルの提供記事です

事故物件の告知ルールに新指針。賃貸物件は3年をすぎると告知義務がなくなる?

他殺や自殺などがあったいわゆる“事故物件”は、いつまで告知が必要なのか。国土交通省がそのガイドライン(案)を発表した。現時点では、パブリックコメント、つまり広く一般に意見を求めている段階なので、今後変更もありうるが、賃貸物件に関しては告知期間を3年間とするなど、具体的な内容に踏み込んだ興味深いものだ。その概要を見てみよう。
何をいつまで告知すべきなのか

事故物件は、いつまで告知が必要なのか。これは実はなかなか難しい問題なのだ。まず人によって受け止め方が違う。自殺があった部屋は何年経っていても嫌、という人もいれば、リフォームされているのなら気にしないという人もいるだろう。
それに加え、事故自体も個別性が強い。同じく部屋で自殺があったとしても、縊死(いし/首をくくって亡くなること)や刃物を使用した場合と睡眠薬を大量に飲み2週間後に病院で亡くなったというのでは、部屋の状態もその後に入居する人の心理的負担感もまったく違ってくる。室内で亡くなっていた場合は発見までの時間や室温等の諸条件によっても変わってくるはずだ。

(写真/PIXTA)

(写真/PIXTA)

心理的嫌悪感は希薄化していく

事故物件を嫌がる人の声として「事故物件であることを周囲の人にいろいろ言われそう」というものがある。物件を購入・貸借する本人が気にしなくても、風評を気にしてためらってしまう、というのは十分起こりうる話しだ。周囲の人がいろいろ言うとしても、時の経過はとともに減っていくと考えられる。
事故物件とは知らされずに購入したとして損害賠償を求めた裁判例を見ても、時間の経過により嫌悪感は薄れていく、と判断している。ただしその期間は一定ではない。「事業用物件か居住用物件か」「シングル向けかファミリー向けか」「都市部の物件なのか地方のものなのか」といった違いにより、心理的嫌悪感の希薄化が早く進行することもあれば、時間がかかることもあるとしている。事故の内容だけでなく、物件の属性や存する地域によっても告知すべき期間は異なってくるのだ。

告知を続けることによる弊害も

「事故があったのであれば何年経っていたとしても教えて欲しい」という考えもあるかもしれないが、いつまでも告知し続けることは希薄化する期間を伸ばしてしまう要因にもなる。事故物件を気にしないという人も、告知されることで「賃料や価格を下げてもらわないと損」という気持ちになることもあるだろう。そもそも時間が経過し、物件の所有者や周辺住民が替わっていくと事故の調査も困難になる。
また、亡くなった理由が何であっても告知しなければならない、という誤解から、貸主や管理会社が単身高齢者の入居を敬遠するという事態も指摘されている。さらには「事故物件」として扱われることで賃貸できない期間が生じたり賃料が下がることから、遺族に対する損害賠償請求という深刻な問題も起きている。告知を続けることによる弊害もあるのだ。

東京都福祉保健局東京都監察医務院「東京都23区内における一人暮らしの者の死亡者数の推移」(内閣府の資料より引用)

東京都福祉保健局東京都監察医務院「東京都23区内における一人暮らしの者の死亡者数の推移」(内閣府の資料より引用)

では何を、いつまで告知すべきなのか。物件を仲介する宅建業者、賃貸物件の管理業者の間でも判断が分かれていた。そのため、国土交通省は令和2年2月「不動産取引における心理的瑕疵に関する検討会」を設け、宅建業者の説明義務、調査義務について議論を重ねてきた。その結果をまとめたものが今回のガイドライン(案)だ。

自然死は告知しなくてもよいのが原則

今回のガイドライン(案)では、「買主・借主が契約締結するか否かの判断に重要な影響を及ぼす可能性のあるもの」が告知の対象となっている。そのため老衰、病死など自然死は、原則として告知する必要はないとしている。自宅の階段から転落や入浴中の転倒事故、食中誤嚥(ごえん)など、日常生活の中で生じた不慮の事故も告知不要だ。人は亡くなるものであり、死亡したという事実だけでは「住み心地のよさを欠く」とは言えない、ということだ。
もっとも「人が死亡し、長期間にわたって人知れず放置された」ことに伴い、いわゆる特殊清掃が行われた場合については、自然死などであっても原則として告知が必要としている。

(写真/PIXTA)

(写真/PIXTA)

隣接住戸や前面道路での事故、事件は対象外

また今回のガイドライン(案)では居住用不動産、つまりマンションや一戸建てなど住宅を対象としている。これに加え「ベランダ等の専用使用が可能な部分」「共用の玄関・エレベーター・廊下・階段のうち、買主・借主が日常生活において通常使用すると考えられる部分」も対象となる(そこで起きた事故は告知が必要になる)。
つまり、隣接住戸や前面道路での事故、事件があっても、告知の対象とはしていない。だからと言って隣接住戸であった事故について、一切言わなくてもよい、ということではないだろう。そこは従来通りケースバイケース、ということになる(ガイドライン(案)では「取引当事者の意向を踏まえつつ、適切に対処する必要がある」としている)。

告知する内容および期間

では、何がいつまで告知されるのか。ガイドライン(案)では、告げるべき内容として「事案の発生時期、場所及び死因」を挙げている。死因とは、他殺・自殺・事故死の別だ。死因が不明な場合には、不明と説明される。
気になる期間だが、賃貸借については「宅地建物取引業者が媒介を行う際には…事案の発生から概ね3年間」は借主に告げる、としている。また自然死であっても特殊清掃が行われた場合は、特別の理由がない限り3年間は借主に告げるとしている。
一方、売買に関しては期間を明示していない。「考え方を整理するうえで参照すべき判例や取引実務等が、現時点においては十分に蓄積されていない」というのがその理由だ。今後も検討を続けていく、ということであろう。

繰り返しになるが、今回発表されたのは、パブリックコメント(意見公募)のためのガイドライン(案)だ。2021年6月18日までは、読者のみなさんも意見を述べることができる。
その後は、6月下旬~7月上旬にかけてパブリックコメント結果の報告・追加討議が行われ、秋ごろにはガイドラインが公表される予定だ。

人の死は避けることができない

今回のガイドライン(案)について、心理的嫌悪感についての論文執筆もされている明海大学不動産学部准教授の兼重賢太郎(かねしげ・けんたろう)先生にコメントをいただいた。

(写真提供/中村喜久夫)

(写真提供/中村喜久夫)

「大家族で家で看取ることが当たり前だった時代と違い、現代の日本社会では、人びとの死が日常の生活空間から不可視化されています。その一方で、2019年の年間の死亡者の数は出生者の数を50万人以上、上回っています(「令和元年(2019)人口動態統計の年間推計」厚生労働省)。いわゆる事故物件の問題も、決して特殊な問題ではないと考えます」(兼重先生)

死を忌むべきものとしてタブー視し続けることはできない、ということだろう。兼重先生は持続可能性という観点も指摘される。

「事故物件の処理に関しては、これまでは賃貸住宅管理会社が法を援用しつつ、一種の『現場知(ノウハウ)』を駆使しながら多面的に対処してきました。これからはそのような『現場知』の蓄積を活かしつつ、持続可能な仕組みを社会的に構築していくことが必要です。その契機として、今回の『ガイドライン(案)』は一定の意義をもつのではないでしょうか」(兼重先生)

住宅ストックの長期利用という観点からも

欧米と比べ日本の住宅の寿命が短いと言われて久しい。今年3月に閣議決定した新たな住生活基本計画でも、「脱炭素社会に向けた住宅循環システムの構築と良質な住宅ストックの形成」が掲げられた(住生活基本計画 目標6)。住宅を適切に管理し、長期にわたって使用していくことが求められている。そして住宅を長期に利用する過程では、人が亡くなるということも当然に起こりうる。
嫌な場所に無理に住む必要はないが、きちんとリフォームされているにもかかわらず、過去の事故を引きずり続けるのは、合理的とはいえないだろう。その意味において、賃貸住宅の告知期間は原則3年間、という線引きがされようとしていることの意義は大きいと考える。

●関連サイト
・ガイドライン(案)
・「宅地建物取引業者による人の死に関する心理的瑕疵の取扱いに関するガイドライン」(案)に関するパブリックコメント(意見公募)を開始します
・住生活基本計画

住まいに関するコラムをもっと読む SUUMOジャーナル

【住まいに関する関連記事】


/

この記事の著者

SUUMO

ありがとうを贈るとライターさんの励みになります

トップへ戻る




michillの人気ランキング

SNSでも新着記事をお知らせしていますmichill 公式アカウント

ログイン・無料会員登録