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日本は「プラスチック大国」。海洋プラスチックごみは本当は何が問題なのか? 最新事情を聞いてみた

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当記事はSUUMOジャーナルの提供記事です

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日本は「プラスチック大国」。海洋プラスチックごみは本当は何が問題なのか? 最新事情を聞いてみた

「海洋プラスチックごみ」問題の国際的な動向に合わせ、2020年7月からレジ袋の有料化がスタート。SDGsにも「海の豊かさを守ろう」の目標があり、ここ数年特に関心が高まっています。
そもそも、海洋プラスチックごみをめぐる問題や、レジ袋有料化から1年たった現在の現状、日本での取り組みは、どうなっているのでしょうか。海のごみ問題の解決に向けて活動する一般社団法人JEAN(ジーン)の小島あずささんと吉野美子さんに話を伺いました。

世界的に高まる「海洋プラスチックごみ」への問題意識

「海洋プラスチックごみ」とは、地上から海に流れ出たプラスチックのごみのこと。「G7エルマウ・サミット」(2015年6月)でG7サミットとして初めて世界中で向き合うべき課題として取り上げられ、その後、実効的なアクションを取らなければ2050年までに魚の量を上回ると警鐘を鳴らした「世界経済フォーラム」(2016年1月)、2050年までに海洋プラスチックごみによる追加的な汚染をゼロにすることを共有した「G20大阪・サミット」(2019年6月)など、近年、国際枠組みへの議論が高まっています。

「こうして聞くと最近の問題のようですが、決してそうではありません。プラスチックが生まれた100年以上前から始まっていたのです」と話すのは、30年以上、海洋ごみ問題の解決のためにさまざまな取り組みを行ってきた一般社団法人JEANの小島あずささんと吉野美子さんです。

小島あずささん(左)と吉野美子さん(右)。小島さんは友人と日本で初めてのエコバッグをつくったのを機に本格的に活動をスタート。吉野さんは川の環境に関する活動をしていたことがきっかけでこの仕事を始めました(写真提供/一般社団法人JEAN )

小島あずささん(左)と吉野美子さん(右)。小島さんは友人と日本で初めてのエコバッグをつくったのを機に本格的に活動をスタート。吉野さんは川の環境に関する活動をしていたことがきっかけでこの仕事を始めました(写真提供/一般社団法人JEAN )

「プラスチックに関係なく、『海のごみ』問題は昔からあったのですが、『海岸の景色を台無しにしている』『拾えばなんとかなる』としか見られていませんでした。その傍らで1900年代のはじめに世界初のプラスチック『フェノール樹脂』が誕生。安価で成形しやすい夢の物質として先進国を筆頭に技術開発がされ、たくさんの種類と量が市場に出回るように。人々が使い捨てることで、ごみが一気に増えていきました。そんななか、約10年前から『マイクロプラスチック』が人体や環境に影響があるのではと懸念されるようになり、研究者たちが注目し始めたんです」(小島さん)

生活の場から意図せず海に流出するプラスチックの現状

マイクロプラスチックとは直径5mm以下の微小なプラスチックのことで、もとから小さくつくられ、洗顔料や歯磨き・化粧品・柔軟剤などに含まれる「一次マイクロプラスチック」のほか、プラスチックごみが劣化して砕けた「二次マイクロプラスチック」があります。プラスチックは自然に還ることはないため、いったん、処理されずに環境中に出ると、空気中や海洋中に漂い、半永久的に蓄積するといわれています。

「マイクロプラスチック」は北極や南極でも観測されていて、2020年、オーストラリアの研究者が「世界の深海の底に推定1400万トン以上、堆積している」と発表しました(写真/PIXTA)

「マイクロプラスチック」は北極や南極でも観測されていて、2020年、オーストラリアの研究者が「世界の深海の底に推定1400万トン以上、堆積している」と発表しました(写真/PIXTA)

「グラウンドやショッピングモール、玄関マットなどで使われる『人工芝』は、足でこすれて千切れてしまうと、雨風で移動してごみになっていきます。靴底や自動車のタイヤなどは摩耗すると『マイクロプラスチック』に。駐車場などに置きっぱなしになったカラーコーンの欠片が雨風にさらされて川に流出することもあります。
また、区市町村のルールを守ってごみを出しても、カラスに散らかされることがあるでしょう。道で前を歩いている人が、ポケットやバッグから何かを取り出すときに一緒にしまってあった飴の空き袋などを落とすのを見たことはありませんか。

このように、私たちの暮らしから意図しないプラスチック散乱ごみが生まれているんです。

1人が出す量は少なくても、これが10人・1000人・日本・世界まで広がり、さらに何十年も続いてきたのを考えれば、とてつもなく大量だと分かるはずです」(吉野さん)

私たちが日常で“燃えるごみ”“燃えないごみ”等と仕分けて集積場に出すものについては各自治体で処理されます。しかし、ごみとなるプラスチックが存在する限り、どうしても“意図しない散乱ごみ”は生まれてしまいます。

「道路の排水用の側溝には、タバコの吸い殻など道端のごみも雨に流されて入り込みますが、下水道の方式によっては処理場を通らずそのまま川に放流されます。汚水と合流して下水処理場を通る方式でも、流量が増える大雨のときには、処理場の能力を超える分の下水は手前でオーバーフローさせて直接川に流す仕組みになっていますので、ごみも一緒に川から海へということになります」(吉野さん)

日本の海辺で多いのは、国内のごみ。日本のごみが海流に乗って北西ハワイなどを経て北米西海岸の方へと流れていき、数年後に南太平洋の島に流れ着くということも(写真/PIXTA)

日本の海辺で多いのは、国内のごみ。日本のごみが海流に乗って北西ハワイなどを経て北米西海岸の方へと流れていき、数年後に南太平洋の島に流れ着くということも(写真/PIXTA)

便利な生活の果てに出たプラスチックごみが、たくさんの生物を傷つけている

2019年3月、フィリピンの海岸にクジラが打ち上げられ、胃から40キロものビニール袋が見つかったニュースが記憶に残っている人もいると思います。「日常生活から出た意図しないごみが『海洋プラスチックごみ』になっていることを考えると、遠く海外のクジラのお腹から見つかったプラスチックの破片が、自分に関係あるものではないと誰も言えない」と吉野さんは話します。

ある研究者の推計によると海洋に出るプラスチックごみは年間800万~1300万tともいわれていて、汚染は深刻。前述のクジラの事例だけでなく、海鳥がエサと間違えてライターやペットボトルのフタを飲み込んだり、漁網にウミガメが絡まったり、魚のお腹から「マイクロプラスチック」が見つかったりしています。

(写真/PIXTA)

(写真/PIXTA)

「ウミガメが漁網に絡まって死んでしまうこともあるんです。海で使う道具類もすっかり天然材料からプラスチックに置きかわりました。一度、絡まると簡単には外れません。アザラシも海洋プラスチックごみが原因で死んでしまうこともあります。実は1960年代から一部の研究者の間でこうした被害の報告があったんです。注目されなかった月日を『失われた50年』と受け止めています」(小島さん)

「海洋プラスチック」は私たちの健康にも悪影響を及ぼす可能性があるといいます。プラスチックにはもともと化学物質が添加されていることもありますし、後から吸着する性質もあり、マイクロプラスチックを誤飲した生き物を経て、化学物質も人体にめぐってくることになるといわれています。

大切なのは無駄な消費を減らし、長く使えるものを熟考して買うこと

お二人は「レジ袋有料化は海外に比べれば遅まきの政策でしたが、人々の意識を変えるきっかけをつくった一面はあるのでは」と言います。この“意図しないプラスチックごみの散乱”が日常にあふれている状況を変えるには「シンプルにプラスチックの“消費”を減らすことが大切」と小島さんが言うように、レジ袋の有料化はプラスチックの絶対数を減らし、プラスチックの使い方への関心を高めていく意味では、長い目で見たときに有効な効果を発揮していくように思えます。有料化から4カ月経った11月時点では、環境省や経産省が行ったWEB調査で「1週間、レジ袋をつかわない人」が3割から7割に増加したというデータも。

(写真/PIXTA)

(写真/PIXTA)

レジ袋に限らず、「便利だからと使い捨てしないことも必要です。長く大切にできるものを選びたいですね」と小島さんは続けます。

また、プラスチック製品といえば、「竹ストロー」や「蜜蝋ラップ」といった代替品もありますが、小島さんと吉野さんは、そもそも「使わない派」なのだそう。なるほど、代替品を探すのではなく、使わないというのも選択肢です。

「飲みものはストローなしで飲める場合も結構ありますし、残った食べものはフタつきの耐熱ガラス容器に入れておくと温めなおしてそのまま食卓にも出せますし、食べ切ってしまえばラップをかけてしまう必要はありません。完ぺきを目指すと窮屈になるので、『こうすれば必要なくなる』というのをゲーム感覚で探すと面白いのではと思います」(吉野さん)

日本と海外の意識の違いに目を向け、これからのあり方を考える

日本は世界に類を見ない“プラスチック大国”。
「街の至るところに自動販売機やコンビニがあるのは日本ぐらい。袋の中でわざわざ個包装されたお菓子は、そうした習慣のない海外の人からは不思議な光景にさえ見えるでしょう」(吉野さん)

「『海洋プラスチックごみ』問題は世界共通ですが、日本は新しい素材によってどれほどごみが生まれ、どう処理していくかを、予防原則にのっとって考えてこなかったのではと思います。
このような状況で、日本は年間約150万トンもの廃プラスチックを再生材料として海外に輸出していましたが、2017年に主な輸出先だった中国が輸入制限を打ち出し、廃プラスチックの行き先が大きく狭まりました。急ぎ対応を迫られるなか、同じように廃プラスチックを輸出していた先進各国の中で、EUがいち早く『サーキュラー・エコノミー(循環型経済)におけるEUプラスチック戦略』を発表しました」(小島さん)

アメリカの環境NGOが主宰する活動を契機に始まったJEAN。世界中で一斉に展開される国際海岸クリーンアップを日本で取りまとめています。海のごみには食品の包装・容器類がとても多いそう(写真提供/一般社団法人JEAN)

アメリカの環境NGOが主宰する活動を契機に始まったJEAN。世界中で一斉に展開される国際海岸クリーンアップを日本で取りまとめています。海のごみには食品の包装・容器類がとても多いそう(写真提供/一般社団法人JEAN)

EUでは企業が製品開発をする際にそもそも地球に負荷をかけないという視点で開発が行われており、消費者も、商品が環境配慮がされているものであるという点に魅力を感じるといいます。

「日本でも企業はほとんどが何らかの形で海外との接点をもっていますので、プラスチックに関しては企業活動の基準を国際基準にシフトすることはいまや必然です。使用量の削減、品質を低下させない水平リサイクル、使い捨てにしないことと温室効果ガス排出削減とを両立させるリサイクルの実用化など、今まで脇に置いてきたことに対し、企業は枠を超えた挑戦を始めています」(吉野さん)
「JEANが行う講義やワークショップにも、『自分たちの問題』と石油・プラスチック系の企業から申し込みをいただくこともあります。最近では、同業他社が連携してSDGsに取り組むことも増えています。産業界全体でSDGsの気運が高まっていて、旧来のあり方から脱却しはじめているといえそうです」(小島さん)

JEANでは小中高の学校や大学のほか、自治体や企業から依頼を受けて海洋ごみ問題についての講義・ワークショップ・海辺のクリーンアップを実施。とくに子どもからは活発な意見が聞かれます。写真は国際海岸クリーンアップのごみ調査(写真提供/一般社団法人JEAN)

JEANでは小中高の学校や大学のほか、自治体や企業から依頼を受けて海洋ごみ問題についての講義・ワークショップ・海辺のクリーンアップを実施。とくに子どもからは活発な意見が聞かれます。写真は国際海岸クリーンアップのごみ調査(写真提供/一般社団法人JEAN)

レジ袋有料化、環境に配慮した商品開発、SDGsの気運の高まり……少しずつ海洋プラスチックごみをめぐる状況は変化しつつあります。そうしたなかで吉野さんは、プラスチックの代替品として注目を浴びている多種多様な「生分解性プラスチック」は、何に使うかを注意深く見極める必要がありそうだと言います。「分解までの間の環境負荷はなくならないのに、分解するからポイ捨て可になってしまった失敗例もありますし、リサイクル可能な分解しないプラスチックとの混在は双方に不利になります。ごみになってからの分別や、種別の回収処理ルートは誰が担うのでしょう。何より根本の問題が解決しないまま『使い捨て』に頼り続けるのは、本末転倒だと思うのです」。対策として打ち出したものが、新たな環境汚染につながる可能性を秘めている。一つ一つ、慎重に選択肢を選び取っていく必要がありそうです。

先のことまで考えてものを買うこと・無駄に使っているものを見直すことは、少し面倒に見えますが、日本が便利さに甘え忘れていた本来のあり方といえるでしょう。小島さんと吉野さんのお話は、私たちが見過ごしてきたことへの戒めと、シンプルで心地よい暮らしへのメッセージのようでした。

●取材協力
一般社団法人 JEAN

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