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なかなかおむつが取れない、おねしょが治らない……となると保護者としては周囲と比べて焦ってしまいがち。でも「大丈夫、焦らないで」と森戸先生。その理由とは?
(※画像はイメージです/PhotoAC)
たまに「うちの子は周囲に比べて、おむつが取れなくて」「まだ時々おもらししてしまいます」「おねしょが治りませんが、まだ様子を見ていていいんでしょうか」などと相談されることがあります。
そもそも赤ちゃんは尿意を知覚できないので、反射的に膀胱を収縮させて排尿しています。1歳くらいになると尿がたまった感覚がわかるようになりますが、まだそれが尿意だとはわかりません。
その後、2歳後半〜3歳くらいになると、膀胱がある程度大きくなり、尿を濃縮して量を減らす「抗利尿ホルモン」の分泌量も増え、次第に排尿間隔があいてきます。同時にいろいろなことを認識する知覚も発達し、尿意を感じて、自分でトイレに行って排尿ができるようになるのです。だから、その頃から、トイレトレーニングを行うとされているんですね。
こうして、まず日中におむつなしで過ごせるようになり、夜間もおむつが不要になりますが、その時期には個人差があります。よく「トイレトレーニング」や「おむつはずし」が推奨されますが、適切な時期は子供によって違いますし、無理に急ぐ必要はないでしょう。
小さな子が排尿をコントロールできず、おもらしやおねしょをしてしまうことがあるのは普通のことです。小学生になっても6〜10%弱の子がおねしょをするというデータもあります。意外と多いですね。
では、治療は何歳から必要でしょうか。2021年11月、5 年ぶりに新しい夜尿症診療ガイドラインが発表されました。前回のガイドラインから、2014年の国際小児尿禁制学会の基準に沿って「5歳以上で月に1回以上のおねしょが3か月以上続く場合」は「夜尿症」と診断されます。
夜尿症の条件に該当しないケースでも、本人や保護者が悩んでいる場合は、小児科を受診してみましょう。早めに受診して治療を行えば、早めによくなることがわかっています。
小児科では、身長や体重、発達をみます。そのうえで、おねしょの頻度、量、普段の水分の摂り方などを確認し、尿検査を行うこともあります。尿検査を行うのは、腎臓病や糖尿病などの別の病気が隠れていないかどうかを確認するためです。
受診前にどのような状況でおねしょやおもらしをするかを観察し、メモしておくとスムーズです。夜尿症の原因は、抗利尿ホルモンが少ないことで起こる「多尿型」、尿量は多くないものの膀胱が成長途上であることからためられない「膀胱型」、どちらの要因もある「混合型」などに分類されます。
おねしょの原因は、紙おむつを使ったせいだとか、トイレトレーニングをしていないからとか、親が甘やかしたからとか、子供が怠けているからなどではなく、機能的な問題なのです。
治療は、まず生活の見直しから行います。なるべく規則正しい生活をする、日中に水分を多く摂って夕食から就寝まではコップ1杯(200cc)程度にする、塩分を摂りすぎない、便秘を改善する、寝る前にトイレに行くなどです。
抗利尿ホルモンは夜中ぐっすり眠っているときに分泌されるため、毎晩深夜に起こしてトイレに連れていくのはあまりよくありません。水を感知するとアラームが鳴るものをパンツにつける「アラーム療法」やミニリンメルト錠などの薬を飲む「薬物療法」があります。また、おむつをはく、おねしょシーツを使うなどの対策もとれるのです。
おもらしもおねしょ(夜尿症)も、年齢とともに治っていくことがほとんどですから大丈夫。排尿に失敗した子供は、その事実だけで傷ついていますから、片付けは大変だと思いますが、叱ったりしないようにしてくださいね。
お話をお聞きしたドクター 小児科専門医/どうかん山こどもクリニック院長森戸やすみ 先生 一般小児科、NICU(新生児特定集中治療室)などを経て、現在は東京都谷中のどうかん山こどもクリニック院長。医療者と非医療者の架け橋となる記事や本の発表に意欲的に取り組んでいる。『子育てはだいたいで大丈夫 小児科医ママが今伝えたいこと! 』(内外出版社)、『祖父母手帳』(日本文芸社)など著書、監修多数。Twitter
この記事の執筆者 大西まお 編集者・ライター。出版社にて雑誌・PR誌・書籍の編集をしたのち、独立。現在は、WEB記事のライティングおよび編集、書籍の編集をしている。主な担当書に、森戸やすみ 著『小児科医ママの「育児の不安」解決BOOK』、名取宏 著『「ニセ医学」に騙されないために』など。特に子育て、教育、医療、エッセイなどの分野に関心がある。■Twitterこの記事のライター
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