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学校に行きたくないと感じるのは、誰にでも起こり得ることです。何らおかしなことではないのですが、いざ自分や子どもがそうなったら、強い不安や罪悪感がわいてしまう人も多いことでしょう。学校に行きたくないとき、あるいは子どもにそう言われたとき、子ども自身や親御さんにできることをお話していきます。
(文:臨床心理士・公認心理師たかだちかこ/うららか相談室 )
子どもが学校に行きたくないと言うとき、様々な要因や背景が考えられます。まずは、よくある要因から見ていきましょう。—————————1. 人間関係の問題2. 先生との関係3. 学校生活(学業、行事、校則など)4. 感覚過敏や精神的な不調5. 家庭内の問題6. 長期休暇後—————————
学校に行くことは集団の中に身を置くことなので、人間関係の問題は学校に行きたくなくなるとても大きな要因になり得ます。
暴言や暴力、無視、金銭の要求など大人の目から見ても分かりやすいいじめだけでなく、からかい、不快なあだ名で呼ばれる、小突かれるなど、一見いじめと判断しづらい事でも、本人が苦痛なら学校に行きたくなくなる原因となります。
中高生になると、部活内の先輩・後輩を含む人間関係が要因になることも少なくありません。
先生は、子どもにとってとても大きな存在です。年齢が低いほどその傾向は強く、特に小学校低学年の子どもは、先生が怖いことや、先生の言葉や指導法に不安や困惑を覚えた経験から、一気に学校が恐ろしくなることもあります。
高学年以降も、先生の指導や対応に問題があったり、そうではなくても相性が悪かったりすることが、学校に行きたくない気持ちの引き金になることも多いです。
勉強への苦手感や劣等感、逆に、成績は優秀だけれど維持しなければとのプレッシャーで学校が辛くなることもあります。
また、運動会や文化祭、マラソン大会などの学校行事やその準備・練習が、とても苦痛だという子もいます。
近年、理不尽な校則が話題になっていますが、中高生になると、こうした校則や校風に耐えがたい思いをすることから、学校に行きたくなくなる場合もあります。
このように、学校生活に要因があることも多々ありますが、それ以外にも、子どもの特性や精神的な病気が影響する場合があります。
たとえば、発達障害や感覚過敏がある子どもは、給食、音楽や体育など特定の時間や授業に大変な苦痛を覚えることがよくあります。
小学校高学年~中学高校では、摂食障害・強迫性障害・うつ病・統合失調症などの精神的な不調によって、学校に行けなくなることもあります。
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両親の不仲、虐待、貧困など家庭内の問題(社会の問題でもあります)や、家族との関係が背景となり、子どもが安心して学校に行けない、行く気力が持てない場合もあります。
時期別に見てみると、年代を問わず、4月の新生活の緊張感を乗り切った5月のゴールデンウィーク明けに学校が辛くなることはよくあります。
また、夏休み明けの9月など長期休み後の新学期に、学校へ足が向きづらくなることも珍しくありません。
感染症などでしばらく欠席した後、体調は回復しても学校に行きづらくなってしまうこともあります。
お伝えしてきたように、子どもが学校に行きたくないと言う背景には実にいろんなものがありました。
ここからは、学校に行きたくないと思ったとき、子ども自身に出来ることにはどんなことがあるかをお話します。
ずっと我慢して登校していたけど、もう無理だと感じた人もいれば、この間まで順調に行っていたのに、なんだか急に行きたくなくなってしまったという人もいるでしょう。
学校に行きたくないと思ってしまった自分に戸惑ったり、不安に押しつぶされそうになったりしたかもしれません。自分が悪い子になってしまったみたいに思えて辛い人もいるかもしれません。
学校に行く子の方が多い世の中では、そう感じるのもおかしなことではありません。でも、あなたが行きたくないと感じるのは自然に湧いてくる気持ちなのですから、何も悪いことではありません。自分を責める必要もありません。
自分でもなぜ学校に行きたくないのか、その理由が分からないこともよくあります。原因はひとつではなく、いろんな背景が絡み合っていることもあります。
ですから、学校に行きたくない理由を人にうまく説明できなかったとしても、おかしくありません。
まずは、「行きたくない」という気持ちをキャッチできた自分を、褒めてあげてください。
今は疲れた心や身体をゆっくり休めることが大切です。辛かったら学校を休んでもかまいません。
「学校に行かなくては」「行けない自分はダメだ」と思いながら過ごすと充分休まらないので、「今の自分には休むことが必要なんだ」と考えて、思いきり休みましょう。
次にやれるといいのは、信頼できる大人に相談することです。親御さんに話せれば一番いいですが、話しづらいようなら学校の先生、スクールカウンセラー、心療内科やカウンセリングルームなどを検討してみてください。
身近に話せる大人がいない場合は、下記のような電話相談を利用するのも良いでしょう。
・チャイルドライン・キッズひまわりホットライン・子ども家庭110番・24時間子供SOSダイヤル・ヤングテレホン等
電話以外にも、メールやLINE、チャットでの相談体制を持つところもありますので、使いやすい方法で相談できますよ。
ここからは、親御さんにできる対応を見ていきましょう。子どもから「学校に行きたくない」と言われたとき、どんな対応をすればいいのでしょう?
多くの場合、子どもは親に「学校に行きたくない」とは言いづらいものです。少し行きたくないなと思っても頑張って行き続け、限界が近づいてからやっと「学校に行きたくない」と言う子も多いです。
これ以上頑張れないところまで心身が疲弊していることも少なくありません。
したがって、子どもにそう言われたら、ここに至るまでかなり頑張ってきたであろうこと、言いづらい事を勇気を振り絞って言ってくれたのだろうことを想像して、まずはゆっくり休ませてあげましょう。
学校に行きたくないと言われると、どうしてもその理由を聞き出したくなってしまいがちです。しかし、子ども自身にも理由がよく分からない場合も多いですし、あれこれ聞かれること自体がストレスになり得ますので、軽く聞いてみて言えないようなら、親の方から無理に色々聞き出そうとしない方が良いでしょう。
子どもが話しやすい雰囲気を作り、子どもの方から話してきたことは否定せず聞いてあげることが大切です。
学校が辛い分、家を安心できる場所にしておくことは、子どもの心を回復させるうえで非常に重要なことです。
我が子に毎日楽しく登校してほしいと願うのは自然な思いではありますが、誰もが常にそうできるわけではありません。学校を休むこと自体は何も悪いことではありませんし、学校に行っても行かなくても、その子ども自身の価値には何ら変わりはありません。
ですから、学校に行かないことを叱ったり、無理に行かせようと説得したりする必要はありません。
ここで叱られたり学校へ行くよう強く言われたりすると、子どもは罪悪感や自己否定感を強めてしまいます。また、「親に話しても分かってもらえない」と思わせてしまい、その後の親子関係や子どもの状態を悪化させかねません。
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「学校に行きたくない」と言葉にする前に、その前兆が見られることも少なくありません。どんなことが前兆となり得るのか、よくあるサインと望ましい対応・注意点についてご紹介します。
何となく身体がだるい、頭が痛い、お腹が痛い、気持ち悪いなど、体調不良を訴えることはよくあります。
特に、午後から夜にかけては元気だけど、朝になると体調が悪くなって起きられないというパターンはよく見られます。
・口数が減った・あまり目を合わせなくなった・登校前・帰宅時の表情が暗い・イライラしている、怒りっぽくなった・食欲不振・帰宅後や休日はずっと寝ている、または、夜ぐっすり眠れない
子どもが学校を苦痛に感じているとき、以前と比べて、このような変化が見られることも珍しくありません。
体調不良は朝に悪化することが多いため、つい学校をサボりたいための仮病や甘えを疑いたくなってしまいがちですが、疑われた子どもは傷ついてしまうこともありますので、子どもの訴えをそのまま受け止めてあげましょう。
叱ったり、励ましたりするよりも、「最近、ちょっと様子が違うみたいだけど何かあった?」というように、気にかけていることやいつでも話を聞く用意があることを伝えてあげると、子どもは安心できます。
学校に行けばそれなりに楽しそうに過ごしたり、お友達もいたりして、何も問題がないように見えることもありますが、楽しい瞬間があることや友達がいるということが、常に「学校に行きたい」に直結するわけではありません。楽しそうな姿は、周囲の期待に応えようと過剰適応しているのかもしれません。
周囲からそれほど困っているようには見えなかったとしても、子どもが無理せず本当の気持ちを言いやすくなるような声かけをしてあげられるといいですね。
子どもから学校に行きたくないと言われると、多くの親御さんは不安を抱えることになります。家庭の中だけで対処するには苦しい状況にもなり得ますから、子ども自身だけでなく、親御さんもどこかに相談すると良いです。
子どもが学校に行かないことを受け入れたくても、このまま不登校や引きこもりになってしまうのでは、将来困ってしまうのでは…と、つい悪い方に考えてしまう親御さんも少なくないでしょう。
その不安自体は自然なものですが、やり場がなくなると、子どもに向けてしまいたくなりがちです。「将来どうするの?」「このままでいいと思ってるの?」などと子どもに言ってしまうと、ただでさえ不安に押しつぶされそうになっている子どもの心に、さらなる重圧をかけることになってしまいます。
こういったことを防ぐためにも、親御さんご自身もカウンセリングを受けるなど、誰かに相談して一人で抱えないようにすることが大切です。
最初の相談先になり得るのは、やはり学校です。
学校内の人間関係の調整や、感覚過敏への配慮など、学校に行きたくない理由によっては、先生にお話して対応してもらうことで行きやすくなる可能性もあります。
担任や先生には相談しづらいようなら、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーにお話してみるのも良い手段です。
学校には相談できない場合も、様々な相談先があります。・自治体の教育センター・児童相談センター・心療内科や児童精神科・民間のカウンセリング・ひきこもり地域支援センター・フリースクール等対面相談のほか、メールやLINE等オンラインで対応可能なところも多数ありますので、お子さんや親御さんの状態やご都合に応じて適切な相談先を探してみてください。
就学から高校卒業までの12年もの学校生活は、幼児期を終えて大人になるまでの、人生の中でも非常に多感な時期に渡ります。いろんな子や先生に囲まれて様々な経験をする中で、行きたくないと思うことがあっても不思議ではありません。
無理をするとかえって長引いたり、家族関係が悪くなったりする恐れもありますので、学校に行くのが辛いなら休んでも大丈夫です。安心できる環境でゆっくり休むことが、また頑張るためのエネルギーを蓄えることに繋がります。
(文:うららか相談室 たかだちかこ/構成:マイナビ子育て編集部)
この記事の執筆者 臨床心理士・公認心理師たかだちかこ 先生
臨床心理士・公認心理師。心療内科や児童相談センター、学校、被害者支援施設など、多くの現場で相談や心理検査を経験。親子・夫婦関係・子育て・発達障害・ハラスメントやDV被害など様々な相談を得意としている。現在、うららか相談室にてビデオ・電話によるオンラインカウンセリングを受付中。■たかだちかこ先生への相談
※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、専門家の監修を経た上で掲載しました
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます
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