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中学受験を目指すとなると、宿題、予習復習、模試の解き直しなど、すべき勉強が盛りだくさん。はたして「脅し」を繰り出さずにいられるかと不安に思われる方もいらっしゃるかもしれません。そこで本記事では、ベテラン中学受験指導家・宮本毅先生が「子どもに『脅し』はアリ?ナシ?勉強させるにはどうしたらいいか?」について率直に話します。
ネットで検索してみると、「子どもを脅すこと」に対して、否定的な意見が多いのに驚かされます。その理由は、おおむね以下の3つに集約されるようです。
①子どもに必要以上に恐怖心を与えてしまう
②正しい行動原理が身につかない
③親の言動に矛盾が生じ(ダブルバインド)子どもを混乱させてしまう
確かにそうなのかもしれませんが、なんだかちょっと極端な気もしますねぇ。子育てってもうちょっと柔軟性があってもいい気がします。
「そんな子育てやっちゃダメ」「こうしないと子どもがまっすぐ育たない」なんて外野がNGばかり出しすぎると、皆さんの育児がストレスまみれにならないかと心配になってしまいます。
そもそも、こうした子育て指南自体が「親への脅し」になっちゃってます。それこそ「ダブルバインド」なんじゃないでしょうか?
私が「子どもは絶対に脅しちゃダメ」という子育て指南にあまり良い感情を持たないのには、二つの理由があります。
まずひとつ目は、私自身が親から相当「脅されて」しつけられたという実体験があるということです。それによって親に対して不信感を抱いたり、必要以上に親を怖がったりすることはありませんでした。比較的まっとうに育ち、親への深い感謝の念もきちんと抱いています。
もう一点は、脅しのワードを使ってでも「ダメなことは絶対ダメ!」と教えられたおかげで、他人に迷惑をかける行動に対して強い規範意識が身についたという点です。たとえば電車の中では絶対に騒ぎませんし、友達を不必要に貶めたりすることもありません。「母さん、正しい子育てをしてくれてありがとう」という感じですね。
もちろん、何でもかんでも「脅せばいい」と言っているのではありません。使い分けが大切です。
では、どういう点に注意すれば「脅し」のメリットがデメリットを上回るでしょうか。
少なくとも、まだ善悪の判断ができないような幼い子や、なぜお勉強をしなくてはいけないのかについて、きちんと理解して目的意識をもってお勉強に臨めない、精神的に未成熟な子に対しては、一種の「脅し」を利用して勉強に向かわせたり、しつけをしたりすることも、一概に悪とはいえないんじゃないかと私は考えています。
大人になったときに「子どもの頃にオバケを持ち出されて怖い思いをさせられた!」と親を怨む人はごくごく少数でしょう。そこまで罪悪感を抱くことなのかなあと思ってしまいます。
「もう計算練習なんてやりたくなーい!!サッカーしたーい!!」と泣き叫んでいる小さな子どもに対して「なぜこれをしたほうがいいかというとね……」などと言って聞かせても、なかなか聞いてくれませんものね。
ネガティブなたとえ話を持ち出して、子どもに気づきを与えたいなら、言い方や言葉選びに注意すべきですよね。
たとえば「勉強しないと将来道路工事の現場で働くことになるよ」とか「フリーターにしかなれず将来苦労するよ」といった脅しは、働きたくても働けない人への配慮に欠ける、肉体労働に従事している人への偏見、差別を含む表現であり、避けるべきと考えます。
しかし、勉強しないとどうなるか、単に現実を示すことまでが問題とは思いません。たとえば、少し古いデータですが、厚生労働省の2019年(令和元年)の統計データを見ると、学歴が高いほうが初任給が高いことは明らかです。
大学院修士課程修了:23.9万円大学卒:21.0万円高専・短大卒:18.4万円高校卒:16.7万円※学歴別の初任給(男女合計)厚生労働省「賃金構造基本統計調査(初任給)」(令和元年)より
ざっくりしたデータではありますが、これを見ても、コツコツ勉強して大学に入学した方が、お金を儲けられるようになる可能性は高そうです。
そうした現実を示して「勉強しないとお金がなくて好きなこと我慢することになるよ」と脅すのは、アリなのではないでしょうか。
やっぱり、相手が子どもとはいえ、きちんと現実は伝えていかないと。
もうひとつ気をつけなければならないことは「ダブルバインド」です。「ダブルバインド」がよくないという点については、私も世の中の意見に同意します。「タブルバインド」とは、簡単にいえば、言っていることとやっていることが矛盾する状態。
親が言うことと実際の行動が矛盾していると、子どもは混乱しますし、やがて親の言うことをきかなくなります。
ダブルバインドの例としては、こんなものがあります。
宿題をやらなければいけない時間になってもいつまでも宿題に取りかからない我が子に対して「宿題やんないなら夕飯抜きだからね」と言うが、食事の時間になると結局ご飯を出してしまう。そうすると子どもは「なあんだ。やんなくてもご飯出してくれるじゃん」と思い、言うことを聞かなくなる……。
まぁ、よくある光景です。こういった「ダブルバインド」を防ぐには、どうしたらいいのでしょう。
実は親の中途半端な行動がいけないのです。本当に食事を出さなければいいだけです。
もちろん、おなかを空かせた子どもを放置することには問題があります。食事は用意する、そのうえで、「ごはんは宿題が終わってから食べようね」と、そばで終わるまで一緒に取り組む姿勢を貫く。そして、なんとか、宿題が終わったといえる状態にまでもっていってください。
相手は子どもとはいえ、ひとりの人間です。思い通りに動かそうと思ったら、このくらいの胆力は必要なのです。
子どもたちがさらに成長していけば、徐々に、脅さなくても、必要性を理解することですすんで勉強できるように、少なくとも「本来は勉強すべきだ」と考えるようになるでしょう。
そうしたら今度は、脅すのはやめて、未来への道筋を説明してあげるのが大人の役割です。中学受験の勉強が本格化し始める時期というのは、ちょうどこの段階にあたることが多いように思います。
たとえば、漢字を練習するのは難しい文章でも読めるようになるため。毎日計算問題を解くのは算数や理科の高度な問題に対応できるようになるため。この算数の問題を解くことで、将来は数学のこの問題につながって解けるようになるのだということ。そしてそれをコツコツやって続けていけば、あなたのなりたい宇宙飛行士という夢にも近づけること。
子ども達は未来の見通しを立てることが苦手です。
というよりも、大人にそれができるのは自分が通ってきた道だからであり、子ども達は未経験なため、現在やらなくてはいけないことと将来像がどうつながるのか、想像することが難しいのです。
ですから、そうしたことをきちんと大人が話してあげて下さい。
先を見せてあげて欲しいんです。この勉強したらこんなことにつながるよ、こんなこともできるようになるよって話をしてあげて下さい。
ちょっとだけ先のことでいいんです。そうしてあげれば子ども達もきっと、少しずつ「無味乾燥」に感じていた学習に楽しさを覚えてくれるようになると思います。
今回の記事をまとめると、次のようになります。
①子どもを「脅す」のは絶対にダメというわけではない②表現や言葉選びには配慮や注意が必要③ダブルバインドにならぬよう親は胆力をもって臨む④ものごとの道理が分かってくるようになったら「オバケ」に頼らず、なぜしてはいけないのか、なぜするべきなのかをきちんと話して聞かせるこんな感じでフレキシブルに子育て頑張ってください!
※中学受験ナビの連載『低学年のための中学受験レッスン』の記事を、マイナビ子育て編集部が再編集のうえで掲載しています。元の記事はコチラ。
この記事のライター
マイナビウーマン子育て
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