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中高一貫校へ入学して、より良い教育を受けさせたい。中学受験を目指す保護者の多くが、こんな願いを持っていることでしょう。しかし、親の想いが暴走することで、子どもとの関係に大きな溝を生んでしまう危険性もはらんでいるのが中学受験。教育ジャーナリスト・中曽根陽子さんが「後悔しない中学受験」を実践する心構えをお話しします。
私は長く、中学受験をする家庭の取材をしてきましたが、なかには「これって、ひょっとすると教育虐待なのでは……」と感じる事例も目にしてきました。
よくあるのが、少しでも偏差値の高い学校に行かせたいと勉強を強制して、思うように成績が上がらない子どもを叱咤激励するうちに、言動がエスカレートしてしまうケースです。
その裏には、親自身が高学歴で自分もその恩恵を受けてきたので、子どもにも同じような道を歩かせたいと思うパターンと、逆に自分はそうではなくて苦労をしているので、子どもには学歴をつけさせたいと思うパターンがあるようです。
一方、その中間のパターンも目立ってきました。深く考えていないけれど、世間的に評価をもらえる学校に行ってほしいといった、親の希望(見栄)から、子どもを責めてしまうケースです。
いずれも「子どものために」という思いからの行動なのですが、それが反対に子どもを追い詰めてしまったら元も子もありません。
子どもは基本的に親に喜んでもらいたい、認めてもらいたいという気持ちが強いので、ギリギリまで頑張ってしまいがちです。
しかし、負荷をかけ過ぎると、途中で心が折れてストレス症状が出てしまったり、思うような結果が出せず自分に自信が持てなくなったりします。大人が思う以上に深いキズを負うことにもなりかねません。
また、たとえ中学受験で成果を出せたとしても、伸び切ったゴムのような状態、無気力状態になってしまう子もいます。
取材でそういう事例をたくさん見てきました。その度に「ほんとにもったいないな……」と思うのです。
「受験はうまくやればその子の人間としての育ちの機会になるが、逆だとしこりが残る」
これは、私が最初に書いた『後悔しない中学受験』という本の帯に教育学者の汐見稔幸先生が寄せてくださったメッセージの一部で、本当にその通りだと思います。
「こんなにやっているのに、うまくいってない!」――もしそんなふうに感じることがあるなら、子どものためと言いながら、親のためになっていないか、時々振り返って見る必要があるかもしれません。
ここ数年、感染症の流行や災害の発生、不安定な世界情勢などが続き、社会全体に暗い影を落としています。いつもに増して親も子もストレスが高まっているかもしれません。
あまりうまく行ってないなと感じたら、休む勇気も持ってほしいと思います。
実は、いろいろなことを詰め込んでも、それほど効果があがらないのです。そればかりか、脳内では、ボーッとしている時間に、神経活動が盛んになるということがわかっています。
これまで、意識的に頭を使っているときだけ脳が活動し、なにもせずぼんやりしているときには、休んでいると考えられてきました。しかし、実際はなにもしないときにも脳はいつでも動けるように、車でいうアイドリング状態を保っていて、そのときに使っているエネルギーは、意識的に頭を使っているときの20倍にも達するということがわかってきました。
これをデフォルト・モード・ネットワーク(DMM)といい、「感情」や「運動」「記憶」などをつないで束ねる役割を果たしています。そして、DMNが正常に働いていれば、ネットワークが、脳の中に散らばる「記憶の断片」をつなぎ合わせ、脳内の情報がスッキリと整理されるのだそうです。そして、蓄えられた情報がそれぞれ結びつきやすくなり、ときに思わぬ「ひらめき」を生み出しているのではとも言われています。
皆さんも、じっと考えているときより、リラックスしているときのほうが、いいアイデアが浮かんだという体験をしたことはないですか?
親から見ると、子どもがなにもしないでボーッとしている様子を見たら、「ごろごろしていないで、勉強しなさい」と言ったり、つい予定を入れたりしがちですが、こんなときこそ、デフォルト・モード・ネットワークが働いている時間。子どもの頭の中では、脳内が整理され、画期的なアイデアが浮かんでいるかもしれません。つまり、脳を活性化するためにも大事なのが余白の時間なのです。
気づかないうちに疲れが溜まりがちなこれからの時期、何よりからだと心の健康を保つことを第一優先に考えて、受験まで乗り切って欲しいと思います。
中学受験ナビの連載『しあわせな中学受験にするために知っておきたいこと』の記事を、マイナビ子育て編集部が再編集のうえで掲載しています元の記事はコチラ。
この記事のライター
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