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いよいよ4月、子どもの小学校入学で直面する「小1の壁」。新環境に親子で戸惑い、つい叱りすぎてしまうこともあるかもしれません。現在、中学生の長男、小5次男、小3長女の三児を育てるクワバタオハラのくわばたりえさんと、昨年「小1の壁」を実感したばかりで小2のお子さんを育てる犬山紙子さんの、怒りの感情との向き合い方とは?
【全4回】の3回めです
ーーとにかくタスクが増え、時間に追われるのも「小1の壁」のひとつといえますが、余裕がないときに感情が爆発していまいがちです。おふたりは怒りの感情とどう向き合っていますか?
くわばたりえ(以下、くわばた)余裕がないことももちろんそうだし、小学生になると知恵がついてきて嘘をつくようになるんですよね。保育園の頃は嘘をついたとしても、「お菓子食べたの?」「食べてないよ」「口にチョコレートついてるよ」「食べてないよー!」というレベルじゃないですか。でも小学生は演技がめっちゃ上手くて。こっちが「え……?ほ、ほんまに食べてないの……?」と信じそうになって、あとでゴミ箱を見て「食べてるやん!」。
犬山紙子(以下、犬山)あははは!演技力がすごいんですね。
くわばたいちばんイヤやったのは、宿題な。親が丸つけするから答えも配られていて、私は答えを棚の上とか高い場所に置いて子どもの手が届かないようにしていたんですけど、子どもがそれを取って丸写ししてたの。
ーーどうして気づいたんですか?
くわばたなんでわかったかっていうと、丸つけしようとしたら、両面印刷の問題に、裏表逆に答えを書いていたから。全問不正解だった。「あんた、答え見てやったやろ?」と聞くと、「え、見てない」って嘘をついて。しかも、答えの冊子はちゃんと私が置いた向きに戻してあるんですよ。そのときは、子どもに裏切られたような気分になってショックでしたね。「なんで嘘つくの!?」って。めっちゃ怒りもしたし。でも、そのことを先輩ママ友に話したら「みんなやってるし、りえちゃんだって答えあったら写すでしょ?」って言われて、たしかに、と思ったんです。答えを写した子が悪いんじゃなくて、「子どもはみんな写したくなるものなんだな」と、落とし所を見つけました。
犬山「うちの子だけ特別嘘をつくのかな」と思うとしんどいけど、「みんなやるよ!」と言われたら……たしかに私もトイレの裏に公文のドリルを隠していたなあと思います。
くわばたそう思うのよね。怒ったあとに「あ、自分もやってたな」ってパターン、ありますよね。
犬山「嘘をついて怒られる」というのは、成長の過程でどこかで絶対に通る道ですよね。だからあらかじめ潰さないで小さいうちに経験させておくのがいいんだなと、いま話を聞いて思いました。「本当のことを言うと怒られる」と思うから嘘をついちゃうんですよね。その気持ちはすごくわかります。だから娘には、「思い直して『さっきのは嘘だった』ってママに言ってくれたら、絶対に怒らないから」という言い方をしています。そうしたら、何度かは「ごめんね、実は……」と申告してくれましたね。でもやっぱり完璧ではなくて。それでも嘘を嘘だと言い出せないことはあるから、親が思いつめないことのほうが大事な気がします。
ーー嘘をつかれたときの怒り方をどうにかしたいなと悩んでしまうことはありませんか?私は「嘘つきは泥棒と一緒だよ!この犯罪者がーーー!」みたいに激昂してしまうときがあるんですよ。
くわばたあはははは!あまりにも巧妙な嘘をつかれたときに、「詐欺集団のトップになったらどうしよう!」とかいろんなこと考えてまうもんな!平気な顔をして嘘をつかれたとき、この子大丈夫かなってめっちゃ思う。そういうときにも、ママ友に言われた言葉で冷静になれました。「誰かを騙して陥れている嘘じゃないよね?自分の身を守る嘘なら、それってみんながやることじゃない?知恵がついてきた証拠だよ」と。たしかに!と思いました。早く遊びたいから宿題を丸写しすることも、そりゃあるよなあって。
くわばた子どもが言うにはね、「ママは神様だ」って。「神様ってなんでもわかるでしょ?俺の嘘をぜんぶ見破るし、どんな嘘でも絶対にバレるから、ママはやっぱり神様なんだ。なんでもわかっちゃうんだもんな〜」って。
犬山あははは!かわいい!
くわばた「ただいま」って帰ってきたときに「あれ?なんか今日嫌なことあった?」と聞いたら「なんでわかったの!?」ってビックリされることもあって。
犬山それだけ子どものことをよく見ているんですね。
くわばた独特の空気感があるからな。ええことがあったときも同じ。そういうのも大切かなあと思って。中学生になったら聞いちゃいけないみたいな雰囲気も出してくるからな。
犬山思春期、めっちゃ気になる!
くわばたこの前はごはんを作っていてね、長男が寝ていて「足が痛い」と言うから「だいじょうぶ?」と聞いたら「黙れ」って言われた。
犬山あはははは!
くわばた「だいじょうぶ?」って聞いただけやのに「黙れ」って!こわいですよほんとに(笑)。でも自分も経験あるでしょ?なんか知らんけど腹立つとき。
犬山自分でいうところのPMSみたいなものですかね。思春期は仕方がない、と口では言いますけど、実際に子どもの思春期が来たら絶対にイラついてしまうと思うんですよ。
ーー有名なアンガーマネジメントに「怒りを感じたら6秒待って鎮める」というものがありますが、ムリじゃないですか?
くわばたムリだと思いますよ。私もいっきに火がつくからねえ。
犬山でもいままでの話を聞くと、くわばたさんは笑ってくれそう!
くわばたたしかに、笑いで返したらオールOKってところはあるなあ。子どもが保育園の頃に「うっせえババア!」と言われたことがあって。こんなに小さいのに「ババア」なんて言葉を使うなんておもしろいと思った反面、この時点で「ババア」ということは、この子が中学生になったら私はなんて呼ばれてしまうんだろうと思って、ここはガツンと言おうと思ったんです。「誰に向かってババア言うんじゃー!」ってめっちゃ怒ったら、子どもが私を指差しながら少しずらして、「……カーテンです」。
犬山あはははは!いい逃げ方!
くわばた「カーテンにババア言ったんやな!?じゃあ許したるわ!」って。頭がいいなと思いました。
犬山「カーテンならよし!」って許してくれるのがいいですねー。
犬山私も元々すごく怒りやすい性格で、妊娠中に不安になったんです。特に夫に理不尽に怒ってばかりで。すぐにカッとなってずっと怒っているお母さんが家にいるのって、イヤだよなあと。それに、怒りっぽさがが子どもにも移ってしまったらどうしようという心配もあり、カウンセリングに行きました。カウンセリングでは、私の場合は「怒りたい」という感情の下に「甘えたい」という気持ちがあるということを頭で理解でき、それ以降はカッなったら「あ、私は甘えたいんだ。じゃあ怒るのじゃなくてお願いしよう」だったり、「とりあえず甘いものでも食べようかな」と考えられるようになりました。ほかにも、私はお腹が空いているときに怒りやすいということもわかって。
くわばたかわいいやん。
犬山お腹が空いて怒るなんて恥ずかしいんですけどね。だから朝ごはんをちゃんと食べるとか。あと、これは怒りではないんですが、嫌なことやモヤモヤしている気持ちの対処法で好きなのが、「川にうんちを流すイメージ」。
ーーどういうことですか!?
犬山臨床心理士の先生が教えてくれたんです。人それぞれ合う・合わないはありますが、私はすごく合うんです。不安になって気になってしまう夜、その不安をうんちにして川に流すイメージをするとすっきりするんです。まあトイレに流せって感じですが(笑)。
くわばた私も思った(笑)。なんでトイレじゃないねん!って。
犬山それぞれの対処は完璧ではないんです。以降も全然怒りますから。でも、怒ったときに対処できるようにはなりましたね。あとは、ネチネチ長時間怒らないようにはかなり意識しています。1回、短く怒ったらそれで終わり!って。
くわばた私は長いのよねー。むちゃくちゃ。1年経っても言うし「まだ言ってるよこの人」みたいな。
犬山(笑)私も1年に1度くらいは長い怒りがあります。
くわばた30分くらい怒り続けることもあります。聞いてないから意味ないのにさ。
犬山そうそう、反省しないですよね。「この時間、早く終わらないかな」って考えているだけで。
くわばた思ったのが、怒る怒らない以前に、子どもを「対等な人間」として尊重するのが大切よね。私の夫は子どもに対する喋り方が、大人と接するときの子どもバージョンみたいなんですよ。私が「はよ寝や!」と言うところを、夫は「こんな時間だよ?早く寝なくていいの?」と聞くんです。そうすると、いかに私が上からモノを言っているかに気づくんですよね。夫婦関係も同じですよね。友達としゃべるようにしゃべると、喧嘩にならない。
くわばたたとえば洗い物が溜まっていて、なにもかも自分でやらなきゃいけないときに「ちょっと洗い物してよ!」とは、友達には絶対に言わないでしょ。「ごめん、私いまこっちのことをやっているから、洗ってくれへん?ありがとう!助かった!」って言うでしょ。それを子どもに対してやってもいいのかなと思ったんです。
犬山「あれしなさい」「これしなさい」じゃなくて。
くわばたそうそう。ごはん食べたあとの食器を「早く片付けて!」って言うけど、それ遊びに来た友達にも言いますか?と。
犬山(笑)言わない!
くわばたなんかわからんけどさ「しなさい!」ってよく言っちゃうのよね。気をつけなあかんと思ってんねんけど、難しいですね。気づいたらめっちゃ命令ばっかしてんのよね。「歯磨きしなさい」「宿題やりなさい」「寝なさい」って、私全部上からモノを言ってるわって気づいて。
ーーやっぱり自分が冷静ではない・余裕がないときについ出てしまいます。
犬山余裕があるときに「自分にはこういう口調のクセがある」と知っておくだけで、ぜんぜん違う気がしますね。
くわばた「あ、また命令になってる」とその時々で意識しないとね。
ーー小学校に上がると増えますよね、その口調。
犬山たとえば宿題の場合は、「やりなさい」じゃなくて「何時にやる?」と聞いたりしています。
くわばたそこで自分で決めたのにやらないからまた腹が立つのよね。
犬山その時間が来たら「約束の時間だよ」と声をかけたり。
ーー「自分で決めた時間だよ!早くやりなさい!」とは怒らずに?
犬山そうですね。質問で促したりして、どうしても眠くてできないなら「じゃあ明日2枚やろうか」と。で、また約束が増えると本人も「守らなきゃ」という気持ちになるようで。ただ、私より夫の言うことはあまり聞かない。夫のほうが甘いのを知っているから。
くわばたちょうどバランスがいいんちゃいます?ママの前ではちゃんとやっておこうという姿勢を見せるけど、逃げ場がないとね。
犬山そうかもしれないですね。さきほどの、「友達に接するように」という話は、まさに先輩ママ友が言っていました。「子どもは最初は守らなくちゃいけない存在だけど、長い目でみたら、ゆくゆくは距離感のすごくいい友人になれたらいちばんいいよね」と。家族だけど、家を出る可能性のほうが高いですしね。そうなったときに、買い物や旅行に一緒に行けたり、外出先で「お母さんこれ好きだから買っておいたよ」と言ってくれるような、お互いに好きだけど依存ではない、いい関係で接することができたらめっちゃ理想的だと思いました。それがいま、くわばたさんの話とピタッとリンクしました。
1976年3月24日生まれ、大阪府出身。2000年に相方の小原正子さんとお笑いコンビ「クワバタオハラ」を結成。2009年に会社員男性と結婚。4月から中学2年生の長男、小学5年生の次男、小学3年生の長女の3児の母。ただただしゃべりながら料理を作り、子どもとの食卓を映す公式YouTubeチャンネル『バタやんちゃんねる』が登録者数40万人を越えた。東野幸治さんが「芸能事務所を開くなら、ママタレの筆頭としてくわばたをスカウトしたい」と絶賛。
1981年12月28日生まれ、大阪府出身。2011年、女友達の恋愛模様をイラストとエッセイで書き始めたところネット上で話題になり、マガジンハウスからブログ本を出版。『ドデスカ!+』(メ〜テレ)、『ピタニュー』(広島ホームテレビ)、『newsランナー』(関西テレビ)などでテレビコメンテーターとしても活動。『プレバト!!』(TBS系)では俳句などで才能を発揮。2014年にミュージシャンで漫画家の劔樹人さんと結婚。4月から小学2年生の長女を育てる。2018年にボランティアチーム「#こどものいのちはこどものもの」を発足した。
(撮影:松野葉子取材・文:有山千春)
この記事のライター
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