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「ちょっと幸せ」をテーマに、グルメ・美容・健康・カルチャーなど、女性にうれしい情報満載のフリーマガジン「Poco'ce(ポコチェ)」から吉田羊さんのインタビューをお届けします♪
母親から愛されたことがない青年が、愛を掴み取るまでを描いた感動の実話、歌川たいじ原作の『母さんがどんなに僕を嫌いでも』が映画化される。
美しくもどこか常に情緒不安定で、息子タイジの行動にイラついては手を上げ、タイジを深く傷つける母親、光子を演じるのが吉田羊さんだ。
これまで演じて来た好感度の高い役とは真逆の嫌われ役になりかねない役を体当たりで熱演した吉田さんに、作品へ込めた想い、演じる上での苦悩などを伺った。
Profile
福岡県出身。97年より主に舞台での活動を経て、映画・ドラマへの活躍の場を広げる。15年に映画『ビリギャル』で第39回日本アカデミー賞優秀助演女優賞、第58回ブルーリボン賞助演女優賞を受賞。16年『嫌な女』で映画初主演、18年『ラブ×ドック』で映画単独初主演を務める。出演作品は『コーヒーが冷めないうちに』『ハナレイ・ベイ』など多数。
観客に好かれることや好感度は一切棄てて「光子」という母親の未熟さをとことん演じ切ろうという思いで挑みました
『脚本を読んでも原作を読んでもこの「母さん」に共感できなかった』と語り始めてくれた吉田羊さん。吉田さん演じる光子は息子タイジに容赦なく手を挙げ、さらに夫との離婚問題が浮上するとタイジがいれば不利になるとの考えから、まだ9歳のタイジを児童保護施設へと入れてしまうような母親。これまで吉田さんが演じて来た優しくて爽やかで、人を和ませるようなキャラクターとは真逆ともいえるこの“共感できない”役をどのように作ったのだろうか。
「私は実在する人物を演じるとき、できるだけ本人に近づけたいという作業をするんです。今回もそのためにクランクイン前に原作者の歌川さんにお会いして、お母様である光子さんをリサーチすべくエピソードをたくさん聞かせて頂きました。でも聞けば聞くほど彼女を理解できない。どう考えても息子を虐待するという心持ちが理解できなくて途方にくれましたね。でもそのとき、御法川監督が『凸凹で不安定なものを演じてくれればいい』と言って下さったんです。その言葉に「あ、そうか」と。光子さん自身も母親であるということがどういうことなのか、わからないながらもがきながら生きていたんだと。だとすれば、私が光子さんのことをわからないというこの想いがリンクして、何かしら現場で生まれるものがあるのではないかと。いや、あって欲しいなと祈るような気持ちで演じさせて頂きました」
その上で、光子を演じるにあたり大事にしたことが1つあると吉田さんは続ける。
「光子さんは未成熟なまま母親役を強いられた人。“こうでなければならない”という、世間から見た自分に縛られている人なんですよね。なぜそんな人になってしまったのかは、映画の中でも彼女の背景として触れられていますが、私はそこには決してエクスキューズしたくないと思ったんです。それは光子さんにどんな理由があったとしても、虐待は肯定されるべきではないし、絶対あってはいけないこと。なので、あえてそこは彼女の未熟さを未熟なまま徹底的に演じることで、逆説的にタイジがそれでも母を求め、母の愛を欲しがったということが色濃く、深く言えるといいなと思いました」
衣装/ワンピース47,000 円(税別)ヴェ ドゥ ヴァンステール/ジャーナル スタンダード ラックス クォータリー 銀座店 ピアス32,000 円(税別) リング16,000 円(税別)シンパシー オブ ソウル スタイル/フラッパーズ
今回、この嫌われ役とも言える光子役を引き受けるにあたり『高感度や観客に好かれたいという気持ちは一切棄てた』という吉田さん。吉田さんにそこまで思わせ、出演を決意させた理由を伺うと。
「元々ファンだった俳優の太賀くんと共演できることがまずひとつ。そして原作の中に散りばめられた原作者の歌川さんの言葉の力や不変の母への愛、人それぞれの生き方を絶対的に肯定する明るいエネルギーといったものを映画を通して1人でも多くの人に知って欲しい、触れて欲しいという想いがあり今回のオファーを受けました」
作品の中で、重要人物のひとりのように大きな役割を持って出てくる料理がある。それが光子がタイジに作った思い出の味“ まぜごはん” だ。そこで吉田さんに母の思い出の味を聞くと『ミートソース!』と即答が。
「吉田家のミートソースはシンプルな味付けなんですけど、本当に美味しい。誕生日とか記念日とかには必ず出てくる特別な1品です。ひき肉がたっぷりで玉葱は決してみじん切りとは言えないざく切り(笑)。でもそれが玉葱の甘みがでていて美味しくて。私もその味を限りなく近くは表現できるようになりましたが、やっぱり母の作る味が恋しくなりますね」
最後に、理想の母親像を伺うと『やっぱり実際の母かな』と。
「私の母は共働きだったし、掃除も下手で適当なとこも多かったけど子供たちのことを考えて自然食にしてくれたり、何かあったら一番に駆けつけてくれる母でした。私が中学のとき、友達に悪口を言われて落ち込んで帰って来たことがあったんですが、母はすぐに察して話を聞いてくれて。『つらかったね。でもそのいじめた子たちは今のあなたに必要なことを教えてくれてるのかもしれない。だから明日はあなたから“あれはどういう意味なの?”って聞いてみたら?』って。私に視点を変えてみるというやり方を教えてくれたんです。それが今も私の根底にある考え方ですし、今つらいことがあってもこれは試練だと思えたりする。すべては今の私に必要なことなんだって思えるのは母の言葉があったからだと思います」
映画『母さんがどんなに僕を嫌いでも』は現在公開中。『母親像は様々だし、感想も色々あると思います。でも観終わったあと「嫌いでも」のあとに続くのは愛の言葉であるといいな』と吉田さん。
「ちょっと乱暴な言い方になりますが、私はこの映画で当事者の人を救うことはできないと思っています。いや、救うなんておこがましくてできません。ただ、少なくともこれを見てくれた人が、周りにこういう人たちがいて、そこにはこういう寄り添い方があるんだ、こういう手の差し伸べ方があるんだというヒントにして頂けたら。もちろん虐待そのものも問題ですけども、そこに至った本人の孤立や孤独を知って救っていく。そういう環境作りにこの映画がひと役買えたらいいなと思っています」
『母さんがどんなに僕を嫌いでも』
原作/歌川たいじ「母さんがどんなに僕を嫌いでも」(KADOKAWA刊)
監督/御法川修 脚本/大谷洋平
出演/太賀、吉田羊、森崎ウィン、白石隼也、秋月美佳 他
公開/11月16日(金)より、新宿ピカデリー、シネスイッチ銀座、イオンシネマ他、全国公開中
©2018「母さんがどんなに僕を嫌いでも」製作委員会
PHOTO/Mizuaki Wakahara(D‐CORD MANAGEMENT LTD.)
STYLING/Hiroko Umeyama(KiKi inc.)
HAIR&MAKE/paku☆chan(ThreePEACE)
TEXT/Satoko Nemoto
この記事のライター
Poco'ce
19082
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