更新日:2019年7月5日 / 公開日:2017年6月5日
毎月保険料を払っている公的年金。転職などで払っていない「空白」の期間があったら、どのような影響があるのでしょうか?「障害年金や遺族年金には保険料納付要件があり、空白には気をつける必要があるのです。」公的年金の専門家・社会保険労務士の浦野さんが教えてくれました。
「夫に年金の保険料を払っていない期間があるのだけれど、どんな影響があるのでしょうか?」
と質問を受ける機会は社会保険労務士としてよくあります。
日本の公的年金に加入していれば、誕生月に「ねんきん定期便」が郵送されてきます。
ねんきん定期便には、保険料を払っていない未納期間や、職場の退職や離婚の後、必要な手続きが行われていない期間等が明示されており、「年金の空白」を確認することができます。
老齢年金には、受給資格期間(現在25年、平成29年10月より10年)がありますが、受給資格を満たした上で、保険料を払っていない期間があれば、老齢基礎年金が減額されることになります。
仮に1ケ月、保険料を払っていない場合、将来年金を受給する時、月あたり135.2円、年金額が少なくなります。(平成29年度、新規裁定者の場合で試算)
老後の年金だけを考えたら、保険料を払っていない期間が少しあっても、ちょっとだけ年金額が少なくなるだけだと考えてしまいがちですが、公的年金には老後の年金だけではなく、障害年金・遺族年金もあります。
そして、「年金の空白」は、障害年金・遺族年金では、最悪の場合、当事者となっても年金が受給できない原因となることがあるのです。
障害年金や遺族年金には、「保険料納付要件」があり、いざ自分が当事者となってしまった場合、年金受給の為には、国が定めた基準以上にきちんと保険料を払っている必要があります。
例えば、障害年金の場合、保険料納付要件は以下のいずれかの条件をクリアする必要があります。
①初診日のある月の前々月までの公的年金の加入期間の2/3以上の期間について、保険料が納付または免除されていること
②初診日において65歳未満であり、初診日のある月の前々月までの1年間に保険料の未納がないこと
まずは、①いままで3分の2以上の期間、保険料を払っているかが要件となります。
例えば、20代30代の方で、アルバイト期間が長く、その間、年金保険料を払っていないという場合、この「3分の2」の要件を満たしていないケースがあります。
しかし、①の「3分の2」の要件を満たせない場合であっても、②直近1年間に保険料の未納がない状態であれば、納付要件は満たせます。
気をつけなければならないのは、基準が「初診日」という点です。
最初は風邪だと思って病院に行ったら実は重い病気で、後で障害が残ってしまった、という場合でも、初診日は最初に病院に行った日です。
その初診日のある月の前々月までに、「3分の2」要件を満たしておらず、さらに、直近1年間に「未納」期間があれば、障害年金は受給できないことになってしまいます。
遺族年金についても、死亡前「3分の2」要件を満たすこと、または「直近1年間未納なし」は同じ条件です。
保険料納付要件をクリアできない場合、後で払っても認められません。
いつ障害を負うか?いつ亡くなってしまうか?は予測できない訳で、保険料の未納期間がないか、日常から気をつけておく必要があります。
年金保険料の未納状態を無くしたいという場合は、後で保険料を納めることができます。
基本ルールは納期限の2年後まで保険料を払うことが可能ですが、平成30年9月までの間は特例として過去5年分について、納めることが可能です。
また、未納期間が、失業などの事情で保険料を払う経済的な余裕がない期間であった場合は、免除期間とできる可能性もあります。
免除となっていれば、未納とはなりませんので、年金事務所や役所の国民年金窓口に相談するとよいでしょう。
「きちんと保険料を払っているつもりだったけれど、ねんきん定期便を見たら空白がある。なぜ?」
職場を退職する時、月末以外の日付で退職した場合、こういう現象が起こることがあります。
例えば6月30日付の退職であれば、6月分の保険料は給料から天引きされ納付済みとなりますが、6月20日付けで退職し、6月中に再就職しない場合、住んでいる自治体の年金窓口で「第1号被保険者」となる手続きを行い、6月分の保険料を納めなければ「6月分は未納」となります。
「第3号被保険者」(夫の扶養に入っている主婦など)の配偶者が離職した場合も同様です。
月末が土日(または公休日)の場合、月末退職だと思っていたけれど、実は金曜の最終の出勤日が退職日付となっていたというケースもあります。
離職や転職の経験がある場合、注意して年金の空白を確認することをお勧めします。
この記事のライター
新着