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スマホ・タブレットが普及し、共働きの増加やテレワークなど働き方改革が進むなか、リビングは“テレビを主役としたくつろぎ空間”から、家族みんなが思い思いの時間を過ごす“多機能空間”に変化を始めています。
連載第1回目の「リビ充家族(リビング充実家族)」は、東京都港区にお住まいの宮内さん一家。フルタイム勤務の夫婦、小学6年生と2年生の姉弟の4人家族です。約94m2の2LDKを1LDKにリノベーションして広やかになったリビングを居住スペース兼寝室として活用。6畳の個室は現在物置にしているそうです。家族全員がリビングに集い、時間を共有する暮らし方についてお聞きしました。【連載】リビ充家族
「個室をコンパクトに抑えてリビングを広くとり、家族が集まってそれぞれ充実した時間を過ごす」–そんな「リビ充家族(リビング充実家族)」が増えています。子どもが小さいうちはまだしも、大きくなったら? 勉強は? お父さん、お母さんの居場所は?……「リビ充」を楽しんでいる家族のお部屋にお邪魔し、お話を伺います。 気に入らなかった間取りを自分たちの暮らしに合わせてカスタマイズ
マンションの建設中に家の購入を決めたという宮内さん。同じ棟内の間取図をいくつも見比べ、最終的に現在のお住まいを選びました。その理由は、部屋が広い(約94 m2)、バスルームが大きい、天井が高い(約3m)の3つ。身長182cmの宮内さんが体を伸ばしてくつろげるサイズ感が決め手になりました。
けれども、宮内さんは「入居が近づくと、だんだん間取りが気になってきてしまって……」。リノベーション前の間取図を拝見すると、たしかにちょっと住みづらそう。例えば、リビングに収納スペースがない、洗面所とトイレのドアを同時に開けるとぶつかる、寝室の一部を凹ませてトイレを配している(宮内さんいわく「夜中に家族がトイレを使うと、水を流す音で目が覚めそう」)、などです。
「契約前にいくつかほかの物件も検討したんですが、近隣で候補となった新築マンションは割高でした。そっちで気に入った間取りを買うのと、こっちで新築をリノベーションするのと、価格的にそう変わらなかったんです。それなら、自分たちの暮らしに合わせてカスタマイズした住まいのほうが快適だろうと考えて、リノベーションに踏み切りました」
家族がみんなで過ごせるのはあと何年? 限られた時間を共有したいその後、外部のインテリア相談会で、運良く“考え方に共感できる建築家”と出会った宮内さんは事前に相談を重ね、新築マンションの引渡し後すぐにリノベーションを開始。寝室の壁を取り払うなどして2LDKを1LDKにすることで、30畳以上ある広々としたリビングを実現しました。間取りが気に入らなかったとはいえ、部屋数が少なくなることに抵抗はなかったのでしょうか?
「まったく抵抗ありませんでしたよ。私自身は、小さなころから個室を与えられていました。自分の部屋があってよかったと思う半面、今改めて考えてみると、そのせいで家族と一緒に過ごす時間が減ったんじゃないかと思います。家族がみんなで過ごせる時間は限られています。だからこそ、その貴重な時間を共有できるような間取りにしたかったんです」
宮内邸では、リビングの一部を家族の寝室にしています。リビングに入ってすぐ左手に大容量の造作家具を設置することで、不足していた収納スペースを補いつつ、パブリックスペースとプライベートスペースを緩やかに区切る「壁」としても活用。布団を収納できるほどの奥行きを確保しているのに圧迫感がないのは、窓側と天井側が抜けているため。この抜け感のおかげで、リビングのどこにいても、家族がお互いの気配を感じながら過ごせるそうです。
子ども部屋がなくても、勉強机がなくても、中学受験に挑める環境今年2月、長女が中学受験だったという宮内家。子ども部屋がないばかりか、リビングには勉強机も見当たりません。どのように勉強していたのでしょうか。
「子どもたちが勉強する場所は、リビングのダイニングテーブルです。1人で勉強するのは大変だろうから、私もなるべく早く帰って、娘の勉強をみました。息子と妻はリビングでテレビを見ることもありましたが、気を使ってヘッドホンをつけてくれていたので、娘も気にならなかったようですよ」
1年ほど前までは帰宅時間が10時、11時になることも珍しくなかった宮内さんですが、受験が近くなると毎日8時までに帰れるよう調整したといいます。子どもが中学受験に集中できる環境を整えるには、住まいという空間だけでなく、親子関係も大きくかかわってくるのかもしれませんね。
子ども部屋、本当はほしい?ほしくない? 子どもの本音を聞きました–と、ここまでは親の価値観について伺いました。けれども実際のところ、子どもたちの気持ちはどうなのでしょうか?
長女のSちゃんは、「自分の部屋を持っている友達もいるけど、あまりうらやましいとは思わないです。自分で部屋を片付けたり掃除をしたり、なんだか大変そう。友達の家に行っても、たいていその子の家のリビングで遊んでいるし、うちに友達が来るときもリビングに集まります。自分の部屋を持つのはもう少し先でいいかな。まだしばらくは、今のままがいいと思っています」
一方、弟のRくんはというと、「自分の部屋、ほしい! 自分の部屋に好きなものを、好きなだけ飾りたいです! でも、今すぐじゃなくていいかな。まだ小学2年生なので、4年生くらいのお兄ちゃんになったらほしいです。今はみんなで一緒にいたいから」
ふたりとも、いずれ自分の部屋が持てたらいいなと考えてはいるものの、長女のSちゃんは「もう少し先」、弟のRくんは「小学4年生くらいになったら」。親だけでなく子どもたちも、「今は家族みんなで、リビングで過ごす時間を大切にしたい」と思っているようでした。
「現在の住まいに入居した当時、子どもは3歳の娘だけでした。将来的にはもう1人ほしいと夫婦で話し合っていたところ、リノベーションの設計がおおむね終わったころに、第二子の妊娠が判明したんです。そういった背景もあって、いずれ子ども部屋が必要になるかもしれないことを想定して、建築家とプランを練りました。現在の間取りを活かして、個室を2つ確保した3LDKのプランも考えてあるんですよ」と、宮内さんは準備万端です。
「新築だったこともあり、最初はハードルが高いと感じていたリノベーションですが、実際にやってみると、もっと気軽に考えられるようになりました。ライフスタイルが変わったら、将来またリノベーションすればいいやと思っています」
家族みんながリビングに集まり、それぞれが好きなことをして、充実した時間を過ごしている宮内家。リノベーションによる間取りや収納の工夫が快適さを生み出してはいるものの、そのベースにあるのは夫妻の家族に対する深い愛情。「パパママ大好き!一緒にいたい!」オーラを発する姉弟の姿に、「リビ充家族っていいな」とほほ笑ましく、うらやましく感じた宮内家の暮らしぶりでした。
●【連載】リビ充家族記事一覧この記事のライター
SUUMO
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『SUUMOジャーナル』は、魅力的な街、進化する住宅、多様化する暮らし方、生活の創意工夫、ほしい暮らしを手に入れた人々の話、それらを実現するためのノウハウ・お金の最新事情など。住まいと暮らしの“いま”と“これから= 未来にある普通のもの”の情報をぎっしり詰め込んで、皆さんにひとつでも多くの、選択肢をお伝えしたいと思っています。
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