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マンションの外断熱改修【後編】 冬でもあったか光熱費は3割減! 経験者に効果と苦労を聞いた

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当記事はSUUMOジャーナルの提供記事です

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マンションの外断熱改修【後編】 冬でもあったか光熱費は3割減! 経験者に効果と苦労を聞いた(後編)

マンションの大規模修繕のタイミングで、建物全体を断熱材でくるむ外断熱改修を実施した2001年竣工のマンション。【前編】では外断熱工法について解説した。【後編】では、改修費用の調達や居住者の合意を得ることなどの課題と、それをどう解決したのかを紹介しよう。当時、管理組合の理事長として外断熱改修にかかわった北海道大学大学院工学研究院・建築環境学研究室の羽山広文教授に話を聞いた。
コストのかかる外断熱改修。住民の負担を増やさずに行うには?

札幌市内にある羽山さんが暮らすマンション。

「2001年に竣工した、住戸数26戸のマンションです。日当たりと眺望はいいのですが、断熱性能はそれほど良いわけではありませんでした。居住環境を維持するには、断熱改修が必要。ただし、住戸の内側から施工する内断熱工法では、一時的な退去が必要で引越しや仮住まいの費用が負担になります。暮らしながら断熱改修をするには、外断熱工法が適していると考えました。また、マンションは約15年周期で外壁や防水層の改修を行います。このマンションは外壁が剥がれて落ちるリスクがあるタイル張りなので、定期的な打診検査と補修も欠かせません。外断熱改修をすることで、これらの費用を軽減する効果も期待できました」(羽山さん、以下同)

問題は費用。大規模修繕の際に、外断熱改修を行うのがコストも工期も効率的だが、小規模な羽山さんのマンションでも、通常の大規模修繕に比べると数千万円の費用アップが見込まれた。住戸数の少ないマンションでは修繕積立金がなかなか増えないので、費用捻出は大変だ。

そこで、2006年、管理組合の理事長になった羽山さんは、将来の大規模修繕の資金確保に向けて、電力会社との契約を高圧一括受電方式に見直す提案をした。マンションは一般的に共用部は管理組合が、各住戸は居住者がそれぞれに電気料金を支払っている。高圧一括受電方式は、テナントビルのように管理組合が一括で契約し、各住戸の電気料金は管理組合が居住者に請求する仕組みだ。マンションの規模などの条件によって、高圧一括受電方式にすることで電気料金が削減できる。

「このマンションの場合、2007年5月から導入して2016年4月までの9年間で、平均約45%の電気料金を削減することができました。各住戸、年間約5万円分電気料金が安くなったので、その分を修繕積立金に繰り入れました。住戸の所有者が負担する電気料金が増えることはなく、修繕積立金を約50%増やせたことになります」

こうして、増やした修繕積立金で外断熱改修の費用の問題をクリアした。

居住者の想いはいろいろ。みんなをどうまとめたの?

外断熱改修の実行に向けて具体的に動き始めたのは、2014年、羽山さんが2度目の理事長に就任したときだ。

マンションは区分所有者全員の財産。さまざまな考え方や想いをもった人たちが集まっていることもあり、共用部分や外観に大きな変更を行う場合、合意を得ることがなかなか難しいケースも多い。羽山さんのマンションで、修繕積立金を増やすために電力会社との契約変更を提案したときには反対の声はなかった。しかし、外断熱改修については、通常の大規模修繕のみなら約6000万円のところ、外断熱改修を行うと約8000万円に費用が大きく増えることや、タイル張りの外観が変わることへの反対意見もあった。

「合意形成のため、定期総会と臨時総会を開いて、光熱費の削減につながること、外断熱改修をすると大規模修繕の回数を減らせることをはじめ、マンションの維持コストのシミュレーションを設計事務所の方の協力を得ながら作成し説明しました」
また、外観については、「足場を組まなくても打診検査や補修ができる範囲で、タイルを一部残す」「新しい外壁の色は、複数の案から全員の投票で決める」などの対応で、合意につなげた。

光熱費が約30%減。冬の朝もあたたかい室内に

外断熱工法による大規模修繕工事は、2016年3月にスタートし7月に終了。

「この冬の光熱費は、これまでよりも30%くらい下がっています。また、暖房を以前と同じように使った場合の室温も高くなりました。例えば、改修前は、夜寝る前に暖房を止めると就寝前に20度あった室温が朝には16度くらいまで下がっていたのが、改修後の今は18度くらいです」(羽山さん)

外断熱改修で光熱費が削減できたり、冬の室内温度が上がったりといった効果をあげている例はほかにもある。羽山さんの研究室に在籍していた平川秀樹さん(ダウ化工株式会社)が、外断熱改修が行われた札幌市内の3棟の分譲マンションを調査した結果、どのマンションも暖房を使う時期の室内平均温度が1.8〜3.5度上昇、暖房用エネルギーの消費量は17〜46%削減されていた。

コストや区分所有者の合意形成など、いくつかのハードルはあるが、光熱費の削減、冬の室温の上昇、大規模修繕の費用削減など、さまざまなメリットがある外断熱改修。大規模修繕を数年以内に控えているマンションは、選択肢のひとつとして検討してみる価値はある。

●取材協力
羽山広文さん(工学博士、北海道大学大学院工学研究院・建築環境学研究室教授)
参考文献『札幌市内の分譲マンションストックにおける暖房用エネルギー消費量削減に関する研究』平川秀樹(ダウ化工株式会社)●関連記事
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この記事のライター

SUUMO

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