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10年間、生活がまったく変わらないと言う人はなかなかいないと思う。ましてやそれが、子育て中のファミリーならなおさらだ。2歳の子が12歳になり、生まれたばかりの赤ちゃんは10歳に。子どもが成長するにつれて、子どもの荷物も大人の荷物も増える。今回、お邪魔したのは、そんな家族の変化に合わせて二度目のリノベーションを決行したMさん夫妻のお宅。果たして増えた荷物は無事に収まったのだろうか?
一度目のリノベーションを決めたときは3人家族だった
2006年、Mさん夫妻が東京都目黒区に購入した中古一戸建ては、当時築17年。建物がだいぶ古くなっていたこともあり、リノベーションすることを前提としての購入だった。夫婦ともにグラフィックデザイナーなので、自宅兼オフィスとすることも決めていた。
「仕事のスペースは、1階と2階の一部。残りをプライベートな住居部分としたので、パブリックスペースに白っぽい色の照明を、プライベートな住居部分にオレンジ色っぽい照明を使うなど、仕事からプライベートへの頭の切り替えがうまくいくように設計者に工夫してもらいました」(夫Oさん・49歳)
2階の一部を夫婦の寝室、3階全体をLDKと子ども部屋とした。これがプライベートな住居部分だ。
「当時、わが家は私たち夫婦と上の子の3人家族。子ども部屋も当初は1つだけでした」(妻Kさん・48歳)
その後、2人目の子どもを授かり、一度目のリノベーションが済んだころには、4人家族となっていた。
10年間で本の量は約1.3倍に、子どもの荷物も倍増した一度目のリノベーションから10年の月日が流れた2016年。上のお姉ちゃんは12歳、一度目のリノベーションが終わってから生まれた弟くんも10歳となった。学用品やおもちゃ、衣類……赤ちゃんだったころと違い、成長とともに二人の荷物も増えていた。
「とにかく息子のおもちゃが片付かないんです……。そして、そろそろ中学に上がるというタイミングで、娘が『自分の部屋がほしい』と言い始めて。きょうだいの性別が同じだったら一緒の部屋でも良かったのですが、やっぱり姉と弟なので分けようということになりました」(Kさん)
本も増えていた。この家に引越してくるときすでに段ボール数十個という量だった本は、一度目のリノベーションが終わった時点では市販の本棚になんとか収まっていたものの、その後の10年間で約1.3倍に膨らんでいたという。
「本棚に収まりきらずに、床に平積み状態になっていました。なるべく増やさないようにと処分してはいるのですが、デザイナーなので、仕事をした雑誌の掲載誌が次々に送られてくるし、写真集や画集は捨てられなくて」(Oさん)
「子どもたちに個室を」「あふれた本をなんとかする」……この2つを解決するのに2人が出した結論が、二度目のリノベーションだった。
子ども部屋を真っ二つに分割。書庫の本棚はつくり付けに「大掛かりなリノベーションをするつもりではなかったんです。だから、ブルースタジオさんにまたお願いしようとは、はじめは考えていませんでした」(Oさん)
部分的なリノベーションなので、物件単位のリノベーションを手掛けているイメージがあるブルースタジオに相談するかどうか迷ったが、一度目のリノベーションを依頼したこともあり、二度目もブルースタジオに相談。「こんなふうに暮らしたい」と伝えると、たちまち図面を起こしてくれる提案力にあらためて感心し、再びブルースタジオに依頼することにした。
「本棚は、ホームセンターの組み立て式のものでいいかなと思っていたのですが、『これだけの量の本を収めるのに、どのくらいの本棚が必要なんだろう?』『そのためには、組み立て部品の板が何枚この家に運び込まれるんだろう?』と考えたときに、現実的ではないなと悟り、つくり付けの本棚をつくってもらうことに決めました」(Kさん)
もう一つの理由もあった。2011年の東日本大震災のとき、震度5強の揺れで市販の本棚の中身がすべて床に落ちてしまった一方で、つくり付けの収納に収まっていたものは、食器も含めてすべて無事だったのだ。それ以来、Mさん夫妻は、つくり付け家具をますます信頼するようになったのだという。
子ども部屋は、間仕切り壁で二つに分割して、それぞれに引き戸をつけた。お姉ちゃんの部屋はブルー、弟くんの部屋はグリーンと、壁の色をそれぞれ好きな色に塗り、“個室”感を高めた。真上のロフトも同じように分割し、各子ども部屋と一体化させることも考えたが、片方が窓のない空間になってしまうことなどもあり、断念した。
念願の個室を思い思いのテイストで飾る子どもたち書庫をつくったことで、あふれた本はつくり付けの本棚になんとか収まった。Oさんはその収まり方を「必死で掃除してようやく収まるレベルです(笑)」とごく控えめに評価しているが、本棚の上のほうにはまだ空きもあり、余裕があるようにも見える。
子どもたちは、念願だった個室の飾りつけを思い思いに楽しんでいる。本好きなお姉ちゃんはお気に入りの本を飾り、弟くんはいろいろなおもちゃを次々に部屋に持ち込むのに忙しい。Kさんはこんな弟くんの活動を「巣づくり」と呼んでいる。
「私たちが仕事で使った撮影用の渋い骨董品なども息子が自分の部屋に飾るのですが、そういうものと、キャップ独楽(ペットボトルのふたに爪楊枝を刺したコマ)のようなチープなものが同列に並べてあるんです。どっちも息子にとっては大事な宝物なんでしょうね(笑)」(Kさん)
お姉ちゃんは、2階の書庫で本棚の間に腰を下ろして本を読むのも好きなのだとか。昼間は窓から入る自然光だけで読書ができそうなほど明るい空間だった。
二度目のリノベーションを終えたばかりのMさん夫妻。また10年後あたりに三度目のリノベーションを考えていたりするのだろうか?
「子どもたちがここにいる間、つまり自立するまでは変えないつもりです。ただ、本はまだじわじわと増え続けているので、ブルースタジオさんにお願いして、2階の書庫・納戸にもう少し本棚を増設してもいいかも。『まだここに本棚3つくらい置けるな』などと密かに考えています」(Oさん)
そう打ち明けるOさんに対してKさんは「いや、そんなことしたら空間が圧迫されちゃうし」と異議を唱える。家づくりや模様替えを巡る夫婦のやりとりは、これからもにぎやかに続いていくのだろう。
●取材協力この記事のライター
SUUMO
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『SUUMOジャーナル』は、魅力的な街、進化する住宅、多様化する暮らし方、生活の創意工夫、ほしい暮らしを手に入れた人々の話、それらを実現するためのノウハウ・お金の最新事情など。住まいと暮らしの“いま”と“これから= 未来にある普通のもの”の情報をぎっしり詰め込んで、皆さんにひとつでも多くの、選択肢をお伝えしたいと思っています。
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