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※前回のお話は「コウモリも美味かもしれない~“
食”
への飽くなき探求心~」でどうぞ
どうも、こんにちは。下ネタ大好きなフォトグラファー、ヨシダナギです。
今回はネタ切れ延命措置第2弾として、先日、皆さまから募集させていただいた質問(特に多かったものが中心)に答えてみたいと思います。
Q1 : 「『クレイジージャーニー』で英語を流暢に話すヨシダさんを見てすごいなぁと尊敬しています。どうやって英語を勉強しましたか?」(質問者:きょさん)
A : まず最初に。ヨシダは英語を流暢に話すことはできません! もし、番組でそう見えたのであれば、それは番組編集者のスキルが大変素晴らしいとしか言いようがありません。
私は中2で学校をドロップアウトした上に、母親から「アンタは日本人なんだから英語なんて勉強しなくていい。そのかわり、日本語だけしっかり学びなさい」という偏った教えを鵜呑(うの)みにしてしまっていたため、初めて一人でアフリカに行った時には5つの英単語しか知りませんでした。もちろん、最初は言葉が話せない不便さも多々ありましたが、私は“
勉強をする”
ということが心底嫌いなため、勉強を意識した瞬間から“
自分がその環境から逃げ出す=海外・アフリカへ行くこと自体をやめる”
ということが分かっていたので、勉強は一切せずにただひたすらアフリカに通い続けました。
実際に英語の参考書を見ても、撮影交渉に必要なフレーズは載っていませんし、「同じ姿になりたい」なんていうフレーズも見つかりません。現地ですぐに私の役に立つような英語の参考書は探せませんでした。そして本に載っている言葉よりも、実際に現地へ行って直接耳で聞く単語の方がより実用的で、覚えも早いということに気が付きました。
ただ、私は英語をアフリカで覚えてしまったため、訛りにクセがある“
African English”
らしく、アフリカ圏以外の国に行くと「お前のその変な英語はどこで覚えたんだ!?」と、ギョっとされますが、訛りがあろうが、伝える意思さえあれば伝わりますし、最終的に人と人とが仲良くなるのには言葉以外の“
フィーリング”
が何よりも大事なのではないかという結論に辿り着きました。現に少数民族と接触する場合は、英語が全く通じず共通言語がないので、最終的には“
心”
なんだろうなと思ってます。
だから、英語をキレイに話さなきゃいけないなんて意識しなくていいと思いますよ。と言いつつも、訛りも文法もヒドイ私はネーティブな人の前や日本では絶対に自分の語学力は晒したくありませんが!! (現地で必要な時に必要な言葉だけしか喋りたくないです。笑)
そして、最後に1つだけアドバイスを差し上げると、発音してくれる電子辞書を持っていけば死にはしないです。
Q2 : 「もし、将来自分の子供が生まれたら“
ナギ”
という名前を付けたいと思っています。付けてもいいですか(笑)? また、ナギさんの漢字と由来も聞けたら嬉しいです。」(質問者:Hzkさん)
A : ココだけの話、ヨシダナギという名前は本名ではありません。
よく私の名前を「吉田凪」と変換される方がいらっしゃるのですが、私には漢字の活動名はありません。なぜ、漢字表記がないのかと言いますと、わざわざ本名でもない活動名に漢字をあてはめる作業が非常に億劫だったという理由のみでございます。それでもよかったら、ぜひ使ってくださいませ!(ただし、お子さんがアフリカに行く!と言い出しても当方で責任は一切負いかねます。)
Q3 : 「アフリカ旅行中、チップを要求されることがたくさんあると思いますが、そんな場合どう対応されていますか?」(質問者:かなぴょんさん)
A : どんな状況でチップを要求されたかにもよりますが、どんな小さなことでも何かをしてもらった時やお世話になった相手、写真を撮らせてもらった人には当たり前のようにチップは渡しています。チップ文化がない日本人からすると、何かしてもらった時にお金を払うのは少し抵抗があるかもしれませんが、アフリカに通い始めた頃「ここは日本ではない。チップが欲しくてナギに優しくしている人ばかりじゃないけれど、そういう人だってチップを貰うと“
ナギは喜んでくれたんだ”
って感じるし、もちろん、全ての人ではないけれど感謝の気持ちはチップで表さないと伝わらないことも多々あるんだよ」と教わって以来、チップを渡すということ自体に抵抗が薄れました。
ちなみに、町中で何もしてないのに理不尽な理由でチップをせびってくる輩(やから)には、満面の笑みで「私がお金もらいたいくらいだぜ、メーン」と相手の腹に軽くグーパンかませば大体ピースフルにスルーできます。
また、アフリカの場合はチップではなく、ワイロを要求される場合もあるのですが、その場合は悔しいですけど、払わないと理不尽な難癖をつけられて通過できなかったり、とてつもなくモメて時間がかかったりします。嫌がらせをされることも多いので身を守るための手段として、そして、時短として大人しく支払ってます(※現地ガイドが、いつもそう対応しているので)。
Q4 : 「私は肌が弱くて、東南アジアを旅するとダニで足がブチブチになったり、虫刺されに悩まされることがあるのですが、ヨシダさんはそういうことはありませんか? 衛生的に良くない場所で困ったことがあれば教えてください。」(質問者:ねもちんさん)
A : 日本を離れると、そういうのはツキモノですよね。私も決して肌は強くないので、毎回、植物や虫へのアレルギー反応で肌がかぶれますし、7年前に虫にやられた痕も残っています。ダニや寄生虫に体内に卵を産み付けられて子持ちになってしまったり、背中に大きなコブが毎日できたりと、病院送りになったことも多々あります。ですが不思議とそういったことに対して困ったり、ネガティブに捉えたことはありません。アフリカに行ったら日本じゃ起こり得ないことが起こるのは当然ですし、それがまた貴重な体験かなぁと。
もちろん、時には苦しいこともありますが、それでもどこか他人事のような感覚といいますか、ヒーヒー言ってる自分を客観的に見て、どこかで楽しんでいるバカな自分がいます。
そもそも“
病は気から”
って言いますしね! 気持ちが負けたらもうソコで終わっちゃいますから、「指に卵産み付けられちゃったから、孵化するまで観察日記つけてみよう(現地ガイドに怒られて、病院に連れて行かれて除去されちゃいましたが)」とか「昨日はダニに45カ所食われたけど、今日は80カ所食われた! 記録更新だ!」といったマインドで常に過ごしております。
Q5 : 「アフリカの少数民族のみならず、最近はアジア・オセアニアの少数民族を取材されていますが、取材対象となる少数民族はどのように探されているのですか?」(質問者:あとむさん)
A : 大概の場合はビジュアルから入ることが多いため、まずはネット検索やSNSで少数民族の写真などの情報をかき集めます。取材対象を定めたら、その国の旅行会社に気になった少数民族の写真をいくつか送って情報をすり合わせつつ、取材が可能な場合は旅程を組んでもらうというのが通常の流れです。
あとは、現地で情報収集をすることも多いです。例えば、現地に行くと同じように少数民族を追いかけている欧米人のプロフォトグラファーと遭遇したりするので、その時に彼らと情報交換したり、時には少数民族たちに「自分たちの国、もしくは近隣国に面白い少数民族はいないか」などという話を聞いて、その話を元にその国の旅行会社などに問い合わせたりしています。あとはお世話になっている現地のガイドたちが、「ナギ好みの少数民族が最近〇〇国の国境付近で見つかったぞ!」とか、SNSで情報提供をしてくれることもあります。
撮影の裏側は実に地味なものでございます。
Q6 : 「ナギさんにとっての真の男、カッコイイ男の定義って何ですか?」(質問者:ikuchanさん)
A : 全く考えたことがなかったのですが、ビジュアルさえカッコ良ければカッコイイのではないか。
はたまた、「コイツだ!」と決め込んだ一人の女性を生涯守り通せる男がカッコイイのではないか。などと、浅はかなことを考えてしまいました。
が、単細胞のヨシダには男のカッコ良さの定義なんて分かりません。とりあえず、私の中で常にブレずにカッコイイ男性として上位に君臨しているのは蝶野正洋さんとフリーザ様であることをご報告しておきます。
Q7 : 「いつも黒い服を着ていますが、何かポリシーがあって着ているのですか? いつも着ているブランドなどがあれば教えてください。」(質問者:ミホさん)
A : よくイベントなんかでも黒い服のことは聞かれるのですが、ポリシーなんていうカッコイイものはなくって、ただ単純に黒が好きなだけです。好きな服がたまたま黒を基調としているブランドが多かったと言いますか(Yohji Yamamoto, forme d’expression, MONARC 1とか)。本当にシンプルな理由です。もう10年近く黒をほぼ毎日着ているので、黒以外の服を着ると落ち着かないんですよね。たまに白を着ただけでも「どうしたの?」と驚かれるので、そういうのももう面倒くさくて黒に逃げています(笑)。
Q8 : 「あ!この方は!と一目惚れされた種族は過去におられますか? イケメン食いと承知しております。」(質問者:のっちさん)
A : アフリカ人のイケメンは大好きです。見た目だけで言うならば、これまで遭遇してきた大多数の少数民族はイケメンの部類だと思っております。
が、エチオピアのアファール族とニジェールのボロロ族は見た目もさることながら、性格もイケメンというナイスガイたちだったので、過酷な撮影も毎日バラ色でした。
どうでもよい話ですが、先日1番のお気に入りのボロロ族と恋に落ちる夢を見て、ドキドキしながら目を覚ましました。あー、いい夢だった。
Q9 : 「ヨシダさんの写真を見ると演出ありき、つまり写真家で言えば植田正治さん的な写真ばかりですが、リアリズム、絶対非演出的な写真家・土門拳さんが写したような自然な素の人物像には全くもって興味はないのでしょうか? 黒人の自然な素の姿、日常の姿こそヨシダさんにしか撮れないような気がします。」(質問者:広島のゴンさん)
A : 報道やドキュメンタリー調の少数民族の写真を撮っているプロカメラマンは世界中に沢山存在します。カメラスキルが皆無の私がそのようなフィールドで挑んでも、プロの写真にかなう写真が撮れない自信がございます。
昔、非演出のポートレートを撮っていましたが、私が本当に写真を見てほしかった対象者の“
全くアフリカに興味が無い人たち”
にはリーチすることができませんでした。なので、「ピューリッツァー賞を受賞した“
ハゲワシと少女”
に代表されるような写真によって、これまで日本人が刷り込まれてきたアフリカのイメージを覆す作風であれば、カメラスキル皆無の私であってもアフリカに興味が無い人たちの心に深く触れることが可能なのではないか」と考え、今の作風に至った次第でございます。
という理由付けをしてみたものの、正直、“
ドキュメンタリーや非演出のものを撮影する=常にシャッターを切れる状態”
にしておかなきゃいけないんですよね。私はカメラを持つことが好きじゃないんですよ。写真を撮ること自体にも興味が薄いので(携帯で撮ることさえ実は億劫なので)、その重たいカメラを常に持っていなきゃいけないことが苦痛で仕方がないのです……。
なので、「さぁ、ココで撮るぞ!」と決めた時だけ、少しの時間だけ気持ちを入れ替えて撮影することで“
実はカメラなしでアフリカ人に会いにいきたい”
という気持ちとバランスをとっています。
ヨシダに質問をぶつけて下さった方、ありがとうございます。そして、今回お答えできなかった方、ごめんなさい。でも、これに懲りずにまた質問投げつけてやってくださいませ!
次回はよく尋ねられる作品の編集作業なんかについて、ちょっとだけ語ってみようかと思います。
※treasures編集部 注:お送りいただいた質問文は一部改変しております。ご了承ください
【ヨシダナギからトークイベントの告知】
6月17日(土)14:00~ @大阪
【Profile】
ヨシダナギ
1986 年生まれ。フォトグラファー。
独学で写真を学び、2009年より単身アフリカへ。
アフリカをはじめとする世界中の少数民族を撮影、発表。
その作品の唯一無二な色彩と、自身の生き方が評価され、TVや雑誌などメディアに多数出演。
日経ビジネス誌では2017年の「次代を創る100人」に選出される。
著書に、写真集『SURI COLLECTION』(いろは出版)、アフリカ渡航中に遭遇した数々のエピソードをまとめた紀行本『ヨシダ、裸でアフリカをゆく』(扶桑社)がある。
http://nagi-yoshida.com
Text:ヨシダナギ
*次回は6/18(日)掲載予定です。
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この記事のライター
宝島オンライン
388
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